文化審議会著作権分科会基本政策小委員会(第3回)

日時:令和3年8月31日(火)

10:00~12:30

場所:オンライン開催

議事

  1. 開会
  2. 議事
    • (1)関係者からのヒアリング
    • (2)自由討議
    • (3)その他
  3. 閉会

配布資料

資料1
第21期文化審議会著作権分科会基本政策小委員会(第3回)ヒアリング出席者一覧(133KB)
資料2
第21期文化審議会著作権分科会基本政策小委員会(第3回)ヒアリング資料一式(2.8MB)
資料3
簡素で一元的な権利処理に係るこれまでの主な意見(670KB)
参考資料1
第21期文化審議会著作権分科会基本政策小委員会委員名簿(135KB)
参考資料2
第21期文化審議会著作権分科会基本政策小委員会(第1回・第2回)における委員意見の概要(572KB)
参考資料3
第21期文化審議会著作権分科会基本政策小委員会今後のスケジュール(213KB)

議事内容

【末吉主査】  ただいまから文化審議会著作権分科会基本政策小委員会(第3回)を開催いたします。

本日は御多忙の中、御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。

本日は、新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、基本的に、委員の皆様にはウェブ会議システムを利用して、御参加をいただいております。委員の皆様におかれましては、ビデオオンにしていただくとともに、御発言いただく際には、御自分でミュートを解除して御発言をいただくか、事務局でミュートを解除いたしますので、ビデオの前で大きく手を挙げてください。

議事に入ります前に、本日の会議の公開につきましては、予定されている議事内容を参照しますと、特段非公開とするには及ばないと思われますので、既に傍聴者の方々にはインターネットを通じた生配信によって傍聴をいただいているところでございますが、特に御異議はございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【末吉主査】  ありがとうございます。では、本日の議事は公開ということで、傍聴者の方々にはそのまま傍聴をいただくことといたします。

それでは、事務局より配付資料の確認をお願いします。

【小倉著作権課長補佐】  事務局でございます。配付資料につきましては、議事次第に資料一覧を掲載しております。御確認いただければ幸いです。

以上となります。

【末吉主査】  それでは、議事に入ります。本日の議事は、議事次第のとおり、1から3の3点となります。早速、議事1の「関係者からのヒアリングについて」に入りたいと思います。事務局より簡単に説明をお願いします。

【小倉著作権課長補佐】  資料1を御覧ください。

本日は13の関係団体に発表いただきます。関係団体の皆様には、前回に引き続き、事務局よりお示しした、お伺いしたい内容に対応して資料を作成いただいております。御発表者様におかれては、事前に事務局よりお願いした発表時間に御留意いただくようお願いします。時間になりましたら、事務局よりチャット機能にてお知らせしますので、御発表をおまとめいただくようお願いします。

以上です。

【末吉主査】  ありがとうございました。

まずは、授業目的公衆送信補償金等管理協会様より事例を紹介いただきます。授業目的公衆送信補償金等管理協会様には、本年4月から分野横断して本格適用されております、授業目的公衆送信補償金制度の現状と課題などについて、御意見をお聞きしたいと思います。それでは、よろしくお願いします。

【授業目的公衆送信補償金等管理協会(髙杉)】  おはようございます。授業目的公衆送信補償金等管理協会の髙杉と申します。本日は授業目的公衆送信補償金制度の現状と課題について、発表の機会をいただきまして、ありがとうございました。資料2-1にしたがいまして、御説明をさせていただきます。

2ページ目を御覧ください。この制度は、2018年の著作権法改正によって創設されまして、昨年の4月28日から施行されております。著作権法35条の具体的な運用に当たりましては、関係当事者である教育関係者、有識者、権利者が参加しております、著作物の教育利用に関する関係者フォーラムが、いわゆるガイドラインとして共通認識に達した事項を取りまとめた、改正著作権法35条運用指針を作成、公表しております。この中に用語の定義や典型例、必要と認められる限度、あるいは権利者の利益を不当に害することとなる場合の考え方などについて整理されております。

3ページを御覧ください。改正前においては、オンデマンド型の遠隔授業や授業の予習、復習を目的とした著作物を利用した教材などの公衆送信については、個別に著作権者の許諾を得る必要があったところ、改正によりまして、著作権者に補償金を支払うことによって、個別の許諾を得ることなく著作物を利用できることになったものでございます。この制度によりまして、教育現場において安心して著作物を利用することが可能となり、ICTを活用した教育の推進に資することになると理解をしております。

4ページを御覧ください。本来、補償金を受ける権利は著作権者が有するものでございますけれども、文化庁長官の指定する団体があるときは、その団体、指定管理団体のみが行使できることとなっておりまして、その団体がSARTRASでございます。

5ページを御覧ください。SARTRASは左側にありますけれども、新聞、言語、視覚芸術、出版、音楽、映像の6分野の協議会を社員としておりまして、理事等の役員はこの協議会の役員と有識者らで構成しております。

ページを御覧ください。補償金額の概要について御説明いたします。まず、本制度は新型コロナウイルス感染症の流行により、教育現場において、オンラインでの遠隔授業等のニーズが急速に高まったことを背景に、当初の予定より早く昨年の4月から施行されております。昨年度の補償金につきましては、権利者の特段の御理解を得まして、無償として申請をし、文化庁長官の認可を受けました。そして、今年度の補償金の額については、昨年の秋に補償金の支払いを行う教育機関設置者の意見聴取を受けて、文化庁長官に申請をし、昨年の12月に認可を受けました。補償金の料金体系でございますが、2通りございまして、学校種別の年間の包括料金、それから利用の都度支払う場合の料金ということになっております。この補償金の額につきましては、3年経過ごとに見直しをすることとなっております。

7ページを御覧ください。補償金の分配スキームの概要でございます。初年度となる今年度は、約1,000校から特定1か月間の利用報告を提出いただきまして、利用報告に基づき、分野ごとに著作権等管理事業者等に分配を委託することになっております。この分配を受託する団体、分配業務受託団体と言っておりますけれども、こちらが個別の権利者への分配を担うこととなっております。なお、分配業務受託団体は、自らが権利管理の受託を受けているかどうかに関わらず、当該分野の権利者の利益を代表し、当該権利者への補償金の分配を網羅的に遂行できる能力を有すると認められる著作権等管理事業者、または権利者団体でなければならないこととしておりまして、その管理手数料の率につきましても、SARTRASの理事会において承認が必要となっております。また、包括的に徴収した補償金額の2割、こちらは文部科学省令で定められておりますけれども、著作権の保護や著作物の創作、それから振興、普及に関する事業、いわゆる共通目的事業に支出することが法によって義務づけられております。

具体的な事業につきましては、SARTRAS内に有識者を入れました共通目的事業委員会を設置し、今月より検討を開始しております。なお、権利者の捜索は10年間行うこととしておりますけれども、判明しない場合は、その補償金は共通目的基金に組み入れるということとしております。

8ページを御覧ください。現在の申請状況でございます。SARTRASにおきましては、TSUCAOというシステムを設けまして、教育機関設置者が規約の承認を経て登録、申請、それから見積書、請求書の発行まで全てペーパーレスかつオンラインで行える窓口を整えております。ただし、教育機関設置者によっては、押印した見積書や請求書の紙での発行や契約書の締結を求めるところが、残念ながら、まだ少なからずあるという現状でございます。申請状況でございますけれども、4月より教育機関設置者から登録及び申請を受け付けておりまして、7月末の時点で1,876の設置者が登録をし、申請件数も右の表の中ほどにございますけれども、約1万7,000件、申請率約30%ということで順調に推移をしております。ちなみに、7月末までの申請に基づく補償金の請求額は28億円余りということになりました。個別の権利者の許諾が要らず、料金もあらかじめ明示されており、補償金の支払い先も1つでありますから、利用者側の取引コストが大きく減少したものと考えております。

9ページを御覧ください。今後の課題でございます。収受した補償金の分配でございますけれども、教育機関の負担を考慮して、1,000校に絞って利用報告をお願いすることとしておりますけれども、利用報告を分配用データとして利用できるよう、SARTRASにおいて整備することが必要でございます。特にインターネット上にある著作物の利用が相当割合あると推定されることから、そのデータを整理して権利者を特定するまでの作業に相応のコストを要するものと考えております。将来的には、教育現場で利用できる著作物のデータベースの構築といった検討が必要になるのではないかと考えております。収受した補償金が合理的なコストで、透明性を持って個々の権利者に分配される。それまでがSARTRASの役割でございます。1回目の分配が来年の9月でございますので、そこまで実現して、初めて制度として有効に機能していると評価されることになると考えておりますので、その実現に向けて、引き続き努力してまいりたいと思います。

以上でございます。

【末吉主査】  ありがとうございました。

ただいまの御説明につきまして、御質問がありましたら御発言をお願いいたします。いかがでございましょう。倉田委員、お願いします。

【倉田委員】  失礼いたします。長崎大学の倉田と申します。非常に分かりやすい説明をしていただき、ありがとうございました。私から2点、質問させてください。

1点目はスライドの7枚目にある補償金の分配スキームの概要の中のサンプル方式による利用報告というものがあったんですが、これは具体的にどのような内容で報告をされているのかという、そこの具体内容を教えていただきたいのが1つ。

もう1点がスライドの9枚目、最後のスライドになりますけれども、今後の課題の中で教育機関にかかる作業負荷の軽減ということがあるんですが、もしかしたら、学校現場から直接何か、そういう作業負担に関する意見などがあったのかと、そういうことがあったのかということも併せてお聞かせいただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

【授業目的公衆送信補償金等管理協会(髙杉)】  それでは、SARTRASの寉田常務のほうから回答させていただきます。

【授業目的公衆送信補償金等管理協会(寉田)】  SARTRASの寉田と申します。

最初の御質問ですけども、基本的に13項目、学校には御回答をお願いしています。SARTRASのウェブサイトでも公開しておりますけれども、教科名・授業の科目名、生徒の学年、履修者の人数、著作物の入手・掲載元、書籍から利用したのか、雑誌から利用したのかとかそういうことです。あと、著作物の分類、これは文字・文章、写真、図表、楽譜とかです。このほか権利者名、発行・制作元、発売時期、利用した箇所・分量、個別の製品番号、これは書籍ですとISBNがあります。あとは備考欄として自由に権利者の特定ができるような項目を記入していただくことにしています。

あと、昨年度、私どもは全国で100校を対象に試行調査を行いまして、その中でも1校に1か月分の報告をお願いしましたが、入力が負担だという声もありましたので、なるべく負荷を軽減する形、全量ということではなくてサンプル調査で、今年度は約1,000校という形で、今年度は配慮させていただいたつもりでおります。

【倉田委員】  ありがとうございました。すいません、追加して、関連して1つ、もう一回、質問してよろしいでしょうか。

【末吉主査】  どうぞ。

【倉田委員】  サンプル方式の利用報告の件なんですけれども、恐らくその報告というのは教師側が行うものだとは思うんですけれども、例えば、今の教育の在り方として、教師が著作物を使うのではなくて、著作権法第35条にもありますとおり、授業を受ける者が著作物を使う、要するに子供たちが著作物を情報収集して、処理して発信するという学びが近年では多く行われておりますけれども、子供の著作物の扱いというのも利用報告にも含まれているのかどうかというのをお聞かせください。よろしくお願いいたします。

【授業目的公衆送信補償金等管理協会(寉田)】  報告は学校にお願いしていますので、先生にお願いしていると思いますけれども、私どもは1か月に学校で授業目的公衆送信されたものを全て報告してくださいとお願いしています。生徒さんのほうで教材を作って、あるいは大学で言えばゼミとかで学生さんが作って、ゼミ生に配布すると、そういうものは先生も把握されているはずですので、それは御報告いただいていると、お願いしていると理解しています。

【倉田委員】  ありがとうございました。参考になりました。

【授業目的公衆送信補償金等管理協会(寉田)】  よろしくお願いいたします。

【末吉主査】  ほかにいかがでしょうか。太田委員、どうぞ。

【太田委員】  スライドの9枚目だったと思いますけれど、利用報告、著作物の精度向上、特定の精度向上などというところに,フィンガープリント、AI技術の活用,とありますが、具体的にどういう形で実施していらっしゃるか教えていただけると助かります。

以上です。

【授業目的公衆送信補償金等管理協会(髙杉)】  すいません。その点は事務局長の野方のほうから説明をさせていただきます。

【授業目的公衆送信補償金等管理協会(野方)】  野方と申します。よろしくお願いいたします。

現状では、残念ながら、活用できている状況ではございません。先ほど寉田のほうから申し上げた報告も、エクセルのシートに今の13項目が並んでいて、そこに入力してくださいということで、完全なアナログ、手作業という状態になっています。ですが、公衆送信をするということは、もともとの著作物はデジタル化されているということですし、教科書もデジタル教科書がありますので、今後、そういったデジタル化されたものを利用報告にどう生かすかという観点から、教育の現場の先生方の入力の手間を省き、また、権利者としても、特定の手間を軽減できるような技術の活用を目指して、今、検討中という状況でございます。

以上でございます。

【太田委員】  どうもありがとうございます。

【末吉主査】  ほかにいかがでございますか。よろしいですか。ありがとうございました。

【授業目的公衆送信補償金等管理協会(髙杉)】  ありがとうございました。

【末吉主査】  それでは、ここから権利者団体等からのヒアリングを順次、進めてまいります。時間の都合上、前半と後半に分けて意見聴取と質疑を行いたいと思います。前半は資料1のうち、日本脚本家連盟様から日本漫画家協会様まで、順次、御意見を伺います。

それでは、日本脚本家連盟様、お願いいたします。

【日本脚本家連盟(金谷)】  おはようございます。日本脚本家連盟の金谷祐子でございます。よろしくお願いいたします。

私ども連盟は、文字どおり、プロの脚本家の団体で、今年の3月で創立55周年を迎えました。私どもの事業としては大きく3つございます。1つは著作権の管理事業、2つ目は会員への福利厚生事業、そして、3つ目が教育事業でして、これは脚本を書きたいという人を対象に現役のプロが1から教える教室を開いているもので、あいにく事業としては、会員のボランティア精神によるところも大きいのですが、良質な作品を生み出すには、まずは優れた才能の育成が欠かせないとの思いで長年続けております。事実、この教室からプロになった人も多く、現在、連盟の会員数は約1,700名、既に亡くなった700名余りを合わせ、約2,400名から著作権を信託され、その管理に当たっております。

脚本家全体から見た管理率は、設問1の回答にありますように約55.45%、同じ脚本分野のシナリオ作家協会さんと併せ、現在、プロの約7割がいずれかの団体の構成員であり、残る3割が非構成員、いわゆるノンメンバーということになるかと思います。こうしたノンメンバーには、折に触れ、加入の働きかけをしておりますが、近年は知り合いのプロデューサーにお尋ねしても、個人情報ということで連絡先をなかなか教えていただけないばかりか、中には、連盟やシナリオ作協の会員には発注しないようにといったオーダーを制作会社に出しているという話も耳にいたします。ですが、ノンメンバーの著作物は、ともすれば権利者不明のオーファン作品になるケースが多くなると思われますので、権利者のみならず、利用者にとっても集中的に管理する意義と必要性は高いと考えます。

ただ、設問2の簡素で一元的な権利処理となりますと、今はまだ具体的なイメージが示されていないこともあり、果たしてUGC、いわゆるプロではない方の作品までも含めた一元化が本当に可能なのかどうか、もし一元化できたとして、我々のような既存の団体は、事によっては存在意義を失うのではないかといった懸念を覚えております。一口に権利処理、しかも簡素で一元的なと言いましても、そのためには当然ながら、膨大で多元的なデータベースの構築が不可欠です。ちなみに、当連盟では毎年、全会員を対象に過去1年間に公表した全ての作品を調査して、そのデータを会員ごとにインプットしているのをはじめ、情報誌や番組の公式ホームページなどを小まめにチェックして、日常的にデータベースの充実を図っております。また、何年かおきには、こうしたシステムそのものをハード、ソフトともに更新する必要もあり、その費用は全て連盟の会員、すなわち団体の構成員が負担していることは言うまでもありません。ですので、これは設問の4とも関わってまいりますが、非構成員に対するコンテンツ利用に関する対価還元への関与については、回答でも述べていますように、非構成員の意思を超越してまで管理することはできませんし、信託契約を強制することもできません。たとえ非構成員の同意があったとしても、それはそれで、これまで既に相応の負担を引き受けている構成員とのバランスなどを考慮しつつ、慎重に考えていく必要があるかと思います。

続いて、設問5の拡大集中許諾制度に関しては、この制度が著作者の権利制限を前提としているのだとすれば、導入には反対です。たとえ、権利制限する代わりに補償金をと言われましても、設問の6で述べているとおり、私的録音録画補償金に関して言えば、法律で権利は認められているものの、補償金の制度自体は既に機能しているとは言い難いのが実情です。現に、私的録画については、当連盟の場合、10年前、2011年当時には年間2億6,000万円ほどあった補償金が、2014年度には8,190円の入金が1件あったのを最後に、補償金は途絶えております。だからといって、世の中から私的録画行為がなくなったわけではございません。また、私的録音も御存じのように、スマホなど現在広く使用されているデジタル機器や記録媒体は補償金の対象ではないこともあって年々減少し、連盟の場合、多いときには2,000万円を超えていた補償金も、昨年、2020年度は166件で、総額20万円に届かない額となりました。もちろん該当する権利者には1円単位で分配しておりますが、正直、分配に要するコストのほうが高い有様で、私などはいつも「補償金ほど保証のないものはない」というのが口癖になっております。さらに、著作者の1人として、あえて言わせていただくならば、我々は補償金ではなく著作物の正当な使用料をいただきたいというのが本音でございます。

また、設問6の後半で述べているように、近年、動画配信サービス事業者による買取り契約が頻発しております。そのため、配信用の作品を何本書いても信託できる著作物がないので、集中管理の枠から外れざるを得ないといった若手脚本家も既にいます。こうしたことなどを含め、まずは、クリエイターの公平で公正な権利、報酬がしっかりと保障されない限り、勉強会の資料にございましたコンテンツクリエーションサイクルなるものは、肝腎なところでサイクルが途切れ、うまく回っていかないのではないかと危惧しております。

以上、回答では書き切れなかったことなどを述べさせていただきました。ありがとうございました。

【末吉主査】  ありがとうございました。

続きまして、日本シナリオ作家協会様、お願いをいたします。

【日本シナリオ作家協会(ハセベ)】  日本シナリオ作家協会のハセベです。本日はヒアリングの機会をいただきまして、ありがとうございます。早速ですが、当協会の資料を発表いたします。

まず、1ですが、当協会の脚本分野の管理率は15.3%、こちらは2017年度の実績で算出した数字です。集中管理の促進については、賛成いたします。著作権等管理事業者として、著作権者の保護と著作物の利用を円滑にし、文化の発展に寄与するためには有効であると考えます。集中管理を促進する取組としては、こちらの資料に書かれているとおりという感じです。

2ですが、今回の簡素で一元的な権利処理に関する審議については、7月19日付の文部科学大臣諮問概要によれば、拡大集中許諾制度等を基にした権利処理方策を前提とするとされています。拡大集中許諾制度の性質上、許諾権の制限を前提とした議論になる可能性を懸念します。許諾権を制限することには反対いたします。仮に拡大許諾制度が実施された場合、脚本分野に関しては、組織に属している一部を除く非構成員の大多数への対価還元の実現性は低いと考えます。一方、一元管理を行う団体についても、こちらの資料にあるような問題から構成員の不利益につながることを懸念しております。適切な対価還元の実現性は低いと考えます。

3ですが、現在の協会の取組については、こちらのとおりです。仮に窓口の統一やデータベースの構築、運営を行う場合、特定の団体に負担を課さず、国の文化政策の一環として実施していただきたく存じます。

4です。非構成員の権利承認について、法的課題の問題があるのではないかということです。非構成員の権利処理を行うことでの不公平感の問題もあるように思います。当協会は協同組合ですので、その辺は、なお気になるところです。非構成員であることのデメリットがなくなってしまって、将来的に集中管理団体の構成員が減少し、団体の維持が困難となって、かえって集中管理の抑制を招くことも懸念します。

5です。今のお話から、団体の弱体化が起こって、結果的に集中許諾制度によって著作権利用の促進が制限されることを懸念します。オプトアウトによって許諾権の実効性を確実に確保することも可能ではあるものの、実務上、著作権者は、画一的に利用条件は制限せざるを得ないと考えます。著作物の利用方法や条件はケース・バイ・ケースであり、著作権者が著作物の利用を自由にコントロールできる著作権を定めた著作権法の趣旨に反するのではと考えます。

6です。その他ということで、バリューギャップ問題について、意見させていただきます。GAFA等の大手のプラットフォームとだけではなく放送事業者、テレビ局等のプラットフォームとの間でも生じています。現在の使用料率については、2005年に権利者団体と利用者団体協議会とで、当時の未成熟であった配信市場の事情を考慮した上で取り決めた暫定料率が適用されています。2005年から暫定がずっと続いているという異常な状態なんです。配信市場も、当時と現在とは格段の変容を遂げていますので、そろそろ見直しの時期なんじゃないかと考えています。2005年当時の権利者団体と利団協との話合いの際には、行政の働きかけがあったと聞いています。現在、見直しの時期と考えていますので、また、利団協のような組織を結成して協議をするというようなことを促していただけないかと望んでおります。

以上です。ありがとうございました。

【末吉主査】  ありがとうございました。

続きまして、日本写真著作権協会様、お願いいたします。

【日本写真著作権協会(棚井)】  一般社団法人日本写真著作権協会の棚井文雄です。

当協会は1971年に設立され、2000年に著作権法改正の運動を行っていた全日本写真著作者同盟と合併したことで、写真会で唯一の著作権団体となりました。2000年初めからは、皆様、御存じの方も多いと思いますが、瀬尾太一が中心となって、著作権の保護と写真作品の利活用、そして皆様と御一緒に著作権全般にわたって活動してきました。その瀬尾は数年前より闘病中でしたが、先月亡くなりまして、急遽、私、棚井が瀬尾に代わって、お話をさせていただきます。よろしくお願いいたします。

現在、当協会は田沼武能氏を会長としまして、日本を代表する11の写真団体で構成されています。会員数は2020年9月の時点で1万8,750名となっています。2003年には、美術、グラフィック、漫画などの分野の方々と協力しまして、それぞれの会員である著作者へ、著作者ID番号の付番を始めました。アルファベット4文字、数字12桁で表記されますが、これによって所属団体、個人の特定を可能としています。当協会では、2015年にIDの重要性を再認識しまして、再付番を進めました。2018年の時点で1万3,089人の著作権者IDを管理しております。当協会は、現時点で著作権管理団体ではありませんが、複製権センター、また、SARTRASなどにおける写真分野の代表としまして、著作権者の把握率の向上に努めて、また、写真の利活用に向けた取組を進めております。

2015年の国勢調査の統計によると、全国の写真家の総数は、6万3,970人となっております。日本写真著作権協会では、当協会の写真家の加盟率を調査するために、同年2015年に会員団体の中の職業写真家に向けたアンケートを実施しました。この国勢調査の写真家という中には、職業写真家と営業写真家、また、映像撮影者が含まれているため、当協会の会員の撮影ジャンルのバランスのデータを基に、国勢調査の統計を母数としまして、この割合についても求めました。概算ではありますが、日本における写真家は1万5,000人、写真館の従事者が4万5,000人、そして、これ以外の5,000人ほどが映像、動画の撮影者ではないかという推定をいたしました。これによりますと、当協会の写真家の加盟率は、いわゆる写真家が30%程度、営業写真家については15%程度ではないかという結論に達しました。

著作権の権利の管理についてなんですが、私はしばらくニューヨークで活動していたことがありますが、ニューヨークにおいては、基本的に職業写真家はエージェンシーと契約をして、写真作家、いわゆる作品を作っているアーティストはギャラリーと契約をしております。これによって、すみ分けがしっかりされていると同時に、権利の所在についても明確になっているように感じました。日本においては、どちらのスタイルかに関わらず、いわゆるフリーの写真家、写真作家が多く、この違いも権利者の把握と管理を難しくしているのではないかと思われますが、カメラメーカーのプロサービスの写真家登録情報や、写真ギャラリーなどとの連携ができれば、現時点では難しくてもノンメンバーを含む権利者情報の把握も可能ではないかと考えられますので、この点においてはしっかり検討していきたいと考えております。

その際に、先ほどお話しさせていただきました、著作権者ID番号による管理は有効であり、当協会からカメラメーカーへの働きかけにより、現在、主要なデジタルカメラには、位置情報と同様に著作権者情報として氏名、ID番号などをExif情報という形でデータに埋め込むことが可能となっております。ただし、これらのデータベースを構築して更新をしていくためには大変なコストがかかりますので、これについては、国からのサポートが必要ではないかと感じております。

集中管理につきましては、写真に限ることではないと思いますが、利用範囲が広く、1点の作品を広範に利用することが可能であることから、現実的に無断コピー、無断利用が広く横行して、その実態を把握しにくい状況にあることは皆様、御存じのことと思います。その意味で集中管理を考えると、利用者側の著作権尊重の意識が低いことによる無断利用などに対して、権利者がその権利を守るためにも有効であるとするならばうれしいことなのですが、集中管理の態様によっては、利用促進が優先されてしまうことで、許諾権である著作権の性格を弱めることにならないのかということを危惧しております。

デジタルコンテンツ利用の円滑化の推進するのであれば、著作者の創作行為と、その作品を尊重する形での制度づくりが必要ではないかと考えています。日本における、特に作品を創作する作家と呼ばれるアーティストたちと、その作品についてですが、例えば写真の場合ですが、写真作家が作品を公表する場合のギャラリーにおいて、これまで日本では、カメラメーカーが運営するものが主体となってきました。近年では、海外に精通する方々によって様々なギャラリーが生まれておりますが、こうしたメーカーギャラリーは運営者であるメーカーの製品を使って撮った、作ったというような役割を持っておりまして、欧米とは大きく異なります。そこでは、作品プリントが販売されることがなく、作品を所有する、買う機会が少なく、そのため皆さんが作品に触れる際には販売もされていない場所で、見ることも無料、タダであるということから、デジタルコンテンツである写真においては、特に利用者の意識が低くなっているのではないかと思われています。これは写真、写真家だけに限ったことではなく、日本のアート、アーティストたちを取り巻く社会状況も同様にあると感じています。このような状況の中で、作品が利用されることによって作家が対価を得て、それによって新しい作品を生み出していくことができる、そのような社会であることがとても重要だと思います。そのことからも、繰り返しにはなりますが、作家や作品を尊重する形での制度づくりが必要ではないかと考えています。

以上となります。ありがとうございました。

【末吉主査】  ありがとうございました。

続きまして、日本美術著作権連合様、お願いいたします。

【日本美術著作権連合(あんびる)】  あんびるでございます。私どもは純粋美術と出版美術、そしてグラフィックデザインを職能とする7つの団体で構成されております。

1つ目のお尋ねに関しまして、国勢調査により推定いたしますと、日本の美術家は約10万人、美著連の組織率は、おおよそその10%となっております。美著連は権利委託管理団体ではございませんが、複製権センター、SARTRASにおきましては、美術分野の代表として活動をしております。加盟団体では、亡くなった会員についても継承者の把握に努め、オーファンワークスを新たに生み出さないための努力もいたしております。

集中管理につきましては、利用促進と違法利用の防止の意味で有効であると考えるものの、権利者の作品への思いを尊重するオプトアウトなどの制度を盛り込むことも必要ではないかと考えております。

次に、2のお尋ねに関しまして、一元的な権利処理には、網羅率の高いデータベースが必要かと思いますので、そのことへの問題提示を通しまして、懸念と期待を3つ申し上げたいと思います。

1つ目の問題は、権利者を確定する検索についてです。美術分野では、指名表示がないまま媒体に掲載されることが多いため、そもそも氏名での検索ができないケースが少なくありません。そのため、私たちは画像検索の技術開発を必要としておりますが、その開発に係るコストやマンパワーは大変大きく、美術分野のみで着手することができずにおります。

2つ目の問題は、データベースの網羅率です。全美術家の90%を占める非構成員のデータベースへの登録なくして一元的管理は実現しないと思います。しかし、組織に属さない自由を一義とする美術家が多く、登録してもらうのは簡単ではないと考えています。彼らの理解を得るには、オプトアウトを制度に取り入れて、一元的管理が画家の許諾権を制限するものではないということを示す必要があると考えております。

3つ目の問題は、委託された権利の管理についてでございます。SARTRASにおいては、管理が成熟している音楽分野に対して、まだ未成熟である視覚芸術分野が足並みをそろえるのは本当に難しいことでした。その経験から、集中管理の経験の浅い団体には、国からのサポートが必要だと感じています。データベースについてのアドバイスはもちろんのこと、団体の経営やコンプライアンスなどについても相談できる、公的で無償のアドバイザーの派遣制度などを御検討いただけましたら、大変心強く思います。

3つ目のお尋ねに関しまして、データベースの整備につきましては、オーファン委員会の検索結果やパブリックドメインの確認がとれた著作物を加えることで、権利処理の円滑化に役立つのではないかと考えております。さらに、各団体が物故者の継承者の把握に努めることができれば、将来的には、真に便益性のあるデータベースも実現できるのではないかと考えます。

4つ目のお尋ねに関しまして、非構成員に対する対価還元は、美術家の創作環境の向上に寄与するものですので、美著連が関与していくのは当然のことであると考えております。しかし、一方で非構成員のサービスにかかる費用が、彼らに支払う補償金の手数料だけでは賄い切れないという危惧もございます。データベースに記載のない非構成員の場合、利用された作品の権利者確定や口座番号等の情報収集には大きな費用がかかるからです。非構成員への対価還元の費用に手数料以外の資金が使える仕組みが必要だと考えています。SARTRASを例に取りますと、管理団体の収益における事務管理費の比率の引上げや共通目的事業基金の使途の制限の緩和、再委託先への支払いを認めるなど、お金にまつわる決まり事につきまして少々の緩和をいただければ、非構成員のサービスを維持していけるのではないかと考えます。

次に、5つ目のお尋ねに関しまして、制度設計が具体的に示されていない現時点では、2のお尋ねに記述したとおりの回答は難しいと考えられます。ただ、1つ言えますのは、利用促進という目的につきまして、権利者の許諾権を制限することで達成しようという姿勢であるのであれば、同意することはできません。一気に集中管理へと進まなくても、まずは、裁定制度を見直すことで利用促進に寄与できないか、検証していただきたいと思っています。

6について、まず、権利侵害につきまして、プラットフォーマーが著作権侵害の是正に対応するよう、制度を整備してほしいと願っております。また、海外での著作権侵害を民間の力で是正することは難しいことから、国のサポートが受けられる制度の必要性を強く感じております。

次に、SARTRAS設立を通じて、私が感じたことを申し上げます。35条で補償金つき権利制限が採択されたときには、私たちは大変喜びました。今まで創作者が黙って我慢することによって成立してきた権利制限が、これからは変わっていくと思ったからです。しかし実際には、補償金の管理団体を私たち自身のお金で作り、システムも私たち自身で作り上げることを求められました。結果的には、黙って我慢する以上の苦労を体験することになったというのが正直な気持ちです。今後、さらにこれ以上の集中管理を進めるのであれば、負担を負う協力団体に対して、国からの経済的な助成が不可欠であると感じています。

そして、最後に私が1人の絵本作家、創作者として申し上げたいことがございます。私の仕事がほかの仕事と大きく異なっている点は、ゼロから1を生み出す、無から有を生み出すという点だと考えています。私たちは作品に大変強い思いやメッセージを積み込んで、世に送り出しています。利用促進は国の発展で必要なことだと思いますが、どうかそんな創作者の思いも想像していただき、画家が本来的に持っているはずの許諾権に、どうか配慮をお示しくださいますようにお願いをいたします。

私からは以上でございます。ありがとうございました。

【末吉主査】  ありがとうございました。

続きまして、日本美術家連盟様、お願いいたします。

【日本美術家連盟(池谷)】  日本美術家連盟の池谷です。よろしいでしょうか。

私どもは、昭和24年に設立された、美術家、絵画、彫刻、版画等の専門美術家を会員とする、現時点では4,500名ほどを会員に擁する美術団体になります。活動としては権利擁護、それから美術家の福利厚生の向上、国際交流、そういった活動しております。権利擁護の一環として、当初より著作権の啓蒙普及、それから会員さん、非会員さんの権利を預かって管理する業務、あるいは、利用者、権利者双方を仲立するような業務、そういったものを展開してまいりました。現在では、管理事業法に登録してある管理事業団体ということになります。業務規模は決して大きくありませんが、長年やってきた経験から、美術分野について、私どもは造形美術ということになりますが、今回のヒアリングに参加させていただきました。この機会をいただきましたことを改めて御礼申し上げます。

設問1、分野における著作権の集中管理の状況ということですが、美術分野は管理率が非常に低いのが現状です。管理事業者は複数存在しますが、著作権者から管理事業者に積極的に委託しようとする動機づけが乏しいと考えられます。集中管理の促進について、利用の促進とデジタルネットワーク環境における著作権者の利益の保護の観点から、基本的には賛成です。ただし、集中管理は管理事業法に言う1人型を基本とすると考えられることから、個々の管理者が独自の判断や条件を持って著作物の利用に対応するという点からは制約がありますので、集中管理の促進が私権の抑圧につながることのないよう注意する必要があると考えております。

現在の状況では、最初の問題、課題は権利者へのアクセスルートが明確ではないということであり、さらに、もう一つの問題として、一元的な管理の課題があると考えております。当連盟は、規模は小さいものの1人型と非1人型を併用する著作権管理事業により、また、権利者情報の探索をお手伝いすることによって、権利者へのアクセスが容易となるよう努力しております。

設問の2、簡素で一元的な権利処理への期待についてですが、簡素で一元的な権利処理の仕組みが権利処理の手間やコストを削減し、しかるべき収益を個々の著作権者、著作者にもたらすのであれば、還元すべきことと考えられますが、しかし、現時点で、簡素で一元的な権利処理の仕組みの具体的なイメージがわきません。一元的な処理のシステム構築のために、権利者の権利の引下げ、切下げや個々の著作権管理団体の自立した活動が抑制されることのないようにしなくてはならないと考えております。

そして、設問の3つ目、複数の権利団体による連携や権利者情報等データベースの整備などの円滑化の取組についてということですが、私どもも参加しておりましたオーファンワークスの実証事業委員会というものがあります。オーファンワークスの利用円滑化に向けた研究をしておりました。この委員会では、文芸、脚本、写真、美術等の著作者団体が裁定制度の利用円滑化に向けた研究を実施してまいりました。各分野の管理事業を経験した権利者団体が、裁定制度に積極的に関与することで制度の利用申請者に対して、その負担軽減を図るとともに、同制度の円滑な運用に向けて課題を洗い出すことができました。管理事業団体が裁定制度の運用に関与することは、各分野の実情を把握していることもあり、裁定を円滑に進める上で大変有効であることが確認されましたが、同時に処理コストの問題、運用面、法制面等で解決しなければいけない課題も数多く見いだされました。

設問の4つ目になります。非構成員に対するコンテンツ利用に関する対価還元への関与について。ここで、非構成員という言葉が何を指すのか、不分明であるため、非常に回答しにくいところがあります。仮に、管理事業者の管理外の著作物著作権者と仮定するとして、そういったアウトサイダーにも個々できちんと実際の著作権処理に対応している方、そういった方から著作権処理に通じていない方、無関心な方まで様々いると想定されます。これを一絡げにして、使用料分配への関与の意義について問われてもなかなか答え難いのが現状です。個々の立場できちんと処理されている方に対して、外部の者が勝手にくちばしを入れるのは全く迷惑なことになるかと思います。逆に、著作権処理がままならない方に外部からお手伝いすることは喜ばれるものと思います。

アウトサイダーの権利処理が円滑に行われ、利用を促進し、著作権意識を高めることは、分野全体の利益につながると考えるものの、アウトサイダーを十把一絡げにして論じることはできませんし、法的関係も現時点ではイメージできないものと考えられます。

設問の5つ目、いわゆる拡大集中許諾制度についてということですが、拡大集中許諾制度は私権への介入であることから、現行の裁定制度の限界による課題を明確にした上、慎重に検討する必要があると考えます。現行裁定制度は、オーファン実証事業委員会の研究においても幾つかの課題が指摘されていますが、もしこれを克服できるならば、著作物の利用円滑化に向けて、有効な方法となる可能性があると考えます。拡大集中処理については、最低制度の改良によっても残った課題を解決するため、限定した方法として、検討の俎上に上げてもよいのかもしれません。例えば、裁定制度の対象となった著作物に限り、次回以降、拡大集中処理の対象とする等、裁定制度と部分的な拡大集中処理を組み合わせた考え方があるのかもしれません。しかし、少なくとも連絡先が判明しているような権利者に対してまで拡大集中処理を及ぼすのは、そこにオプトアウトを選択できるとしても、現時点では適正でないように思われます。

そして、最後のその他というところなんですが、私どもからは調査権所在情報の提供窓口についてということで、現在、1つの分野には複数の管理事業者が存在しています。また、管理事業者の管理外の権利者であっても、連絡先が判明している権利者は結構多いように思われます。しかし、そういった情報は分散しています。権利者不明著作物の取扱いについての対応と同時に、分散している情報をゲートウェイ的に提供する窓口の仕組みがあれば、利用に資するのではないかと考えます。このような仕組みは、規模の大きい管理団体であれば、分野全体の利益に資する活動として実施できるのかもしれませんが、規模の小さな管理団体しかない分野では負担が大きいため、できることであれば、行政が著作権制度運用のインフラ整備の一環として構築いただくのが望ましいのではないかと考えます。参考までに、1つの提案として述べさせていただきました。

私どもからは以上になります。ありがとうございました。

【末吉主査】  ありがとうございました。

続きまして、日本漫画家協会様、お願いいたします。

【日本漫画家協会(千葉)】  日本漫画家協会、千葉です。今日は貴重な発言の機会をいただきありがとうございます。

提出した意見書のほうから説明申し上げたいと思いますが、当協会は、回答にも書いてありますとおり、会員総数が現状で2,500人を超えるぐらいの推移で来ております。組織率は、出版物貸与権センター調べの2万人という分母からすると12.5%、組織率は少し低いということになります。今、ここ5年とかそれぐらいで、入会窓口をネットからでも入会できますとかと敷居を下げたことにもよりますが、ここのところの出版業界の状況も踏まえ、若手の漫画家さん中心に文芸美術の健康保険目当てで我々の協会に入っていただくというケースが非常に増えています。なので、母数はなかなか増えていますけれども、そういう理由での増加なので、メジャー作家さんの入会に関するインセンティブとまでは言えませんので、組織率はどちらかというと、マイナーというのは語弊がありますけれども、メジャー作家さんはなかなか入りにくい環境に弊会はあります。現状としてはそういうことですので、物故作家さんなどのアーカイブを中心に管理をやっと始めた段階で、規模としては、まだお預かりしているのは50名程度と、まだまだ細々とやっているような状況です。1番については、以上になります。

2番についてですが、コンテンツと利用者を近づけることで利便性が上がり、これはコンテンツへのアクセスです。権利処理が煩雑であると、どうしても利用が遠のいてしまいますので、網羅的に、一元的に処理できるということであれば、利用者が利用しやすい環境が促進されるということで期待を持っています。反面、この懸念について書かせていただきました。相当簡素に書きましたけれども、データベース構築、それぞれの分野、我々で言えば漫画の分野ですけれども、まだまだのノンメンバーさんを含めたようなデータベースは全く構築できていませんし、ちゃんとした制度に見合ったようなデータベースを構築できる業者さん等々を当たってみても、軒並み初期導入費も含めて、1,000万近くの投資がかかってしまうというのが現状で、例えば教育補償金ですとかそういったもので漫画家協会、弊会が収益が見込まれるようなものというのは非常に僅かな金額です。なので、とてもリクープできるような状況にはないので、導入に関してはどうしようかというところが非常に頭の痛い状況です。

それで、2番になります。あとは、2番のもう一つの問題点は、アマチュアさんの存在です。漫画を描かれる方というのはプロだけではなくて、同人系のアマチュアの方が非常に多いです。裾野がとても広い分野なので、アマチュアの方々の著作物、アマチュアが書かれたからといって著作権がないわけではありませんので、そういったところの利用がどこまで一元化できるのかというのは、協会みたいなところで果たして本当に機能できるのかというのは、とても難しい問題だと思います。というのは、今の入会規約でいうと、何らかのプロとしての実績をハードルとして設けていますので、アマチュアさんまでを網羅したようなデータベースというのは、うちの規約上、なかなか難しいと。そこをだからどうクリアしていくのかというのが今の課題です。

3番目に移ります。3番目で我々が書いていますけれども、4行目あたりの、要するに集中権利処理という概念自体、著作者がどの程度理解しているかというのが我々、漫画だけのことなのか分かりませんけれども、少なくとも漫画業界では現在に至るまで、いろいろな著作権からの収益、上がってきた収益については、基本的には出版社さんを介してしか、こちらには届かないような流れになっています。具体的な例を出すと、出版物貸与権センターという貸与権の上がりがあります。あれはサーチャージ方式といって、定価に幾らか乗せてという形で収益を回収していますけれども、貸与権センターは、個々の著作者に対する直接分配を行っていません。というのは、出版物ですので、出版された単行本の発行元の出版社が、必ずそこの間に介在して著作者のほうに振り込まれるという仕組みになっています。

なので、直接、その分野、例えば今の漫画分野でいえば、漫画家協会が、例えば教育目的公衆送信のSARTRASの分配の業務を担います。分配業務受託団体として手を挙げる予定ですけれども、漫画家協会から急に補償金が振り込まれたりとかということに対して、多分多くの著作者の方々は驚かれると思うんです。一体何が起こっているのかと。国の制度とか、そういう著作権の処理の問題で世間的にというか、社会的な要請として集中処理、集中処理といって、どこかが集中処理の基幹を担わなければいけないという社会的な要請というのは、我々は要するに、著作権をふだんから関わって、取り扱っているような人間であれば世の趨勢として分かりますけれども、ふだん家に引き籠もって漫画ばかり描いている漫画家さんが、そういう情勢ですとか世間的な要請で漫画家協会みたいなところが一元管理を目指しているんですという、そのこと自体を御存じない。そのことに対する、御存じがないので、そのこと自体に対する御理解とかそういったことを、まず整備していかないといけないというところが問題、課題だと感じます。

すいません、時間もないそうなので、4番に移りたいと思います。非構成員に対するコンテンツ利用の対価還元、今、現状では教育補償金がスタートしたばっかりですので、そちらを例に取れば、例えば高等教育以外は、教科書が主体の利用になるので漫画というのはそんなに利用されないんだろうと。事前のサンプル調査でも、漫画はそんなに大した量はないので十分対応が可能であるし、我々の今の脆弱な体制でも何とかなりそうですので、時間的猶予を持ちながら何とか体力をどんどん高めていきたいと思います。

拡大集中許諾について、5番です。様々なオプションの1つとして、将来的な課題と捉えています。それで、5番の集中許諾制度に至るまでに、我々の課題ですけれども、まずは分野の一元的権利処理が可能なのか、先ほど申し上げましたけれども、アマチュアさんも含めたような一元管理というのは、かなり遠い目標になってきますので、その辺りをどうクリアしていくのかというのが大きな課題として残ります。

6番、その他については、どうしても我々は海賊版対策のほうに行ってしまうんですけれども、正規利用の利便性を上げることで、どんどん海賊版というのは潰していきたいと思っています。罰則規定などで対応するというのは、もう最後の最後というか、そこを目標にしてしまってはいけないと思いますので、あくまでも正規利用の利便性が海賊版の利用を抑制するという方向、具体的に言えば、これは私見ですけれども、例えばブロックチェーンのような技術を使った配信技術の向上等々で、海賊版の入り込む余地を許さないという方向に向かっていってくださればいいなと思っています。

すいません、長くなりました。私からは以上です。

【末吉主査】  ありがとうございました。

それでは、ここまでの日本脚本家連盟様から日本漫画家協会様までの御説明に関しまして、御質問がありましたらお願いいたします。いかがでございましょうか。

奥邨主査代理、どうぞ。

【奥邨主査代理】  ありがとうございます。それでは、簡単にですけれども、まず、日本シナリオ作家協会様に2つ、それから日本写真著作権協会様に1つ、それから日本美術家連盟様に1つ、それぞれ簡単にお伺いしたいと思います。

まず、日本シナリオ作家協会様にですけれども、4番の質問に対する回答の中で非構成員と構成員が一緒ということであると、集中管理自体が枯れてしまうんじゃないかという御指摘があったかと思うんですけども、逆に言いますと、構成員にメリットとしてどういう差をつけると、非構成員と構成員との間で、構成員のほうに納得感があるという話になるかだろうかという点で、何かアイデアがあれば教えていただきたいというのが1つ。

それから、2つ目は5番のところの質問に対して、オプトアウトについて実務上、著作権者は画一的に利用条件を制限せざるを得ないと書いてあるのですが、具体的なことがよく分からないもので。オプトアウトですから嫌ですと言ってしまえば、それでオプトアウトなんだと思うんですが、それと画一的にということがどうつながるのかというのが分かりづらかったので補足いただければと思います。

【末吉主査】  すいません。ここで切りましょうか。順次承りますので、今の2つの御質問に関しまして、シナリオ作家協会様、いかがでございましょう。

【日本シナリオ作家協会(ハセベ)】  ハセベです。御質問ありがとうございます。

非構成員と構成員との差というか、そこに関して、何があれば構成員のほうに納得感があるかと、ここに関しては、正直なところ、イメージが湧かないですけども、理想としては、構成員になっていただくことが促進されるということが理想なのかと思っています。個人的な意見なので、もしかしたら事務局のほうでも、考えがあるかもしれないので、事務局のほうに意見を仰いでもよろしいですか。すいません、関さん、大丈夫ですか。

【日本シナリオ作家協会(関)】  日本シナリオ作家協会の事務局の関と申します。よろしくお願いいたします。

1番目の質問に関しては、事務局としても特段、何かアイデアがあるというわけではないです。申し訳ございません。 【日本シナリオ作家協会(ハセベ)】  やっぱり構成員が、非構成員の方々も構成員になっていただくことを考えてもらうようなこと、そっちに魅力があるようなことになればいいかというイメージで我々としてはおります。

オプトアウトの件に関しても、関さんのほうで補足してもらっていいですか。

【日本シナリオ作家協会(関)】  2番目の画一的に利用条件を制限せざるを得ないという点は、資料にも書いてありますとおり、著作物の利用方法はケース・バイ・ケースということで、脚本の利用の方法に関しましても、様々な利用方法がありまして、例えば、一任型、非一任型の違いもありますので、その辺りを細かくオプトアウトの形で権利者の皆さんに指定をしていただくのは難しいんじゃないかということかと思います。

以上です。

【末吉主査】  奥邨主査代理、続けてどうぞ御質問ください。

【奥邨主査代理】  それでは、日本写真著作権協会様にです。これも補足いただきたいんですけれども、1番のところで、補償金請求権化する集中管理ということをお書きになっているんですけども、集中管理というのは、非一任型は当然ですけれども、一任型であっても、基本的には、許諾なんだと思うんですけれども、補償金請求権化するというのはどういう御趣旨かというのがよく分かりづらかったので、補足いただければと思いました。

【日本写真著作権協会(棚井)】  写真著作権協会、棚井です。御質問ありがとうございます。

これに関しましては、SARTRASであったりとか、そういったことを想定したところでの回答とさせていただいております。現時点ではいろいろと議論が進捗していない状況ですので、一言で「集中管理」といっても色々な仕組みが考えられるところ、その点で分かりにくかったようでしたら申し訳ありませんでした。我々としては、アーティスト、作家、著作者に対して、何らかの利用について対価が支払われるという形での良いシステムが作れないかという気持ちでおりますので、この点に関しましては、現行あるSARTRASの仕組みと比較しつつ、許諾権についてはその性格を維持するべきというところでの回答とさせていただきました。

以上となりますが、こちらで回答は大丈夫でしょうか。

【奥邨主査代理】  分かりました。逆に言うと、補償金の集中管理ということをお書きになっていたわけですね。分かりました。ありがとうございます。

【末吉主査】  どうぞ。奥邨主査代理、続けて下さい。

【奥邨主査代理】  最後ですけれども、日本美術家連盟様にお伺いします。4番のところで非常に重要な御指摘だと思うんですけれども、非構成員といってもいろいろな方がいると。自分でちゃんと管理できている人もいれば、できていない人もいる。できている人とできていない人を同じに扱うということはできないし、管理できていない人について、いろいろお手伝いするような仕組みがあるというのはどんな仕組みかは別として、非常にいいことではないかと。これは非常に重要な御指摘だと思うんです。そこで、貴連盟の関係する分野のお話しで結構なんですけども、できている人とできていない人の大体の割合というか、肌感覚で結構なんですけども、できている人が何割ぐらいで、できていない人は何割ぐらいいそうだというのを教えていただけるといいかと思ったんですが、その辺をイメージで結構ですからお聞かせ願えませんでしょうか。

【日本美術家連盟(池谷)】  美術家連盟ですが、割合はなかなか出しにくいと思います。というのが、できている方というのは、いわゆるよく使われる方、著名な方、例えば現代美術家でもそうですし、それこそ洋画の大家でもそうですし、そういう方というのは使われる頻度も大きいですから、きちんとした会社、組織をつくるとか、ないしは弁護士さんを代理人で立てるとか、そういった手続をきちんと取っておられて、きちんと御商売的にもやっておられる方はかなりの数がいらっしゃるんです。

ただ、それは売れている方なので、人数的に見た割合としては非常に低いはずなんです。要は国勢調査で、例えば美術家3万人とか、そういう数字は出るんですけども、美術家って、要は収入を得ている主なところが美術じゃない部分で稼いでいる人というのも結構いて、それはすごく大きな裾野を持っているような形になります。そのときに人数として自分できちんと管理できている方というのは、本当にこれは割合的には少ない。ただ、利用のボリュームみたいなものを、例えば金額みたいなものとかそういったもので考えると、かなりいらっしゃるんじゃないかというイメージを持っています。具体的な数字がいつも表せなくて申し訳ないんですけども、イメージだけで申し上げます。そのくらいしか今のところ。

【奥邨主査代理】  ありがとうございました。すいません、大分時間を取っていまして、ありがとうございました。

【末吉主査】  ありがとうございます。ほかに御質問はいかがでございましょうか。坂井委員、どうぞ。

【坂井委員】  坂井です。すいません、今日は皆様いろいろありがとうございました。皆さんの多分悲痛な声というのがいろいろ分かったかと思っております。

日本美術著作権連合さんにお伺いしたいんですけれども、非構成員に対するコンテンツの利用管理の関与についてというところで、多分SARTRASに関連してだと思うんですけれども、具体的にこうしてほしいというので3つ挙げられています。管理団体の収益の管理事務費率の引上げ、それから共同目的事務事業基金の使途の制限の緩和、業務の一部再委託の容認と3つ挙げられているんですけども、事業管理費の比率の引上げというところは非常によく分かるんですけれども、すいません、勉強不足で。あと2つです。協働目的事業基金の使途の制限と業務の一部再委託の容認というところは、具体的にどういうことをお願いされているのかということをお教えいただけますでしょうか。

【日本美術著作権連合(あんびる)】  美著連のあんびるでございます。

これについてなんですけれども、1つ目のことについてなんですけど、共通目的基金の使途の緩和ということなんですけれども、SARTRASでは、収受した補償金の約2割を本来受け取るべきであったけれども、お名前がたまたま利用報告に現れなかった人に資する事業に使おうということで、2割をトップオフする形にしております。共通目的基金の資金となりますのは、トップオフした2割だけではなくて、権利者が判明しなかった部分についても共同目的基金に拠出することになっています。美術や写真分野につきましては、権利者が判明しないケースが大変多いことから、いただくべき補償金の半分近くを共通目的基金に拠出するという形になってしまいます。そういったことから、この資金を使って権利者を確定する探索事業みたいなものを行えれば、お受け取りいただく権利者が増えるのではないかということを考えているということでございます。

あと、再委託に関してなんですけれども、私どもたちのように視覚芸術の管理団体は、非常に管理システムがまだ脆弱で、十分な探索などを音楽関係のように行うことができないのが正直なところでございます。そのため、当面の間ですけれども、そういった事業を手伝ってくださる方というのを雇って、そこに再委託することによって権利者を多く発見し、分配につなげていくことができないかと考えたこともございましたが、今の決まりの中ではそういったことができないということになっておりまして、非常に歯がゆい思いをしているといった現状について述べさせていただきました。

以上でございます。

【坂井委員】  ありがとうございます。分かりました。

【末吉主査】  ありがとうございました。ほかに御質問を、福井委員、どうぞ。

【福井委員】  福井でございます。本日もありがとうございます。まず、日脚連さんになんですけれども、日脚連さんの管理率、組織率だけほかの団体さんに比べて突出して高いと思うのですが、ここで書かれている延べ人数の意味を教えていただけますでしょうか。これは1人が数番組放送されたら数人とカウントするということでしょうか。仮にそうであるとして、ではユニークな人数での組織率、管理率は把握されていらっしゃいますでしょうか。

【日本脚本家連盟(金谷)】  日本脚本家連盟でございます。この件に対しては事務局から御返答したいと思いますが、よろしいでしょうか。じゃあ、事務局よろしくお願いいたします。吉野さん。

【日本脚本家連盟(吉野)】  脚本家連盟の吉野です。

この数字は今、福井先生がおっしゃったとおり、延べ人数で表した数字ですので、例えば1つの作品に脚本家が2名いた場合は2人というふうに数えますし、同じ脚本家が何本も書いている場合にはそれをそのまま人数で数えているということです。ユニーク数での割合というのはこちらでは把握できていない状況です。

【福井委員】  ありがとうございました。それでは、今のお返事を踏まえまして、数団体の方にお伺いしたいと思うのですが、本日、集中管理の促進ということについては、総論賛成の御意見の団体さんが多いように伺いました。そして、それをどう促進していくか、それから、かかるコストについては、非常に各団体さんの苦悩というか現場の御苦労を感じたところです。実際これまでの各種のそうした御苦労を経ても、伺った組織率、管理率は大体10から20%ぐらいが多いかなというふうに感じたんですね。これを上げていくための工夫についてお伺いしたいのです。

拡大集中許諾については懸念の御意見が多いと理解しましたし、実際課題は少なくないと思うのですね。では、この組織率、管理率をどう上げていくべきでしょうか。幾つかの団体さんはお話から大体理解できたつもりでいるんですけれども、日脚連さん、美術家連盟さん、それから、最近活動を開始されたという意味で漫画家協会さんにお伺いできればと思いました。

【日本脚本家連盟(金谷)】  ではまず、日本脚本家連盟からでよろしいでしょうか。お尋ねについては、いわゆるノンメンバーの方をどう構成員へと加入を促していくかということでございますよね。まず1つは、私どもの責任として、構成員になればこんなにメリットが増えますよといったことをきちんとアピールしていくことが大事だと思っております。

あと、もう一点ちょっと気になることは、最近マネジメント会社に所属する脚本家が増えてきております。いわゆるマネジメント会社は、お仕事を取ってきてくれるわけですね、平たく言えば。ただ、私ども連盟は仕事のあっせんということは行っておりませんので、そういう意味では特に新人の方の場合、仕事が続くのであればということで、連盟よりもマネジメント会社に所属することを優先するということも多いようでございます。そういったことはやはりこの先、マネジメント会社といろいろ協議を重ねていく必要があるかと思っております。

以上でございます。

【福井委員】  美術家連盟さん、よろしいですか。

【日本美術家連盟(池谷)】  美術家連盟です。私どもは、管理事業のほうの委託約款の整備とそういったものを整えて、そのとき時々で加入を推進するということはやっております。

ただ、それだけなのかなという考えがありまして、僕は、要は、集中管理という1つのところに集めるという発想だけじゃないんじゃないかなというふうに最近思っております。どういう意味かというと、インターネットの中に私書箱的なものがあればいいんじゃないかなと。要は、今の時代は比較的、団体に加盟するとかそういったことを好まれずに、個々で活躍、活動したい方というのは非常に増えていると思っています。そうすると、そういった方たちが自ら登録して、要は、利用者に向けたアクセスの窓口をネットの空間の中に持っていけるような仕組みというのができないものだろうかと。これだけデジタルとネットワークが発展してきた中で、そういった著作権のプラットフォームみたいなものができないか。そして、個人でやりたい方、そして、個人で会社を起こしてやっている方、きちんとやっている方、そういった方たちが自ら登録していくような著作権プラットフォーム、そういったものができないかなと思っています。

それで、そういうものと、もう一つは、さっきも申し上げましたが、裁定制度のような本当に不明者ないしは名前の分からないものを処理するような窓口の二本立てで対応するということは、現在までの集中しなければいけない、1か所に行かなければいけないという考え方とはちょっとまた違った意味で研究していってもいいのではないか、それだけの技術的な進展が見られる時代になっているんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。

【福井委員】  ありがとうございます。そうですね、今のは集中管理の促進の方策とは違うお話のような気も若干しましたが、おっしゃることは分かります。ありがとうございます。

【日本漫画家協会(千葉)】  福井先生、ありがとうございます。漫画家協会、千葉です。お世話になります。

組織率アップへの展望というのは僕も一番聞かれたくないところだと思うんですけれども、あんまり弱気なことを言ってもしようがないので。一応僕が考えているのは、我々漫画家協会というのは互助会的な要素が非常に強いので、助けてもらう必要のないメジャー作家さんというのはどうしてもインセンティブがないと。なので、そこを本当にメンバー化するということは、一旦ちょっと置いておくべきかなと思っています。それはやっぱり能動的に入ってもらわなければいけない。公益社団法人という性質上、やっぱりある程度の志を持って入ってもらうということが大前提になっていますので、それは完全に主観の世界になってくるので、そこについて言及することはできないと思います。

ただ、例えば文藝家協会さんのように、ノンメンバーだけども、分配としての、要するに登録はしていますよという、グレーゾーンと言ったら変ですけれども、2段階方式で、メンバーとしては入らないけれども、分配業務の登録はしておきますよというようなところから促進していって、例えば補償金だったりとかライセンスだとかという、今後の社会情勢の制度の変革によって、やっぱり漫画家協会に入っていたほうが、一元管理してもらったほうがやっぱりいいよねというようなところからも後押ししてもらえたらなと思っていますし、そこは期待しているところです。

一応僕の私見ですが、以上です。

【福井委員】  ありがとうございました。

【末吉主査】  ありがとうございました。ちょっと時間の都合もございますので、先に進ませていただきたいと思います。ありがとうございます。

続きまして、後半でございますが、日本音楽著作権協会様から日本書籍出版協会様・日本雑誌協会様まで順次御意見を伺います。それでは、日本音楽著作権協会様、お願いいたします。

【日本音楽著作権協会(宮内)】  日本音楽著作権協会、JASRACの宮内と申します。よろしくお願いいたします。それでは早速ですが、御提出した資料を基に当協会の意見を述べさせていただきます。

まず、設問1です。当協会の管理率についてですが、何をもって管理率とするのかは難しいところで、いわゆる組織率やカバー率のような数字は、当協会の非委託者や非管理楽曲の総数が分かりませんので、お示しすることは難しいと思います。ただし、いわゆる商業ベースで流通している楽曲につきましては、かなりの割合で当協会またはNexTone様の管理楽曲になっているものと思われます。ちなみに、JASRACの管理対象作品数は、内外曲合わせて6,800万作品余となります。

次に、集中管理の促進についてですが、基本的には集中管理の促進には賛成です。ただし、特に最近は、デジタル技術やインターネットを駆使して、楽曲の制作、プロモーション、著作権の管理から収益化までを全て自分で行うようなDIYクリエイターと呼ばれる方々も増えておりますので、そういった方々も含めて、明確な意思を持って集中管理団体に管理を委託しない権利者がいる点には十分留意する必要があります。そういった権利者を強制的に集中管理団体に所属させ、集中管理を進めるべきではないと考えています。当協会ではあくまで権利者の自発的な意思に基づく集中管理の促進を前提として、信託契約締結手続の電子化など、権利者が簡便に当協会に管理を委託することができるようにするための検討を多角的に進めているところです。電子化に向けた楽曲管理の実証実験を実施しております。

次に、設問2です。冒頭申し上げたとおり、商業ベースで流通している楽曲の大部分は何らかの形で集中管理団体の管理楽曲になっておりますので、少なくとも音楽の分野においては、現行制度を基にした集中管理の仕組みにより、簡素で一元的な処理が既に一定程度機能していると考えます。そういった状況で、現状以上に簡素で一元的な仕組みを新たに制度的に設けようとすると、権利者の権利の切下げにつながりかねないことを懸念しています。

設問3は、資料記載のとおりです。

次に、設問4です。非構成員を当協会の非委託者という意味で捉えた場合には、いわゆるノンメンバーの作詞家・作曲家も多数含まれることになりますが、これらの権利者には、当協会の委託者である音楽出版社を通じて対価還元される仕組みが既にありますので、当協会が現状を超えてさらなる関与をすることは考えづらいと思います。

設問5です。いわゆる拡大集中許諾制度につきましても、どのような分野を対象と考えていて、実際にどのような問題が起きているのかという立法事実が明らかにならないと現時点で明確な賛否をお答えしづらいところですが、権利者の権利の切下げにつながりやすい性質を持つ制度だと思いますので、権利保護の立場からは基本的に消極的にならざるを得ないように思います。したがいまして、導入するとしても、対象とする分野を相当限定することが必要だと思いますし、その場合でも、資料に記載したとおり、検討が必要な課題が多岐にわたっており、なかなか早期の実現は難しいのではないかと感じているところです。

なお、仮に導入の方向で検討を進めるのであれば、拡大集中許諾制度というのは、本来は利用者が負担すべき権利処理コストを権利者に転嫁する側面があるということを十分御認識いただき、非構成員の捜索、分配などに係る集中管理団体のコスト負担の在り方をどうするのかといった点について具体的に整理していただいた上で、改めて管理団体等にヒアリングを実施していただくようお願いいたします。

最後に、設問6です。権利保護と利用円滑化の両立を基本とするのであれば、過去のコンテンツの流通促進の観点だけでなく、創作者が新たなコンテンツを不断に作り続けるための仕組み・制度をどう整えていくのかという観点こそが重要であると考えます。そして、新たに創作されるコンテンツについては、契約に基づく権利処理や権利情報のデータベース化を徹底するようになれば、権利者不明問題も減っていき、拡大集中許諾のような制度を導入しなくとも、権利保護、適切な対価還元と利用円滑化の両立をすることができるようになると考えます。

私からの御説明は以上となります。ありがとうございました。

【末吉主査】  ありがとうございました。続きまして、日本レコード協会様、お願いいたします。

【日本レコード協会(畑)】  日本レコード協会の畑です。本日は意見表明の場を頂戴いたしまして、ありがとうございます。私、基本政策小委員会の委員も務めておりますが、この発表は日本レコード協会の立場での意見を述べさせていただきます。早速、意見書の内容を御説明いたしますけれども、意見書記載の項目の順番とは若干順不同になる点を御容赦ください。

まず初めに、当協会の集中管理の状況と権利処理円滑化の取組について述べさせていただきます。設問1、3辺りが中心になります。当協会は、レコード製作者の著作隣接権を一定の範囲で集中管理しております。管理範囲の概要を資料24ページ上段の参考資料にお示ししていますので、御参照いただければと思います。放送番組については、商業用レコードの放送二次使用料請求権の管理を文化庁長官の指定団体として、また、2006年から放送番組のネット上のストリーミング配信に係る送信可能化権を著作権等管理事業者として管理をしております。昨年11月からは、ネット独自コンテンツの一斉同時配信等、いわゆるウェブキャスティングについても、レコードの利用を一定範囲に制限した上で集中管理を開始いたしました。

当協会の会員社数は現時点で61社になりますが、参考資料24ページ下段のとおり、集中管理の委託を受けておりますレコード製作者の数は816社に上ります。これはインディレーベルや個人クリエイター等を取りまとめる他のレコード製作者団体4団体から復委任を受ける形、あるいはどの団体にも属さないノンメンバーのレコード製作者から当協会が分配について直接委任を受ける形で、一元的な管理窓口を当協会が務めることを実現しております。全ての委託者から放送二次使用料請求権とともに放送番組のネット配信に係る送信可能化権の管理委託を受けておりまして、その管理割合、いわゆる組織率は90%以上という推定をしております。これはデータを取りやすい、放送番組において使用される商業用レコードの総数を分母とした数字ということになります。

御参考として併せてお示ししておりますけれども、2018年8月公表の総務省情報通信審議会傘下の放送コンテンツの製作・流通の促進等に関する検討委員会、これの最終報告書に掲載されましたNHK様の調査結果を引用いたしました。この調査結果におきましても、少なくともNHK様の番組で使用されるレコードの87.1%は日本レコード協会が管理するレコードであるということが示されています。

また、当協会は、レコードを含む音楽分野の権利処理円滑化に資するため、レコード製作者団体のほか、音楽著作権団体、実演家団体とも連携いたしまして、音楽権利情報の集約化に取り組んでおりまして、データベースの整備・公開を進めております。具体的には、平成29年度から3か年にわたりまして文化庁様が実施されました散在する権利情報の集約化に関する実証事業、こちらの成果を引き継ぎ、今年4月に一般社団法人音楽情報プラットフォーム協議会を設立いたしまして、一括検索サイトを通じて1,000万曲を超える音楽権利情報をサイトで公開しております。今後も散在する権利情報の収集拡充に取り組んでまいる所存でございます。

次に、当協会の集中管理に関する考え方、簡素で一元的な権利処理についての意見を述べさせていただきます。設問2辺りが中心になります。集中管理によりましてレコード利用機会が増加して権利処理の対価還元が拡大することにつきましては、合理的な期待がございます。しかし、その一方で、とりわけ市販されるCDや配信音源のように商業ベースで流通するコンテンツの集中管理に当たっては、慎重な検討を要すると考えております。当協会で集中管理事業化を検討する場合、委託者である各レコード製作者のビジネスと競合しない利用形態かどうか、これを精査いたします。既に権利者が個別に利用者から許諾料を得ている場合には、集中管理がそれをオーバーライドする形で導入されると、結果的に当該権利者への対価水準が下がってしまう惧れもございます。

また、権利者の自己管理であれば、意にそぐわない利用形態の申請には許諾しないという判断ができる一方、応諾義務を負う集中管理の下では、合理的な理由がない限り許諾を拒むことができません。簡素で一元的な権利処理については、手続の簡素化による取引コストの低減等のメリットがある一方、それが権利者の不利益につながることのないよう、適切なバランスを踏まえることが必要と思っております。

また、拡大集中許諾につきましては、これは相当レベルの組織率を有する集中管理団体が必要となりますため、全ての権利分野においてあまねく検討できる制度ではないと理解しております。また、この制度の導入によって非委託者においては権利制限に類する効果を発揮し得るため、やはり導入する大義と利用分野の絞り込みが必要と考えております。そういった意味では、スリー・ステップ・テストに照らした設計と精緻な検討が必要ではないかと考えております。

また、集中管理団体は、まずは委託者の組織率の向上に努めるべきということは言うまでもございません。しかし、現実的には非委託者が存在するわけで、これら非委託者への対価還元をどうするのかということが課題になります。ここにおきまして、集中管理団体が窓口として重要な役割を担う、それを期待されるという状況は理解いたしますけれども、しかしながら、非委託者分の使用料規模がさほど大きくないということが想定される中、この管理業務単独では収支が見合わないということも出てきます。その場合、集中管理団体が非委託者分の使用料管理業務を引き受け、それに要するコスト、経費を、本来は委託者に分配されるべき使用料原資の一部をもって賄うということになれば、委託者の利益を損なうことにつながりかねないということになりますので、集中管理団体のみに非委託者への対価還元の負担を求めるのではなく、利用者も一定の関与と責任を負うような制度設計を望みます。

最後に、6ポツにバリューギャップの問題、また、私的録音録画の問題を書かせていただきましたけども、ちょっと時間が超過いたしましたので、これについては資料を御参照いただければと思います。

以上でございます。

【末吉主査】  ありがとうございました。

続きまして、日本芸能実演家団体協議会・実演家著作隣接権センター様、お願いします。

【日本芸能実演家団体協議会・実演家著作隣接権センター(椎名)】  芸団協CPRAの椎名でございます。お手元の資料の28ページを使って、別途説明資料を作っておりますので、そちらのほうを使って御説明いたします。

まず芸団協CPRAにおけるレコード実演の集中管理ということなんですが、CPRAは指定団体として放送・有線放送、レンタル事業者が商業用レコード収録された実演を利用する場合などのほか、著作権管理事業者として放送用録音や放送同時配信における利用について集中管理を行っていると。すなわち、指定団体の業務として報酬請求権の処理、それから、著作権等管理事業者として許諾権の処理と、両方を行っているということでございます。

CPRAは、放送番組のインターネット配信やウェブキャスティングにおける音楽の利用が広がりを見せる中、利用のニーズに対応すべく集中管理範囲の拡充に努めてまいりました。

 

左下が委任者数ということで、2020年には約9万7,000人、徴収額といたしましては、商業用レコード二次使用料とレンタルCD・貸レコード使用料と両方ございますが、こういった金額を徴収しているということでございます。

次のページに行っていただきまして、集中管理の仕組みでございます。各利用者さんから徴収されてきたお金を国内と国外、国外は約数十か国のCMOと双務協定を結んで徴収分配を行っておりますが、ざっくりとこのような形で集中管理を行っているということでございます。

次のページで、一元的な権利処理への期待・懸念についてということですが、簡素で一元的な権利処理というふうにいった場合に、非常に観念的に響いてしまう部分がありまして、この簡素ということを額面どおり取ると、処理の簡略化のみを追い求めて、実質的にクリエイターの意思や権利がないがしろにされるというようなことがあってはならないというふうに考えております。またCPRAの実施しております集中管理は、既に一定程度簡素で一元的な権利処理を実現しているというふうに考えております。  ここでいう簡素で一元的な権利処理のもっと具体的な内容を明らかにした上で、改めて関係当事者からの意見を丁寧に聴取し、デジタル時代における公正な利用と権利保護のバランスを実現できるように慎重に検討していただきたいと思っております。

現行制度下でも、既に集中管理に関する制度、例えば指定団体制度とか指定管理団体制度、著作権等管理事業法に基づく集中管理、著作権法上の固有の規定に基づかない集中管理、これ、いっぱいございますので、これそれぞれの特性や実態を一旦整理した上で、新たな制度や政策の在り方を検討すべきというふうに思っています。

また、一元的な権利処理を検討する上では、複数の管理事業者が公正な条件の下で競争することで著作物等の公正な利用と権利保護を実現する趣旨で制定された著作権等管理業法等の関係、これは競争原理を導入することで活性化する、利便性を向上するという話がちょっと前に非常に活発に議論されたわけですけれど、それに対して、一元化というとあたかもそれに逆行するような考え方というふうにも見えるわけでございます。この辺りの理念を一回整理したほうがよろしいのではないかなというふうに思います。

次に、複数の権利団体による連携や権利者情報データベースの整備などの分野横断の円滑化の取組ということです。これ、皆さんも言及されていますけど、SARTRASに関しましては、その設立から積極的に関与してきております。ここでは、必ずしも正確な利用報告ということが教育機関等の作業負荷の増大に配慮して義務づけられているわけではない一方で、分配は精緻にしなければならないというある程度の矛盾が存在しているのかなと思います。精緻な分配をするためには正確な利用データが必要であるわけで、この辺りはデジタルトランスフォーメーション時代の技術を使った新たな進展ということも期待すべきではないかなというふうに思っています。

デジタル時代における権利情報の集約化は、権利処理の円滑化に資することはもちろん、使用料等を権利者に分配する上でも非常に重要です。レコード協会さんもおっしゃっていましたが、われわれも文化庁の権利情報集約化の実証実験にも参加して、一般社団法人音楽情報プラットフォーム協議会を設立にも関わってきております。ここを中心に権利情報集約化を進めることで、例えば個別の団体でいろいろやっていた情報収集、管理等の作業が一本化されることによって、管理団体の業務の効率化が期待できるということを思っております。

実演家の場合、1つの作品に多数の方々が参加するということがありますので、実演家団体のみでこれらの権利者を正確に把握するというのは非常に困難な作業になるということがあります。しかしながら、こうした枠組みを通じて関連団体等と連携するなどして、例えば音源が制作された時点における参加演奏家の情報を収集することができるというようなことがありましたら、より効率的な権利情報収集ができるというふうに思っています。

次に、非構成員に対するコンテンツ利用に関する対価還元ということなんですが、先ほど来申し上げておりますが、実演家というのは1つのコンテンツに参加する人数が非常に多いということに加えまして、商業用レコード二次使用料や貸与に関する報酬請求権というのは、指定団体のみが行使できるということになっております。また、実演家の権利の認知度が必ずしも十分でないということからも、私どもCPRAは、非委任者(非構成員)の権利の取扱いについて、特段の注意を払ってきた経緯がございます。

具体的には、利用報告された楽曲の権利者が非委任者であった場合に、当該権利者の委任取得に努めるとともに、その権利者が委任者となった時点で、一定の期間内であれば利用の時点に遡って分配が受けられるというような仕組みを、これは権利者合意に基づく分配規程によって実現をしております。

同様の取組というのは、ヨーロッパの各実演家団体においても同じような取組を行っている例が数多くございます。これをヨーロッパの団体は、時間を味方にした分配をするんだ、というふうな説明をしていますけれども、ある程度数の多い権利者を判明させるための時間のバッファーを置いて分配を完結していくというやり方ですので、そういう意味において、私どもでは既に非構成員に対する対価還元への取組を行っているということが言えるのではないかと思います。何も法の要請によらずとも、非構成員の権利を守る取組は既に実務上存在しておりますので、ここで非構成員に関する対価還元を検討するということであるのであれば、このような実務上の取組にも十分留意していただきたいというふうに思っております。

拡大集中許諾でございますが、これはもう皆さんおっしゃっているとおり、円滑化を目指すあまりクリエイターの意思や権利がないがしろにされることがあってはならないと。法制基本問題小委員会の審議経過等においても整理されたとおり、法的な正当化についてさらなる検討を重ねるとともに、具体的にどのような利用対応や著作物等を対象に拡大集中許諾制度の導入を検討するかを明確にした上で、我が国の実情に照らした方策となるように議論を進めるべきであると思います。

前述の非委任者の権利を守る実務上の取組とか、それから、令和3年著作権法改正に挙げられました放送番組の同時配信等における被アクセス困難者への対応などを踏まえると、少なくとも芸団協CPRAが集中管理を行っている実演の利用に関しては、非委任者の権利処理円滑化が問題となるケースがほとんど存在しないのではないかというふうに思っています。もし検討するのであれば、諸外国における最新動向等をフォローアップしていく必要があるものというふうに考えております。

最後になりますが、これは著作権分科会のほうでも私どもから申し上げたんですが、DX時代において実演家の活動を取り巻く環境は急激に変化しているけれども、実演家がコンテンツや文化芸術の担い手であることは何も変わらないと。こういった中でも実演家の権利や立場がしっかり保護され、良質なコンテンツの創出サイクルが守られるような仕組みづくりをしていく必要があるということから考えますと、審議事項の(2)において検討が予定されるクリエイターへの対価還元とかバリューギャップの問題について、EU各国の最新動向も注視しつつ、むしろ積極的に検討を進めるべきではないかというふうに思っております。

加えて、これはレコード協会さんもおっしゃっていましたが、ウェブキャスティングに関する集中管理の拡充の問題がございます。これはレコード協会さんと共に集中管理を横並びでやっている部分ですが、まだまだウェブキャスティングにおける利用のニーズには十分に対応できていないというふうに認識をしております。令和3年3月11日付の総務省「ウェブキャスティング事業者の権利処理における課題及び要望 取りまとめ」においても、事業者のほうから、対象となるサービスが限定的であるということで管理対象拡充の要望が示されております。この辺も引き続き管理範囲を広げていく方向で頑張ってまいりたいと思っております。

以上でございます。ありがとうございました。

【末吉主査】  ありがとうございました。続きまして、日本映像ソフト協会様お願いいたします。

【日本映像ソフト協会(酒井)】  日本映像ソフト協会の酒井と申します。本日は、意見を申し述べる機会をいただきまして、ありがとうございます。

当協会は、1971年にビデオソフトを製作・頒布するビデオソフトメーカー30社で創設され、先月、創立50年を迎えました。現在、正会員が26社、協賛会員が15社加盟しております。当協会の正会員は、映画の著作物の著作権を有する事業者ですから、本日は、あらかじめいただきました意見聴取事項に沿って、主として映画の著作物の権利者という立場から意見を申し述べさせていただきます。

まず1ポツです。映画の著作物の著作権等の集中管理の状況ですが、映画の著作物に関しては、著作権等管理事業者は存在せず、管理率は0%であります。映画の著作物に関しては、映画製作者の自己管理により著作物の利用許諾が行われていますので、管理事業者による集中管理は必要ないと考えております。

意見聴取事項の集中管理とは意味が違いますが、映画の著作物については、著作権法29条、91条2項等で、映画製作者に権利を集中させることにより、利用円滑化が図られています。映画は、劇場興行が行われた後、ビデオ化や放送での利用等の二次使用が行われ、投下資本の回収を図るわけですが、劇場興行だけで投下資本を回収できる作品はごく一部で、ビデオ化や放送利用等の二次利用を含めても投下資本を回収できない作品もあるぐらいです。映画製作者に権利を集中させる著作権法の仕組みにより、クリエイターはリスクを負担することなく対価を取得することが可能となっているわけでございます。

次に、2ポツでございます。映画製作者は、映画の著作物の著作権者であるとともに、原作・脚本などの原著作物や、あるいは映画の著作物に録音録画されている音楽等の著作物の利用者でもあります。これらの権利者の権利処理は、通常は元栓処理が行われており、円滑な運用がなされておりますので、簡素で一元的な権利処理による現状変更を期待してはおりません。簡素で一元的な権利処理に対する懸念としては、権利者の意に反する著作物の利用が行われるおそれがあるということであります。著作物は、著作権者の許諾を得て利用するという大原則は、DX時代においてもきちんと守られることが極めて重要であると考えております。

例外的な事案ですけれども、実演家の個人の尊厳を尊重する観点から、著作権法91条2項で二次利用ができる場合であっても、出演者の強い意向で二次利用を行わない作品もあると聞いております。このような作品が簡素で一元的な権利処理によって二次利用されてしまうことなどが懸念されるところでございます。

3ポツでございますが、映画の著作物についても、複数の権利者団体による連携は私的録画補償金管理協会の例があると思いますが、しかし、東芝補償金訴訟の判決によって同協会は解散に追い込まれましたので、現状では複数の権利者団体による連携は存在していないというふうに認識しております。

4ポツですが、映画の著作物に関しては、集中管理が行われておりませんので、当協会は、会員会社、すなわち構成員に対するコンテンツ利用に関する対価還元への関与を行っておりません。まして、会員以外の非構成員に対する対価還元に関与するというようなことは全く考えておりません。

最後に、5ポツでございます。映画の著作物の原著作物や、映画に録音録画されている著作物がいわゆる拡大集中許諾により利用できるようになるとすれば、権利処理が容易になるという面はあるのかもしれません。しかし、信頼性のある管理団体の存在が前提であると思われます。また、既に述べましたように、著作物の利用は、著作者の許諾を得て行うというのが大原則ですから、関係者の納得を得ることが不可欠だと考えます。映画の著作物の著作権に関する拡大集中許諾は、そもそも著作権の集中管理団体が存在しておりませんので、その前提を欠いていると考えております。

以上でございます。ありがとうございました。

【末吉主査】  ありがとうございました。続きまして、日本新聞協会様、お願いいたします。

【日本新聞協会(山下)】  新聞協会著作権小委員会の委員長をやっております山下です。本日はよろしくお願いいたします。

まず1番ですが、集中管理の考え方。新聞協会あるいはその関連組織では、著作権等の集中管理は行っておりません。記事のクリッピング許諾、二次利用許諾などは、各新聞社で窓口を設けて人員を配置し、対応しています。各社を横断する集中管理窓口があれば、利用者にとっては便利だろうと思いますが、記事ごとの権利者判断の煩雑さや各社の許諾料金の差やいろいろ諸課題がありまして、具体的な検討段階には至っておりません。

ただ、それに代わるものとしては、日本複製権センターというものがありまして、新聞著作権協議会67社が権利委託をしております。それで、包括料金による複製許諾が実施されていると。複製権センターが管理しているのは、単発的な、それほど頻繁でない複製というものです。ここでは、大手紙、ブロック紙、地方紙の多くが、67社が加わっていますが、8月には日本経済新聞さんも新たに参加いたしまして、全新聞部数に占めるカバー率は相当の高率になっていると思われます。

2番目、簡素で一元的な権利処理についてです。新聞記事の二次利用許諾について考えますと、テレビ番組向けなどに1か月の包括料金(サブスクリプション)、これを用意している新聞社もございます。これは1記事使うごとに許諾を取るという手間がなくて、テレビ局さんには好評をいただいていると聞いております。また、先ほども出ました複製権センターの包括料金では、ユーザーの所属人数掛ける所定料金、これを払えばいいという簡便さにより好評を得ております。

ただし、どこまでの権利を複製権センターなどの集中管理団体に預けるのかという判断がなかなか難しい面もございます。同センターについても、新聞社からは、公衆送信権、クリッピング許諾は委託しておりません。二次利用の市場においては、各社が自ら付加価値をつけて個別に収益化をしたい、こういうメニューがいろいろありますので、利便性と各社ごとの収益化希望とどこで折り合いをつけるかという問題がございます。

上記以外の緊急を要しない二次利用については、使いたいコンテンツを事前にきちんと提示してもらい、適切な許諾料金を請求させていただくというのが大原則です。根拠の薄弱な包括料金あるいは推定許諾という過度な簡素・一元的処理は、対価が過小ないし過大になりかねず、我々の許諾の実情にはなじまないと考えます。また、不正利用等を防ぐチェック体制も必要となりますので、難しさがなかなかあると思います。

3番目、複数の権利団体による連携です。複製権センターを例に取ると、複数の分野が新聞だけでなく参加しておりますが、利用報告・分配のルールを厳格に規定化し、現状ではうまく運営されていると思っております。ただし、ユーザーからの複製利用は全量報告を本当はしてほしいんですが、これは事実上不可能ということで、サンプル報告となっております。ユーザーの種類や規模、地域性など全て適切に反映されたサンプル抽出であるかと言われると、なかなかそれは言い切れないなというなかなか難しい問題も含んでおります。

日々大量に作成される新聞記事をその日の早朝に各社横断データベースとして公開し、利用者がオンライン上で利用・課金できるような仕組み、これは利用する方には非常に理想的な仕組みかもしれませんが、我々新聞社にとっては、購読していただくという一次利用と今言った二次利用は、利益が相反する面が大きく、実現は困難と言わざるを得ないと思います。二次利用については、日本複製権センターのほかにも、適切な著作権処理済みのデータベース事業者あるいはクリッピング事業者が存在しておりますので、そこを使っていただければ、実質的な窓口統一、それから、データベース整備というのは現実的にうまく進行していると思いますので、そこを使っていただくという方法が今のところは一番かなと思います。

それから、非構成員に対する対価還元。複製権センターには、我々新聞協会の非加盟者であっても個別に権利委託が可能ですので、新聞協会の非構成員であっても、その方法であれば適切な対価還元は可能と思います。

それから、いわゆる拡大集中許諾ですが、ノンメンバーの著作物を管理することの正当性や対価還元の手法などがポイントであろうと思います。少数意見をきちんと吸い上げて慎重に検討されるよう要望いたします。新聞協会についていえば、管理団体となって拡大集中許諾を担うことは困難だと思います。複製権センターなど既存団体の活用を図るほうが、迅速な進展が可能であろうと思っております。

最後、6番目、その他ですが、今日はせっかくの機会をいただきましたのでぜひお話ししたいんですが、適切な対価還元を図るためには、プラットフォームを舞台とする著作権侵害の是正がぜひとも必要と考えます。

2例ほど挙げます。新聞社A社が権利侵害コンテンツとして削除要請しております件数が、月間150件ほどもあります。この内訳は、大まかに言って大手プラットフォーマーに関するものが80%。通常の記事利用許諾料(ネット掲載)は正価では1件2万円ほどですので、月間の損害額は把握できただけで単純計算では300万円ほどになる。また、別の新聞社B社は、記事照合ソフトを使って発見した無断複製や転載が月間1万件もありますので、この被害額想定が単純計算でも月額1億円と。削除要請が追いついていない状態と。

以上の想定を全国紙5紙に広げれば、単純計算で年間60億円ほど。ブロック紙、地方紙、スポーツ紙など含めて覚知されていない膨大な無断利用、覚知しても運営主体が不明な掲示板なども考慮すれば、新聞全体の損害額はその数倍に上るという推定も可能です。本来、ユーザーが新聞社のサイトを訪問してくれれば得られる広告収入等による収益機会の損失は含まれていませんので、それも考慮すればさらに拡大と思います。

EU著作権指令など諸外国の事例は、プラットフォーマーがより重い責任を担う方向であります。非常に参考になると思います。我が国でもこの面を至急検討開始すべきではないかと。今回の検討課題にも上っておりますので、ぜひ御配慮をお願いしたいと思っております。

以上です。

【末吉主査】  ありがとうございました。最後に、日本書籍出版協会様・日本雑誌協会様、お願いいたします。

【日本書籍出版協会・日本雑誌協会(村瀬)】  それでは、書協及び雑協から私が報告をさせていただきます。

まず出版社の立ち位置は、著作物の出版権設定、譲渡を含めた利用許諾を受けて、出版物としての利用を行う立場と、主に雑誌系コンテンツにおいて自ら著作者として創作し公開する立場とがあります。また、出版物としての利用を行う立場についても、出版物が著作物について初めての公開の場となる場合と、既存の著作物を利用する場合があります。このように立場が様々ですので、本件についてなかなかストレートな意見を述べにくいところですが、提出している資料に補足して意見を述べたいと思います。

まず、順番が少しずれますけれども、簡素で一元的な権利処理については、既存の著作物を利用する立場からは一定の期待というのが考えられるところではあります。もっとも、音楽著作物、写真、美術などについて、現状の編集出版作業において特段権利処理で困るという局面はほとんどありません。あるとすれば、権利者不明または連絡先が不明の著作物を使うときにほぼ限定されるのではないかと思います。その意味では裁定制度の見直しによってカバーできるのかもしれません。

また、出版の機能として、過去のコンテンツや現在流通していないコンテンツを発掘し、新たな編集方針の下に世に出すというものがあります。このような場合、簡素で一元的な権利処理をどのように制度として設計するのかによると思いますが、設計の仕方によっては、それらの編集出版作業にとってメリットとなる一方、企画にブレーキをかけるようなケースというものも起こり得るのではないかと考えます。

次に、出版物が利用される局面での意見を述べます。この中には出版社が著作権を有していない場合もありますが、その場合であってもその多くは出版物としての独占利用許諾を得ているケースが考えられます。一元的な権利処理の対象によっては契約の安定性に影響が及ぶ危惧もあり、また、出版物が利用される対応によっては経済的損失が生じることも考えられます。

現在出版界で著作権に関する集中管理を行っているのは、ヒアリング事項の1で回答した複製権などになります。これらについては権利委託の割合を向上させていくということは課題ではありますが、それ以上に、このように複製利用において許諾制度が存在していて、利用するに当たってはそこの制度に基づいた利用申請を行ってもらうというような、こういった許諾制度の周知と利用の拡大というものが、利用者において求められていくところであるというふうに考えています。

あと、ヒアリング事項3については、特に記載をしておりませんが、補足をいたしますと、現在、JPO、日本出版インフラセンターに集約されている出版物の流通情報は、紙と電子でおおよそ260万件に達しております。現在これらに権利情報を付加していく作業が進められています。この試みが権利者情報データベースに進化していくのかどうかというところは分かりませんが、権利関係の公示は出版界として取り組むべき課題であるという認識が共有されつつある状況かと考えています。

また、ヒアリング事項5に関連するところとして、そこにも明記したとおり、利用範囲を明示的に特定しない管理と拡大集中許諾制度には反対の立場を現在のところ取っております。複製権についても、複数存在する管理団体の関係をどうするのか想定し難いところですし、連携ないしは合流を強制されるような方向性が取られるのだとしたら問題です。出版物として利用している著作物が対象となるとすると、独占的な許諾契約との抵触や経済的影響が生じるリスクもあると考えます。

ヒアリング事項4に戻りますが、対価還元についてです。非構成員の議論以前に、対価還元は実務上非常に苦労するところです。複製権についても問題を抱えていると思いますし、補償金の分野ではありますが、これから行われる、冒頭でも御説明ありましたSARTRAS分配も同様だと考えます。さらに、今年度改正法が成立した図書館資料の公衆送信についても、対象となる図書館資料の大半が出版物であると考えられることから、出版界として掲載されている著作物の権利者への補償金の還元を実現していきたいと考えています。これは本日参加されている著作権者団体との協力で行っていくことになりますが、非構成員への補償金の分配をどうしていくのかということを解決しなければなりません。ヒアリング事項4、5の議論は、これらの補償金の分配プロセスが一般に信頼されるものになってからにすべきではないかと考えます。

最後に、ヒアリング事項6でも書きましたが、著作権侵害、特にいわゆる海賊版被害の拡大は深刻な状況になっています。社会現象として報じられた漫画村事件のときに比べても、その数倍の被害が生じている状況が現に存在します。出版界としては、個別の出版社での取組に加えて、権利者団体、通信事業者らと共同で設立したABJでの取組を通して海賊版対策を行っていくことになりますが、ぜひともそれらの活動を後押しする法制度の改善を求めていきたいと考えています。

以上です。

【末吉主査】  ありがとうございました。それでは、日本音楽著作権協会様から日本書籍出版協会様・日本雑誌協会様までのこれまでの御説明につきまして、御質問がありましたらばお願いいたします。

御質問よろしいですか。

それでは、御質問がないようです。どうもありがとうございました。以上でヒアリングを終了いたします。御説明をいただいた皆様方には、長時間御協力をいただきまして、ありがとうございました。ヒアリング団体の皆様はここで御退室をください。

続きまして、時間が過ぎてしまいましたが、議事2の自由討議に入りたいと思います。デジタルトランスフォーメーション(DX)時代に対応した著作権制度・政策の在り方について、事務局に資料を用意していただいています。それでは、資料3に基づき説明お願いします。

【小倉著作権課長補佐】  資料3を御覧ください。「簡素で一元的な権利処理に係るこれまでの主な意見」といった資料を事務局で作成しました。資料3の冒頭にございますように、文化庁で開催していた勉強会、著作権分科会、また、前回までのこの基本政策小委員会における委員意見を基に作成しております。

項目につきましては、前回資料をベースに、1、簡素で一元的な権利処理のニーズや、ニーズに対する実効性のある具体的利用場面、2、簡素で一元的な権利処理に係る各種方策の総合的な検討、少しページが飛びまして、3、簡素で一元的な権利処理等に係る各種方策をより実効性あるものにする環境整備、4、ユーザーが簡便かつ安心して著作物を利用できるようになるための方策、こういったところに少し整理をしまして、これまでの議論、また、今後の検討事項をつくりました。この資料は、あくまでもこれまでの委員意見のまとめでございまして、本日あるいは次回以降の委員の御意見、自由討議の参考にさせていただきたいという趣旨で作ったものです。

簡単に資料のほうを御紹介します。まず資料3の1ページ目の1、具体的利用場面。今回のヒアリングでも、利用場面はどうするかといった御意見が多くありました。今後の検討としては、やはりデジタル技術、インターネットを前提としました具体的なニーズや利用場面の把握が必要じゃないかと。また、権利処理が複雑になりやすい場面はどうか。一方で、集中管理が難しい場面・内容があるといったこともヒアリングではございました。また、そもそも簡素で一元的な権利処理になじまない場合があるか、その場合はそのままでいいのか、何かしらそういった場面でも工夫や留意することが考えられるか、こういったものでございます。

また、2、簡素で一元的な権利処理等に係る各種方策の総合的検討。こちら全般については、1ページの下に書いてあるように、いずれかの方策というよりは、組み合わせて目的を達成すべきといった御議論、また、短期的にある程度射程を限定して取り入れつつ、徐々に拡大することも必要といった御議論、また、UGC、過去コンテンツ、アウトオブコマースといった著作物の性質を踏まえた検討、フリー素材の活用、このような御意見が出ました。

2ページ目に参りますが、今後の検討事項としましては、これまでの御意見では、クリエイターとユーザーの二項対立を超えた、両者にとって望ましいコンテンツの利用推進方策とかについて議論していくべきではないかといった御意見。また、UGC、過去コンテンツ、アウトオブコマース、これらはなかなか定義が不明瞭でございますので、どういった定義とか範囲が想定されているか、今実際に使われているか、こういったところも検討してはどうかというものでございます。

また、その次の黒丸にある、許諾権を前提とした権利処理。これまでの議論では、クリエーティブコモンズ等の意思表示、プラットフォームやデータベース上での意思の発信と利用円滑化について御意見も出ておりました。今後の検討事項も、意思表示をすることのインセンティブの付与とか、あとは個人情報の課題等もありましたが、意思表示の仕組みをどうするか、こういったところを今後議論かなというところです。

また、2ページ目の中ほど、データベースの構築。こちらにつきましても、かなり多くの意見が出ました。例えば今後の検討課題としましては、やはり登録のメリットとか、データベースにつきましては、音楽分野は既に出来ておりますが、作成する分野の優先順位とか作成主体、また、利用者側がそのデータベース作成にどう参画できるか、あるいは究極的にはマッチングしたりできるか、この仕組みの検討も必要なのかなというところとしています。

3ページに参ります。集中管理の促進。本日、前回までの各団体から詳細な御説明いただきました。今後の検討事項としては、クリエイターを集中管理に誘引するメリットとしてどのようなものが考えられるか。また、一元的な権利処理を行うことのできる分野横断的な集中管理はどのような仕組みが考えられるかといったところです。

続きまして、裁定制度です。裁定制度は、権利者不明の場合に活用されるといった御意見が本日も出ておりましたが、そもそも裁定制度の利用が近年増加傾向にあるとはいえ、まだまだ少ないことへの対応が必要かというところです。今後の検討課題は、裁定制度を使いやすくするための方策、2つ目、裁定制度あるいは新しい仕組みを文化庁ではなく民間団体により運用することの可能性についても議論していくのかなと思っております。

また、3ページ下側には許諾推定でございます。こちらにつきましては、今後の検討課題でございますが、コンテンツの保護・利用に係る意思表示をしない場合に、許諾推定を導入することが考えられるか、また、この場合、意思表示をどう捉えるかといったこと。また、推定の基礎となる事情とか、今の黙示の許諾との関係性、また、挙証責任の転換、につきましても議論をする必要があるかと考えております。

4ページ目、拡大集中許諾制度についてです。これまでの議論としましては、万能な制度ではないため、実現可能性に軸足を置いた具体的な議論を行うべきと。また、集中管理が十分でない状況では、一般ECLは難しいのではないか。本制度を導入する場合にも、著作物の種類、利用範囲を限定的に導入するなどして、効果を見極めながら必要に応じて拡大していくスタンスも重要といった御意見がございました。また、本日のヒアリングでも多くの御意見がございました。今後検討するとしますと、まず具体的にどういった利用場面が想定され得るのか、あるいは日本の法制度に組み込む場合の課題、管理率の低い管理団体の管理の正当性、こういったところが論点として挙げられます。

権利制限につきましては、データベースへの登録などがされないものについて、権利制限の対象とすることなども考えられるのではないかといった御意見も出ておりました。今後の検討課題に関しましては、そもそもクリエイターが保護を欲さない著作物、集中管理がされていない著作物について、一定の条件の下、権利制限を行うことが可能かどうか、また、その際公益性をどう考慮するか。2つ目、アウトオブコマースの利用等、対価が見込めないコンテンツの利用について、一定条件の下での権利制限の導入は可能か、この場合のアウトオブコマースの定義や範囲についてを示させていただいております。

4ページの下側、3番、簡素で一元的な権利処理等に係る各種方策の環境整備でございます。こちらは省きますが、これまでの議論では、当然前提となる著作権に関する知識の普及啓発、また、利用者側の利用したいコンテンツの情報を集約するといった利用者側の取組、また、集中管理の促進、その他データベースの促進も意見として本日ありましたが、どのような方策が考えられるかといったところです。

最後、5ページ目になります。5ページ目は、簡素で一元的な権利処理とは少し趣旨が異なってはきますが、ユーザーが簡便かつ安心して著作物を利用できるようになるための方策も併せて検討するほうがいいだろうということで、これまでも、シンプルで理解しやすい仕組みとか、法律違反を恐れた利用の萎縮をなくしていくべき、といった御意見がありました。また、今、日常的に行われている寛容的な利用、黙示の許諾、こうした運用上の柔軟性が損なわれないように慎重に検討する必要があるといった御意見が出ておりました。

今後の検討事項としては、国民に理解が得られる、利用しやすくするために配慮すべきこと、著作物を安心して利用できるようにするためには何か方策が考えられるだろうか、とまとめております。

事務局からの説明は以上でございます。

【末吉主査】  ありがとうございました。それでは、ただいまの説明と本日のヒアリングでお聞きした内容を踏まえまして、自由討議を行いたいと思います。予定では30分程度行う予定なんですが、すみません、20分程度延びてしまいましたので、残り10分程度となっております。ぜひこの場で御発言をという御発言を優先したいと思いますが、いかがでございましょう。

前田委員、どうぞ。

【前田委員】  ありがとうございます。私はヒアリングを伺っていて、裁定制度の抜本的見直しについては、これはぜひ進めるべきであると思いますし、特に反対もなかったのではないかと思います。許諾推定について、これはいろいろ議論があり得るかと思いますが、少なくとも黙示的許諾が認められる場合はどういう場合かというようなことをソフトロー的な手段で明らかにしていくということについては、非常に意味のあることではないかと思います。

それに対して、拡大集中許諾については、問題が多々あって、裁定制度の抜本的見直しやソフトロー的な意味も含めた許諾推定に比べると優先順位がやや下がるのではないかと私は思います。

それから、このペーパーの中には明確には出ておりませんけれども、過去コンテンツの中には、多数の権利者の許諾がそろって初めて利用ができるというものがございます。それについては、許諾がそろわない場合にどうするかという問題があろうと思います。その一部は裁定制度の抜本的解決で対応可能かと思いますけれども、大多数の権利者が利用を望んでいるけれども、一部の人が反対した場合はどうなるのかという問題は残るかと思います。

以上でございます。

【末吉主査】  ありがとうございます。ほかにいかがでございましょう。

菅委員、どうぞ。

【菅委員】  ありがとうございます。ざっとお聞きいたしまして、私もクリエイターの一人として、いわゆるオプトアウトというんですか、これは嫌だということを言いたいというクリエイター団体の方が多いように見受けられました。使ってほしい気持ちと、これは使わないでくださいというのは、やはり自由意思として認めておきたいので、そのときに、じゃあ、一括でやるとしたらどうなるかという心配がとても大きかったと思います。

単純に意見なんですけれども、やはり一元許可というのはとても難しくて、今日お話を伺った時点で考えているのは、もうプラットフォームにとどめたほうがいいなと思いました。例えばデータベースにしても、「この作品を使いたい」「じゃあ、権利者団体はこことこことここなので、そちらに当たってください。個別でやってください」という、どこに行けばいいかを案内する案内窓口、インフォメーション的な一元的なデータベースがあるといいと思います。例えば映画1本使うにしても、先ほどおっしゃられたように、音楽から、監督から、実演家とかいっぱいいろいろ団体があるわけで、「この映画を使いたい」「じゃあ、こことこことここに当たりなさい」という、その案内プラットフォームこそが私たちの目指す一番簡単なサービスの提供、国民のもっと使おうとする意欲の簡単な窓口になるのではないかと思いました。

それに当たりまして、例えば漫画家協会さんがデータベースを作るのは困難だと言われましたけれども、漫画家協会さんに行くのが困難であれば、京都に国際マンガミュージアムという、MMというところがあるんですけれども、じゃあ、MMに当たれば分かるよみたいな代替案も示せると思います。そして、個別で当たっていただいた状態で、「これはオーケーです。許可出ました。使えます」、「いや、これは実演家のこの俳優さんが駄目と言っていて使えません」ということが個別でちゃんと仕分ができるので、このインフォメーションをしっかりつくるということに目を向ければどうかなと私は思いました。

反面、今のDX化のこの時代において、それをやってしまうと、速報性に欠けるという問題もあります。使ってしまって後から許諾を取るといういわゆる推定許諾のような仕組みがそれでは取りにくいので、ニュースの場合、例えばユーチューバーさんの時事的な話題の場合にはちょっとそぐわないかな、手間がかかるなという気はしますけれども、取りあえず一元的に許可をするのではなくて、一元的なインフォメーションの場をつくるというのがいいのではないかというのが私の意見です。

以上です。

【末吉主査】  ありがとうございます。ほかにいかがでございましょう。坂井委員、どうぞ。

【坂井委員】  すみません、端的に1点だけ。今回ヒアリングをいろいろな権利者団体にしてもらったんですけれども、著作権管理をしている権利者団体というのは、普通に考えると、有償での著作物の利用が想定されているというケースが多いので、主に国内のプロということだったと思います。アマチュアとかユーザーとか海外とかそういうようなところを聞かなければいけないんじゃないかなというところと、それから、年内に具体的な方策を決めるという中で、DBなのか裁定制度なのか許諾推定なのか分からないですけれども、具体的な議論をしないと年内に決まらないんじゃないかなというところだけはちょっと感じました。

以上です。

【末吉主査】  ありがとうございます。福井委員、どうぞ。

【福井委員】  ありがとうございました。今、坂井委員がおっしゃったとおり、今我々が議論している問題のステークホルダーは、全国民なんだろうと思います。その意味では、そういう視点からの議論が必要であろう、また、その覚悟がなければそもそもこんな議論は開始してはいけないんだ、というふうに思います。

ただ、少なくとも今日お伺いしたところで前向きの団体さんがいないジャンルについては、少なくとも彼らを軸にした拡大集中許諾の議論は、現実論からして優先順位は下がらざるを得ないんじゃないかなというのは感じたところでした。

では、どこが進めやすいかという話になったときに、やはり裁定制度。前田委員のおっしゃるとおりだと思います。もう一つは、集中管理の促進については、とはいえ、ほとんどの団体さんはそれは必要で有益だという御意見だったし、当然そうだと思うんですね。そうすると、権利情報データベースあるいは通常の集中管理の推進策、これはできることとして重要かなと感じたところでした。

その点で、コストがかかる、民間では賄えない、政府の支援が必要だという声は相当に上がっていたと思うのですが、私は全く賛成です。民間の費用負担だけでできるんだったらもうとっくにできているはずであって、民間に負担をせよ、集中管理を進めよと言うだけでは、これはさすがに酷だろうというふうに思います。よって、権利情報データベースや集中管理については、経費負担の面も含めて政府がどれだけ前向きに進めていけるか、サポートしていけるかは重要じゃないかなというふうに思いました。

最後に、拡大集中許諾が仮に進まない分野があるならば、対象となる利用行為ごとの別な促進策は考えていかざるを得ないのかなと感じたところでした。

私からは以上となります。

【末吉主査】  ありがとうございます。奥邨主査代理、どうぞ。

【奥邨主査代理】  簡単に。集中管理の促進というのは私も非常に重要だと思います。その場合に、もちろん権利者にとってのメリットもそうなんですけれども、利用者が集中管理団体を使いたいというふうにする仕組み、インセンティブというのもやはり重要だろうと思います。冒頭のほうでも、集中管理団体が利用しやすい、許諾しやすい、お金をかけて探さなくてもいいような例えばデータベースを作ってそれを利用者に提供するというアイデアが示されましたけれども、そうすれば、コストも安くなって権利者にとっても得ですし、利用者のほうも早く安く使えるとかですね。だから、そういう点で利用者にとってのメリットもつくっていくということもやはり考えないと、集中管理の促進というのは難しいのかなというふうに思います。両方のバランスかなと思っております。

以上です。

【末吉主査】  ありがとうございます。太田委員、どうぞ。

【太田委員】  どうもありがとうございます。菅委員のおっしゃったプラットフォームまでにとどめないと実現は難しいのではないかという点に賛成したいと思います。ただ1つだけ留意点があるのは、経済分析等で出てくる大きな要素に、取引費用、とりわけ交渉費用というものがあります。権利者として,ここと,ここと,ここが分かったとします。そこで権利者の皆さんとユーザーが話し合えばいいとしても,実はその話し合うということがユーザーにとっては大変なコストになる場合が多いのではないかと思います.心理的コストも含めてです.この交渉費用を簡便安価にすることができるような工夫が制度的に必要かなと感じます。そこまでやらないと、ユーザーから見ると使い難いままではないかな,という気がします。その意味では、交渉費用への配慮が、今日のヒアリングであまり出てこなかったのですけど、非常に重要な観点ではないかと思います。

以上です。

【末吉主査】  ありがとうございます。ほかにいかがでしょう。生貝委員、どうぞ。

【生貝委員】  ありがとうございます。1個だけ短くなんですけれども、まさにECLはいろいろな議論があるというふうに思うんですけれども、前も少し言及したとおり、欧州のほう、まさにこれまで極めてこの審議会でも参照してきたヨーロッパ法のほうが、DSM指令を中心にしてかなり前提が変わってきているという部分がございますので、ドイツの国内法化された条文なども検討をしていく前提としてよくよく調べておくとよいのかなというふうに思いました。

あと、使い方の用途としてDSM指令全体のつくりも面白いんですけど、既存の典型的な社内複製とかそういったところに加えて、プラットフォーマーからの対価還元に当たって、やはり新しい権利を例えば設けたとしても、権利制限の対象にするわけにはなかなかいかないと。しかし、全体的に著作物が大量にデジタルプラットフォームの上で使えなければいけないというふうにいったときのECLの使い道というのも、これは制度設計全体の中でかなり想定されており、また、国内法化プロセスの中でもその点は重視されているようであります。ですので、そういった全体設計を含めて、取組というものを少し研究しておけるとよいのかなという気がしております。

取りあえず以上です。

【末吉主査】  ありがとうございます。ほかにいかがですか。御質問だけでなく、全体通じてでも結構なので、何か御意見ございますか。よろしいですか。

ありがとうございます。すみません、ちょっと時間を超過いたしました。本日はこのくらいにしたいと思います。

最後に、事務局から連絡事項がありましたらお願いします。

【小倉著作権課長補佐】  次回の本小委員会につきましては、9月15日10時からとなります。よろしくお願いいたします。

【末吉主査】  ありがとうございました。

それでは、以上をもちまして、文化審議会著作権分科会基本政策小委員会(第3回)を終了させていただきます。本日はありがとうございました。

―― 了 ――

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