「サステナブルファイナンス有識者会議」(第4回):議事録

1.日時:

令和3年3月2日(火曜日)10時00分~12時00分

【水口座長】  皆様、おはようございます。ただいまよりサステナブルファイナンス有識者会議第4回の会合を開催いたします。本日も御多用のところ御参加をいただきまして、誠にありがとうございます。
 
 前回は2月18日でした。第3回ですね。その後、海外でいろんな動きがございました。2月24日にはIOSCO(証券監督者国際機構)がステートメントを出しました。IFRS財団によるSSB(サステナブル基準審議会)の設立を支持する、その際GRIやIIRCなどの既存のフレームワークを活用することでランニングスタートが切れると、こういうことが言われていました。また、クライメートファーストアプローチを支持するけれども、一方で、広範なESG課題に広げていくべきだとも言っております。
 
 同じ2月24日にアメリカではSECがステートメントを公表して、Form10-Kなどの法定書類の中での気候変動関係の開示について、スタッフがレビューをするということを言いました。
 
 25日には、ドイツ政府の、ドイツにもサステナブルファイナンスコミッティーというものがあるのだそうですが、このドイツのサステナブルファイナンスコミッティーが報告書を公表して、31の提言を示しました。その中では、全ての金融商品のサステナブルリスクと機会をレーティングするとか、サステナブルリテラシーを高めるためのイニシアチブを始めるべきだとか、カーボンプライシングや開示の充実など、様々な提言をしています。
 
 こういった国際的な動きも様々出ておりますので、こういったことにも目配りをしながら、こちらの議論も進めていければと考えています。よろしくお願いいたします。
 
 本日も発言するときだけミュートを解除していただきまして、発言されない間はミュート設定にしていただくようにお願いいたします。
 
 本日のテーマは、「金融機関によるサステナブルファイナンスの促進とリスク管理」ということです。もちろん、このサステナブルファイナンスの促進とリスク管理というのは表裏の関係ですから、1回のテーマになっているわけですが、そうは言いましても、サステナブルファイナンスの促進側の議論とリスク管理側の議論と2つあるのかなと考えています。
 
 本日は、藤井様、吉高様、全国銀行協会から林様、生命保険協会から中村様、そして日本損害保険協会から半田様に御報告をお願いしております。当初御連絡したやり方と少し順番を変えまして、前半にまず吉高様と全銀協の林様から御報告をいただき、その後11時ぐらいまで議論をしたいと思います。次に藤井様、そして生命保険協会の中村様、損保協会の半田様からお話をいただき、さらに12時まで議論する、このような順番で進めていきたいと思います。
 
 といいますのも、内容的に機会側の話といいますか、投資の促進の話と、リスク管理の話をある程度分けて議論してみようと、こういうことであります。
 
 それでは最初に、吉高様から御報告をお願いしたいと思います。吉高様、よろしくお願いいたします。
 
【吉高メンバー】  ありがとうございます。では、よろしくお願いします。私のこれまでの経験に基づいた個人的な考えを今日お話しさせていただきたいと思います。
 
 まず、今回のプレゼン内容を考えるに当たってEU、米国、日本の状況を少し整理しました。EUではパリ協定やSDGs達成のために、資金導入に向け、金融セクターのアクションプランを立てて、タクソノミーをつくりました。先ほど水口先生からもお話ありましたけど、米国では、SASB、グリーンエネルギー投資のグリーンボンドの投資家への優遇措置があり、またプライベートエクイティーが大きいということもあって、市場を中心にグリーンファイナンスが動いていると思っております。
 
 では、間接金融が中心である日本のグリーンファイナンス市場について考えるに当たって、前回水口先生からご提示があった論点整理のWhy、Who、How、What、これらに基づいて考察してみました。
 
 まず「Why?」ですが、昨年末、政府が発表したグリーン成長戦略への資金導入について、焦点を当ててみました。
 
 この枠組みでは、企業の現預金やESG投資が資金源として期待をされていまして、重点技術分野を同定し、それらの導入工程が示されています。どんな新技術でもこれらの工程は同じかと思いますが、実際、民間金融機関が入るとしたら、この3と4の工程かと思います。政策としては、今回NEDOへの2兆円基金の組成、税制規制改革などが挙げられていまして、民間資金導入にはESG投資を視野に入れ情報開示ルールが示されています。これらの政策はデットにおいて、発行体の評価につながるので重要だと思っています。また、後で触れるカーボンプライシングについてもこの規制改革の中に入っています。
 
 3ページの表は、グリーンファイナンスの担い手についての全体像をまとめてみました。赤字の箇所は、グリーン成長戦略の中で言及されている資金関係の部分です。環境事業から見ると、直接的に資金が来るのは、使途のはっきりしたローンやボンドのようなデットのほうかと思います。また、排出権の価格付けも事業に直結しますので、青字で示している分野を、本日は中心にお話をさせていただきたいと思っております。
 
 本日のプレゼンの要点は4つあり、まず、カーボンニュートラルの実現に向けたデットファイナンスでの課題、2点目は排出権市場を金融機関から見るとどのように活用できるのか、3点目は未上場、非上場向けのファイナンスの重要性、最後に地銀へのエンハンスメントについても少し触れたいと思っております。
 
 「How?」については、既存の温室効果ガス排出削減技術のファイナンスについて5ページでまとめております。私は、20年近くこの分野に関わってきて、これは国内外共通するところでございますけれども、既存の技術に対するファイナンスは、基本、キャッシュフローの有無や規模、リスク、返済原資によって手法が変わります。これらのファイナンスは、企業側と金融機関の資金のコンビネーションと言えるので、基本的にはスライドの右下のファイナンスの要件を満たす必要があります。これが適用できるものは赤枠で示しております。これは前回の会議で林様も説明されていたトランジションを起こしていく分野であり、金融機関から見れば、これまでのファイナンスの手法で対応できる範囲として整理をしております。
 
 6ページで示しているのはグリーン成長戦略で期待される産業・技術分野、つまり既存ではない分野です。14分野でイノベーションの技術が示されています。今後30年、これらの対象技術のうち、実際デットが参入できるのはどれなのか。ここでは、イノベーションの技術しか挙げられておりません。トランジションの技術、例えば、エネファームのような発電技術は、商業ベースにはあるが、さらなるイノベーションを起こすにはスケールアップが必要で、コストの課題があり支援の必要な技術です。しかし、このような技術が挙げられていませんと、金融機関にとっては盲点になるかと思います。また、先ほど2ページ目で示した1から4の工程のうち、金融機関は3と4で入ると申し上げましたが、本当にその参入ポイントで間に合うのかということもあろうかと思います。
 
 7ページではプロジェクトファイナンスで言われるリスクを気候変動の事業に絞ってまとめております。赤字は特に特徴のあるリスクで、例えばFITの変更のような政府の支援策の変更によるキャッシュフローの予見性の欠如、炭素価格に係る規制などの不安定性での資産価値の算定難しくなる、技術の進歩や新しい技術に金融機関はなかなか精通していないためちゃんとした資産価値を評価できるのか、こういった点が環境ファイナンスや気候ファイナンスにとって大きな課題となるのではないかと思っております。
 
 また、注目しないといけないのは、排出権かと思います。排出権には、キャップ&トレードと、プロジェクトベースの炭素クレジットという2つの種類があります。
 
 8ページの左側の図は、欧州の2つの排出権市場の価格の推移を表しており、黄色い線がプロジェクトベースの炭素クレジットの価格で、青とグリーンがEU-ETSのキャップ&トレードの価格の推移になります。赤く示している期間は京都議定書第1約束期間です。この間、排出権市場との関係で、欧州では石炭火力からLNGにかなりシフトしたということがございました。右側の図は、左の赤で示した期間の、リーマン・ショックを挟んだプロジェクトベースの炭素クレジットの市場の参加者の度合いを示していますが、御覧のとおり、リーマン・ショック時には、多排出事業会社の参加が減り、一方で金融機関の参加ボリュームが増えています。
 
 これは何故かと申しますと、当時の金融機関へのインタビューによると、排出権取引や、炭素クレジットビジネスが金融ビジネスになったということがありました。というのは、プロジェクトベースの炭素クレジットがキャップ&トレードの排出権の価格に比べ低かったため裁定取引を行うなど、金融機関の本業としての機能で事業会社から重宝がられたという経緯もございました。
 
 一方で、日本の状況を9ページに示しています。日本の場合、なぜ炭素クレジット市場に参加するかというと、自社の排出のオフセット、もしくは炭素クレジットによるビジネスの促進のためで、対象事業もフロンとかメタンガスが中心で、火力、再エネは多くありませんでした。
 
 一方で、参加主体を見ていただくと、金融機関はわずかです。ということは、日本の金融機関はこういった排出権取引の経験が乏しく、カーボンプライスの知見もあまり多くないということが欧米の金融機関との大きな差ではないかとは思っております。
 
 10ページに示す通り国内ではJ-クレジット市場というのがございます。今、J-クレジット市場は、基本的に温対法の遵守対応に使われておりまして、CDPやSBTにも使用は可能なので、各企業で使われています。ここで種類別に見ていただきますと、J-クレジットの支援財源がエネルギー特別会計であり、植林やメタン回収といった事業は非エネルギー起源のCO削減に使われないので、それらの事業のクレジットの創出規模は非常に小さいです。
 
 日本の企業がインターナルカーボンプライシングを設定する際に参照するのは、非化石証書、J-クレジットの価格、ICEのような海外のカーボンプライスの指標となります。金融機関が排出権を無形資産の財として取得する原価を決定する際、当時非常に苦労していました。つまり、排出権やカーボンクレジットを取り入れる際は、この点は相当の工夫が各金融機関に必要になってくるだろうと思っております。
 
 そこで、金融機関が炭素クレジット(排出権)をどのように見るのかということを11ページで整理してみます。レンダーからの視点で言えば、基本的に排出削減量が定量化、可視化されて、貸付けのインパクトが把握できればいいということなのです。そうでなければ、金融機関が排出権創出事業で自らのカーボンニュートラルに活用するか、取得した排出権をお客様に売却して貢献していくことがあります。ただ、これは信用力のある排出権が転々流通する仕組みがあることが前提でして、これが欧米の状況です。日本ではそういう環境は整っていません。
 
 そして、事業者が排出権を売却することによる新たなキャッシュフローの獲得に着目した融資判断というのも可能ですが、この排出権価値の定量化が重要になります。
 
 あと、投資家からの視点はレンダーとも類似しますが、例えばグリーンボンド投資のインパクトをどう評価するか。その際はインパクトが把握できればよいので、それがない場合は、前回の会合でも少しお話ししましたけれども、排出権付きの債券を投資家として購入することにより、同様な効果が得られるということはあろうかと思います。これは実際に行われております。
 
 最後に、12ページでは課題と対応策という点からまとめました。まずもって金融機関が環境や気候変動、サステナブルの課題に対して感度が低く、知識がないので、基礎的知識の会得というものをある程度義務化しないと、世界の感覚に追いついていかないのではないかということを危惧しています。
 
 同時に、先ほど申し上げましたけれども、新たな技術に対して実証(proven technology)されなければ金融は動きませんので、将来性の目利き力もありません。そこで、新たなイノベーションにファイナンスをしていくためには、2ページ目の4つの工程のうち3つ目に早く移行していくために、2つ目の段階から民間金融を巻き込むことがあり得るのかなと思っています。これは、途上国でのリープフロッグ政策として使われているケースです。
 
 また、イノベーションの新しい技術に対して、例えば一部でもよいので、何らか政府保証を付けるというのもあり得るのかなと思っています。
 
 そして、カーボンプライスです。欧米に比べ、先ほど申し上げたように日本の金融機関に知見があまりありません。例えば三菱UFJ銀行でブラックロックと組んで、インターナルカーボンプライシングを活用したインパクト投資のファンドを組成していますけれども、このようなインパクトに対して資産価値を図るための指針があれば、金融機関全体の促進にもなり得るかと思っております。
 
 それにも関連しますが、グリーンプロジェクトなどのインパクトの把握に関連するインセンティブ不足が課題となっていると思います。債務者の格付と案件精査を基にした融資審査において、金融機関がサステナブルファイナンスに関連する資金使途の場合、リスクウェイト、クレジットなどインパクトを評価するインセンティブとなる仕組みづくりや指針が提示されれば、金融機関そのもの、そして例えば人事評価に入れることもできて、個人のインセンティブにもなるかとは思っております。
 
 イノベーションを起こすベンチャーや中小企業への新たな取組に対して資金を流す仕組みが要ると思っています。これまでにない事業価値や成長性の価値を組み込む金融のバリエーションを促進するための指針があるとよいと思います。例えば、炭素素材技術のベンチャーであるスパイバーに対して、無形資産を評価して資金調達をした事例がありますが、このような非上場、未上場に対する評価指針があれば、イノベーション技術などのファイナンスに踏み出すことが可能かと思います。
 
 そして、以前、渋澤様からも御指摘ありましたけれど、地域金融機関へのエンハンスメントが必要だと思います。現在環境省中心に支援されておりますが、中小企業や非上場企業のカーボンニュートラルのモチベーションづくりに対して、金融機関がサービスできるような指針があるとよいと思います。特に、気候変動対応は地域の強靱化に重要で、企業誘致などのビジネス機会の創出に貢献するものであり、地方創生につながります。コンサルティングサービスを手がけるということはありますが、先ほど挙げました、4番目の課題とも関係するかと思います。具体的なファイナンスやグリーンボンドの活用などによる資金循環づくりなどの指針があるとよいと思っています。
 
 最後に参考として、これまでの世界の金融イベントと気候変動の交渉の経緯を年表にまとめたものを付けています。御覧のとおり、急に世界がグリーンに動いてきているわけではないということがお分かりになるかと思います。
 
 駆け足でございましたけれども、以上でございます。ありがとうございました。
 
【水口座長】  ありがとうございました。デットで供給するものとエクイティーのもの、既存技術へのファイナンスとイノベーションへのファイナンスなど、いろいろな視点をいただきました。また、排出権取引の重要性についても御指摘いただきました。
 
 それから、特にリテラシーですよね。リテラシーが足りないというのは、先ほどドイツの提言でも出ておりまして、リテラシーを高める施策が必要ではないか。
 
 それから最後に、地域ですね。地域金融機関へのエンハンスメントというのも、非常に重要な御指摘だと思っております。
 
 それでは次に、非常に関連した話になろうかと思いますが、順番変わって申し訳ありませんけれども、全国銀行協会の林様からプレゼンを、5分ぐらいと聞いていますけども、よろしいでしょうか。5分ぐらいでお願いできればと思います。
 
【林(尚)メンバー】  よろしくお願いいたします。林でございます。
 
 それでは、1ページ目から御覧ください。まず、銀行に対して、金融安定理事会をはじめとした国際基準設定主体、あるいは各国の監督当局から寄せられている期待、こちらを示してございます。3つの柱がございますが、いずれも銀行の気候変動対応には欠かせない要素、このように認識をしております。
 
 次のページ、右下2ページでございます。一方で、資金動員の足元の取組でございますが、3メガはそれぞれ環境社会問題解決のために既にアクションを取ってございまして、サステナブルファイナンスの目標も設定してございます。2030年までの合計が55兆円でございます。それぞれの銀行でも一定の進捗をみていると理解をしてございます。
 
 右の事例もございますが、気候変動に取り組むお客様に対しては、お会社自身が設定された環境目標等の達成状況に応じた貸付条件の設定、これを行うサステナビリティ・リンク・ローンの提供、こちらのほうも進んでございます。
 
 右下3ページでございます。3メガは特に再生可能エネルギー事業のファイナンスに積極的に取り組んでまいりました。左の表にございますとおり、世界のトップレベルの地位を占めてございます。
 
 こちら左側はリーグテーブルの御説明ですが、どのようなインパクトをもたらしたかという話になったとき、右側、これは三菱UFJ銀行個別行の単独の試算でございますが、再生可能エネルギープロジェクトを通じたCO削減の貢献は、10年累積で1億3,000万トンございます。これは、日本人の1,500万人分の1年分の排出量に相当すると、このように試算をしてございます。オランダの人口1,700万人と聞いてございますので、これに相当するのではないかということも想定しているところでございます。
 
 右下4ページでございます。一方で、気候変動リスクの管理でございますが、金融安定確保の観点から、銀行は各国の監督当局から既存のリスク管理の枠組みに気候変動の要素を取り込み、財務健全性維持と必要な戦略立案につなげていくこと、これを求められているということでございます。これはこれまでのリスク管理と異なりまして、超長期性、50年とか70年とか、あるいは不確実性から様々な課題が存在してございます。足元では国際議論にもアンテナを高く参画しながら、当局と御協議させていただきながら対応を模索している、そういう段階にございます。
 
 右下5ページでございます。リスク管理の一環として既に発出しているところで申し上げますと、3メガは、例えばファイナンスにおいては、環境や社会への配慮を実現するための枠組みとして、投融資に関するポリシーを定めてございます。ここにお示ししているのは石炭火力発電の例でございますけれども、別添、一番後ろのページには、ほかの欧米各行との比較、こちらのほうもお示しをしているということでございます。
 
 なお、3メガの石炭火力発電の例に関して申し上げますと、左下にございますが、当該セクターへの貸出金残高は2040年をめどにゼロになっていく、そういった削減目標の設定も行っているということがございます。
 
 6ページ目でございます。一方で、銀行の役割を考えましたときに、間接金融という立場でございますので、借手の皆様には期限の利益を差し上げている、そういう形でございます。長期的な関係を築く中で持続的な成長を支援する役割、これを果たしてきたと考えてございますので、市場での売却等は、貸出債権については想定もしてございません。安定的な資金を提供するということのために、社債等とは商品性も大きく異なってございます。
 
 こういった中で、様々なステークホルダーの皆様の期待にもお応えすること、これを考えながら、長期的な視点に立って、お客様へトランジションを促すこと、これをどのように立てつけていくかということが、グリーンへの移行を目指し、ネットゼロの貢献を目指していく上でも大変重要なテーマである、こういう認識でございます。
 
 よって、7ページ目でございますが、今後の課題・問題認識でございます。2050年のカーボンニュートラルに向けて、ここの丸にございますような各点、こういった課題があろうかと思っております。
 
 まず、既にある貸出資産、これを持ち続けながら新たなファイナンスも取り組んでいくという二正面対応をしていかなければならないという点、基準が存在しない中でのESG要素をどう審査に盛り込むかという点、非財務情報の開示の充実化をいかにどのような方法で実現するか、また、お客様と銀行が持続可能な形でサステナブルファイナンスに取り組んでいくためには、必要な適切なリスクリターンを確保するという点が重要かと思っております。
 
 加えて、インパクトの計測手法等は、科学的根拠に基づいた共通化された手法、これを作っていくということが非常に重要というふうに思ってございます。あるとき、政策の転換や規制、ストレステストの導入によって、銀行の貸出債権が座礁資産だと、こういうふうにならないように、そのようなリスクを避けるということに関して、綿密なコミュニケーションが必要であると、こういったことは従前から申し上げているということでございます。
 
 8ページ目でございます。最後に、2050年ネットゼロに向けて、銀行としてきちんと貢献をさせていただくということのためには、やはり政府によるエネルギー基本計画の提示、産業界の対応方針の決定、そこに個社の対応方針が連なり、私どもとしても、しっかりとそこにお応えしていくという、そういったループが回ること、これが重要だと考えてございます。
 
 今後もきちんと皆様と協働、積極的に参画させていただきたい、このように考えてございます。私から以上でございます。
 
【水口座長】  ありがとうございました。3メガバンクを中心に大変積極的に取り組まれているということがよく分かります。
 
 また、最後の5-1でお示しいただいた今後の課題意識のところも大変明確で、そのとおりだなと思っております。特に、インパクトの計測手法などもきちんとこれから取り組んでいくべきところだろうと思いますし、これと関連して、ESGの審査基準をどう取り込んでいくのかというようなことも問題になろうかと思います。
 
 それでは、ここまで非常に関連した2つのお話を伺いましたので、ここで一旦御報告を切って、皆さんと議論していきたいと思います。特にデットファイナンスの部分、既存技術への投資とイノベーションへの投資、それから地域金融の話。今、林様からは割とメガバンクのお話を中心にいただきましたけども、間接金融中心の日本において地域金融の果たす役割というのもあるのかなと思います。その辺の議論。そして、クレジットですよね、排出権の議論というのがございました。
 
 この辺について皆様からの御意見をいただきたいと思います。今日は発言中心でいきたいと思いますので、チャットに書いていただいても構わないんですけども、できるだけ、ぱっぱっと声を上げていただければと思います。それと、お1人一、二分ぐらいでお話しいただけるとありがたいです。
 
 それでは、どなたからでも感想、コメント、御意見、どんなことでも結構です。いかがでしょうか。お願いします。
 
【渋澤メンバー】  渋澤です。ありがとうございました。
 
 吉高さんに排出権取引について御質問があります。キャップ&トレードとプロジェクトベースという二つのやり方で、キャップ&トレードでは、キャップをどの水準に設定するかという複雑性や不透明性があるかと思います。素人的に考えると、プロジェクトベースのほうが簡単に見えます。
 
 それで、例えば、森林ファンドが、これから30年間に何百万トンぐらいのCOを吸収できてクレジットが生じます。そのクレジットに買い手が現れたときに、COの吸収の数量は第三者機関みたいなものが存在して、認証するプロセスが既に設けられているのですか。
 
【吉高メンバー】  あります。算定方法もありますし、第三者認証機関が認証できます。オーストラリアではそのようなファンドがあり、吸収源のオフセットを資金源に森林保全や植林に資金を流すという手法もありました。今、オーストラリアではCCSをそのような手法で進めようとしています。
 
【渋澤メンバー】  そのような体制が既にそろっているのであれば、キャップ&トレードより、これからプロジェクトベースの市場規模のほうが大きくなるように見えます。
 
【吉高メンバー】  日本は排出権市場のインフラがありませんが、他国はそのインフラがあり、規制により排出削減の効果がでています。しかし、世界的には、タトバ、航空業界ではカーボンクレジットでの排出オフセットの国際的な法制度もできており、このような需要が増えてきています。マーク・カーニーさんが主体となった、TSVCM(Taskforce on Scaling Voluntary Carbon Markets)が進んでいるというのがありますが、これもクレジットベースです。おっしゃるとおりのことが背景にあると思います。
 
【渋澤メンバー】  ありがとうございます。
 
 もう一つ、全国銀行協会にも御質問1つだけお願いしたいです。先ほど吉高メンバーのご発表では、アメリカはPEファンドが多くて、日本は間接金融が多いというご指摘はそのとおりだと思います。ということは間接金融が中心になっている日本の場合は、融資先のキャッシュフロー等がしっかりと見えていないと融資が難しくなり、アーリーステージ、つまり、イノベーションが期待できるようなところにはなかなか資金を回せない。これは限界として割り切るのか、それとも、吉高さんがご指摘されたスパイバーみたいなスタートアップのファイナンスがあるように、融資の可能性もある。ここは、どのように考えたらよろしいんでしょうか。
 
【水口座長】  林さん、いかがでしょうか。
 
【林(尚)メンバー】  林です。お答えいたします。スパイバー社は個別行として私どもが取り組んでおります。よって、様々な方法を使って、キャッシュフローが特定できずとも、価値のあるアセットがタンジブルなのか、インタンジブルなのかは別としても、どこにあるかを特定し、そこに資金を御提供するということについては最大限の努力をしております。
 
 一方で、お気づきのとおり、シニアローンを中心とした世界で国内のローンマーケットのプライシングが成立しておりますので、非常に下方に引き寄せられており、リターンがリスクに見合わないという事例が様々なところで生じているのではないかと思います。
 
 例えば、5%とか6%といったような利回りがもし約せるのであれば、そういったお金のつけ方は国内でも十分成立するのではないかと思います。そういったお金のつけ方自体が、なかなか商慣行的にも、あるいは現在の市況からもなじまないというところに、間接金融側でプライス、イールドがちゃんと立たないということについて、私どもの悩みになっているという部分もございます。
 
 ちょっとお答えになっていないかもしれませんが、お願い申し上げます。
 
【渋澤メンバー】  ありがとうございます。
 
【小沼メンバー】  ちょっとよろしいでしょうか。東京証券取引所の小沼でございます。ありがとうございます。
 
 今、事例で出ていた未上場、イノベーションを促進するための未上場企業等へのファイナンスの話で、スパイバーさんの例も出ておりましたけれども、大変興味深く、我々ちょっとまだ勉強不足ですが、研究してみたいテーマだなというふうに思って感じております。
 
 いろんなこういったベンチャー企業さんが無形資産をいろいろ持っていらっしゃって、それが会社の今後の発展のための資金調達につながれば、これはすばらしいことだというふうに思っておりますけれども、こういった事業価値を証券化して会社が調達するという現象というのは、会社の財務諸表にとってみると、資本の調達になるのか、それとも負債の調達になるのか、あるいは、その期の例えばロイヤリティー収入みたいに売上げみたいな形で調達ということになるのか、その辺の何か御存じのこととか御示唆があったら教えていただければなと思うんですが、いかがでしょうか。
 
【水口座長】  今のはスパイバーの話ですか。
 
【小沼メンバー】  スパイバーに限らず、こういう未公開の会社が資産価値を、事業価値を証券化して資金調達するようなケースについて、どういう形で会社にインパクトが出てくるのか、財務上の効果が出てくるのかということについて、吉高様か、林様か、あるいは、どなたか御存じのことがあればという問いでございます。
 
【林(尚)メンバー】  林です。今までバランスシート上で、例えば簿価計上等がなされているものであっても、そのものに対する実質的な時価、あるいは将来価値を現在価値に割り引いて、そこにネットプレゼントバリューがプラスで存在するということについて、間接金融の審査は非常に保守的だったというふうに理解をしております。
 
 ただ、そこに一定の価値があるのだということを、様々な材料からしっかりと積み上げて挙証することができれば、それに対してファイナンスを実行することができるという意味において、一本前進をしているということではないかと私は理解しております。以上です。
 
【小沼メンバー】  ありがとうございます。
 
【足達メンバー】  足達ですが、よろしいでしょうか。
 
【水口座長】  お願いします。
 
【足達メンバー】  吉高さん、ありがとうございました。大変詳細な金融形態ごとの整理をいただいたのは大変役に立つと思います。
 
 それで、ちょっとこれはシェアリングですけども、排出権取引については中国が本格的に乗り出しておりまして、深圳に取引所があり、ここのスタッフが、今私の関係しているTC322、サステナブルファイナンスの国際規格づくりのメンバーとして非常に積極的に動いているということを皆さんとシェアをさせていただければと思います。
 
 その話題とはちょっと変わりますけども、今日、オポチュニティーの議論を伺っている中で、少し私は気になっていることがあります。これは世の中の雰囲気全体なんですが、どうもエネルギー転換のところばかりに目が向いている。再生可能エネルギーをどうするかとか、ある産業セクターの使用エネルギーをどう脱炭素化するかという話が中心になっているんですが、実はこの有識者会議の出すメッセージとしては、もう少し大きなメッセージが必要じゃないかなと思っております。
 
 それは、国の産業構造自体が、最近のはやり言葉を使えば「経済の非物質化」、EUの言葉を借りれば「資源の使用から切り離された経済」というものに移行していく必要があるということですね。ひとつの産業セクターの中でも、例えば化学工業を見れば、医薬品のような製品の比率を高めれば、これはカーボン利益率は物凄く改善するわけです。同じ1円を稼ぐにも、医薬品で稼げばCOは非常に少なくて済むわけです。
 
 あるいはリサイクルとか、シェアリングとか、公共交通によるモーダルシフトとかでも実はゼロエミッションに近づいていく、ここにもお金を流していかなきゃいけないと考えます。
 
 こうした領域というのは、放っておいて自然に実現するかというとそうではないところがあります。株式相場に「政策に売りなし」という格言があると聞いたことがありますが、やはり、国の産業政策みたいなものも1つのアナウンスメント効果を狙って、出していかなきゃいけない。サステナブルファイナンス推進のためには、そういう国の産業構造自体をどう持っていくかというビジョンが必要なんだと、こんな認識もぜひこの会議の成果物の中に入れていただきたいというのが私からの提案でございます。以上です。
 
【水口座長】  ありがとうございます。
 
 私からもコメントなんですけど、おっしゃるとおりで、EUのサステナブルファイナンスの取組というのは、その外側にグリーンディールというのがあって、そのグリーンディールというのは非常に広範にあらゆる産業構造を連動して転換していこうという大きな構想なんですよね。
 
 そういう構想力が必要だなと思います。また、御指摘のように、価値の生み方と資源の利用の仕方を切り離していくというんでしょうか、資源とかエネルギーを利用しなくても価値を生んでいくという経済の仕組みというのを考えるというのは重要だと思います。
 
 それと、脱炭素化していくためには、公共交通とか、それから逆に森林を守るとか、いろんな側面があるので、そういうことも含めて議論する必要があるのかなと思います。
 
 ちなみに、これは私から足達さんに質問なんですけど、深圳の取引所というのはキャップ&トレードじゃなくて、普通のクレジットの取引所という意味なんでしょうか。
 
【足達メンバー】  いえいえ、中国は事業所単位でキャップを張りつけております。それが本格始動し始めていまして、取引所は北京や上海にもありますが、深圳の取引所が存在感を最も有していると個人的には思います。
 
【吉高メンバー】  中国は、2011年から排出権市場を各省で実証されまして、経験を十分積んできており、最も動きのよかったところがとったのだと思います。すいません。
 
【水口座長】  ありがとうございます。そうですか。林さん、どうぞ。
 
【林(礼)メンバー】  質問よろしいでしょうか。今、皆さんのお話を聞いて、全てなるほどなるほどと思いました。ハイレベルでの考え方をベースにここで議論するんだというのはそのとおりだと思いますけれど、限られた時間の中で、どこかに一方でフォーカスしなくてはいけないという、2つ両立させるのはなかなか大変ですけれども、忘れちゃいけないテーマだというふうに思います。
 
 あと、排出権取引の話は本当に、これなくして世の中というか、実態が動かないと思うので、ぜひJPXの方にもお話を伺いたいんですが、日本でなぜできないのか。先ほど少し吉高さんから御議論ありましたけれども、むしろこれは大きな機会じゃないかと思っております。
 
 例えば東証なり、大阪でもいいんですけれども、国際金融都市構想の中でこれも1つの大きなテーマになるのではないのかなと最近思っていて、ぜひこの辺りのお考えをお聞かせいただければというふうに思っております。
 
【水口座長】  いかがでしょうか。東証でできたりするのでしょうか。
 
【小沼メンバー】  小沼ですけれども、御意見ありがとうございます。この排出権の問題は弊社も随分昔から研究調査をしているということは事実でございまして、チームで勉強しているという最中でございます。
 
 今現在のスタンスについて、今御説明できるという状況ではなくて、いずれにしても法律上の枠組みだとか、そういったものを踏まえながら、実務に落としてどういうことができるのか、そういったことを引き続き勉強していきたいというスタンスでございます。ありがとうございます。
 
【吉高メンバー】  1点よろしいでしょうか。金融庁では金商法の改正のときに、金融機関が排出権を取り扱えるようにしまして、どの取引所で扱うかということが当時かなり研究されました。排出権をコモディティーとして扱う国もあれば、金融商品として扱う国もあります。取引のシミュレーションはボランタリーではできますが、お金が動く世界なので法制度が整う必要があり、小沼さんがおっしゃったように、相当のインフラが必要になってくると思います。すいません。以上でございます。
 
【水口座長】  ありがとうございます。ちょうど排出権の話になりまして、今日オブザーバーではありますけれども、経済産業省様と環境省様からも、もし何かあればコメントいただければと思いますが、いかがですか。
 
【経済産業省】  経済産業省の梶川です。本日はプレゼンテーションもいただき、ありがとうございます。
 
 サステナブルファイナンスそのものに関しては、金融庁、環境省、経産省共催で行いましたトランジション・ファイナンス環境整備検討会の内容も前回、林さんからも御説明いただいて、トランジションも含めてしっかりとやっていくということで議論を続けております。この会議でのさまざまな御指摘も踏まえて、連携できるといいと思っています。
 
 今話題にのぼりました排出量取引を含めたカーボンプライシングの議論も、ちょうど昨年末のグリーン成長戦略、その中で環境省と連携しながら、成長に資するカーボンプライスは何かということで検討を開始しているところであります。まだ検討を始めた段階で、いわゆるキャップというか、制約のあるような税だとか排出量取引のようなもの以外に、先ほど吉高さんもおっしゃったような民間のボランタリーのクレジットをどのように活用するのか、また昨日は国境調整の議論もさせていただきまして、幅広くどういう議論でどういう論点があるかということを集めた上で、具体的に考えていこうということで、今、取り組んでおります。今の進捗状況について御説明させていただきましたけど、こちらも連携をさせていただけると大変ありがたいと思っております。
 
【長谷川メンバー】  経団連ですが、よろしいでしょうか。
 
【水口座長】  どうぞ。
 
【長谷川メンバー】  まさに今の経産省の御発言と同じですが、カーボンプライシングについては環境省で検討を進められており、経団連も参加しております。政府のグリーン成長戦略では、カーボンプライシングについては成長戦略の趣旨に資するものは取り組むということで、カーボンフリー価値取引制度やJ-クレジット取引市場なども含む幅広いカーボンプライシングの類型を示されて、議論されていると理解しております。
 
 キャップ&トレード型の排出権取引や炭素税については、成長戦略の趣旨等を踏まえて、さまざまな課題があるということも指摘されております。環境省の議論でも、キャップ&トレード型の排出権取引に決め打ちせずに、J-クレジット制度等間口を広くとって検討していく方向であると伺っております。カーボンプライシングは国民生活や企業の国際競争力に非常に大きな影響を及ぼす課題でございますので、しっかりと議論をしていただきたいと思っております。
 
【水口座長】  ありがとうございます。何らかカーボンプライシングは必要だという議論になっているということですね。
 
 高村先生からお手が挙がっていますので、まず高村先生、いかがでしょうか。
 
【高村メンバー】  すいません、気が弱くて口を挟めなくて申し訳ありません。手を挙げてしまいましたけれども、林様、吉高様、御報告ありがとうございました。林様に2つ、吉高様に1つ御質問があります。
 
 林様のほう、1点目は、銀行としてのリスク管理上も投融資先の情報の開示って非常に重要だと思うんですけれども、銀行がリスク管理をするに当たっての情報開示の点で、国の施策やガイダンス等、あるいはツールといったような形で、国の施策として期待されるものがあれば教えていただきたいのが1点目です。
 
 2つ目が、林様宛てでありますけれども、スライドの7だったかと思いますが、今後の課題・問題意識の3点目に適切なプライシングの枠組みというのを提示いただいているかと思います。これは恐らく、投融資先の移行リスクがしっかり統合される、あるいは移行リスクの統合を促していくという点での御期待かと思うんですが、こちらについて、例えば、同じように、こういう官民、金融機関の役割分担ということを書かれているんですけれども、国に対して、こういう枠組みなり、仕組みという点で御示唆があればいただきたいというのが御質問です。
 
 吉高さんにはいつでも聞けると思って、聞かないでいようかと思ったんですが、スライドの13枚目のところで、インターナルカーボンプライシング、カーボンクレジットの評価・実績が金融機関は少ないということでした。インターナルカーボンプライシングって、先ほどの林様への御質問にも申し上げたように、投融資先の移行リスクの統合の度合いを評価する、あるいは促していく上で非常に有効だと思うんですが、他方でインターナルカーボンプライシングって私が知る限りでも、事業者、企業によっても非常に多様で、これはどういうふうに金融機関がうまくインターナルカーボンプライシングを使ってサステナブルなファイナンスの実績をつくっていくかというところについて、もしコメントいただければと思います。以上です。
 
【水口座長】  まず林さん、お願いいたします。
 
【林(尚)メンバー】  高村先生、いつもありがとうございます。
 
 7ページ目のチャートの中の②と③にそれぞれ書かせていただいてございますけれども、やはり与信判断をさせていただく場合、その会社、コーポレートとして、あるいはプロジェクト、事業一つ一つとして、どういったCO削減に対するインパクト、これを発揮されているのかということは、今後の私どもの貸出審査判断上、重要な情報になっていくという流れと理解しております。
 
 ただ、前回の御議論の中でも種々御指摘ございましたが、それぞれの会社がそれぞれの手法をもってそのインパクトを算出しているという実態がございます。私どもが今回御紹介した「1,500万人分の1年間分のCO排出量」というのも私ども独自の算定でございます。こういった効果測定のプロセスが、例えば、こういった基準で示されるべきであるというように統一されていくということがもし実現しますと、私どもの与信判断上、そういったものを取り込んでいくということについて、横の平仄もしっかり取られた中で比較考量ができる、そういう可能性があるというふうに考えてございます。
 
 適切なプライシングのほうでございますけども、もちろん正しく御理解いただいて御議論いただいているということは理解しておりますが、地方銀行の皆様からの声として聞こえてまいりますのは、グリーンであれば、例えば担保条件が緩くなる、あるいは適用金利が低くなる、そういうふうに思われていらっしゃる、そういう借手の方々も多い、このような実態があろうかと思います。
 
 それは案件ごとでございまして、プルーブンではない新技術が採用されているようなケースは、先ほども申し上げましたとおり、逆にリスクプレミアムを金利に乗せないと、持続可能な形で長期の与信を供与することはできない。そういう間接金融の商品性がございます。
 
 よって、適切なプライシングをしっかりと立てていくということに関しては、そういったリスクとリターンのバランスが取られていくということが重要であるということを申し上げているということでございまして、そのときに何をもってプルーブンとするのかということについて、例えば、技術情報の開示とか、あるいはガイダンス等がしかるべき機関あるいは政府からなされるというようなことも、国策として取り組む上で1つの手段になり得るのではないかということを申し上げたいということでございます。以上でございます。
 
【水口座長】  ありがとうございました。では、吉高様、お願いします。
 
【吉高メンバー】  高村先生、ありがとうございます。今、全銀協様がおっしゃられたのと呼応しますが、実際のところばらばらな対応で、どのように設定するのか悩み中というところがあろうかと思います。
 
 例えば、10ページに示しております、ICEのカーボンプライシングによるインデックスですが、EU ETSのプライス、カリフォルニア市場のプライス、様々な業界のプライスを参考に作っているインデックスです。各企業がインターナルカーボンプライスを設定される際、このような指標などを参照されたり、積み上げで作っている企業などもありますので、このような指標が設定されないと金融機関もインパクトを十分に測れません。ベンチマークが必要であり、まさにおっしゃったような指針が必要だと思っております。以上です。
 
【水口座長】  ありがとうございます。
 
【吉高メンバー】  また、付け加えるとすれば、さっき足達様がおっしゃったのと関係しますが、カーボンプライシングに関して投資家は、長期の産業構造の変化について重要な視点と考えており、カーボンプライシングによってその産業がどう変わっていくかということは評価の一環になろうと思います。以上でございます。
 
【水口座長】  ありがとうございます。
 
 JFEの手塚様から手が挙がっておりましたので、手塚様にお話しいただいて、その後、次の話題に移っていきたいと思います。
 
【手塚メンバー】  ありがとうございました。私、鉄鋼会社におりまして、あと、経産省・環境省のいずれのカーボンプライシングの委員会にも参加させていただいていますので、ちょっとコメントを2つ差し上げます。
 
 まず最初に、吉高さんの説明にありました日本の間接金融の世界の中でこれをどうやってやっていくかという話なんですけども、実は私どものような鉄鋼はこれから20年、30年かけて、炭素排出の大きな製造設備を脱炭素のほうに向けて技術開発も含めて入れ替えていかなきゃいけない、大変巨大な資金需要が発生するということは認識しております。
 
 この場合、既存鉄鋼を売るという事業の中で生まれてくるキャッシュフローを使って、新たな低炭素・脱炭素の設備に入れ替えていくという、まさにコーポレートファイナンスの中で、信用を維持しながらこういうトランジション投資をやっていくということが必要になっているんですね。
 
 ですから、金融機関さんとの間でもいろいろ議論している中で、サステナブルな形でそうした資金が提供されていくということが必要になってくるんですけども、移行のスピードが非常に早くなってくると、この既存の事業からのキャッシュフローでは賄えなくなってくるリスクが出てきます。
 
 ここはある種、どれぐらいのスピードでやらなきゃいけないかという政策との絡みになってまいりますが、ある程度以上のペースでもってこれをやらなきゃいけなくなると、これはどうしても政府からのサポート、投資に対する補助金、あるいはイノベーションに対する補助金といったものを頂いて、自らの信用でファイナンスして入れ替えていく部分を補完するというような形が必要になってくるということかなと思います。
 
 一方、吉高さんの資料の中で、再エネ等の電力、こういうところはプロジェクトファイナンスでやっていくというのが書かれていたと思うんですけども、気をつけなければいけないのは、金融機関さんの立場から見たときに、個々のプロジェクトが、例えば、FITであるとか長期のキャッシュフローの保障政策のようなものでサポートされているものに対して、これはファイナンスがやりやすくなると思うんですけども、実はそういうものを大量に入れていくと、一方で、そのプロジェクトの外にある企業あるいはセクターで、そちらの設備の稼働率が減ってくるとか安定的に動かせなくなってくるといったような外部の不経済のようなものが発生してくるんですね。
 
 そうすると、こういうものを積み上げていったときにプロジェクトファイナンスを大量に積み上げて、1つの分野の中でグリーン化が進むと、同じ分野の中で別なマイナスが発生してくるということが生じて、部分最適を積み上げても必ずしも全体最適になるとは限らないという問題が起きる。
 
 これは足達様の御説明にもあった産業構造をどうするのかという話とも関わってくるかもしれませんけども、そういうことにも実はこの金融のグリーン化というのは関わってくるということを念頭に入れて、今後の在り方を議論していただいたほうがいいんじゃないかなという気がいたします。
 
 2点目は排出権なんですけども、これ経団連のほうから御説明があったとおりで、排出権取引市場ができて、そこでプロジェクトベースのゼロカーボンの排出権が需要を喚起して、それを企業なり社会なりが自主的なオフセットに使っていくというのは結構なことですので、ぜひやったら良いかと思うんですけども、この市場ができますと、どうしても需要をたくさん拡大して、排出権の値段が上がっていくということが期待される。そうなると、事業会社に対して排出権取引型のキャップをかけて人為的に排出権が必要な人をつくる。これはまさに需要そのものをつくる行為なんですけれども、こちらに飛び火してくることになります。
 
 こうなると、何人かの方が御指摘されている経済に対するマイナスのインパクト、悪影響といったものが出てまいりますし、例えば鉄のように、現在、代替する脱炭素技術がまだ存在していないような事業体にとって、大量排出であるということでキャップをかけるというようなことが起きますと、単なるコスト増にしかならない。つまり、ペナルティーになってきて、むしろ研究開発投資に回せるお金がその排出権を買うことのほうに回ってしまって、イノベーションのブレーキになってしまうというマイナスのインパクトができるということを御理解いただきたいと思います。
 
 プロジェクトベースのほうは、オフセットに使いたいという需要が、どれぐらいの金額なら買ってくれるかということに合わせて、実際、ゼロカーボンにするための森林プロジェクト、あるいはフロン処理のようなプロジェクトも、コストに見合ったものから投資されていくということで、ある意味、健全に機能するんだろうと思うんですけれども、いわゆるキャップ・アンド・トレード型の市場は、このキャップをどうかけるかによって幾らでも需要と供給をコントロールできる。実際にEUは、そうやって排出権価格が下がるとキャップを強化したり、無償枠を減らしたりして価格をコントロールする。ある意味、不健全な市場操作が政府によって行われたりするということで、必ずしも完全な自由市場取引の構造にはならないということで、そこは慎重に考えていただければと思います。
 
 私からは以上です。
 
【水口座長】  ありがとうございました。
 
 予定の時間ですので、そろそろ次の話題に行きたいと思いますが、井口様からお手が挙がっていますので、井口様を最後にして次の話題に行きたいと思います。
 
【井口メンバー】  最後の最後ですみません。間接金融の話が中心なので、静かにしておりましたが、2つだけコメントを簡単にさせていただければと思います。
 
 先ほど足達メンバーからあった産業構造の話で、確かにおっしゃるように投資家にとっても、長期でこちらのほうに産業構造が変化するという情報は大変ありがたい情報になると思います。一方、日本の資本市場を見ると、今、手塚メンバーからもお話しありましたように、エネルギーを使う会社さんが多くあるという事実もあると思います。足達メンバーがおっしゃったように、長期的に非物質的な産業にいくということは理解できるのですが、一方、物質的な産業も多くあるわけで、資本市場にいる投資家としては、まず、この産業についてのことが重要になると思います。どのようなストレスがかかる、あるいは、どのように機会を活かしていかれるのかということです。ですので、報告書の中で示される場合、TCFDでも短期、中期、長期の時間軸がありますが、同じような時間軸を用い、その中でも、短期、中期のところに重点を置き、示されるほうが資本市場のニーズとマッチするかと思っております。
 
 もう1つのコメントですけれども、これは吉高メンバーや銀行協会の林(尚)メンバーからのコメントにもありましたが、あるいは後でプレゼンしていただける損保協会の半田メンバーのプレゼン資料にもありましたが、金融機関の立場からすると重要なキーワードはリスク調整後リターンになってくるかと思います。これがなければ投資できませんし、我々、投資家からすると受託責任を果たせないということになってきます。また、最近、再エネ業者の上場会社で、株価が爆騰している会社がありますが、これはもちろん経営環境がいいということもありますが、開示もしっかりやられていて、経営者もしっかり投資家と話し合われているということです。ですので、リスク調整後リターンの確保と、開示あるいは透明性、この2つのキーワードが今後とも非常に重要になってくると思います。
 
 以上でございます。
 
【水口座長】  ありがとうございました。
 
 それでは、ここで一旦、議論を中断いたしまして、後半の議論に入りたいと思います。藤井様、お待たせしてすみませんでした。今日はお隣りに来ていただいているんですけれども、藤井様から10分ほどでリスクの話を中心に御説明いただければと思います。よろしくお願いいたします。
 
【藤井メンバー】  ありがとうございます。
 
 それでは、藤井より、金融機関のリスク管理と、気候変動リスク管理につきまして御説明をさせていただきます。なお、言うまでもないことですけれども、私のコメントは、今、金融庁参事の肩書もついているんですが、過去25年間、リスクマネジャーとしてやってきた個人の意見ということで、金融庁さんの意見とは無関係であることは念のため事前に申し上げておきます。
 
 本日は、この表紙に記載の金融リスクと気候変動リスク、金融機関に求められる気候変動リスク管理、現状の課題、この3点で説明をしたいと思います。
 
 まず、前提となる金融機関のリスク管理体制につきまして、2ページ目のスライドで俯瞰しております。リスク管理は、左側にあるように、市場リスク管理、信用リスク管理、流動性リスク管理といったように、リスクカテゴリーごとの管理がございまして、全体を統合リスク管理として俯瞰するという形になっています。ここで言う市場リスクとか信用リスク、あるいはITリスクといったものは、それぞれ独立した性格を持っておりまして、言わば本源的なリスク要因であるということが言えます。ちょっと色がついているところがございますけれども、これは後で触れたいと思います。
 
 このような金融機関のリスク管理は、金融機関の資本を守り、健全性を確保するという社内的な枠組みでございますけれども、健全性確保という意味で、金融機関の健全性規制と切っても切り離せない関係にございます。右側に示していますけれども、前回の会議でも名前が出た銀行のバーゼル規制ですとか、保険会社のソルベンシーマージン規制などといった金融規制はリスク管理と密接に関わってございます。
 
 こうしたリスクカテゴリーに対しまして、気候変動リスクはどういった立ち位置になるのかということを、次の3ページのスライドで御説明させていただきます。
 
 気候変動リスクの定義といたしましては、物理的リスクと移行リスクの2つに大別されるということは、既にコンセンサスと言っていいと思います。釈迦に説法でございますが、物理的リスクとは、気候変動自体による資産の損傷やサプライチェーンの寸断による財務損失。移行リスクは、低炭素経済移行に伴って発生する政策変更や技術革新に起因するリスクということになります。
 
 ここで特徴的なのは、物理的リスクと移行リスクには相互依存関係といいますか、てんびんのような関係があるということです。低炭素政策が取られないと、政策変更はございませんので移行リスクは小さい、一方で将来の物理的リスクは大きくなる。逆に、急に政策を変更するといった、かじを切ると、将来の物理的リスクは抑えられますけれども、移行リスクは大きくなると、こういう依存関係がございます。先ほど、リスク管理はリスクカテゴリーごとに管理の枠組みをつくると申し上げました。気候変動リスクにこういうてんびんの関係があるというのは、気候変動リスクが市場リスクや信用リスクといった、いわゆる本源的なリスクカテゴリーとは異なるということを示唆しております。
 
 気候変動リスクは、ほかにも金融リスクとは異なる特徴がございます。4ページで示しております。全銀協さんのコメントにもございましたけれども、対象とする期間が長い、データやモデルが未確立、相互依存関係がある。こうした特徴はやはり気候変動リスクが金融リスクとは別物であることを示しております。
 
 一方で、気候変動リスクは金融リスクとして顕在化をいたします。どういうことかといいますと、例えば物理的リスクによりまして台風や洪水が増えると、浸水した家屋の住宅ローン等の不良債権が増加するといった形で、信用リスクが顕在化をいたします。石炭火力の融資等で訴訟リスクが増えるといったようなことも考えられます。このように考えますと、気候変動リスクは、金融リスクそのものではなくて金融リスクを増幅させる、言わば金融リスクのドライバーであるということが現在のコンセンサスになりつつあります。
 
 であるとすると、気候変動リスクの管理は、1ページで示した既存のリスクカテゴリーごとの管理枠組みを変える必要はなくて、これに統合する形で管理すればいいということになります。例えば、信用リスク管理の枠組みの中に気候変動リスクの影響を統合するというような形です。これを各リスクカテゴリーの市場リスク、信用リスクといったリスクごとの管理の中で行っていくということになります。1ページで色がついていますと示しましたけれども、特に気候変動リスクの影響が大きいと議論されているリスクカテゴリーが、濃い赤色で囲んだカテゴリーというのが大方の意見になっております。
 
 その気候変動リスクを管理するための主要な構成要素を5ページでまとめております。
 
 まず、気候変動リスクに関するガバナンス体制の確立。次に、国連の責任原則に代表されるような気候変動リスクに対する責任と規範の確保。3つ目として、気候変動リスクと機会の戦略への織り込み、特にその中でシナリオ分析の活用。4つ目は、気候変動リスクを認識、評価、管理するプロセスをリスク管理の枠組みに統合するということ。最後に、金融機関がさらされる気候変動リスクと機会を適切に開示する。以上の5つが主要な構成要素になっていますけれども、これは通常のリスク管理の枠組みをつくるものと特に大きく違うものではないということは理解いただければと思います。
 
 その中で、今、ヨーロッパを中心にシナリオ分析が重視されていますので、これを6ページにまとめております。気候変動リスクのシナリオ分析というのは、気候変動リスクが金融機関に与える影響を、特定のシナリオを考えて、そのシナリオが発生した、顕在化した場合の影響を検証し、その結果を戦略策定やリスク管理に活用するというものであります。当然ながら、どのようなシナリオかということが重要になりますけれども、この点につきましては、国際的な監督当局の集まりでございますNGFSを中心に、今、議論が先行している状況にあります。
 
 NGFSが昨年6月に提示したシナリオは、表にあります3つのシナリオ、すなわち秩序だった対応が進むという①のシナリオ。何の政策対応もなされない、「熱暑の世界」と呼んでいますけれども、③のシナリオ。真ん中にありますのは、2030年までは対応がなされずに、そこから急に政策のかじを切るといった形で、移行リスクが大きくなる②のシナリオの3つであります。ヨーロッパの主要国では、それぞれ国内の主要な金融機関に対しまして、これらのシナリオに基づいた当局主導の共通シナリオ分析を、今年以降、実施する手順となっておりまして、イギリス、オランダ、フランスといったところが着手をしてございます。このような共通シナリオ分析が主要国の趨勢になりつつあるという状況は、特に欧州を中心に見ておく必要があると思います。
 
 7ページでは、金融機関に求められる対応という観点でまとめております。気候変動リスク対応の切り口としては、左側、そもそも自身の事業内容から発生する、例えば支店とか、そういうところから排出される温室効果ガスの抑制。次に、保有するポートフォリオがさらされる気候変動リスクの管理、さらに投融資活動を通じて取引先が気候変動リスク対応を進めることを促すエンゲージメント、最後に金融機関としてのボトムラインですけれども、自らの行動がシステミックリスクを起こさないようにするということでございます。
 
 その中で、特に金融機関に期待される点としまして、右側に記載をいたしました、低炭素社会に向けて資金や資本を円滑かつ安全に移動することを後押しするという金融仲介機能の発揮、資金のほうが間接金融、資本のほうが直接金融と言ってもいいかもしれません。2つ目は、そのための企業との対話、エンゲージメントではないかと思います。また、こういったことを行うに当たりまして、金融業といっても業態ごとに違いがあることは言うまでもないことでございまして、貸出業、保険業などの業態ごとにアプローチには違いがあると思っております。
 
 最後に、8ページで、こうしたまとめに対する課題を、先ほどの主要な構成要素としてお示しした5つのパーツごとにまとめていますが、このリストは日々、取組みがどんどん進んでいるところでございますし、ディスカッションのためにかなり私見を大胆に置いたということでお聞きいただければと思います。
 
 まず、ガバナンスにおきましては、取締役会のより能動的な関与。次に責任と規範では、各業態で国連の責任原則を既に採用しておられますけれども、そこでも示されているような取引先との対話。戦略におきましては、実施したファイナンスが炭素排出削減にいかに貢献しているか。先ほど、全銀協の林(尚)メンバーの御説明にもありましたが、ファイナンス実施によるCO削減効果をどう客観的に計測するのかというところには課題があると認識しているわけですけれども、実際、資金移動、資本移動が炭素排出の削減にいかに貢献しているかという手法の開発が必要になると思っています。リスク管理におきましては、シナリオ分析の実施と活用、開示についてはTCFDを中心とした開示の推進だと思っております。
 
 私からの御説明、御報告は以上でございます。ありがとうございました。
 
【水口座長】  ありがとうございました。統合リスク管理の面から、大変手際よく気候変動リスクの話をまとめていただきました。分かりやすい話をありがとうございました。また、シナリオ分析が国際的に主要国の趨勢であるという話、それから特に最後のところに出ていましたエンゲージメント、取引先に対するエンゲージメントの議論というのはサステナブルファイナンスの重要な一側面とも考えております。
 
 それでは、続きまして、生命保険協会の中村様、お願いいたします。5分ぐらいと伺っていますが、よろしくお願いいたします。
 
【中村メンバー】  生命保険協会で一般委員長を務めております、明治安田生命の中村でございます。本日は、貴重な機会をいただき、ありがとうございます。
 
 それでは、サステナブルファイナンスの促進に向けた生命保険業界の取組等について御説明をさせていただきます。
 
 まず、2ページにお進みください。こちらでは、改めてになりますが、生命保険事業の資金特性とサステナブルファイナンスの関係性についてでございます。生命保険は、20年、あるいは30年にわたる契約が多いことから、将来の保険金などの支払いを確実にするため、ほかの金融機関に比べますと、より長期に安定した収益を確保することが期待、求められているということでございます。そのため、資産運用を行う際には、安全性、収益性、流動性を重視しております。また、事業特性から公共性の高い事業でもありますので、その活動を通じて社会・公共の福祉の増進に資するという社会的使命を有していると認識してございます。このように生命保険事業は、長期的な視点で持続可能な社会をグローバルに大きくしていくという、サステナブルファイナンスの考え方と親和性が高いと認識してございます。
 
 それでは、次ページにお進みください。こうした機関投資家としての社会的使命を踏まえまして、生命保険協会では、スチュワードシップ活動ワーキング、それからESG投融資推進ワーキング、この2つを設置しまして、株式市場の活性化と持続可能な社会の実現、これに向けた様々な協会活動を会員各社とともに行っております。また、事業者としては、この表にはございませんが、協会内のSDGs推進PTにおいて取組を進めているということでございます。
 
 ここからは、当協会の主立った取組を4つ御紹介させていただきます。
 
 まずは、提言レポートでございます。これは、1974年から継続している取組になりますが、昨年度は1,400社の企業、投資家に対しましてアンケートを行いまして、650社から回答をいただき、その内容をまとめてございます。後ほど、少し具体的に御紹介をさせていただきます。
 
 2つ目、これは第1回の本会議でも御案内させていただきましたが、協働エンゲージメントでございます。2017年から、会員各社が協働して事業に課題認識を伝える仕組みでございます。今年度は、GHG排出量上位50社を新たに対象に加えまして、気候変動に関する開示や、排出量削減に向けた方向性の打ち出しなどを要請するということを行っておりまして、脱炭素社会に向けた企業の取組を後押ししているものと認識してございます。
 
 3つ目でございますが、こちらは各社のESG投融資に関する理解促進や取組の強化、底上げを目指しまして、外部講師を招いた勉強会も実施してございます。記載は、直近2年間の内容でございます。
 
 最後になりますが、SDGs推進PTの取組を御紹介させていただきます。当PTでは、気候変動に関する基礎知識や、生命保険会社が取るべき行動の要点をまとめた「はじめての気候変動対応ハンドブック」の作成をはじめ、右側になりますが、TCFDコンソーシアムにおいて作成した「ガイダンス2.0」の作成にも協力するなど、各社の気候変動等に対する意識の醸成やレベルアップ、底上げに取り組んでおります。
 
 続きまして、我々、生命保険業界が抱いております課題、今後の検討において期待する点について、3点、述べさせていただきます。
 
 まず、1点目でございます。先ほど御紹介しました提言レポートのアンケート結果によれば、企業のESG活動における気候変動への意識が高まっておりまして、また、気候変動関連の開示の姿勢も年々、前進していると見てとれます。
 
 次ページ、一方で、企業の取組、情報開示について、投資家からは十分開示しているという回答は僅か3%にとどまるなど、企業と投資家の間に大きなギャップがあるという状態でございますので、我々、機関投資家としては、エンゲージメントなどを通じて、さらなる改善の充実を働きかけていく必要があると感じております。右側のグラフでは、媒体として、企業は約8割がホームページ、投資家は7割が統合報告書を重視しているとの結果も確認してございます。
 
 続いて、2点目でございます。開示の柔軟性にも配慮したサステナビリティ報告や、サステナブルファイナンスの標準化についてでございます。こちらは、ニッセイアセットマネジメント様の資料を一部抜粋させていただいておりますが、先ほどからありますように情報の開示基準などが乱立していることに対する懸念の声が多くございます。我々、機関投資家としましては、投資の判断における比較可能性の観点から、非財務情報の開示基準が一定程度、標準化されることは望ましく、IFRS財団が検討しております国際的な報告基準に関しましても、昨年、協会として賛同するという意見を提出済みでございます。
 
 このほか、発行体側の環境整備が不十分なことなどを背景としたグリーンウォッシングの存在やESG格付など、投資家や企業の金融商品を評価する際の基準が必ずしも明確でないことも課題だと考えておりまして、この点でも一定程度の標準化がされることが望ましいと考えております。ただし、唯一の基準に即時に統一したり、ルールを過度に厳格化することは、かえって投資機会を減らしてしまう懸念があるという点には留意が必要だと認識しております。
 
 最後になりますが、3点目は金融機関の気候変動に係るリスクと課題の把握についてでございます。こちらの資料には、TCFD提言で推奨されている開示情報を掲載しておりますが、現在、会員各社はこの提言に基づきまして、リスクと機会、戦略などについて、統合報告書等を通じて、開示の充実に向けた取組を試行錯誤しながら進めている状況にございます。当協会としましても、引き続き各社の対応、さらなる高度化に向けて後押しをしてまいりたいと考えてございます。
 
 最後になりますが、事業特性、資金の特性を踏まえまして、SDGs達成に向けた日本全体の取組が加速するよう、当協会としましても、ESG投融資やスチュワードシップ活動を通じて、社会課題の解決により一層、貢献したいと考えております。
 
 少し長くなりましたが、御説明は以上でございます。ありがとうございました。
 
【水口座長】  ありがとうございました。
 
 やはり開示が課題ということと、会員各社さんもリスクと機会の開示の取組が進んでいるというお話でした。なお、中村様からは、前回の会合で言い残されたことということで、保険会社の資本規制について書面でのご提出もいただきました。ありがとうございました。資料に含まれておりますので、皆様、ぜひ御覧いただければと思います。
 
 それでは、最後に、損害保険協会の半田様から御報告をお願いいたします。
 
 半田様、お願いします。
 
【半田メンバー】  ただいま御紹介賜りました日本損害保険協会の半田でございます。本日は、お時間を頂戴しまして、誠にありがとうございます。
 
 早速、本題に入らせていただきたいと思いますけれども、今、御覧いただいておりますアジェンダのとおり、3つの観点から御説明を申し上げたいと思います。
 
 資料の3ページを御覧ください。まず、損害保険の機能について御説明をいたします。損害保険の機能でございますけれども、大きく保険引受けと資産運用の2つの側面で考えることができます。お示ししております図でございますけれども、バランスシートをイメージしながら作成をしております。保険本来のリスクの引受け機能はバランスシートの右側となりまして、資産運用は保険責任、すなわち保険負債に関わるALMを中心としたものになっております。したがいまして、本日は、右側の領域になります保険引受け、すなわちリスクに関するところ、この側面から御説明したいと思います。
 
 資料4ページを御覧ください。こちらですけれども、サステナブルファイナンスの収益性に損害保険がどのように作用し得るかということを図示したものでございます。まず、一般的なリスク調整後リターンの要素でございますリスク、それからリターンに、サステナブルファイナンスにおいて今後、重要な要素となってくると思われますインパクトを加えまして、これらを収益評価の3要素といたしますと、私ども損保業界というのは、レジリエンスの向上を通じたインパクトへの作用と、リスクの可視化や低減を通じましたリスクへの作用、こういった主に2つの活躍の機会が考えられるのではないかと考えております。すなわち、損害保険業界のノウハウでありますとか機能を活用することによりまして、サステナブルファイナンスにおけるインパクトの要素も含めたリスク調整後リターンを高めることが可能となると考えております。
 
 資料5ページを御覧いただきたいと思います。損保の保険引受けは、御覧のとおり幾つかのプロセスに分けることができます。リスクの分析や評価から始まりまして、定量化、低減、保険設計、そして支払いということになりますけれども、これらを大きくまとめますと、冒頭にも御覧いただきましたリスクアセスメント、リスクコントロール、リスクファイナンス、この3つになってまいります。私ども損保業界は、これら一連の活動によりまして、お客様並びに社会全体のレジリエンスの向上に貢献するべく、日々、努力をしているところでございます。ここで注目をいただきたいのは、レジリエンスの向上は社会のプラスのインパクトを生んで、また、企業の事業に対する投資行動を促すことにつながりまして、これらを通じて、企業、あるいは企業活動に対するファイナンスのリスク調整後リターンを改善することが期待されるという点でございます。
 
 資料6ページを御覧ください。ここからは、先ほどのリスクアセスメント、リスクコントロール、リスクファイナンスそれぞれについて、東京海上グループの実例を基に御紹介したいと思います。
 
 まず、リスクアセスメントについてでございます。東京海上ホールディングスでは、リスクモデル、あるいはストレステストを活用することによりまして、リスクの定量化に取り組んでおります。とりわけ、自然災害リスクにつきましては、最新の知見を収集しながら、継続的に高度化を行っているところでございます。
 
 資料7ページを御覧ください。リスクコントロールにつきましては、営業担当者がアンダーライターと連携して行うリスクサーべイに加えまして、東京海上日動リスクコンサルティングを通じまして、御覧いただいているような自然災害リスク評価、自然災害リスク低減対策、こういったコンサルティングサービスを提供しておるところでございます。
 
 資料8ページ、リスクファイナンスについてでございますけれども、グリーン関連プロジェクトに対する保険引受けの例を紹介いたします。ここでは、一例としまして、私ども東京海上日動の洋上風力発電事業に関する取組を御紹介いたします。
 
 御覧のとおり、2013年頃から本格的な取組を開始しておりまして、国内の洋上風力発電の実証機の保険引受けをはじめとしまして、欧州における海外のプロジェクトにも参加をしてまいりまして、発電設備の新規建設等にも補償を提供しておるところでございます。最近では、お客様に包括的な補償を御提案するパッケージ商品の開発にも取り組んでいるところでございます。
 
 資料9ページを御覧ください。このほか、東京海上グループでは、国内外でのイニシアチブ活動を通じまして情報収集を行うとともに、TCFD提言に沿った気候関連情報開示の方法論づくりに貢献をしております。また、TCFDコンソーシアムに関しましては、東京海上ホールディングスばかりでなく、損保協会としても参加をしておりまして、業界としてもTCFD提言への賛同の姿勢を示しているところでございます。
 
 資料10ページですけれども、本日のまとめでございます。これまで紹介をさせていただきましたとおり、損害保険ならではの役割発揮としましては、リスクアセスメント、リスクコントロール、リスクファイナンス、この3つがございます。我々損保業界としましては、お客様や社会に寄り添いながらこれらを提供することで、持続可能な環境、社会の実現に向けました事業活動を支えていく努力、すなわちエンゲージメント、これが何よりも重要ではないかと考えているところでございます。これによりまして、お客様や、お客様が所在をする地域社会のレジリエンスを高めると同時に、そこにファイナンスを提供する投資家、あるいは金融機関の皆様から見たリスク調整後リターンの向上に貢献をすることができるのではないかというふうに考えております。今後、図に示しましたような投資家、金融機関と連携をしましたエンゲージメントの在り方について検討を深めていくことも重要な論点の1つではないかと考えております。
 
 私からの説明は以上となります。ありがとうございました。
 
【水口座長】  ありがとうございました。やはり損保業界は、リスク管理の専門家ということだと思います。
 
 リスクという側面は、このサステナブルファイナンスにおいて、気候変動はもちろん、それ以外のサステナビリティを考える上でも重要なキーワードだろうと思います。一方で、藤井様がおっしゃられた統合リスク管理におけるリスクと、今、半田様がおっしゃられたリスクとでは、「リスク」という言葉で重なる部分もあろうかと思いますが、重なっていない部分もあるような気がいたします。この辺、リスクをどう捉えて、金融の中でどんなふうに消化していったらよいのか、重要な議論になろうかと思います。
 
 では、皆様から、ここから先は御自由に御発言いただきたいと思います。1人、1、2分ぐらいでお願いします。では、どなたでもどうぞ。
 
 小野塚様、どうぞ。
 
【小野塚メンバー】  藤井さん、中村さん、半田さん、大変分かりやすい御説明ありがとうございました。私も理解が大変進みました。
 
 開示とかシナリオ分析、それから開示の標準化が重要ということで、グローバルのスタンダードやフレームワークが参照されていたと思います。これに関して2点御質問がございます。
 
 まず、グローバルのフレームワークを、どの程度、日本でアダプトすることが可能か、それにより、日本におけるインプリメンテーションのスピードが上がるのかという点、また、それをインプリする段階で、海外のフレームワークを日本で評価とか現地化する、そのフィルタリング機能とか組織があるといいと思うんですけれども、そういった組織に必要な要素は何だと思われますでしょうか。どなたでも結構ですので、御意見、お聞かせいただけたら幸いです。
 
【水口座長】  声がちょっと聞こえにくかったんですけれども、フィルタリングの前のところ、何とおっしゃったのですか。
 
【小野塚メンバー】  質問のところを繰り返します。グローバルフレームワークがどの程度アダプトすることが可能か、それにより日本におけるインプリメンテーションがどの程度加速できるのかというのが1つ目で、またそれをインプリする段階で、海外のフレームワークを評価、日本化するに当たって、その機能、あるいは組織に求められることは何でしょうかという質問です。
 
【水口座長】  ありがとうございます。今、電波が安定しました。
 
 リスク管理についてのグローバルフレームワークという意味ですよね。
 
【小野塚メンバー】  開示やシナリオ分析、それから、開示の標準化とグローバルスタンダードやフレームワークについてです。
 
【藤井メンバー】  では、藤井から、キックオフということで。ご質問は、私が示した5つのパーツということの中に含まれる要素だというふうに思います。
 
 まず、開示につきましては、本会議でも既に何回か話題が出ているところで、TCFDを重視しながら、それに全くのっとるのか、バリエーションをつけるのかというところが論点だと思いますけれども、既に多くの企業さんが、金融機関も含めてTCFDを賛同して目指しているという方向性からすると、グローバルな動きを採用しても、それほどのずれはないのではないかというふうに思います。
 
 シナリオ分析につきましても、先ほど私のプレゼンで説明をしたNGFSの3つのシナリオというのは、実務家が読んでいてもそれなりに何となくうなずけるところがあるようなシナリオになっていますので、これらのシナリオで進めていくという方向性自体には、海外や国内も含めて大きな異論は、私の知る範囲ではあまり聞いていません。もちろん今後それを深掘りをしますと、個別のパラメーターをどう設定していくかというところは各国ごとに異なる動きが出ていると思います。
 
 恐らく論点になるのは、やはりタクソノミーだと思います。EUのタクソノミーが白黒だというのはここでも議論になったところですけれども、白黒として表現されているEUのタクソノミーをそのまま使うのか、あるいはマーク・カーニーが言う、いわゆる「フィフティ・シェイズ・オブ・グリーン(「グリーン」の50の色合い)というものを考えていくのか、ということについては、EUであっても、現在の自動車規制を見ると、徐々に進めていく、漸進的な手法を採用していることからしても、白黒が全てではないというふうに個人的には思います。
 
 以上です。
 
【水口座長】  ありがとうございました。小野塚様からチャットにも書き込んでいただきましてありがとうございます。
 
 大きなフレームワークは国際的に共通化していきながら、個別の論点では日本固有の特徴が出てくるということなのかなと思いますが、ほかにいかがでしょうか。
 
【林(礼)メンバー】  よろしいでしょうか。林です。
 
【水口座長】  お願いします。
 
【林(礼)メンバー】  今、損保協会様のお話を伺って、蓄積されたノウハウがリスク管理とかに活用できるというのはなるほどと思い、すごく興味深く伺ったんですが、そこで質問なんですけれども、全銀協さんのほうの資料になるんだと思うんですけれども、11ページの資料で、今後の注力領域ということで、研究開発実証段階というところが、これからいろいろと政府のバックアップも必要だというようなお話があったかと思うのですが、損保協会さんの観点で、分析ができるというところについては、例えば洋上風力の先ほど実例がありましたけれども、どのぐらいの段階からですと、皆様の、今、知見が生かせる状態にあるのか、かなりアーリーステージのところから分析ができるのかというところ、ぜひ伺わせていただければと思います。
 
【水口座長】  半田さん、いかがでしょうか。
 
【半田メンバー】  半田でございます。御質問いただきましてありがとうございます。
 
 かなりケース・バイ・ケースのところがございますけれども、先ほど、私どもの資料で、8ページです。8ページのところに洋上風力の実例というのを載せております。それで、このページの中に、下の枠のほうのところに、実は保険の総代理店でGCube社というのを買収したという記載がございます。これ、どういう意味があるのかというふうに思われる方もいるかと思うんですけれども、実は保険の業界というのは、再保険のマーケットを通じて世界中にネットが張られてございます。このGCube社というのは、私どもが買収してグループに入れた代理店なんでございますけれども、いわゆる再生可能エネルギーに特化した保険代理業をやっていまして、世界各地の最先端の再保険会社とつながりがございます。各再保険会社のその専門、その道の専門家のアンダーライターとつながっております。
 
 私どもは、こういう先端技術についての保険のプライシングということは、まさに極めて重要な問題でありまして、国際的な再保険のネットワークで、ある再保険会社がキャパシティの提供を絞ってくる分野であるとか、あるいは物すごく高いレートを提示する技術とかというのは、やはりそういう評価だということであります。
 
 再保険マーケットのプライシングというものを通じて、リスクがより客観化されるというところがございまして、これは単に日本にとどまっている日本の技術ということだけではなくて、やはり欧米、あるいは各地の再保険ルート、こういったところの、いわゆる保険のマーケットを通じて技術の見極めが進んでいくという、こういう観点がございます。
 
 いずれにしましても、技術に関する目利きの情報ネットワーク、それに対しての適切なプライシングをしてくれる、相対といいますか、こういうルートを持っているということは、保険にとっての強みになってくるのではないかなというふうに思っております。
 
 以上です。
 
【林(礼)メンバー】  ありがとうございます。非常に勉強になりました。
 
【水口座長】  ありがとうございます。この新技術に対するリスクをいかに分け合うかというのは、そもそも金融の最も基本的な機能ですので、うまく活用していければと思います。
 
 ほかにいかがでしょう。はい、では井口さん、田代さんの順番でお願いします。
 
【井口メンバー】  私、2回目なので田代さんのほうで。
 
【水口座長】  ありがとうございます。田代さんからお願いします。
 
【井口メンバー】  次でお願いします。
 
【田代メンバー】  すみません。ありがとうございます。
 
 どちらかというと全体的なお話になってしまうと思いますが、ただ今お伺いした皆様のお話については、私も勉強不足なところがあったので大変参考になりました。同時に、前回もコメントさせていただきましたが、現状では、例えば井口メンバーとか投資家の皆様は、フィデューシャリー・デューティーの観点で、国内に限らず海外とか色々な投資先を見なければいけないと思います。したがって、日本の国内のプロジェクトにどのような金融機関が買える商品を開発できるかというのが重要となっており、銀行業界も損保業界も生保業界も証券業界もみんなで力を合わせて商品を作らなければいけないなというのを実感しております。水野さんが第1回目の会合でいらしたときに、必ず商品を作ってくださいとおっしゃっていたのは、その意味合いがすごく強いのだと思います。このままいくと、海外には色々な商品ができるものの、国内向けのプロジェクトの商品ができないといった状況を招くことになり、そこをすごく訴えていたような気が致します。そういった意味でも、この有識者会議での議論は大変重要だということを、改めて認識しましたので、共有させていただきたいと思いました。
 
 ありがとうございます。
 
【水口座長】  ありがとうございます。おっしゃるとおりで、商品、作らなきゃいけませんよねという感じですね。
 
 では、井口さん、お願いいたします。
 
【井口メンバー】  ありがとうございます。3名の方のプレゼン、どうもありがとうございました。最初、中村委員の御説明にあった生保協会のアンケート調査についてコメントさせていただきたいのですが、この調査はすごくいい調査で、私もよくいろいろ示唆をいただいております。
 
 まさにおっしゃったように、開示のところが問題であるということが示唆としてあると思います。また、ホームページにあります2019年版の投資家向けアンケート集計結果の54ページに、ESG投融資に向けて行政に期待することというところで、2番目の34%を大きく引き離して、73%の投資家が企業情報の開示推進を希望しているというようなこともありますので、開示がESG投融資において1つの大きなポイントになってくるというふうに思います。
 
 媒体のところで、今日、あまり議論する時間はないとは思いますが、1つだけインプットをさせていただきます。この調査では統合報告書となっております。ただ一方、金融庁がやられているガバナンスコードの改訂作業の中で、2月15日のフォローアップ会議にICGNというグローバルの機関投資家団体から意見書が出ておりまして、これ15ページぐらいの、すごく長い意見書ですが、気候変動に関する情報開示という項目もあって、気候変動の取組を、投資家にとって企業価値創造プロセスなど、必要な情報が集約されているアニュアルレポート、有価証券報告書に開示してほしいということが明確に記載されております。
 
 ですので、ここの生保協会の調査対象は国内投資家中心、グローバルにも目配りされている方も20%程度いるというふうには理解しておりますが、一方で、ご説明したようなグローバル投資家の意見もあるということをインプットさせていただきます。
 
 もう一つですけれども、藤井委員がご説明されたプレゼンに対する小野塚委員の御質問のところです。今後、金融機関含めて株主総会で、気候変動についての株主提案が多くなってくると思います。昨年はメガバンクさん1つだったと思いますが。ここには、当然、海外投資家も入ってくると考えますが、彼らの要求しているのは、主に開示のところで、藤井委員から御説明あったようなTCFDに基づいた開示となってきます。そうするとここは日本独自というのはあまり強調しすぎずに、グローバルな枠組みで開示したほうが、企業にとっても、投資家にとっても望ましいのではないかと思っております。
 
 以上でございます。
 
【水口座長】  ありがとうございました。
 
 高村先生から手が挙がっているということで、高村先生。
 
【高村メンバー】  すみません、ありがとうございます。藤井様、中村様、半田様、どうもありがとうございました。
 
 コメント2つと1つ質問なんですが、1つ、生保協会の中村様の御報告のスライド8、協働エンゲージメント等も大変面白かったんですけれども、スライド8にあります3つの課題認識というあたりは、多分、これまでの議論の中の共通した課題認識を非常にうまく的確に示してくださっているように思いました。ありがとうございます。
 
 それから、損保協会の半田様のところで大変面白かったのは、やはり保険業のネットワークを通じたリスク評価、あるいはリスクの客観化といったような、技術リスクを例にやってくださったかと思うんですが、これも大変興味深く思います。
 
 質問1つは、小野塚さんの御質問、それから先ほどお話しいただいたところに関わるんですけれども、今、リスク評価をされるときに、グローバルシナリオを使って分析をされているケースが多いと思うんですけれども、ある意味、日本の特殊性というものを反映したシナリオというのは必要がないのかという御質問です。恐らく一番典型的に出るのは物理的リスクのほうだと思うんですけれども、その意味で、恐らくお三者、特に生保さんと損保さんだと思いますが、その点についてお尋ねいたします。
 
 以上です。
 
【水口座長】  ありがとうございます。日本の特殊性、物理的リスクを考えた特殊性というのは、どうでしょう、中村さんに聞いたらいいですか。半田さんに聞いたらいいですか。半田さん、いかがでしょう。
 
【半田メンバー】  半田でございます。
 
 日本におきまして火災保険を提供しております保険会社としましては、まさに死活問題のところでございます。昨今の台風被害をはじめとして、非常に日本の近海の海面温度が確実に上昇していますので、こういったものに伴っての激甚化、何かが起きたときに非常に災害が激しくなる、こういった現象が起きているということは、傾向として確かに見えるかと思います。この状況を考えた場合に、私ども、長期的にも、中期的にも、やはり日本の固有の事情というのは織り込んでいく、見立てとして織り込んでいくという必要があると、本業の面からも思っておるところでございます。
 
【水口座長】  ありがとうございます。
 
【藤井メンバー】  よろしいですか。ありがとうございます。高村先生、半田委員、ありがとうございます。
 
 半田委員からの御説明は、リスクと機会の、機会のほうからのコメントと思いますが、シナリオ分析の状況につきましてコメントさせていただきます。シナリオ分析については、メガバンク中心にすでに取り組んでおられ、その中の物理的リスクにおきましては住宅ローン、移行リスクにつきましてはエネルギー産業を取り組まれましたけれども、IEAのワールド・エナジー・アウトルック で示しているような、地域ごとの影響を織り込んだ形で、日本における影響の算出をトライしておられるので、そういう意味では単純なグローバルワンシナリオではなくて、地域特性を織り込んだ分析結果を採用しているというふうに理解をしております。
 
 以上です。
 
【水口座長】  ありがとうございます。
 
 今日はまだ、岸上様からお声を聞いていないのですが、岸上さん、もし何かコメントがあればいただいて、その後、吉高さんに。
 
 岸上さん、いかがですか。
 
【岸上メンバー】  ありがとうございます。私も皆様の本日のプレゼンから、いろいろと学ばせていただきました。ありがとうございました。
 
 では、1つだけ、個人的な素朴なコメントをさせていただければと思います。藤井様のプレゼンの中で、NGFSへの言及があったと思いますが、日本でもこちらに正式に賛同しているかと思います。一方、海外の傾向と比較して見ておりますと、日本としての明確なスタンスが確認できない様に見受けられます。そうした中、中央銀行のほうで何らか明確なメッセージを発信されることによって、市場関係者への大きなインセンティブと背中押しになるのではないかと思いましたので、コメントとさせていただきます。
 
【水口座長】  ありがとうございます。
 
 吉高様から、今、手が。
 
【吉高メンバー】  ありがとうございます。今日は気候変動リスク評価のこと、大変勉強になりました。損保協会の半田様からのご説明で、レジリエンスのリスク評価について、大変よく分かりました。一点、藤井様にですが、移行リスクについて、例えば座礁資産に対するリスクに関して、アセマネやアセットオーナー、銀行などが、それぞれ評価しなければならないのかという点について、御意見をいただければと思いますが、いかがでございましょうか。
 
【藤井メンバー】  では、私から。私のプレゼンの中のシナリオ分析は、シナリオをどう置くかが全てということになりますので、シナリオによりまして、急な政策変更で移行リスクが顕在化するのか、あるいは、整斉と政策変更していけば移行リスクは小さいといったところは、シナリオの置きに全てかかっているということだと思います。そういう意味では、NGFSは一つ、真ん中の②のシナリオで移行リスクが相応に大きいシナリオというのを定義していますので、これをそのまま採用するのか、あるいはこれに、バリエーションを考えるのかという議論は、今後、官民で行われると思いますけれども、そういう何らかの政策変更や、その急変も含めたシナリオを議論していくのだと思います。一度シナリオが固まれば、その先は改善に向けてどんどん手法が進んでいくというふうに思っております。
 
 以上です。
 
【水口座長】  ありがとうございます。ぜひ「秩序立った移行」のシナリオにしていただきたいですよね。
 
 ほかにいかがでしょうか。
 
【渋澤メンバー】  私もいろいろリスクの考え方について勉強になりました。御発表ありがとうございます。
 
 お話をお伺いしていますと、ご説明されたようなリスクの考え方というのは、多分、どの国でも通じるグローバルスタンダード的なことだと思います。そのような共通なスタンダードをベースに御判断されているんであれば、サステナブルファイナンスの取組が、日本と比べて欧米、あるいは中国と同じだと思いますか。それともちょっと違うのか。違うのであれば、そこの理由は何なんでしょう。リスクをマネジメントする基本は同じであるので、同じように行動されているのか、それとも違うのか。もし御意見があればお伺いしたいです。
 
【藤井メンバー】  どちらかというとリスクと機会の、機会のほうの話かもしれないんですけれども、私が欧米の方々等の動きを見ていると、どうもやはりここに非常な機会を見いだしておられているようで、フロントサイドもミドルサイド、リスクサイドも、非常に多くの方々が、今、中に入ってきているという印象はございます。その勢いが非常に幾何級数的に増えているという印象はございます。
 
 以上です。
 
【水口座長】  欧米は機会を取りに行っている。
 
【藤井メンバー】  相対的にそのような気はしています。
 
【水口座長】  そろそろ時間ではあるのですけれども、もし言い残したことがあれば、どなたでも構いません。よろしいでしょうか。
 
 大変いろいろな幅広い御議論をしていただきましてありがとうございます。本日は、投資の機会の話からリスクの話まで、幅広く扱っていただきました。金融の機能を使ってリスクをうまく分散させながら、機会にきちんとお金を出していく。今、欧米は大分取りに行っているという話もございましたので、日本もそこに進まなければと思う一方、特に移行リスクのシナリオがどういうものになるかは、途中で足達さんがおっしゃられた、そもそも産業構造がどんな勢いでどんなふうに変わっていくのかという、社会全体の進み方と裏表の関係にあるわけですので、そこも合わせてよく考えていく必要があると思います。それは、もちろん有識者会議で決められることではありませんが、どういうものがあればどういうことが起こるのかという整理はできるかと思いますので、ぜひ頑張っていきたいというふうに思います。
 
 それでは、そろそろ定刻となりますので、討議はこの辺で終わりにさせていただきたいと思います。本日の会合で言い足りなかったことや補足したいことなど、もし追加の御意見がある場合には、後ほど事務局に書面で御提出ください。各メンバーの方に共有をさせていただきたいと思います。
 
 それでは、最後に事務局のほうから御連絡等ございましたらお願いします。
 
【岡田総合政策課長】  次回の有識者会議は3月25日木曜日に開催させていただきたいと思っておりますが、改めまして事務局より御案内させていただければと思います。ありがとうございました。
 
【水口座長】  ありがとうございます。
 
 それでは、以上をもちまして本日の会議を終了したいと思います。本日も御協力いただきましてありがとうございました。お疲れさまでした。
  

―― 了 ――

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