世界貿易機関(WTO)
新型コロナウイルスに関するG20貿易投資作業部会報告書
貿易・投資への影響
令和2年7月8日
7月6日、サウジアラビアG20事務局は、国際機関により作成された「新型コロナウイルスに関する貿易投資作業部会(TIWG)報告書」を公表したところ、その概要は以下のとおりです。本報告書は、先般のG20貿易・投資担当大臣閣僚声明の要請を受けて、IMF、国際貿易センター、OECD、UNCTAD、世界銀行、WTOの職員が作成し、TIWGに提出されたものです。
なお、報告書の全文はサウジアラビアG20事務局のホームページで御確認いただけます。
- 新型コロナウイルスの影響で、2020年の貿易取引は12~32%の減少が見込まれ、対外直接投資額も2020年から21年にかけて30~40%の減少が見込まれる。業種別では、観光業を始めとするサービス業への影響が最も深刻で、グローバルサプライチェーンに依拠する産業や中小零細企業も大きな影響を受ける。影響の規模は、主として感染の収束の時期にかかっている。
- 危機への対応上やむを得ないコストは存在するが、政府の措置によりこれを回避又は緩和することも可能である。貿易円滑化や医療用品への関税及び非関税障壁の除去、不要な輸出規制の回避などがこれに当たり、措置の透明性も重要である。デジタルインフラの活用や貿易円滑化等、サプライチェーンの強靭化に資する貿易・投資政策の検討が各国の課題となっている。
- 各国政府は、国民生活や生産能力を危機から守るため、市場金利を下回る融資等、前例のない支援を実施しているが、危機後を見据えればこれらの措置が貿易歪曲的効果を持たないよう確保する必要がある。また、今回の危機は、将来に向けて貿易や健康面での協力を検討する契機であり、次のような手段をとりうる。
- 透明性確保
- 情報共有の改善
- 関税削減
- 輸出制限に関する規律又は指針の策定
- 医療用品の戦略的備蓄のための協調投資
- 不可欠な労働者の移動を促進する技術・ベストプラクティスの活用
- 投資分野においても、外国投資自由化の停止や医療分野における外資買収防止策等の規制的措置の導入がみられ、投資家保護と政府の規制権限のバランスをとることが求められている。短期的なウイルスの影響の抑制に加え、中長期的な視点で、貿易・投資を、包摂的で持続可能な発展のための原動力として再活性化していく必要がある。
- いずれの国も一国では危機を乗り越えられず、保護主義は状況を悪化させる。国際協力こそが健康上及び経済上の危機を乗り越える手段である。