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(令和3年9月10日)令和2年度公正取引委員会年次報告について

(令和3年9月10日)令和2年度公正取引委員会年次報告について

令和3年9月10日
公正取引委員会

 公正取引委員会は,独占禁止法第44条第1項の規定に基づき,内閣総理大臣を経由して,国会に対し,毎年,独占禁止法等の所管法令の施行の状況を報告しているところ,本日,令和2年度公正取引委員会年次報告書を国会に提出した。その要旨は以下のとおりである。

1  独占禁止法制等の動き

(1) 独占禁止法改正法の施行に伴う関係政令等の整備

 令和元年6月19日,第198回通常国会において可決・成立し,同月26日に公布された「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律」(令和元年法律第45号。以下「令和元年独占禁止法改正法」という。)は,令和元年7月26日及び令和2年1月1日に施行された一部の規定を除き,令和2年12月25日に施行された。
 令和元年独占禁止法改正法の施行に伴い,独占禁止法施行令について,所要の改正を行った(令和2年政令第260号)。
 また,令和元年独占禁止法改正法による課徴金制度の見直しに伴い,「公正取引委員会の審査に関する規則」について所要の改正を行った(令和2年公正取引委員会規則第4号)。さらに,令和元年独占禁止法改正法による課徴金減免制度の見直しに伴い,「課徴金の減免に係る報告及び資料の提出に関する規則」の全部改正により,「課徴金の減免に係る事実の報告及び資料の提出に関する規則」(令和2年公正取引委員会規則第3号)を制定するとともに,「調査協力減算制度の運用方針」(令和2年9月2日公正取引委員会)を策定した。
 このほか,新たな課徴金減免制度をより機能させる等の観点から,「公正取引委員会の審査に関する規則」の一部改正により,事業者と弁護士との間で秘密に行われた通信の内容が記録されている物件に係る判別手続を導入する(令和2年公正取引委員会規則第2号)とともに,「事業者と弁護士との間で秘密に行われた通信の内容が記録されている物件の取扱指針」(令和2年7月7日公正取引委員会)を策定した。

(2) 押印を求める手続等の見直しのための公正取引委員会規則の改正

 「規制改革実施計画」(令和2年7月17日閣議決定)において,「原則として全ての見直し対象手続(注)について、恒久的な制度的対応として、年内に、規制改革推進会議が提示する基準に照らして順次、必要な検討を行い、法令、告示、通達等の改正やオンライン化を行う」こととされたことを受け,公正取引委員会は,公正取引委員会規則において,国民や事業者等に対して,押印を求めている手続等について,国民や事業者等の押印を不要とする等の改正を行った(令和2年公正取引委員会規則第7号。令和2年12月25日公布,同日施行)。

(注)「法令等又は慣行により、国民や事業者等に対して紙の書面の作成・提出等を求めているもの、押印を求めているもの、又は対面での手続を求めているもの」が「見直し対象手続」と定義されている。

2  厳正・的確な法運用

(1) 独占禁止法違反行為の積極的排除

 公正取引委員会は,迅速かつ実効性のある事件審査を行うとの基本方針の下,国民生活に影響の大きい価格カルテル・入札談合・受注調整,中小事業者等に不当に不利益をもたらす優越的地位の濫用や不当廉売など,社会的ニーズに的確に対応した多様な事件に厳正かつ積極的に対処することとしている。

 独占禁止法違反被疑事件として令和2年度に審査を行った事件は101件である。そのうち同年度内に審査を完了したものは91件であった。

 令和2年度においては,15件の法的措置(排除措置命令及び確約計画の認定)を行った。これを行為類型別にみると,私的独占が1件,価格カルテルが6件,入札談合が1件,受注調整が1件,不公正な取引方法が6件となっている(第1図参照)。また,延べ4名に対し総額43億2923万円の課徴金納付命令を行った(第3図参照)。
 なお,令和2年度においては,課徴金減免制度に基づき事業者が自らの違反行為に係る事実の報告等を行った件数は33件であった。

<令和2年度における排除措置命令事件>

私的独占

○ マイナミ空港サービス㈱に対する件

価格カルテル

○ 愛知県立高等学校の制服の販売業者に対する件

入札談合

○ 山形県が発注する警察官用制服類の入札等の参加業者に対する件

受注調整

○ 東海旅客鉄道㈱が発注するリニア中央新幹線に係る品川駅及び名古屋駅新設工事の指名競争見積の参加業者に対する件

 また,令和2年度において,事業者の行為が独占禁止法に違反する疑いがあるものとして確約手続通知を行ったところ,事業者から確約計画の認定申請があり,当該計画が独占禁止法に規定する認定要件のいずれにも適合すると認められたことから当該計画を認定した事案が6件あった。
 なお,認定した確約計画に金銭的価値の回復が盛り込まれた事案が2件あったところ,これにより20億円超の原状回復が行われた。

<令和2年度における確約計画の認定事案>

拘束条件付取引

○ クーパービジョン・ジャパン㈱に対する件
○ ㈱シードに対する件
○ 日本アルコン㈱に対する件

優越的地位の濫用

○ ゲンキー㈱に対する件
○ アマゾンジャパン(同)に対する件
○ ビー・エム・ダブリュー㈱に対する件

 加えて,令和2年度においては,注意・公表を行った事案が1件,審査の過程において,事業者の自発的な措置を踏まえて調査を終了した事案が2件あった。

<令和2年度における注意・公表事案>

○ ㈱電通に対する件

<令和2年度における自発的な措置に関する公表事案>

○ 大阪瓦斯㈱に対する件
○ 日本プロフェッショナル野球組織に対する件

(前記ウからオまでの事案の処理の類型別件数について第2図参照)

 

第1図 法的措置(注1)件数等の推移

第1図

(注1)法的措置とは,排除措置命令,課徴金納付命令及び確約計画の認定のことである。一つの事件について,排除措置命令と課徴金納付命令が共に行われている場合には,法的措置件数を1件としている。
(注2)私的独占と不公正な取引方法のいずれも関係法条となっている事件は,私的独占に分類している。
(注3)「その他」とは,事業者団体による一定の事業分野における事業者の数の制限である。

 

第2図 排除措置命令・確約計画の認定・警告等の件数の推移

第2図

(注)事案の概要を公表したものに限る。

 

第3図 課徴金額等の推移

第3図

(注)課徴金額については,千万円未満切捨て。

 

 このほか,違反につながるおそれのある行為に対する注意208件(不当廉売事案について迅速処理による注意を行った136件を含む。)を行うなど,適切かつ迅速な法運用に努めた。

 公正取引委員会は,独占禁止法違反行為についての審査の過程において競争政策上必要な措置を講じるべきと判断した事項について,発注機関等に発注制度の運用の見直しの求め等を行っている。
 令和2年度においては,山形県に対し,警察官用制服等の発注制度の運用について,その見直しを求めた。また,愛知県教育委員会に対し,愛知県立高等学校の生徒が着用する制服の販売に関して留意すべき事項を通知した。

 公正取引委員会は,国民生活に広範な影響を及ぼすと考えられる悪質かつ重大な事案等については,刑事処分を求めて積極的に告発を行うこととしている。令和2年度においては,独立行政法人地域医療機能推進機構が発注する医薬品の入札談合事件について,令和2年12月9日,入札参加業者3社並びに当該3社で独立行政法人地域医療機能推進機構が実施する医薬品購入契約に係る入札及び価格交渉等に関する業務に従事していた者7名を,検事総長に告発した。

 令和2年度当初における審判件数は,前年度から繰り越されたもの152件(排除措置命令に係るものが76件,課徴金納付命令に係るものが76件)であった(第4図参照)。令和2年度においては,審判開始を行った事件はなく,平成25年独占禁止法改正法(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律〔平成25年法律第100号〕をいう。)による改正前の独占禁止法に基づく審決を154件(排除措置命令に係る審決77件,課徴金納付命令に係る審決77件)行った。この結果,令和2年度におけるこれら審決をもって係属中の審判事件は全て終了した。

 

第4図 審判件数の推移

第4図

(注)審判件数は,行政処分に対する審判請求ごとに付される事件番号の数である。

 

(2) 公正な取引慣行の推進

ア 優越的地位の濫用に対する取組

(ア) 公正取引委員会は,以前から,独占禁止法上の不公正な取引方法に該当する優越的地位の濫用行為が行われないよう監視を行うとともに,独占禁止法に違反する行為に対しては厳正に対処している。また,優越的地位の濫用行為に係る審査を効率的かつ効果的に行い,必要な是正措置を講じていくことを目的とした「優越的地位濫用事件タスクフォース」を設置し,審査を行っている。
 令和2年度においては,優越的地位の濫用事件について,優越的地位の濫用につながるおそれがあるとして47件の注意を行った。

(イ) 公正取引委員会は,中小事業者の取引の公正化を図る必要が高い分野について,実態調査等を実施し,優越的地位の濫用規制の普及・啓発等に活用している。
 令和2年度においては,大手コンビニエンスストア8社の全加盟店を対象に,本部と加盟店の取引等に関する実態調査を実施し,調査結果を取りまとめて公表する(令和2年9月)とともに,「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方について」を改正し(令和3年4月),調査の結果明らかになった問題点について,独占禁止法上の考え方を示した(後記3(4)及び(5)を参照)。
 また,物流特殊指定の遵守状況及び荷主と物流事業者との取引状況を把握するため,荷主3万名及び物流事業者4万名を対象とする書面調査を実施した。当該調査の結果,物流特殊指定に照らして問題となるおそれがあると認められた644名の荷主に対して,物流事業者との取引内容の検証・改善を求める文書を発送した(令和3年3月)。

(ウ) 公正取引委員会は,過去に優越的地位の濫用規制に対する違反がみられた業種,各種の実態調査で問題がみられた業種等の事業者に対して一層の法令遵守を促すことを目的として,業種ごとの実態に即した分かりやすい具体例を用いて説明を行う業種別講習会を実施している。
 令和2年度においては,荷主・物流事業者向けに9回の講習会を実施した。

(エ) 公正取引委員会は,下請事業者を始めとする中小事業者からの求めに応じ,当委員会事務総局の職員が出向いて,下請法等の内容を分かりやすく説明するとともに相談受付等を行う「中小事業者のための移動相談会」を実施している。
 令和2年度においては,「中小事業者のための移動相談会」を全国3か所で実施した。このほか,事業者団体が開催する優越的地位の濫用規制に係る研修会等に職員を講師として4回派遣した。

イ 不当廉売に対する取組

 公正取引委員会は,小売業における不当廉売について,迅速に処理を行うとともに,大規模な事業者による不当廉売事案又は繰り返し行われている不当廉売事案であって,周辺の販売業者に対する影響が大きいと考えられるものについて,周辺の販売業者の事業活動への影響等について個別に調査を行い,問題がみられた事案については,法的措置を採るなど厳正に対処している。
 令和2年度においては,酒類,石油製品,家庭用電気製品等の小売業において,不当廉売につながるおそれがあるとして136件(酒類9件,石油製品115件,その他12件)の注意を行った。

ウ 下請法違反行為の積極的排除等

(ア) 公正取引委員会は,下請事業者からの自発的な情報提供が期待しにくいという下請取引の実態に鑑み,中小企業庁と協力し,親事業者及びこれらと取引している下請事業者を対象として定期的に書面調査を実施するなど違反行為の発見に努めている。また,中小事業者を取り巻く環境は依然として厳しい状況において,中小事業者の自主的な事業活動が阻害されることのないよう,下請法の迅速かつ効果的な運用により,下請取引の公正化及び下請事業者の利益の保護に努めている。
 令和2年度においては,親事業者6万名及びこれらと取引している下請事業者30万名を対象に書面調査を行い,書面調査等の結果,下請法に基づき4件の勧告を行い,8,107件の指導を行った(第5図参照)。

<令和2年度における勧告事件>

○ 紳士靴,婦人靴等の製造販売業における返品事件
○ 食料品,日用雑貨品等の販売業における下請代金の減額事件
○ 家電製品の配送及び設置業における下請代金の減額事件
○ 自動車等の製造販売業における不当な経済上の利益の提供要請事件

 

第5図 下請法の事件処理件数の推移

第5図①

(注)自発的な申出事案については後記(ウ)参照。

 

第5図②

 

(イ) 令和2年度においては,下請事業者が被った不利益について,親事業者216名から,下請事業者6,354名に対し,下請代金の減額分の返還等,総額5億3992万円相当の原状回復が行われた(第6図参照)。このうち,主なものとしては,①下請代金の減額事件において,親事業者は総額3億7155万円を下請事業者に返還し,②下請代金の支払遅延事件において,親事業者は遅延利息等として総額9364万円を下請事業者に支払い,③不当な経済上の利益の提供要請事件において,親事業者は総額5923万円の利益提供分を下請事業者に返還し,④返品事件において,親事業者は下請事業者から総額1168万円相当の商品を引き取った。

 

第6図 原状回復の状況

第6図

 

(ウ) 公正取引委員会は,親事業者の自発的な改善措置が下請事業者の受けた不利益の早期回復に資することに鑑み,当委員会が調査に着手する前に,違反行為を自発的に申し出,かつ,自発的な改善措置を採っているなどの事由が認められる事案については,親事業者の法令遵守を促す観点から,下請事業者の利益を保護するために必要な措置を採ることを勧告するまでの必要はないものとして取り扱うこととし,この旨を公表している(平成20年12月17日公表)。
 令和2年度においては,前記のような親事業者からの違反行為の自発的な申出は24件であった。また,同年度に処理した自発的な申出は58件であり,そのうちの1件については,違反行為の内容が下請事業者に与える不利益が大きいなど勧告に相当するような事案であった。

(エ) 公正取引委員会は,中小事業者の取引条件の改善を図る観点から,下請法等の一層の運用強化に向けた取組を進めており,その取組の一環として,中小企業庁との連名で,関係事業者団体約1,400団体に対して,おおむね3年以内を目途として可能な限り速やかに手形等のサイトを60日以内とすることなど,下請代金の支払の適正化に関する要請を令和3年3月31日に行った。

エ 消費税転嫁対策に関する取組

 消費税率の引上げに係る転嫁拒否行為については,当該行為を受けた事業者にとって自らその事実を申し出にくいこともあると考えられることから,公正取引委員会は当該行為に関する情報を積極的に収集するため,令和2年度において,売手側の中小企業・小規模事業者等に対する悉皆的な書面調査の実施(中小企業庁と合同で約630万名が対象)や,事業者・事業者団体へのヒアリング調査(2,322件)の実施等の取組を講じるとともに,立入検査等の調査を積極的に行い,消費税転嫁対策特別措置法に基づき5件の勧告と280件の指導を行い,総額7億3257万円の原状回復が行われた。
 なお,消費税転嫁対策特別措置法は,令和3年3月31日をもって失効したが,同法附則第2条第2項の規定に基づき,失効前に行われた違反行為に対する調査,指導,勧告等の規定については,失効後もなお効力を有するとされていることから,失効前に行われた転嫁拒否行為に対しては,引き続き,同法に基づいて,迅速かつ厳正に対処していく。

(3) 企業結合審査の充実

 独占禁止法は,一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる会社の株式取得・所有,合併等を禁止している。公正取引委員会は,我が国における競争的な市場構造が確保されるよう,迅速かつ的確な企業結合審査に努めている。個別事案の審査に当たっては,経済分析を積極的に活用している。
 令和2年度においては,独占禁止法第9条から第16条までの規定に基づく企業結合審査に関する業務として,銀行又は保険会社の議決権取得・保有について14件の認可を行い,持株会社等について114件の報告,会社の株式取得・合併・分割・共同株式移転・事業譲受け等について266件の届出をそれぞれ受理し,必要な審査を行った。また,「企業結合審査の手続に関する対応方針」(平成23年6月14日公正取引委員会。令和元年12月17日改定)において届出基準を満たさない(届出を要しない)企業結合計画であっても,買収に係る対価の総額が大きく,かつ,国内の需要者に影響を与えると見込まれる場合には,企業結合審査を行う旨を公表しているところ,これを踏まえ必要な審査を行っている。

<令和元年度における主な企業結合事案>

○ Zホールディングス㈱及びLINE㈱の経営統合
○ DIC㈱によるBASFカラー&エフェクトジャパン㈱の株式取得
○ グーグル・エルエルシー及びフィットビット・インクの統合

3  競争環境の整備

(1) デジタル市場競争会議

 内閣に設置されたデジタル市場競争本部の下,デジタル市場に関する重要事項の調査審議等を実施するため,デジタル市場競争会議が開催されている。当該会議は,内閣官房長官が議長を務め,公正取引委員会に関する事務を担当する内閣府特命担当大臣,公正取引委員会委員長も構成員となっている。
 令和2年6月16日に開催された第4回デジタル市場競争会議では,同年4月28日に公正取引委員会が公表した「デジタル広告の取引実態に関する中間報告書」の内容を踏まえ,「デジタル広告市場の競争評価中間報告」が取りまとめられた。また,令和3年4月27日に開催された第5回デジタル市場競争会議では,同年2月17日に当委員会が公表した「デジタル広告分野の取引実態に関する最終報告書」の内容を踏まえ,「デジタル広告市場の競争評価最終報告」が取りまとめられた。

(2) デジタル・プラットフォーム事業者の取引慣行等に関する実態調査(デジタル広告分野)

 消費者から提供される個人情報等の様々なデータを集積・利用したデジタル広告事業は,デジタル・プラットフォーム事業者の収益源として大きな存在となっている。また,デジタル・プラットフォーム事業者は,デジタル広告について,掲載メディア(媒体社)と広告出稿者(広告主・広告代理店)を結びつけるプラットフォームとして重要な役割を担っている。一方で,従来から広告事業により収益を得ていた媒体社にとっては,収益構造の変化を余儀なくされており,デジタル広告に関するデジタル・プラットフォーム事業者の事業の在り方がメディアの事業に大きな影響を及ぼすようになっている。
 こうした状況を踏まえ,デジタル広告分野におけるデジタル・プラットフォーム事業者を取り巻く取引実態や競争の状況を明らかにし,指摘される問題及びそれに対する独占禁止法上又は競争政策上の考え方を示すことで,当該分野における独占禁止法違反行為の未然防止や関係者による公正かつ自由な競争環境の確保に向けた取組を促進するため,公正取引委員会はデジタル広告の取引実態に関する調査を実施し,令和3年2月17日に報告書を公表した。

(3) デジタル市場における競争政策に関する研究会報告書「アルゴリズム/AIと競争政策」

 近年の急速な技術の進展により変化の激しいデジタル市場においては,公正かつ自由な競争を確保し,事業者の創意工夫を促すため,デジタル市場の取引実態や競争環境に即して,競争政策を有効かつ適切に推進していくことが重要となっている。
 アルゴリズムやAI(人工知能)は,デジタル市場におけるイノベーションのプロセスの鍵となる技術であり,多くの事業者がアルゴリズムやAIを利用して事業活動を行っている。そのため,デジタル市場における競争政策の推進のためには,アルゴリズムやAIがもたらす事業活動や競争環境の変容を理解することが重要である。
 また,アルゴリズムやAIは,事業活動を効率化させ,消費者の利便性を向上させるなど社会に大きな便益をもたらす一方で,アルゴリズムやAIを利用した反競争的行為について海外当局が措置を講じた事例が出てきているなど,我が国においても,アルゴリズム/AIと競争政策を巡る課題・論点について検討する必要性が高まっている。
 公正取引委員会は,このような認識の下,デジタル市場における独占禁止法・競争政策上の諸論点や課題について研究を行うことを目的として,経済取引局長主催の「デジタル市場における競争政策に関する研究会」を開催し,アルゴリズム/AIと競争政策について,令和2年7月から8回にわたって検討を行ったところ,同研究会の報告書「アルゴリズム/AIと競争政策」が取りまとめられたので,令和3年3月31日に公表した。

(4) コンビニエンスストア本部と加盟店との取引等に関する実態調査

 昨今,24時間営業をはじめとして,これまでのコンビニエンスストア本部(以下(4)において「本部」という。)と加盟店との在り方を見直すような動きが生じている上,前回の調査(平成23年)からも一定の期間が経過していることから,取引の実態を把握すべく,我が国に所在する大手コンビニエンスストアチェーンの全ての加盟店(5万7524店)を対象とした初めての大規模な実態調査を実施し,令和2年9月2日に報告書を公表した。
 今回の調査の結果を踏まえ,本部に対しては,本部ごとのアンケート結果を伝えるとともに,本報告書に基づき,直ちに自主的に点検及び改善を行い,点検結果と改善内容を公正取引委員会に報告することを要請した。また,多くのフランチャイズ本部が加盟する一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会に対して,会員各社に本報告書の内容を周知するよう要請した。このほか,独占禁止法上の考え方の明確化と問題行為の未然防止を図る観点から,フランチャイズ・ガイドラインの改正を行った(後記(5)を参照)。

(5) 「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方について」の改正

 公正取引委員会は,フランチャイザー(以下(5)において「本部」という。)とフランチャイジー(以下「加盟者」という。)の取引において,どのような行為が独占禁止法上問題となるかについて具体的に明らかにすることにより,本部の独占禁止法違反行為の未然防止とその適切な事業活動の展開に役立てるために,「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方について」(平成14年4月24日公正取引委員会)を策定している。
 公正取引委員会は,フランチャイズ・システムを用いて事業活動を行うコンビニエンスストアの本部と加盟者との取引等について,前記?のとおり大規模な実態調査を実施した。当該調査の結果,今なお多くの取り組むべき課題が明らかとなったため,「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方について」を改正し,令和3年4月28日に公表した。

(6) スタートアップの取引慣行に関する実態調査

 スタートアップは,イノベーション推進による我が国経済の生産性向上に大きく貢献する可能性を持っており,近年,スタートアップが大企業等と事業連携を行うオープンイノベーションによる生産性の向上が重要視されてきているところ,スタートアップが公正かつ自由に競争できる環境を確保することは我が国経済の今後の発展に向けて極めて重要である。
 また,スタートアップが新規に起業されることは,同時に新規雇用の創出を通じた我が国経済の発展につながるという点からも,スタートアップが市場に新規参入しやすくなるよう,公正かつ自由な競争環境を確保することが重要である。
 これらを踏まえ,公正取引委員会は,スタートアップの事業活動における公正かつ自由な競争を促進する観点から,製造業に限らず,幅広い業種を含めたスタートアップの取引慣行の実態を明らかにするための調査を実施し,令和2年11月27日に報告書を公表した。

(7) 「スタートアップとの事業連携に関する指針」の策定

 大企業とスタートアップの連携により,チャレンジ精神のある人材の育成や活用を図り,我が国の競争力を更に向上させることが重要である。他方,大企業とスタートアップが連携するに当たり,スタートアップからは,大企業と共同研究すると,特許権が大企業に独占されたり,周辺の特許を大企業に囲い込まれたりする,といった偏った契約実態を指摘する声がある。
 また,公正取引委員会は,前記(6)のとおり,「スタートアップの取引慣行に関する実態調査報告書」(令和2年11月27日)において,スタートアップと事業連携を目的とする事業者(以下「連携事業者」という。)との間の秘密保持契約,技術検証契約,共同研究契約及びライセンス契約に係る問題事例等を公表した。
 これらを踏まえ,公正取引委員会は,経済産業省と共同で,スタートアップと連携事業者との間であるべき契約の姿・考え方を示すことを目的として,スタートアップとの事業連携に関する指針を策定し,令和3年3月29日に公表した。

(8) 「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」の策定等

 競争政策研究センターによる「人材と競争政策に関する検討会」報告書の公表(平成30年2月15日)以降,令和2年度においても引き続き,公正取引委員会は,人材の獲得を巡る競争が独占禁止法の適用対象となり得ること等について関係団体に対する周知活動を行うとともに,独占禁止法上問題となり得る具体的行為や慣行が存在するかどうかについて実態把握を行った。
 公正取引委員会は,こうした実態把握の結果や,令和2年7月17日に閣議決定された「成長戦略実行計画」において,フリーランスとして安心して働ける環境を整備するため,政府として一体的に,保護ルールの整備を行うこととされたことを踏まえ,事業者とフリーランスとの取引について,独占禁止法,下請法及び労働関係法令の適用関係を明らかにするとともに,これら法令に基づく問題行為を明確化するため,「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」を内閣官房,中小企業庁及び厚生労働省と連名で策定し,令和3年3月26日に公表した。

(9) 「適正なガス取引についての指針」の改定

 公正取引委員会は,経済産業省と共同して,ガス市場における公正かつ有効な競争の観点から,独占禁止法上又はガス事業法上問題となる行為等を明らかにした「適正なガス取引についての指針」を平成12年3月に作成・公表し,随時改定している。
 令和元年6月公表の「小売全面自由化後の都市ガス事業分野における実態調査報告書について」や令和2年6月公表の「大阪瓦斯株式会社に対する独占禁止法違反被疑事件の処理について」等の内容を踏まえ,令和3年2月25日に本指針を改定した。

(10) 共通ポイントサービスに関する取引実態調査

 共通ポイントサービスは,我が国において,消費生活に密着した様々な業種業態で普及している。消費者は,共通ポイントの付与を受けることによって利便性が向上するとともに,ポイントを付与する小売等事業者は,集客力が向上し,販売力を強化することになる。また,これと同時に,消費者の個人情報等及び小売等事業者の商品・サービスの取引情報が利活用されている。その中で,共通ポイントサービスは,消費者と加盟店とをつなぐデジタル・プラットフォームとして機能しており,消費者の商品及びサービスの選択や,ポイントサービスを通じた小売等事業者の経済活動といった国民生活に影響を与えている。
 一方,公正取引委員会では,これまで,経済のデジタル化の進展に対する対応として,デジタル・プラットフォームに関する分野における競争環境の整備に力を注いできている。
 公正取引委員会は,このようなデジタル分野への取組の中で,共通ポイントサービスに関する取引実態調査を実施し,令和2年6月12日に報告書を公表した。

(11) 携帯電話市場における競争政策上の課題について

 携帯電話は,国民生活に必要不可欠なものであり,家計に占める携帯電話通信料の割合はこれまで増加傾向にあったことから,料金の低廉化・サービスの向上を図るために競争環境を整備することは,政府の重要な課題となっている。
 公正取引委員会は,平成28年8月と平成30年6月に「携帯電話市場における競争政策上の課題について」実態調査報告書(以下,平成30年度公表の「携帯電話市場における競争政策上の課題について」を「平成30年度報告書」という。)を公表したが,平成30年度報告書の公表以降,携帯電話市場においては,通信料金と端末代金の完全分離等を内容とする電気通信事業法の一部を改正する法律が令和元年10月1日に施行され,また,新たに楽天モバイル㈱がMNO(Mobile Network Operator)として参入するなど,競争環境に様々な変化が生じている。このため,携帯電話市場の競争状況を把握し,競争政策上の問題を検討するため,平成30年度報告書のフォローアップを含めた調査を行い,令和3年6月10日に報告書を公表した。
 本調査では,平成30年度報告書で取り上げた事項についてのフォローアップに加え,消費者が最適な料金プランを選びやすい環境の整備に向けた課題,携帯電話端末に関する課題,MVNO(Mobile Virtual Network Operator)の競争環境の確保に向けた課題,MNOと販売代理店との取引に関する課題等についての調査・検討を行った。
 公正取引委員会は,総務省及び消費者庁と連携し,引き続き,料金の低廉化,サービスの向上を図るために携帯電話市場における競争環境の整備に取り組んでいく。
 なお,こうした環境整備の一環として,総務省,公正取引委員会及び消費者庁が連携・協力し,モバイル市場の健全な発展に向けた取組を強力に推進することを目的に,総務大臣及び内閣府特命担当大臣(消費者行政及び公正取引委員会に関する事務担当)による「携帯電話料金の低廉化に向けた二大臣会合」の第1回会合が令和2年12月に開催され,以降順次会合を開催している。

(12) 競争評価に関する取組

 平成19年10月以降,各府省が規制の新設又は改廃を行おうとする場合,原則として,規制の事前評価の実施が義務付けられ,規制の事前評価において,競争状況への影響の把握・分析(以下「競争評価」という。)についても行うこととされ,平成22年4月から試行的に実施されてきた。平成29年7月28日,「規制の政策評価の実施に関するガイドライン」が改正され,同年10月1日に施行されたことに伴い,競争評価が同日から本格的に実施されることとなった。規制の事前評価における競争評価において,各府省は,競争評価チェックリストを作成し,規制の事前評価書の提出と併せて総務省に提出し,総務省は,受領した競争評価チェックリストを公正取引委員会へ送付することとされている。
 公正取引委員会は,令和2年度においては,総務省から競争評価チェックリストを125件受領し,その内容を精査した。また,各府省における競争評価のより適切な実施の促進を目的として,競争評価の手法の改善等を検討するため,経済学や規制の政策評価の知見を有する有識者による競争評価検討会議を令和2年度において3回開催した。

(13) 入札談合の防止への取組

 公正取引委員会は,入札談合の防止を徹底するためには,発注者側の取組が極めて重要であるとの観点から,地方公共団体等の調達担当者等に対する独占禁止法や入札談合等関与行為防止法の研修会を開催するとともに,国,地方公共団体等が実施する調達担当者等に対する同様の研修会への講師の派遣及び資料の提供等の協力を行っている。
 令和2年度においては,研修会を全国で35回開催するとともに,国,地方公共団体等に対して123件の講師の派遣を行った。

(14) 独占禁止法コンプライアンスの向上に向けた取組

 公正取引委員会では,これまで,企業における独占禁止法に関するコンプライアンス活動の状況を調査し,改善のための方策等と併せて,報告書の取りまとめ・公表を行うとともに,その周知に努めている。
 令和2年度においては,多種多様な協同組合や商工組合(以下「組合」という。)における独占禁止法コンプライアンスに関する取組状況及び独占禁止法や適用除外制度に関する認識の実態を把握・分析してその実態や課題を明らかにするとともに,改善に向けた方策を提示することにより,組合における独占禁止法コンプライアンスの促進を図ることを目的として,1,781組合を対象に調査を行い,独占禁止法コンプライアンスの取組を推進するために有効と考えられる方策や留意点を取りまとめた報告書「協同組合等における独占禁止法コンプライアンスに関する取組状況について」を令和2年6月25日に公表した。

4  競争政策の運営基盤の強化

(1) 競争政策に関する理論的・実証的な基盤の整備

 競争政策研究センターは,平成15年6月の発足以降,独占禁止法等の執行や競争政策の企画・立案・評価を行う上での理論的・実証的な基礎を強化するための活動を展開している。令和2年度においては,シンポジウムを2回開催したほか,データ市場に関して,我が国における実情等を踏まえた上で,競争政策上の諸論点や課題について研究を行うことを目的として,「データ市場に係る競争政策に関する検討会」を開催した。同検討会では,令和2年11月以降,8回にわたって検討が行われ,令和3年6月25日に報告書を公表した。

(2) 経済のグローバル化への対応

 近年,複数の国・地域の競争法に抵触する事案,複数の国・地域の競争当局が同時に審査を行う必要のある事案等が増加するなど,競争当局間の協力・連携の強化の必要性が高まっている。このような状況を踏まえ,公正取引委員会は,二国間独占禁止協力協定,経済連携協定等に基づき,関係国の競争当局と連携して執行活動を行うなど,外国の競争当局との間で緊密な協力を行っている。
 また,公正取引委員会は,国際競争ネットワーク(ICN),経済協力開発機構(OECD),アジア太平洋経済協力(APEC),国連貿易開発会議(UNCTAD),東アジア競争政策トップ会合(EATOP)等といった多国間会議にも積極的に参加している。
 さらに,開発途上国において,既存の競争法制を強化する動きや,新たに競争法制を導入する動きが活発になっていることを受け,公正取引委員会は,これら諸国の競争当局等に対し,当委員会事務総局の職員の派遣や研修の実施等による競争法・政策分野における技術支援活動を行っている。
 このほか,我が国の競争政策の状況を広く海外に発信することにより公正取引委員会の国際的なプレゼンスを向上させるため,英文ウェブサイトに掲載する報道発表資料の一層の充実,海外の弁護士会等が主催するセミナー等へのスピーカーの派遣等を行っている。
 令和2年度においては,主に以下の事項に取り組んだ。

ア 競争当局間における連携強化

 公正取引委員会は,二国間独占禁止協力協定等に基づき,関係国の競争当局に対し執行活動等に関する通報を行うなど,外国の競争当局との間で緊密な協力を行っている。

イ 競争当局間協議

 公正取引委員会は,我が国と経済的交流が特に活発な国・地域の競争当局等との間で競争政策に関する協議を定期的に行っている。

ウ 経済連携協定への取組

 我が国は,英国との間で日英包括的経済連携協定を令和2年10月23日に署名し,同協定は,令和3年1月1日に発効した。また,令和2年11月15日に地域的な包括的経済連携(RCEP:Regional Comprehensive Economic Partnership)協定が我が国を含む15か国により署名された。このほか,我が国は,中国・韓国,トルコ等との間で経済連携協定等の締結交渉を行っている。
 公正取引委員会は,経済連携協定等において競争政策を重要な要素と位置付け,競争分野における協力枠組みに係る条項等を盛り込む方向で交渉に参加している。

エ 多国間会議への参加

 国際競争ネットワーク(ICN)においては,その設立以来,ICNの活動全体を管理する運営委員会のメンバーを公正取引委員会委員長が務めている。また,当委員会は,平成23年5月から平成26年4月までカルテル作業部会の共同議長を,平成26年4月から平成29年5月まで同作業部会サブグループ(SG1)の共同議長を,平成29年5月から令和2年5月まで企業結合作業部会の共同議長を務め,令和2年5月からは単独行為作業部会の共同議長を務めている。そのほか,当委員会主導の下で設立された「(カルテル執行に係る)非秘密情報の交換を促進するためのフレームワーク」及び「企業結合審査に係る国際協力のためのフレームワーク」を運用するなど各作業部会の取組に積極的に参画している。
 また,公正取引委員会は,経済協力開発機構(OECD)に設けられている競争委員会の各会合に参加し,ラウンドテーブルにおいて我が国の経験を紹介するなどして,議論への貢献を行っている。

オ 技術支援

 公正取引委員会は,東アジア地域等の開発途上国の競争当局等に対し,当委員会事務総局の職員の派遣や研修の実施等の競争法・政策分野における技術支援活動を行っている。令和2年度においては,独立行政法人国際協力機構(JICA)の枠組みを通じて,ベトナム,モンゴル及びマレーシアに対して技術支援を行ったほか,競争法制を導入しようとする国や既存の競争法制の強化を図ろうとする国の競争当局等の職員に対して,競争法・政策に関する研修を実施した。
 また,日・ASEAN統合基金(JAIF)を活用した技術支援として,公正取引委員会は,東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国等と競争法に係る共同研究を実施した。

(3) 競争政策の普及啓発に関する広報・広聴活動

 競争政策に関する意見・要望等を聴取して施策の実施の参考とし,併せて競争政策への理解の促進に資するため,独占禁止政策協力委員から意見聴取を行った。
 また,経済社会の変化に即応して競争政策を有効かつ適切に推進するため,公正取引委員会が広く有識者と意見を交換し,併せて競争政策の一層の理解を求めることを目的として,独占禁止懇話会を開催しており,令和2年度においては,3回開催した。
 さらに,公正取引委員会委員等と各地の有識者との懇談会(全国8都市),地方事務所長等の当委員会事務総局の職員と各地区の有識者との懇談会(全国各地区)及び弁護士会との懇談会(全国各地区)をそれぞれ開催した。
 前記以外の活動として,本局及び地方事務所等の所在地以外の都市における独占禁止法等の普及啓発活動や相談対応の一層の充実を図るため,「一日公正取引委員会」を開催するとともに,一般消費者に独占禁止法の内容や公正取引委員会の活動を紹介する「消費者セミナー」を開催した。
 加えて,中学校,高等学校及び大学(短期大学等を含む。)に職員を講師として派遣し,経済活動における競争の役割等について授業を行う独占禁止法教室(出前授業)の開催など,学校教育等を通じた競争政策の普及啓発に努めた。

<令和2年度における主な取組>

○ 独占禁止政策協力委員に対する意見聴取の実施(143件)
○ 独占禁止懇話会の開催(3回)
○ 地方有識者との懇談会の開催(札幌市,秋田市,宇都宮市,岐阜市,奈良市,松江市,高知市及び長崎市の各地区に所在する有識者)
○ その他の地方有識者との懇談会の開催(50回)
○ 弁護士会との懇談会の開催(19回)
○ 一日公正取引委員会の開催(山口県下関市及び佐賀市)
○ 消費者セミナーの開催(49回)
○ 独占禁止法教室の開催(中学生向け29回,高校生向け9回,大学生等向け96回)

(注)主にウェブ会議等の非対面形式を活用してそれぞれ開催した。

5  その他の業務(新型コロナウイルス感染症に係る対応)

 新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大に伴って,企業等の活動に様々な影響が出ており,また,関連物資の供給に関しても影響が出ている。
 公正取引委員会は,独占禁止法等を運用する立場から,こうした事態を踏まえ次の取組を行った。

(1) 新型コロナウイルス感染症への対応のための取組に係る独占禁止法に関するQ&Aの公表等

 事業者等による新型コロナウイルス感染症への対応のための取組について独占禁止法上の考え方を紹介するため,「新型コロナウイルス感染症への対応のための取組に係る独占禁止法に関するQ&A」を公表した(令和2年4月23日公表)。
 また,公正取引委員会は,事業者等から寄せられた相談のうち,他の事業者等の参考になると思われるものを相談事例集として取りまとめ,毎年公表しているところ,令和3年6月9日に公表した令和2年度相談事例集において,「新型コロナウイルス感染症関連の取組に関する相談」という項目を設け,医療用物資の卸売業者の団体による医療機関に対する供給可能会員の紹介に関する相談等3件の事例を掲載した。

(2) 新型コロナウイルス感染症拡大に関連する下請取引Q&Aの公表等

 新型コロナウイルス感染症の拡大により影響を受ける下請等中小企業との取引に関して,公正取引委員会及び中小企業庁の連名で,下請法等に係るQ&Aを公表した(令和2年5月13日公表)。
 また,公正取引委員会は,令和2年4月28日以降,下請法違反行為について改善指導を行った親事業者7,834名に対し,当該指導に加えて,新型コロナウイルス感染症による取引への影響について,下請事業者に対して適切な配慮をするとともに,適正な費用負担なしに一方的に契約を変更・解除するなどの下請法違反行為を行わないよう注意喚起を行ったほか,同年6月,親事業者6万名に対し,定期調査を行う際に,同様の注意喚起を行った。

(3) 新型コロナウイルス感染症に関連する事業者等の取組に対する公正取引委員会の対応についての公表

 新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大に伴って,企業等の活動に様々な影響が出ており,また,関連物資の供給に関しても影響が出ていることを踏まえ,公正取引委員会は,独占禁止法等を運用する立場からの対応について取りまとめ公表した(令和2年4月28日公表)。
 また,新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う需要減少等を理由として,中小・下請事業者に不当に不利益をもたらす行為や,需給のひっ迫に便乗した価格カルテル等の消費者の利益を損なう行為に対しては厳正に対処していく旨も併せて明らかにしている。

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問い合わせ先

公正取引委員会事務総局官房総務課
電話 03-3581-3574(直通)
ホームページ https://www.jftc.go.jp/

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