図書館関係の権利制限規定の在り方に関するワーキングチーム(第5回)

日時:令和2年11月9日(月)

15:00~17:00

場所:文部科学省旧文部科学省庁舎5階入札室

議事次第

  • 1開会
  • 2議事
    • (1)図書館関係の権利制限規定の見直し(デジタル・ネットワーク対応)に関する報告書について
    • (2)その他
  • 3閉会

配布資料一覧

資料
図書館関係の権利制限規定の見直し(デジタル・ネットワーク対応)に関する報告書(案)(1.2MB)

議事内容

【上野座長】定刻になりましたので,ただいまから文化審議会著作権分科会法制度小委員会図書館関係の権利制限規定の在り方に関するワーキングチーム第5回を開催いたします。

本日も新型コロナウイルス感染症拡大防止のため,委員の先生方皆様には,基本的にウェブ会議システムを利用して御参加いただいております。御多忙の中,御出席いただきまして誠にありがとうございます。

議事に入る前に,いつもどおりですが,本日の議事の公開につきましてですが,予定されている議事内容を参照いたしますと特段非公開とするには及ばないと思いますので,既に傍聴者の方にはインターネットを通じた生配信で傍聴していただいているところでございますが,これも特に御異議ございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【上野座長】ありがとうございます。では,本日の議事も公開ということで,傍聴者の方はそのまま傍聴していただくことといたします。

それでは,本日の配付資料の確認につきまして,事務局よりお願いいたします。

【大野著作権課長補佐】それでは,お手元の議事次第に記載の配付資料一覧を御覧いただきたいと思います。本日,資料は1点のみでございまして,本課題に関する報告書案をお配りしております。附属資料を含めて全体で35ページまでございますので,不備などがございましたらお伝えいただければと思います。

【上野座長】ありがとうございました。本日の議事でございますが,2点ございまして,1つ目が,今御説明がございました報告書についてでございます。2点目がその他ということになってございます。

では,早速議事に入りたいと思いますが,まずは議事の1つ目でございまして,図書館関係の権利制限規定の見直し(デジタル・ネットワーク対応)に関する報告書につきましてでございます。

事務局のほうで,これまでのワーキンググループでの議論を踏まえまして,本件に関する制度改正等についての報告書案のたたき台を御用意いただいております。

つきましては,事務局のほうからこの御説明をお願いできますでしょうか。

【大野著作権課長補佐】それでは,お手元の資料を御覧いただきたいと思います。

図書館関係の権利制限規定の見直し(デジタル・ネットワーク対応)に関する報告書(案)としまして,これまでの議論全体を集約した資料を御用意しております。基本的には前回のワーキングチームでお配りした資料をベースにしておりますが,その後,追記・修正などをした部分を赤字にしておりますので,その点を中心に御説明を差し上げたいと思います。

まず1ページ目では,第1章といたしまして,問題の所在及び検討経緯を簡単に記載しております。

冒頭では,図書館関係の権利制限規定については,従来からデジタル・ネットワーク対応の部分での課題が指摘されてきたところ,今般の新型コロナの関係で,よりニーズが顕在化したこと,また,これを受けて知財計画2020におきましても,短期的に結論を得るべき課題として明記されたことから早急な対応が必要である旨,記載をしております。

また,一番下の段落では,本ワーキングチームにおける検討の経緯といたしまして,権利者の利益保護に十分に配慮しつつ,デジタル・ネットワーク技術を活用した国民の情報アクセスを充実させる観点から,(1)の入手困難資料へのアクセスの容易化,(2)の図書館資料の送信サービスの実施,この2つの課題について,幅広い関係者からヒアリングを行った上で集中的に議論を進めてきた旨,記載をしているところでございます。

次に2ページ目以降でございますが,第2章,検討結果といたしまして,ここでは第1節で入手困難資料へのアクセスの容易化,第2節で図書館資料の送信サービスの実施,この大きく2つの課題に分けて検討結果を記載しております。

まず第1節,入手困難資料へのアクセスの容易化につきましては,1ポツの現行制度及び課題,それから2ポツの対応の方向性,3ポツの制度設計等と3つのパートに分けて記載をしております。基本的には前回の会議でお配りした資料と変わっておりませんので,修正した部分だけかいつまんで御紹介をいたします。

まず,4ページを御覧いただければと思います。注釈の3番というところに若干の追記を行っております。これは本文で言うと2ポツの対応の方向性のところで,国会図書館から各家庭等への送信を可能とするとしていた点に対する注でございます。

もともと国会図書館からエンドユーザーに対して直接サービスを提供する以外にも,図書館が間に介在してサービスを行うということも認めていいのではないかという御意見があったところ,この点に関して,インターネット送信の主体に関わる大きな問題であり,きめ細かな検討が求められるという御意見を前回いただきましたので,追記をしているものでございます。

続いて5ページに参りまして,注釈の6に追記をしております。こちらは,入手困難資料につきましては,ひとまず補償金制度は導入せずに制度改正をするという方向でございましたが,将来的には補償金制度を導入しつつ,サービスの利便性をさらに高めていくという御意見が示されていたところでございます。その際の補償金につきまして,入手困難資料の特殊性を加味した補償金にするという点が重要であるという御意見がございましたので,その点を追記しております。

続いて6ページに参りまして,こちらも注の10に若干の追記を行っております。先ほどと同様の問題意識かと思いますが,対価を支払ってでも高度なサービスを受けたいというニーズに適切に対応することが重要であり,補償金を課しつつ利便性を高める方向での議論を進めるべきという趣旨の御意見がございましたので,追記をしております。

続いて,ページが飛びますが8ページの注釈の15番でございます。ここは,入手困難資料の定義に関しまして,法律上,一般に入手することが困難とされておりますところ,誰から見た場合の入手困難性が問題になるかという点についての注釈でございます。

関係者間の合意事項におきましては,一般的に図書館等において購入が困難である資料とされておりますが,法律上は個々人にとって入手困難か否かが問題になるだろうというふうに記載をしておりました。ただ,ここに書いておりますとおり,図書館等の組織向けの配信サービスなどの場合には当然,図書館等の組織から見た場合の入手困難性が問題になりますので,その旨,補足的に追記をしているところでございます。

続いて,10ページを御覧いただければと思います。本文の上の部分に赤字が1か所ございます。こちらは,中古本市場との関係をどのように取り扱うかという部分に関しまして,法律上は中古本の流通状況は考慮せず権利制限の対象としていくということで認識が一致されましたが,運用の議論に当たっては,ここにありますように,古書店の有する社会的役割等に鑑み,中古本市場との関係を考慮することを妨げるものではないこと,すなわち,法律上の整理とは別途,運用上の議論はあり得るということを少し丁寧に書き直しているところでございます。

続いて12ページに参りまして,注釈の23と24を新しく追記をしております。これは本文でいうとなお書きの部分でございまして,美術館・博物館等の所蔵資料につきましては,国会図書館がハブになるのは難しいため,将来的にほかの機関をハブとすることについても検討が必要という部分についての注釈でございます。

まず23は,美術館・博物館の所蔵資料以外にも,地域の図書館が地域資料ハブとして送信するニーズがあることも勘案すべきという御意見を追記しております。

それから24は,検討のタイムスパンに関しまして,将来的な課題とするにとどまらず,今回の法整備において,国会図書館以外の機関を政省令で指定するという余地を残してはどうかという御意見もありましたので,その旨を追記しております。

これに関しては,一方で,インターネット送信の主体に関わる大きな話であり,現時点では権利者のヒアリングもされていないことから,直ちに対応するのではなくて将来的な課題にとどめたほうがいいという御意見もございましたので,併せて記載をしております。

続いて13ページからが第2節,図書館資料の送信サービスの実施に関する検討結果でございます。これも同じように1ポツの現行制度及び課題,2ポツの対応の方向性,3ポツの制度設計等と,3つのパーツに分けて記載をしております。これも基本的に,前回お配りした論点整理資料をベースにしておりますので,追記などをした部分に絞って御紹介をいたします。

まず,14ページの注釈の28を新しく追記しております。これは対応の方向性に関しまして,図書館等が図書館資料のコピーを利用者にファックス,メール等で送信することを可能とするとしていた部分に対する注釈でございます。

具体的には,図書館等が他の図書館等に対して送信を行いまして,その上で,他の図書館等が利用者にデータを送信する,すなわち,図書館等が自分が持っていないデータを別の図書館から取り寄せた上でユーザーに送信するということも可能とすべきではないかという御意見がございましたので,追記をしております。

次に15ページに参りまして,3ポツ括弧1の,正規の市場との関係の部分にいくつか追記をしております。

一番下の「ただし」で始まる段落でございますが,正規市場とのバッティングを回避する観点から,ただし書を設け,そのガイドラインを作成するという記載をしておりましたが,そこに関わる関係者としては,ここに記載のように図書館関係者のほか,利用者,出版社・権利者,流通業者など,幅広い関係者が関わるべきだという御指摘をいただいておりますので,その旨を明確に記載しております。

またガイドラインに関しては,注釈の29におきまして,諸外国の事例,グローバルスタンダードを踏まえる必要があるという御意見もございましたので,追記をしております。

続いて16ページに参りまして,冒頭,一部分要件の取扱いにつきまして前回御議論いただきましたので,その結果を集約して記載しております。

まず,初めの段落にございますように,丸1,明確性と柔軟性のバランス及び権利者の利益保護等の観点から,直ちに一部分要件を削除することや,大幅な要件変更を行うことは適当でないこと。一方で,丸2のように,現行の要件のままでは不合理な事態が生じる場合があるので,一定の手当てを行う必要があること。この2点については認識が一致したかと思いますので,その旨,記載をしております。

これを踏まえて,具体的な措置の内容を次の段落に記載をしております。

様々な選択肢があろうかと思いますが,関係者の理解を得て,早急に対応できる可能性がある措置といたしまして,著作物の一部分という骨格は維持しながら,例外の部分を少し広げていくという方向性を記載しております。個別具体のニーズや権利者の利益に与える影響等を考慮した上で,現行で特例になっている,発行後相当期間を経過した定期刊行物に掲載された個々の著作物と同じように,権利者の利益を不当に害しないだろうという場合には全部の送信が認められるということを,特例的に追加できるようにしてはどうかということでございます。

なお,その場合であっても,今回ただし書を設けるということになりますと,必ずしも全部の送信が認められない場合,それから著作物の一部分として現在解されている「半分まで」というものよりも狭い範囲での送信となる場合もあり得るだろうということも記載をしております。

いずれにしましても,この一部分要件につきましては,現行の複写サービスにも関わるものであるため,見直しをする際には,複製・公衆送信の両方について,併せて検討・措置が必要だろうと記載をしております。

この一部分要件の取扱いの部分につきましては,注釈の30から34までで追記をしております。30は大きな方向性としまして,時間的制約の中で大幅な要件の見直しを行うよりも,関係者の理解を得て早急に送信を可能とすることを重視すべきという御意見でございます。

それから注釈の31は,現行要件のままでは不合理が生じる事例といたしまして,発行後相当期間を経過している書籍に掲載された個々の著作物,例えば論文集の1論文,百科事典の1項目などであっても,一部分の利用しかできない場合があるという御指摘を記載しております。

それから注釈の32は,具体的な措置のイメージでございまして,例えば法律上,著作物の一部分に,今,括弧書きで例外規定が書かれておりますが,ここに下線のように「その他○○で定める著作物」という文言を追加しまして,政省令などで特例を柔軟に追加していくことが考えられる旨を記載しております。

なお,追加に当たりましては,ただし書の関係でガイドラインのための議論の場ができますので,そこで議論をし,合意されたものを順次追加していくということが想定される旨を記載しております。

それから注釈の33は,「著作物の一部分」という要件自体を改めるという御提案でございまして,著作物単位ではなく,市場での販売単位,商業流通単位を基準として,その一部分とすることも考えられるという御意見をいただいておりますので,その旨を追加しているところでございます。

それから注釈の34は,「著作物の一部分」が現在どう解されているかというのを確認的に記載しておりまして,著作権審議会で示された解釈や,国会図書館,大学図書館,公立図書館で示されている運用基準について追記をしているところでございます。

次に17ページに参りまして,送信の形態,データの流出防止措置に関しまして,前回いただいた御意見を注釈に3つ追加をしております。

まず35は,ダウンロードしたデータをさらにデジタルコピーするなど,無制限な複製を許容するのは望ましくないため,一定の技術的防止措置,権利管理情報を付加することが考えられるという御意見でございます。

36は,図書館側の対応として求められる技術的措置のハードルが高過ぎると,過度な負担が生じるため注意を要するという御意見でございます。

37も同趣旨かと思いますが,技術的措置を求めるのは現実的に難しく,諸外国でも基本的にそういった措置は求めていないため,別の形で適切な管理を行うことが現実的であるという御意見を追記しているところでございます。

次に18ページに参りまして,こちらも注釈でございますが,図書館等の主体の関係で,注釈38を追記しております。

主体となる図書館等の基準といたしまして,「職員に適切な研修等を実施している」という記載をしておりましたが,その趣旨をクリアにしております。こちらに記載のとおり,法31条1項の対象となる図書館等には,既に司書等の配置が求められているわけですが,適切な送信サービスの実施を担保するためには,そういった司書等を含めて,職員が研修等を通じてガイドラインの内容・運用などについて理解を深めておくことが重要だろうということで追記をしているところでございます。

それから本文の(4)補償金請求権の付与の部分に対応して,こちらも注釈をいくつか追記をしております。

まず丸1の基本的な考え方として,補償金請求権を付与することが適当であるという部分について,注釈の39を追記しております。諸外国では,権利制限に基づく補償金を課していない国もあるところ,我が国では著作権者の利益確保を重視して補償金を課すという方針をとっていることを認識しておく必要があるという御意見を追記しております。

一方で,この点に関しましては,利用者と権利者双方がウィン・ウィンになる仕組みを構築することが重要であって,特定の国の取扱いを過度に気にする必要はないという御意見もいただいておりますので,併せて追記しております。

また,なお書きで書いておりますとおり,諸外国では公共貸与権が付与されている国もございまして,前提として権利者の対価還元の在り方が異なりますので,この部分だけを取り出して見るということではなく,全体を通じた議論が必要であろうということも追記をしております。

それから,制度設計の部分に参りまして,補償金を課す対象範囲につきまして,注釈の40を追加しております。公衆送信だけを対象とするということに関しまして,理論的には複製も補償金の対象に含めたほうがよいが,現実的な対応としては公衆送信に限定せざるを得ないという御意見でございます。

次に19ページに参りまして,補償金の徴収・分配スキームの関係で,適切に権利者への分配を実現するためには,図書館等における努力だけでなく,権利者側でも権利情報の集約,データベースの構築等に努めることが重要であろうという御指摘を前回いただきましたので,本文に追記をしております。

それからローマ数字の3,補償金額の決定方法につきましては,文化庁長官による認可制が適当だとなっていたところ,その場合の具体的な手続を赤字で追記しております。

まず丸1として,指定管理団体が図書館等関係者からの意見聴取を行った上で案を作成し,文化庁に申請する。その上で,丸2にありますように,文化庁長官が文化審議会に諮った上で認可の可否を判断するといったプロセスが想定されますので,追記をさせていただいております。

それからローマ数字の4,補償金額の料金体系・水準のところにも,いま御説明した具体的な補償金額の決定プロセスの記載を追記しております。

また,注釈の41から44までも,新しく追記をしている部分になります。

まず41では,補償金の料金体系について,包括制ではなく個別徴収にするという点に関しまして,個別徴収のほうが補償金額の設定や適切な分配の実現などのエンフォースもしやすいという御意見を追記しております。

それから42では,基本的には包括的な料金体系にするということは認識しつつも,学校など一定の機関については,法35条と同様に包括的な料金体系とすることも考えられるのではないかという御意見を追記しております。

他方,この点に関しましては,今回は35条とは異なって,相当額の支払いをしてでも高度なサービスを受けたい利用者を対象としたものであるため,個別かつ相当程度の額とする必要があるという御意見もありましたので,併せて追記をしております。

なお,その後ろに記載のとおり,権利者の逸失利益を補填するという前提の下で包括的な料金体系とするということになりますと,送信し放題の中で,かなり大量のデータが送信されることを加味した上で包括的な料金が検討されることになりますので,かなり高額な補償金額になる可能性もありますところ,それが図書館等のニーズに合致するかは慎重に検討する必要がある旨も記載させていただいております。

それから注の43は,補償金額をきめ細かに設定するということに関しまして,図書館等における事務負担の軽減という観点からの考慮も必要であるという御意見を追記しております。

それから注の44は,利用者の属性によって補償金額に差を設けるという点に関しまして,大学図書館の場合に,学生にかかる補償金額を低廉にするということはあり得る一方で,それ以外の図書館等において個々の利用者の属性まで判断するというのはなかなか難しいという御意見を追記しております。

続いて20ページに参りまして,ローマ数字の5が補償金の受領者でございます。

まず1段落目では,法律上,補償金の受領者として位置づける出版社の位置づけを,よりクリアにする追記を行っております。括弧書きの部分ですが,法第80条第1項第2号に規定する電子出版権を有する者をいい,登録がなされているどうかは問わないという,前回の議論を踏まえた追記をしております。

これに伴いまして,2段落目の(ア)を追加しております。

今回のメール送信と公衆送信によって直接的に権利が制限されるわけでない出版権者,すなわち1号出版権,紙の出版権を有する者についても,実質的には影響が及びますので,利益確保を図る必要があるということをクリアにしております。また,(イ)では,前回同様,出版権が設定されていない出版社についての利益確保も必要だということを記載しております。

いずれにしましても,法律上受領者と位置づけない出版社についても適切な利益が得られるように,合理的なルールづくりを関係者間で行うことが必要ということでございます。

続いてローマ数字の6,支払い主体・実質的な負担者の部分では,注の45を追加しております。これは当然ではございますが,補償金は図書館等の設置者が法律上支払うことになっており,それをサービス利用者に転嫁するかどうかは各図書館等で判断すべきものであるということを確認的に追記しております。

それから21ページに参りまして,丸2,脱法行為の防止の部分でございます。これは権利者団体からの御懸念も踏まえて,図書館等においては,同一の者から同一の資料について繰り返し送信の請求があった場合には,送信の可否を慎重に精査すべきとしていた部分について,注の46と47を追記しております。

46は,図書館等における事務負担に配慮する必要があるという御意見,47は,利用者の読書活動のプライバシー保護の観点から,情報管理等の在り方については丁寧な議論が必要という御意見でございます。

それから,丸3の契約上の義務との関係につきましては,前回の議論で,基本的に契約上の義務として,その利用条件等には従う必要があるだろうという認識になっておりましたが,この点に関して48,49の注釈を追加しております。

まず48は,代替物が存在しない場合など,条件が受け入れ難い場合でも契約を結ばざるを得ない場面もあって,そうした場合にも全て契約条件等に従わないといけないかどうかというのは議論の必要があるだろうという御意見でございます。

他方,この点に関しましては,契約条件等が遵守されない可能性があるのであれば,事業者が安心してデータ提供を行えなくなり,ひいては図書館等にとっても不利益となるのではないかという御意見もありましたので,併せて追記をしております。

それから注の49は,今回の図書館送信サービスに関する規定とほかの規定とでは,この契約上の義務との関係の取扱いは分けて考える必要があるという御意見を追記しているところでございます。

最後の22ページでございます。こちらは第3章といたしまして,関連する諸課題の今後の取扱いを含めたまとめを記載しているパートになります。

まず1段落目では,第2章で記載した検討結果の部分につきましては,政府において早急に法整備等の対応がなされることを期待する旨を記載しております。

一方で,2段落目にありますように,図書館関係の権利制限規定に関しては,まだまだ多岐にわたる課題が残されておりますので,引き続き幅広い関係者の意見を丁寧に聞きながら検討を継続していく必要があることを追記しております。

とりわけ,小・中・高の学校図書館の取扱いについては,本ワーキングチームでも議論がございましたので,3段落目に記載を行っております。具体的には,昨今,アクティブラーニングなど従来の授業の枠にとらわれない主体的な学習が重視される中で,複写サービスなどのニーズも高まっていると考えられること,本ワーキングチームの議論においても追加すべきという意見が大勢だったことをまず記載しております。

これも踏まえまして,政府においては,現在,関係団体間で行われている協議の状況を見ながら,学校図書館に期待される役割等を十分に勘案の上,早急に適切な対応がなされることを期待するとしております。

この課題については,法改正を要するものではなくて,政令の改正などで対応が可能でございますので,引き続き関係団体間での協議の状況も踏まえながら,また法改正の準備を進めながら,条件が整った段階で必要な対応を行っていきたいと考えているところでございます。

なお,23ページ以降では,附属資料を様々つけておりまして,参照条文や本ワーキングチームの委員名簿,審議経過,それからヒアリング団体の一覧などをおつけしているところでございます。

少し長くなりましたが,事務局からは以上です。

【上野座長】どうもありがとうございました。それでは,ただいまの事務局からの御説明に関しまして,報告書案の内容について御議論いただければと存じます。

既にこれまで御議論いただきました内容が基本的に反映されていると思いますが,以下では大きく3つに区切って議論を行いたいと存じます。まず第2章が2つに分かれておりまして,前半が入手困難資料のアクセスの容易化ということで37条3項の関係で,後半が現行法ですと1項1号の関係でございますが,この2つを分けるとともに,最後に第3章,まとめについてお話を伺いたいと思います。

では,まず第2章,検討結果のうちの第1節,31条3項関係ですね,入手困難資料へのアクセスの容易化につきまして,御意見,御質問等がございましたらお願いしたいと存じます。いかがでしょうか。

大渕先生,お願いします。

【大渕委員】12ページの注24の赤字部分につきまして,賛成者が1人いるのと2人いるのとで多少は違うかと思いますので,念のため申し上げますと,私も同じ意見であります。この注24では,前半に積極的な意見があって,この話はほかでも出てきますが,主体に関わる大きな話であります。今までこのような大きな変更をする際にはきちんと権利者から意見を伺うというプロセスを踏んできているのに,今回はしていないということもありますので,将来的な課題として,ここで頭出しをして,今後きちんとヒアリングをしながら検討していくべきものであり,拙速にここで決めるべきものではないように思います。よって,この後半の意見に私も賛成したいと思います。

【上野座長】ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。

【生貝委員】よろしいですか。生貝でございます。ありがとうございます。大変丁寧で緻密なおまとめをいただきまして。私のほうからは,もう本当に追加で少し細かい論点だけなのでございますが,5ページの,まさに今,今後の検討課題というところにも関わると思うのですが,5ページで,将来的には利便性を高めつつ補償金制度を導入する方向性ということを書かれておりますところ,この点について,私は改めてECLの可能性に少し言及してもよいのではないかということを感じています。

と申しますのも,御紹介したデジタル単一市場著作権指令の中ですと,この絶版図書資料のインターネット公開を含めて,原則ECLで対応し,それがないところは権利制限規定で対応するということをやっているところ,まさに日本でそれを導入することの難しさというのはよく知っておりますが,例えば国際的にもECL的なものを,ドイツでも,この絶版とアウト・オブ・コマースに関して先行的に導入したといったようなこともございますので,今,内容は存じませんが,ちょうど知財本部の別の会議でもECLが改めて論点に上がってきているところ,もしかすると将来的にこの分野というのが適用対象になり得るのかなと感じているところがあり,少し付言させていただきます。

以上です。

【上野座長】どうもありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。

ただいまのECLの点に関しては,何か報告書に追記されますか。

【大野著作権課長補佐】はい。これまでもいただいた御意見はほぼ網羅的に注釈に書いております。また具体的な書き方は御相談させていただければと思います。

【上野座長】分かりました。

ほかに,この第31条3項の件ですが,いかがでしょうか。よろしいでしょうか。

それでは続きまして,同じ第2章の第2節でございますが,31条1項1号関係の,図書館資料の送信サービスの実施というところにつきまして,13ページ以下ですね,御意見,御質問等ございましたらお願いしたいと存じますが,いかがでしょうか。

【大渕委員】後半もよくおまとめいただきましてありがとうございます。15ページ一番最初の括弧1,正規の電子出版等をはじめとする市場との競合関係につきまして,この後半部分については,この送信サービスを始めるための一番の大前提で,正規の市場と競合するようなものというのは,ある意味図書館も官ないしそれに準ずるものという面があり,民業圧迫になったり,権利者の権利を害したりするおそれがあるということなので,これは一番最初にピン留めすべき重要な出発点であります。これはただし書になるのかもしれないのですが,普通,我々がイメージしているただし書というのは,「ただし,何々に照らし,著作権者の利益を不当に害すること場合はこの限りでない」と,今,普通に各条でついているようなものであります。私はこれは,本格的なものというよりは,最後に念のために,細かく書き切れないが,利益を害する場合は権利制限してはいけないという安全弁的なものではないかと思っております。これが一般的なただし書であるのに対し,ここでは市場に悪影響を及ぼさないということが非常に重要なので,ただし書であってもより本格的なもの,例えば,「ただし,正規の電子出版等をはじめとする市場と競合する場合はこの限りでない」などと書く必要が出てくると思います。日本版フェアユースの逆のような内容をただし書の中に入れ込むと,権利者にとっても利用者にとっても漠然として,その他大勢のものと区別がつかなくなってしまいます。

思想としては,市場と競合しないという点が,このサービスにとっては非常に重要な出発点だと思います。書き方はいろいろあるかと思います。市場との競合がある場合――これは電子と紙といろいろあって複雑なので,そこは解釈に委ねますが,基本思想としては競合する場合は対象外であるということを,一般的なただし書に埋没させずに,きちんと何らかの形で外に出して明記したほうが,権利者にとっても利用者にとってもよいので,そこの点を工夫いただければと思います。

それから16ページにつきましては,前回,一部分が先ほどのような一般的なただし書に解消埋没されそうになったりしたので,大変懸念していたのですが,基本的には一部分性というのは原則としては残すが,例外をうまく認めることによって実質を図るということで,混乱が起きないようにうまく制御していただいていると思いますので,ここの点は賛成したいと思っております。

次に補償金につきまして,私は何度も申していますとおり,ノミナルな補償金ではなくて,実額的なものをきちんと出すことによって,その額を払ってもよいというユーザーにとっては非常に高いレベルのサービスが受けられるようになりますので,従前型の,包括的というかややノミナルな額の補償金ではなくて,単発のリアルな額だという点を今回出していただいているのは,非常に良いと思います。

その関係で,注41のエンフォースしやすい云々という点については,単発に一個ずつ計算していくということがうまくいくためには,これは法律で書くような話ではないのですが,貸出のときに,どの範囲のものは補償金の対象になるのか,あるいは料率など,司書さんが苦労しなくても,ぱっと出る補償金ソフトのようなものを組んであげない限りは,きっと計算が大変になって,貸出業務が渋滞してしまいますので,そこのところは権利者の方にも協力していただいて,うまくソフトを組んでいくことが,この制度が円滑に進むための鍵になるのではないかと思っております。

取りあえず以上です。

【上野座長】どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。

では前田哲男先生,お願いいたします。

【前田委員】先ほど大渕先生がおっしゃった第1番目の点につきまして,今,報告書案の15ページでは,ただし書を置く場合の,「ただし,何々に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は」の,この「何々」のところは,「・・・」になっております。報告書としては,この箇所は「・・・」でもいいのだと思うのですが,実際に条文を検討していく際には,大渕先生がおっしゃったように,正規の市場との競合の観点が考慮要素とされることを明示するという手段が一つ考えられるのかなと思いました。

それから,報告書案から少し外れてしまうかもしれませんが,もしかしたら,ただし書ではなくて,主張立証責任で言うと逆となりますが,「権利者の利益を不当に害しない場合には・・・を行うことができる」というような,逆の書き方もあり得るのかなと思いました。

以上です。

【上野座長】どうもありがとうございました。

【大渕委員】私も,市場とのバッティングがない限りで出していくという思想ですから,むしろ積極に出していただいたほうがよいと思います。それであれば,ただし書というよりは,普通の意味での積極要件という感じになってくるかと思いますが,それで明示していただいたほうが,結局は中途半端な形にならずに,非常にクリアな形で思想が示されて,かえって権利者・利用者両方にとってよいことになるのではないかと思います。

【上野座長】ありがとうございます。ほかにはいかがでしょう。

福井先生,お願いします。

【福井委員】ありがとうございます。ただいまの両先生の御意見について,もし十分にそのような積極的要件を協議して,同意に至って,そして報告書に反映するという時間があるのであれば,私も異論はないところでありますが,今回はスピードを重視して,大枠を報告書で定め,そして実際の運用については第三者を交えた現場のガイドライン等に委ねることが想定されているように思います。その点で考えると,今回は今の報告書,この形が,私は適当ではないかと感じました。

また,書き方を積極に改めると,先ほど来言及があるとおり,挙証責任の転換という問題を生じまして,その点からも,現在の報告書の記載の線が,今回の時間の中での最適解ではないかなと感じました。

以上です。

【上野座長】どうもありがとうございます。

田村先生,お願いします。

【田村委員】いつも福井先生とかぶりますが,私も大渕先生,前田先生の御意見ごもっとものところが大変あるように思うのですが,今回,報告書全体が,合意が取れていないところは全部注記というふうになっておりますので,貴重な意見ですから注にしていただくというのが,多分よろしいのではないかと思います。

以上です。

【上野座長】ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。

【大渕委員】先ほど細かくて落としてしまったのですが,全然先ほどとは関係のないところ,14ページの注28につきまして,これだけぱっと見ると,利便性が向上して,よさそうにも思うのですが,権利者から見ると,図書館が1冊だけ買って,それを多数の人に見せることによって1万部ぐらいの売上げが落ちるという面もあります。それでも図書館としては公益のためにやっているわけですが,この注28だと,自分は本を買わずに,本を買ったほかの図書館から送ってもらって,それを送信するということになると,最低限1冊買うというところすらなくなってしまいます。そこのところはやや気になるので,例えばですが,このようなサービスをするのなら必ず1冊は買うとか,何かしらの措置が必要ではないかと思います。

図書館は,もともとは自分が持っている本を貸す,または送信するということだったのに,これは持たない本を貸す,送信するというところがやや気になります。ここのところは,図書館間で貸し借りした場合には,当該ニーズは貸し借りで賄うとしても,1冊は買っているという話も聞くので,何かしら利益を配慮する点がないといかがかなという感じがいたします。送信ではこの点が強く出てくると思います。

【上野座長】ありがとうございます。

竹内先生,お願いします。

【竹内委員】今の大渕委員の御意見はもっともな点はもちろんあるわけですが,しかしながら,現実的な問題として,全ての図書館がニーズとして発生したものを全て1冊買えるという状況には,恐らく世界中を見てもない状況だと,私は理解しております。

この図書館間での資料のやり取りということにつきましては,従来から当事者間協議でもいろいろなことが検討されておりますが,例えば特定の資料に対して,一定回数の複写のリクエストがあったような場合には,その資料を買うよう努めるといったようなことで,図書館と権利者側との意見の合意をしているようなこともございますので,そのような考え方は既に前提としてあるということで,今回のこの送信の問題が議論されたというふうに御理解いただければよろしいのではないかと思います。

以上です。

【上野座長】ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。

生貝先生。

【生貝委員】よろしいですか。ありがとうございます。まずは,先ほど少しお話に出ていた,積極要件に改めるかというところに関しては,司書の方々を含めて,非常に多くの方々の刑事を含めた責任に関わるところでございますので,もし書きぶりを改めるのであれば,大変入念な検討が必要なところかという意味で,福井先生と同意見かと思います。

他方,その上で,やはりしっかりと権利者の方々の利益というものを守っていかなければならない。そういったときに,例えば具体的なところに関しては,例えば現行法ですと,既にお書きいただいているとおりだと存じますが,一部分要件に関して,ある一定の資料は,これから政省令等を含めて全てを可能にしていくということは,グローバルスタンダードに合わせるという意味でも,望ましいところだと思います。

他方でまた,1冊の300ページの書籍の半分までを送信可能にしているように読める書きぶりをしている国というのも,実はこれは国際的にも全く見当たらないわけであります。こういったことについては,やはり先ほどの市場への影響というものを,当然にただし書の中でも読めるように,しっかりと新しいガイドラインで明確化していくということをやっていくことが必要なのではないのか。

そのようなときに一つ,関連しての意見ということになるのですが,こちらの15ページの最後のところにあるとおり,幅広い関係者でのガイドラインを策定していくということ,ここに利用者や流通業者も含めていただいたマルチステークホルダープロセスというものは非常に望ましいと思います。

ここについて,共同規制の研究者,ソフトローの研究者として,やはり一言追加しておかなければならないのは,非常にいろいろな共同規制,ソフトローというものを見てきておりますが,やはり政府の強いリーダーシップ,関わりや支援なしに,安定したソフトローが難しい問題について形成され,維持される状況というのは,これは普遍的にかなり限られているということでございます。 殊にこの部分に関しましては,やはりしっかりとした出版社様,権利者様,そして図書館等の団体というものもありますので,かなり安定的なやり取りが期待されるところだとは思うのですが,やはり,ある種の広い意味での立法というものを,完全に民間に委ねるというわけではなくて,そこについてしっかりと政府がモニタリングや,あるいは,ある種のガイドラインの合意形成というものが成功裏に行かなかったときに,しっかり関与していくことで権利者の利益と利用者の適切な利用の範囲というものを実現していくという,そのようなことは見える書きぶりにしておくことが,このただし書に委ねるという中でも望ましいのではないかと感じたところであります。

以上です。

【上野座長】どうもありがとうございます。

大渕先生,お願いします。

【大渕委員】先ほどのところに戻って恐縮なのですが,原則例外をよく考えますと,今は送信というのは全くできないところを,新たに送信をしようと言っているわけです。その際に,市場と競合するかどうかを関係なしに全部送信できるのが原則で,例外的に競合するものだけを外すというのは,今ゼロから始めているところからいくといかがかなと思います。

むしろ,落ち着きがよくて当事者の納得を得やすいのは,現在は全くこういう形では送信というのはできない状態にあるわけですが,問題のないものはやるというところで,100あるところから削るというよりは,今ゼロのものをどうにか上げようとしていることなので,そうなると,原則全部できるというのは,物の考え方としては,やはりバッティングせずに,送信しても構わないようなものを送信するというほうが筋だと思います。

全部が全部送信できるのが前提で,バッティングするものだけを落とすというのは,今,既に100あるところから削るという議論だったら分かるのですが,今はゼロなものですから,慎重に,手堅いところから積み上げていくほうが筋だろうと思います。

【上野座長】ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。

茶園先生,お願いします。

【茶園委員】どうもありがとうございます。大渕委員が指摘されました2点についてですが,まず,12ページのところですが,図書館とは自分が保有している書籍等を他の者に対して提供するのであり,そのため,1冊は有している必要があるのではないかと言われました。貸与するとか,紙のコピーを渡すということであれば,確かにそうで,今まではそうだったと思いますが,デジタルで情報を提供するという場合においては,1冊有することを求めることにどのような意味があるのかについては分かり難くなっています。

将来的には,図書館がどのようなものとなり,いかなる機能を果たすかについてきちんと考えなければいけないと思うのですが,現在は,今ある図書館の活動の延長線上で物を考えており,そうせざるを得ません。私は,図書館が1冊は有している必要があるということに反対しているわけではないのですが,そのことは,現在の状態に基づいてそのようになるのであり,将来的にどうなるかは分からないということを認識しておくべきと思います。

次に,15ページのところで,電子出版との関係に関してですが,電子出版と競合する場合に認められないかと言われると,常にそうではないだろうと思います。今は本が通常の出版がされていても,権利制限が認められていますから,紙の場合であれば競合の場合でも認められ,他方,電子の場合は全く認められないとすることは,ちょっとおかしいのではないかと思います。

ただ,電子の場合には,いろいろ紙とは違いがあって,例えば紙の場合はチャプターごとに利用されるということはできないでしょうが,電子の場合にはそれが可能になります。そのような違いから,結論に違いが生じることもあると思います。

ともかく,様々な事情を考慮して決定されるべきであり,それは,現実にビジネスをやっておられる方や利用している方とかが協議されることが必要であり,有益であると思います。そのため,ただし書とするか,本文にするかはともかく,まずは緩やかに定めておいて,実際にはどれぐらいのものが許されるかは,関係当事者間の話合いによって,ガイドラインなりで決めることが望ましいでしょうし,実施してみて不都合が生じたら,またそこで協議するというようにすることがよいのではないかと思います。

以上です。

【上野座長】ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。

お願いします。

【大渕委員】先ほど申し上げた注28というのは,現在の図書館からどれだけ乖離するかということで,もちろん図書館というよりはインフォメーションセンター等になるのでしょうが,そのようなものかどうかというイメージも関わってくるかと思います。私が想定しているのは,比較的乖離の少ない状態で,現在は,自分が蔵書を持っていない限りは,借りてきたりしない限りは貸せないということになっているわけですが,来たら見せてあげる,コピーさせてあげるという代わりに,現在ある図書館サービスの利便性を高めて,そこから送信に入るというのが出発点です。

これは現在の20年モードなので,30年モードだったら,そもそも本は買わなくて,蔵書は持たずに送信だけする送信図書館みたいなものが出てくるかもしれません。しかし,今は20年モードというか21年モードで考えていますので,現在やっている有体物サービスを送信で代替することも認めるということになると,やはり,持っていないところが送信するというのは,利益の関係で疑問だろうということです。

それはもう発想が古くて,これからは蔵書図書館の時代ではなくて配信図書館だということになったら別かもしれませんが,私としては,取りあえず現実的な体制としては,現在のものを軸に,それの利便性を高めるという現実的なアプローチを取ると,先ほどのようなことになるという話であります。

【上野座長】ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。

報告書の21ページ目までということでございますが。いかがでしょうか。特段ございませんでしょうか。

では,よろしいでしょうか。それでは最後のところでございますが,第3章のまとめというところで,22ページ目につきまして,御意見,御質問ございましたらお願いしたいと存じますが,いかがでしょうか。

よろしいでしょうか。最後のページです。

その他,全体を通しまして御発言がございましたらいただきたいと存じますが,いかがでしょうか。

よろしいでしょうか。事前に御意見もいただいているかとは存じますが。

生貝先生,お願いいたします。

【生貝委員】すみません,もし加えていただければという程度なのですが,特に学校図書館を「図書館等」に加えるかについては,まさに当事者の方々の協議が進んでいるということですので,そちらを見守って,しかるべく御対応いただければと思うのですが,私自身,あまり学校図書館には詳しくないので,皆様の議論をお伺いしながら勉強もしていたのですが,やはりいろいろ考えてみても,対象にすべきでない客観的に正当化可能な,説得力の強い理由というのは見当たらないというのが,私自身の考えでございます。

そういったときに,もし可能であればと申しますのは,特にここで書かれている,アクティブラーニングなど旧来の枠にとらわれない主体的な学習というものが重視されているということ,これは全くおっしゃるとおりで,それをこれからデジタル環境,オンライン教育の中でもどのように実現していくかというのが大変重要になってきているのだと思います。

そして,このことというのは当然,初等・中等・高等教育全てに関して言えることでございます。私自身,今回,この取組というのはあくまで図書館,31条に関わることでございますが,やはりそれはどういうレベルであっても,学校での学びというもの,そして今言われるオンライン教育,GIGAスクールでありますとか,そういったことと非常に密接に関わりの強いものだというふうに考えております。

まさにこれも,今回取り組んでいくということの意味の中に,ぜひどこかに,できたら,オンライン教育やデジタル教育の拡大などに,GIGAスクールという言葉は使っても使わなくても結構なのですが,触れていただくことができると,やはり政府全体として,この社会全体の,特に文教分野のデジタル化を進めていくこととの関わりでも,非常に有意義なのではないかと感じているところです。

以上です。

【上野座長】ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。

よろしいですかね。それでは,本日はこれぐらいにいたしたいと存じます。

本日の議論を受けまして,最終的な報告書を作成することといたしたいと存じます。本日頂戴いたしました御意見につきまして,これを踏まえた具体的な追記や修正につきましては,事務局のほうと委員の先生方で御協議いただけると思いますが,最終的には,これはあまり言いたくないのですが,私のほうに御一任いただければと存じますが,その点,御異議ございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【上野座長】ありがとうございます。それでは,そのように取り扱わせていただきます。

本日は最終でございますので,最後に矢野次長から御挨拶をいただきたいと思います。

【矢野文化庁次長】よろしいでしょうか。次長の矢野でございます。今期の本ワーキングチームを終えるに当たりまして,一言御礼を申し上げたいと思います。

委員の先生方におかれましては,非常に御多用な中,御協力いただきまして誠にありがとうございました。

このワーキングチームでは,今般の新型コロナウイルスの感染症の流行に伴う図書館の休館等によりまして,インターネットを通じた図書館資料へのアクセスについてのニーズが顕在化したことを踏まえ,図書館関係の権利制限規定をデジタル・ネットワークに対応するものとすることについて,集中的に御議論いただきました。

皆様方による前向きかつ丁寧な御議論の結果,入手困難な資料へのアクセスの容易化,また図書館資料の送信サービスの実施という2つの重要課題につきまして,国民の情報アクセスの充実と,権利者の権利利益保護のバランスが取れた,きめ細かな対応案をお示しいただいたと受け止めているところでございます。厚く御礼申し上げます。

今後,法制度小委員会と著作権分科会での議論を経まして,最終的な報告書が取りまとまりましたら,その内容に沿って,今日のまとめにも書かれているとおり,早急に法整備等の対応を進めてまいりたいと考えております。まだ残された課題も幾つかございますので,引き続き御指導を賜ればと考えております。

最後になりましたが,委員の先生方に,御多用にもかかわらず多大な御尽力をいただきましたことについて,改めて感謝申し上げまして,私からの御挨拶とさせていただきたいと思います。本日はどうもありがとうございました。

【上野座長】どうもありがとうございました。

本日の議論の内容を基に報告書取りまとめまして,今後予定されております法制度小委員会で私から報告させていただく予定でございます。

最後に事務局から連絡事項がございましたらお願いいたします。

【大野著作権課長補佐】これまで大変活発に御議論いただきましてありがとうございました。今,座長からございましたとおり,取りまとめがされた報告書については,今後,法制度小委員会で御説明をいただきまして,その後のプロセスに進んでいくことになります。また随時,状況については皆様方にも御報告申し上げたいと思います。引き続きよろしくお願いいたします。

【上野座長】どうもありがとうございました。

このワーキンググループは大変短期間で,5回にわたりまして長時間の御議論いただきまして,委員の先生方には私からも御礼申し上げたいと思います。私自身はあまり意見を言う機会がございませんでしたので,あまり貢献できませんでしたが,先生方の御協力には感謝したいと存じます。

また,事務局の御尽力にも感謝をいたします。

それでは,これで第5回のワーキングチームを終了させていただきます。本日はありがとうございました。

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