文化審議会著作権分科会(第62回)(第21期第2回)

日時:令和3年12月22日(水)
13:00~15:00

場所:オンライン開催

議事

1開会

2議事

  1. (1)DX時代に対応した「簡素で一元的な権利処理方策と対価還元」及び「著作権制度・政策の普及啓発・教育」について(中間まとめ案)
  2. (2)我が国のコンテンツの海外展開における著作権に関する課題及びその対応について(中間まとめ 案)
  3. (3)その他

3閉会

配布資料

資料1-1
中間まとめ(案) DX時代に対応した「簡素で一元的な権利処理方策と対価還元」及び「著作権制度・政策の普及啓発・教育」について 【概要】(1.6MB)
資料1-2
中間まとめ(案) DX時代に対応した「簡素で一元的な権利処理方策と対価還元」及び「著作権制度・政策の普及啓発・教育」について(365KB)
資料2
中間まとめ(案) 我が国のコンテンツの海外展開における著作権に関する課題及びその対応について(632KB)
資料3
民事訴訟法の改正に伴う著作権制度に関する論点整理(案)(569KB)
参考資料
第21期文化審議会著作権分科会委員名簿(143KB)

資料1-1、資料1-2、資料2について、異議なく案の通り了承されました。
了承された資料については、以下の通りです。

資料1-1
中間まとめ DX時代に対応した「簡素で一元的な権利処理方策と対価還元」及び「著作権制度・政策の普及啓発・教育」について 【概要】(619KB)
※誤りがあったため、資料の差し替えをしております。(令和4年1月14日)
資料1-2
中間まとめ DX時代に対応した「簡素で一元的な権利処理方策と対価還元」及び「著作権制度・政策の普及啓発・教育」について(615KB)
※誤りがあったため、資料の差し替えをしております。(令和4年1月14日)
資料2
中間まとめ 我が国のコンテンツの海外展開における著作権に関する課題及びその対応について(637KB)

議事内容

【茶園分科会長】ただいまから文化審議会著作権分科会(第62回)を開催いたします。本日は御多忙の中、御出席いただきまして誠にありがとうございます。

本日は、新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、委員の皆様にはWEB会議システムを利用して御参加いただいております。皆様におかれましては、ビデオをオンにしていただくとともに、御発言いただく際には、自分でミュートを解除して御発言いただくか、事務局でミュートを解除いたしますので、ビデオの前で大きく手を挙げるようにしてください。

議事に入る前に、本日の会議の公開につきましては、予定されている議事内容を参照いたしますと、特段非公開とするには及ばないと思われますので、既に傍聴者の方にはインターネットを通じた生配信によって傍聴していただいているところですけれども、この点、特に御異議はございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【茶園分科会長】ありがとうございます。それでは、本日の議事は公開ということで、傍聴者の方にはそのまま傍聴いただくことといたします。

それでは、事務局から配付資料の確認をお願いいたします。

【小倉著作権課長補佐】事務局でございます。配付資料は議事次第にあるとおりになっております。以上でございます。

【茶園分科会長】それでは、早速議事に入ります。本日の議事は、議事次第のとおり、(1)から(3)の3点となります。

まず、議事(1)の「DX時代に対応した「簡素で一元的な権利処理方策と対価還元」及び「著作権制度・政策の普及啓発・教育」について(中間まとめ案)」に入りたいと思います。

本件につきましては、12月2日に開催されました基本政策小委員会において中間まとめ(案)が審議され、主査一任となり、基本政策小委員会として取りまとめられたものを著作権分科会の「中間まとめ(案)」として事務局に用意いただいております。

まずはその内容につきまして、基本政策小委員会主査の末吉委員と事務局から御説明をお願いいたします。

【末吉委員】末吉でございます。DX時代に対応した「簡素で一元的な権利処理方策と対価還元」及び「著作権制度・政策の普及啓発・教育」に関する中間まとめ(案)について、概要を御報告いたします。

本年7月の文化審議会著作権分科会において大臣より、「DX時代に対応した著作権制度・政策の在り方について」諮問されたことを受け、そのうち、「簡素で一元的な権利処理と対価還元」及び「DX時代に対応した著作権制度・政策の普及啓発・教育」について、8月以降、8回にわたり審議してきました。

審議に当たっては、ネットクリエイターや、いわゆるZ世代なども含め、多様な関係者からのヒアリングやパブリックコメントを行いました。これを踏まえて、集中的かつ丁寧に議論を進めた結果、著作物等の利用円滑化を一層進め、新たな対価還元の創出につながるような方向性を示すことができたと考えております。

まず、「簡素で一元的な権利処理と対価還元」については、著作物等の種類や分野を横断する一元的な窓口を創設し、分野横断権利情報データベース等を活用した著作権者等の探索を行うことに加え、著作権者不明の場合のみならず、意思表示等がされておらず、連絡が取れない著作物等について、新たな権利処理の仕組みを創設するといった方向性を示しております。

この新しい権利処理の仕組みの実現については、国内法制や条約との関係も踏まえた詳細な法制化の議論が必要であり、本中間まとめで示した方向性を堅持しつつ、引き続き議論すべきとしております。

また、「著作権制度・政策の普及啓発・教育」については、DX時代に対応した著作権の普及啓発や教育に当たって、誰もが日常的に著作物等に接する中で、適切に著作物を発信し、利活用することが重要です。

このため、検討の観点として、①著作物等をどうすれば適法に利用することができるか、②著作物等を発信する際の意思表示の大切さ、③青少年のインターネット利用といった関連する分野と連携した普及啓発などを示しております。

最後に、これらの推進については、関係者間でDX時代の検討であることの認識を共有し、コンテンツ創作の好循環は、日本経済を牽引し得るという誇りや期待をもって、関係者が協力して実現させていくことが重要であるとまとめております。

今後の一元的窓口組織や権利情報データベース構築等の環境整備や、新しい権利処理方策の法制化の検討に、この中間まとめで示した方向性と思いがしっかりと反映されることを期待します。

中間まとめ(案)の具体的な内容については、事務局から説明をお願いします。

【小倉著作権課長補佐】事務局でございます。それでは、資料1-1に、今、末吉先生から御紹介のありました中間まとめ(案)の概要資料を作成しておりますので、御覧ください。

資料1-1、右下にスライド番号を振ってございます。スライド1の部分につきましては、「はじめに」というところで、今御説明のありました大臣からの諮問、また、その諮問理由を簡潔に示しております。諮問理由のところは、1つ目の白丸にございますように、DXによる環境の変化を踏まえ、利用円滑化による対価還元の創出や増加が新たな創作活動につながるという「コンテンツ創作の好循環」の最大化を目指し、さらなる文化振興を図るというものでございました。

その背景には、過去のコンテンツに加え、無数に創作されるコンテンツは、その著作権者等の探索といった権利処理コストが高いといった理由で必ずしも利用に結びついていないという声があったものでございます。

これにつきまして、簡素で一元的な権利処理と対価還元について議論してきたものでございます。

次のスライド2ページを御覧ください。「分野を横断する一元的な窓口組織を活用した新しい権利処理の仕組み」になります。こちら、1つ目の白丸にございますように、著作物等の種類や分野を横断する一元的な窓口を創設し、分野横断権利情報データベース等を活用した著作権者等の探索を行うと。

1つ目の矢印、著作権者が明確な場合、集中管理が行われている場合、そのような場合は各著作権者や集中管理事業者に取次や案内が行われます。

2つ目の矢印、分野横断権利情報データベース等に権利情報がなく、集中管理がされておらず、分野を横断する一元的な窓口による探索等においても著作権者が不明な場合、あるいは著作物等に権利処理に必要な意思表示がされていない場合、著作権者への連絡が取れない場合、連絡を試みても返答がない場合について、新しい権利処理の仕組みを創設し、利用を円滑化するというものでございます。

ここでの新しい権利処理の仕組みの例としては、3点ございます。①が、いわゆる「拡大集中許諾制度」のように、窓口組織または特定の管理事業者が許諾に相当する効果を与える、②窓口組織への申請や十分な使用料相当額の支払いをもって利用または暫定利用を可能とする、③窓口組織が著作権者等不明著作物に係る文化庁長官への裁定申請手続を代行するというものでございます。

スライド3ページを御覧ください。こちらのページにつきましては、左側から、利用者が一元的窓口に相談し、その後、権利情報データベース等を活用した探索、その後、今申し上げた集中管理がされている場合、されておらず意思表示があって個別の著作手続に進む場合、に加えまして、今回、集中管理がされていない場合で意思表示なしまたは連絡が取れない、こちらはアウトオブコマースも含めまして、新しい権利処理の仕組みに流れるというものでございます。

なお、一番下の米印にもありますように、この仕組みによらず、従前のとおり利用者が直接権利者に許諾を得て利用することは当然可能というところになっております。

次のスライド4ページを御覧ください。まず、一番上のところです。「分野を横断する一元的な窓口組織を活用した新しい権利処理の意義」について御説明します。この仕組みを取ることによりまして、1つ目の白丸にありますように、著作権者等の探索にかかるコストは最小化すると考えられます。

また、2つ目、3つ目の白丸にあるように、意思表示がなかったり連絡が取れなかったりする場合、また、複数の著作権者の許諾が必要な著作物について、全員との連絡が取れない場合で必ずしも利用に至らなかった場合についても、この仕組みであれば利用の可能性が高まるというもの。

さらには、4つ目の白丸、5つ目の白丸のところでございますが、既存ビジネスへの影響を配慮した仕組みとなっておりまして、集中管理率が低い我が国における実現可能性も一定程度考えられるのではないかというものでございます。

さらに、こうした仕組みがうまく整えられれば、今後生じ得る新たな利用場面に柔軟に対応できる環境整備にも資するものと考えられます。

最後の白丸のところですが、これまでの基本政策小委員会の意見の中には、こういった相談窓口の存在により、適法利用、また、著作権の普及啓発が促進されるといった効果もあるのではないかといった御意見もありました。

その下側には、この一元的な権利処理が想定される場面でこれまでのヒアリングなどから意見をまとめたものを並べておりますが、その下の米印にありますように、デジタル化や技術革新が進む中、今後も必要とされる場面が増えていくことが考えられるとしております。

次のスライド5ページ以降、ここからは、この一元的処理方策と対価還元に係る各論になります。

1つ目、「分野横断権利情報データベースの構築」につきましては、既存のデータベースと連携させた分散管理型の分野横断的な権利情報データベースの構築が望ましいと。その際、拡張性の高い仕組みとするとともに、データベースに掲載する権利情報の統一、フォーマットの標準化、紐づけのためのIDやコードに関するルール等、今後こういったことを検討する必要があるとしております。

また、議論におきましては、実現可能性や持続可能性の観点から、データベースの構築及び管理・運用にかかるコストの負担などを考慮する必要があるといった意見もございました。

また、下から2つ目の丸ですが、集中管理がされていないコンテンツやUGC等に関する情報が掲載されることが望ましいといった今後の課題もございます。

真ん中のところ、「集中管理の促進」につきましては、コンテンツの円滑な利用に貢献するものであり、引き続き促進されるべきであり、そのための機能強化方策を検討すべきといった意見となっております。

また、最後の「個別課題」のところです。こちらにつきましては、1つ目の白丸、簡易で分かりやすいオプトアウトの仕組みの検討が必要ということ。

また、2つ目、著作権者等による意思表示がされることが重要というところになりますが、この普及啓発とともに、意思表示の在り方や手法、真正性の確保、意思表示の有無や著作権者等が不明であることの判断基準・判断プロセスについての検討が必要とされております。

さらに、一番下の白丸のところですが、組織の管理運営コストについても議論が行われました。管理運営コストを最小限にする工夫は当然のこと、探索支援、権利処理支援に伴う手数料収入、受益者である利用者の負担等、持続可能な仕組みとするほか、委員からの御意見で、関係者の理解を得て、授業目的公衆送信補償金の共通目的事業による支援も考えられるといったアイデアもございました。

次のスライド6ページ目を御覧ください。まず1つ目の「現行の著作権者不明等の著作物に係る裁定制度の改善」については、これまでも制度面・運用面の改善を行ってきており、裁定件数は増加傾向にありますが、運用の改善のニーズはこれまでのヒアリング、委員の審議においても非常に高いというところになってございまして、引き続き改善方策を進めていくといった取りまとめとなっております。

また、「その他」につきましては、まず、「UGC」等について定義することや具体的に当てはめていくことが難しく、客観的な条件や一定の手続を設け、暫定的利用を可能とする制度設計が可能かを検討するといったところです。

また、4つ目のところです、新しい技術の動向を見据えつつ、運用面や制度面での検討を行っていくことが重要である。こういった御意見もございました。

その次のスライド7ページ目を御覧ください。こちらは、「DX時代に対応した著作権制度・政策の普及啓発・教育について」でございます。利用円滑化の議論につきましてですが、しっかりとこういった普及啓発によっても利用円滑化・適法利用が進むのではないか、このような観点の下、議論が行われました。

特に「(2)今後の方向性」にあるように、今般の普及啓発・教育の議論では、誰もが日常的に著作物等に接する中で、適切に著作物等を発信し、適法な利活用をすることにより、コンテンツ創作の好循環の最大化を目指すといった観点での普及啓発の議論が行われました。具体的には、次の白丸にありますような①から⑤のような観点で検討を進めてはどうかといったところの中身をまとめております。

①著作物等をどうすれば適法に利用することができるかについての方法の周知や利用の実践・経験。②クリエイター目線での普及啓発。例えば著作物等を発信する際の意思表示の大切さ、利活用により初めて対価が生まれること、また、集中管理といった対価還元の仕組みに係る理解の醸成。③著作物等の利用について、著作権者等や企業による利用できる範囲の意思表示等の取組。④先ほどもありました青少年のインターネット利用に関する取組や法教育、防犯教育といった関連する分野や民間組織と連携した普及啓発。⑤若い世代から大人まで、幅広い年代に対する日常的な著作物等の利活用場面での普及啓発。このような意見となっております。

最後に、スライド8ページ目を御覧ください。こちら、「まとめ」となります。これまで説明申し上げました「簡素で一元的な権利処理と対価還元について」と「DX時代に対応した著作権制度・政策の普及啓発・教育について」の方策は、いずれも著作物等の利用円滑化を一層進め、新たな対価還元の創出につながるものであり、その実現に向け、総合的に取り組んでいくべきとされております。

一方で、新しい権利処理の仕組みの実現に当たっては、法制的課題や国内法制・条約との関係など、詳細な議論が必要でございます。このため、本中間まとめで示した方向性を堅持しつつ、その実現に向けての法制的課題を引き続き議論すべきとされております。

併せて、権利情報データベースの構築や分野を横断する一元的な窓口組織の創設等の環境整備については、関係省庁の支援を得つつ、速やかに進めていくことが望まれるとされております。

4つ目の白丸でございますが、この推進については、関係者間で「DX時代」の検討であることの認識を共有し、さらには「コンテンツ創作の好循環」によるコンテンツ産業の振興は、先ほど末吉先生からもございましたが、日本経済を牽引し得るという誇りや期待をもって、実現に向けて力を合わせていくことが必要、このような意見がございまして、こうした中間まとめに示した基本的な考え方や仕組みについての周知、広報が肝要であると。

このため、これらを進める上で必要となる財政面や人材面の確保については、この中間まとめの内容が、我が国のコンテンツ産業や文化の発展の基盤となる、政策的に優先度の高いものであるとの認識に立ち、その必要性や意義について社会に発信し、関係者が協力して実現させていくことが重要という取りまとめがなされております。

事務局からは以上でございます。

【茶園分科会長】どうもありがとうございました。

それでは、ただいまの報告につきまして、御意見等がございましたらお願いいたします。

丸山委員、お願いします。

【丸山委員】丸山です。よろしくお願いいたします。DX時代に対応した簡素で一元的な権利処理方策と対価還元についてですけれども、分野を横断する一元的な窓口組織を活用した新しい権利処理の仕組みを構築することにより、これを実現していくという方向性が示されて、今後この方向性で議論が進められることには異存ありません。

この一元的な窓口組織が機能される上では、データベースの整備が鍵となりますが、実演家にとっても、コンテンツにひもづいた権利者情報の収集が非常に重要なものですので、ぜひ精力的に取り組んでいただきたいと思っております。

今後、この一元的窓口の詳細について検討を深めていく際には、権利者や利用者といった関係当事者からの意見をしっかり聞いて進めていただきたく要望いたします。

また、DX時代に対応した著作権等の権利保護方策・対価還元についても、非常に重要なテーマだと思います。技術の進展によってコンテンツの利用形態が激変する中でも、しっかりと実演家をはじめ、クリエイターの権利や立場が保護されて、良質なコンテンツの創出サイクルが守られるような仕組みを構築するよう、精力的に検討していく必要があると思っております。よろしくお願いいたします。

以上です。

【茶園分科会長】ありがとうございました。

ほかにございますでしょうか。

では、仁平委員、お願いします。

【仁平委員】仁平でございます。お疲れさまです。とても分かりやすくまとめていただきまして、ありがとうございます。

私からは2点ございます。1つは、今もお話がございましたが、やはりこの仕組みをうまく動かしていくには、データベースをどうするかというところが問題になると思います。特に私の場合は、いわゆるユーザーが作ったコンテンツの管理というところから言いますと、実はこのUGC系のデータベースというのは、ばらばらではありますけれども、結構いろいろなところに既にあります。ドワンゴさんのニコニコモンズもあれば、クリプトンさんが例えばルーターFMというようなところでもデータを持っていたり、ピアプロというところで持っていたり、もしくはピクシブさんがピクシブさんのデータベースを持っていたり。

なので、今後、こういった外部のデータベースをいかに効果的に取り込んでいくかというところの重要性を私も強く感じましたし、ぜひその辺り、今後の課題になっていければなと思います。

もう1点は、やはりこういうとてもすばらしい議論が行われたということを、UGCの著作権者及びUGCの著作物を使いたいと思っている人たちに広く啓蒙していく必要があるのかなということを痛感しました。

特に著作権者が分からない著作物に関しては、こういう形で取り扱われるよということに関しては、当人たちにとってもとても重要な話です。当然行政の方でこういうふうに国を挙げてやれば、新聞に出ましたよとかサイトに出ましたよというのはあるんでしょうけれども、やはりそれだけだと不十分だと思います。

私のほうもネット系の生放送を使って、いろいろと情報発信は今までも私どもの協会でやっていますので、そちらも最大限に使わせていただいて告知はしていきたいと思いますが、そうはいっても、番組1個作るのにもお金が結構かかったりするので、その辺りのサポート等の体制も含めて、より広くUGCの人たちにこういった情報を的確に伝えるにはどうしたらいいかというのを、やはり次の課題として挙げていただければなと思います。

以上、2点でした。よろしくお願いします。

【茶園分科会長】ありがとうございました。

では、大渕委員、お願いします。

【大渕委員】先ほど詳細に御説明いただきましたとおり、今回、簡素で一元的な権利処理方策という、著作権制度全体にとって極めて重要な点につきまして、副作用の少ない形での非常に現実的なアプローチを示していただきまして、誠にありがとうございました。ここまでまとめられるのは大変であっただろうと思いますが、その関係で若干コメントさせていただきます。2ページの現実的なアプローチでは、3ページのように、要するに著作権者に連絡が取れないなどという実務上大変困ったことが多くて、権利者にとっても利用者にとっても非常に困った状態になっているところ、突破口を開くのが今回の新しい権利処理の仕組みというものでありまして、暫定利用など、非常に現実的なアプローチを示していただきまして、これは実務のニーズを丁寧に洗い出した上で出てきた話かと思いますが、高く評価できると思っております。

それで、資料1-1の6ページの一番下の米印のところで小さい字で書いてあるのですが、ここにあるようなことも、管理コストを考慮した持続可能な仕組みですとか、もともと制度を組む上においては非常に重要であるのに、今まで何ゆえかあまり注目されていなかったところにまで目を配って、それ以外にもクリエイターの意思の尊重のほか、二次創作への配慮や既存ライセンスビジネス・商慣行への配慮等も十分留意の上で先ほどのようなところに導いていただいており、7ページにありますとおり、最終的にはコンテンツ創作の好循環の最大化という枢要点を鍵としていただいている点も的確であると思います。

それで、結論のまとめで、8ページのところですが、この基本的な枠組みの中で、これをきちんと法制にうまく落とし込まなければいけないので、そのためにここにありますとおり、法制的な課題や国内法制・条約との関係など、詳細な議論が必要になってきて、これは当然今後やっていくわけですが、そのような法制面に加えて、次のポツの「あわせて」と書いてあるところですけれども、運用改善と法制面と二本立てで両面からやっていくという点でも、非常に現実的なアプローチを示していただいております。この基本線を可及的速やかに確実に実行していくことが重要だと思っております。

以上でございます。

【茶園分科会長】ありがとうございました。

ほかにございますでしょうか。

井村委員、お願いします。

【井村委員】書籍出版協会の井村です。既にいろいろな方がさまざまな問題点を指摘されておりますが、やはりデータベースを構築する際の資金面を心配されている方が多いと思います。各分野の既存のデータベースを連結させるだけでも、かなり莫大な費用がかかるような気がします。もちろんクリエイターや我々権利者側のニーズもあるとは思うものの、運用が開始された時にそれがどの程度利用され、どのくらいの収入が見込めるかが全く見えない状況の中、どれだけのお金をかけていくかというところは、スタートしてしまって後戻りができなくなった状態で、実はあまり利用がないというようなことがないように、もう一度十分議論をして頂きたいと考えております。

以上です。

【茶園分科会長】ありがとうございました。

では、まず華頂委員、その後、宮島委員、お願いいたします。まず、華頂委員、お願いします。

【華頂委員】映連の華頂です。直面している重要な課題につきまして、このようにおまとめいただきまして、まずもってありがとうございます。その上で、映画製作者の立場として一言申し上げたいと思います。

従前のパブコメ、それからヒアリングで申し上げましたとおり、本件の検討を進めて具体化するに当たっては、ぜひ現行行っている商業用映画のビジネスに影響のない仕組みの構築を重ねてお願い申し上げます。

以上でございます。

【茶園分科会長】ありがとうございました。

では、宮島委員、お願いいたします。

【宮島委員】宮島です。よろしくお願いします。委員会、委員の議論も傍聴などしていましたけれども、大変多岐にわたることをまとめていただきまして、ありがとうございます。

これまで著作権は、どちらかというと、印象は、著作権者を守るというような感じで国民に伝わっているので、いや、いいものをどんどん使っていいんですよというようなプッシュの機能があまりなかったのかなと思っていますけれども、よいものをストレスなく使えるという方向で議論が進んでいて、とてもありがたいなと思っています。

やはり使っていいのかがすぐに分かるということは、しっかり使うことにとってとても大事だと思うので、今後の詳細な組立てに当たっても、ちゃんと守るということと使い勝手のよさというのはどうしても部分的に相反することはあるんですけれども、使い勝手に留意して、著作権の世界は自分たちから遠いものというふうにいろいろな方が思わないような形で進むといいなと思います。

このところにもありますけれども、個人の創作物ですとか二次創作については、またさらに議論が必要かと思っております。

それから、学校などでの著作権に関してなんですけれども、学校教育分野で使うときに著作権がフリーであるために、逆に、そこで育つ、学校で育つ生徒たちが、著作権というものがまるでないかのように使っていいというのを日常にしてしまうという、ちょっとよくない点が今の状態はあるのかなと思っています。

もちろん使いにくくしない必要はありながらも、ちゃんとそこには著作権というものがあるんだということを、授業で著作権はこうですよということとか、そういうのを教えるのとはまた別に、何か使うごとにそこをしっかりと意識できるような形は取れないものかなと思います。

私は、企業のデータの利活用などの議論も参加したんですけれども、かなり利活用を意識してやっても、どうしても組立ての中で守るほうにいってしまう傾向もないことはないし、相当工夫をしないと、活用が進むということには、しかも正しい活用が進むということには、結構な工夫が必要かなと思いますので、これからの議論もどうぞよろしくお願いします。

以上です。

【茶園分科会長】ありがとうございました。

ほかにございますでしょうか。

【山下委員】新聞協会ですが、よろしいでしょうか。

【茶園分科会長】お願いいたします。

【山下委員】新聞協会の山下です。おまとめありがとうございます。1点、私からも懸念のほうで発言させていただきますが、4ページに、UGCのデジタルコンテンツの二次利用が、これも簡素で一元的な権利処理と挙げられているんですが、現状、大手プラットフォーマーの投稿サイトでは、新聞記事はじめ、テレビ番組、音楽など、違法に複製した投稿物があふれているという状態でございます。このような違法コンテンツまで一層利用が円滑化になってしまうというようなことが非常に懸念されるので、そこは何としても避けたいと思っております。

対策としては、プラットフォーマー側のシステム的施策が大きいと思いますが、法律の面からの手当て、普及啓発、それを含め、総合的な施策をぜひお願いしたいということを申し上げたいと思います。

以上です。

【茶園分科会長】ありがとうございました。

【返田委員】すいません、返田です。よろしいでしょうか。

【茶園分科会長】では、返田委員、お願いいたします。

【返田委員】日本図書館協会の返田です。本当に、私も今までの経緯も少し聞かせていただいたんですが、難しいことを分かりやすくまとめていただいて、ありがとうございます。

今後の普及啓発活動について1点ございます。先ほど学校のお話がありましたけれども、図書館というのも非常に著作物流通での重要な役割を持っているところだと思っております。利用する場面、そこから創作に関わるということも今回のコロナ禍の中でやっぱり出てきました。こういったことを意識する機会というのを含め、教育・普及啓発活動の中で図書館を意識していただいて、都道府県区市町村立だけでも全国に約3,300の図書館がありますので、そういったところでの普及啓発活動についても今後御議論いただければと思います。よろしくお願いいたします。

以上です。

【茶園分科会長】ありがとうございました。

ほかにございますでしょうか。

河野委員、お願いいたします。

【河野委員】日本消費者協会の河野でございます。私は、基本政策小委員会の一員として、この取りまとめに関わってまいりました。検討プロセスでは、先ほど末吉先生がおっしゃってくださったように、権利者・利用者はじめ、関係者みんなが時代の変化に乗り遅れないように、さらに、時代の一歩先に進めるようにという積極果敢な使命感を持って臨んでいたと思います。多くの関係者・関係団体の皆様のヒアリングやパブリックコメントも、総じて今回の方向性を支持する内容であったと認識しております。

ただ、やはり今後の検討課題にも幾つか示されているとおり、法整備分野、それから運用の実際において、財源の確保ですとか、技術の上手な活用ですとか、人材確保ですとか、今回示された簡素で一元的な権利処理方策と対価還元を実現するには、まだまだ乗り越えなければならない課題がたくさんあると思います。

この検討に関わった人間として、ぜひともこの取りまとめ案の内容が一日も早く社会実装できるように、行政の皆様、権利者の皆様、そして利用者の皆様など、関係者が知恵を出し合って、力を合わせて対処していただきたいと強く思っております。

以上でございます。

【茶園分科会長】ありがとうございました。

ほかにございますでしょうか。よろしいでしょうか。

どうもいろいろ御意見いただきましてありがとうございます。

【井上委員】井上ですけれども、よろしゅうございますでしょうか。

【茶園分科会長】では、井上委員、お願いいたします。

【井上委員】私も基本政策小委員会の委員として議論に参加してまいりましたが、基本的な方向性については非常によいものが出来上がったと思っております。

法制度面についてはハードルはあると思いますけれども、乗り越えることは可能だと思います。一番問題になるのは、財源だろうと思います。意義のある取組ですので、データベース整備などの初期投資については公的資金で賄うのがよいと思いますが、その後どうするのか。サステナビリティについては重要な課題が残されていると思っております。

先ほども、大きなデータベースを、非常に大きな、莫大な資金コストを投入して作り上げても、十分に利用されずに終わってしまったら困るという御意見がございました。この点、社会的にみて、コストをかけただけのベネフィットがあるのかということを常に考えながら、政策評価の仕組みを構築していく必要があります。この点について今後検討を続けていければと思います。

【茶園分科会長】ありがとうございました。

ほかに御意見等ございますでしょうか。よろしいでしょうか。どうもありがとうございました。

様々な御意見を頂きまして、ありがとうございます。いずれの御意見も、報告書の内容そのものはお認めいただいて、そのうえで、ここに書かれているものを実現あるいは展開する上で注意すべき点等を御指摘いただいたと思います。したがって、この報告書の内容については修正を要する点はないように思いますので、このまま本分科会の「中間まとめ」として取りまとめさせていただきたいと思います。事務局におかれましては、速やかに公表いただくようお願いいたします。

なお、法制的な検討が重要であるという御意見をいただきましたが、「簡素で一元的な権利処理方策と対価還元」につきましては、年明け以降、法制的な検討をすることになりますので、法制度小委員会において御審議いただくということになっております。

どうもありがとうございました。

では続きまして、議事(2)の「我が国のコンテンツの海外展開における著作権に関する課題及びその対応について(中間まとめ案)」に入りたいと思います。

本件につきましては、11月17日に開催されました国際小委員会において中間まとめが審議され、主査一任となり、国際小委員会として取りまとめられたものを「中間まとめ(案)」として事務局に用意いただいております。

まずはその内容につきまして、国際小委員会主査の鈴木委員と事務局から御説明をお願いいたします。

【鈴木分科会長代理】鈴木でございます。「我が国のコンテンツの海外展開における著作権に関する課題及びその対応」に関する中間まとめ案について、概要を御報告いたします。

今期の国際小委員会では、本年7月の文化審議会著作権分科会における大臣からの諮問を受け、(1)我が国のコンテンツの海外展開における著作権に関する課題及びその対応について、(2)海賊行為に対する対応について、(3)国際的な対応の在り方について、審議を進めることとしております。

そのうち、(1)我が国のコンテンツの海外展開における著作権に関する課題及びその対応については、知的財産推進計画2021の中で、施策の方向として「著作物の海外展開に向けた関係団体との連携等、さらなる支援策についての検討」に言及されていることを踏まえ、優先的に審議してまいりました。8月以降3回にわたる国際小委員会での審議に当たっては、委員による発表の機会を設けるとともに、有識者からのヒアリングを行い、幅広い観点から御意見を頂くことができたと考えております。その審議内容を踏まえ、中間まとめ案には、海外展開の戦略を立てる際の留意点、海外展開に当たっての著作権上の課題及びそれに対して考えられる方策を示しております。

今後に向けては、本中間まとめ及び第4回以降の国際小委員会での審議も踏まえ、具体化に向けて引き続き検討を進めることとしております。また、既存事業との連携を図りつつ、必要に応じて予算的な支援策が講じられることを期待しております。

中間まとめ案の具体的な内容については、事務局から説明をお願いいたします。

【児玉国際著作権室長】事務局でございます。お手元資料2を御覧いただきながらお聞きいただければと思います。

先ほど鈴木主査からありました検討の経緯につきましては、1ページ目、「はじめに」のところに書かせていただきました。

また、その後、8月以降3回にわたる国際小委員会の審議という話がございましたけれども、各回でどのような方々からお話を頂いたかということにつきましては、7ページ目、付属資料2のところに掲げてございます。

提言の具体的な中身、海外展開の戦略を立てる際の留意点、そして海外展開に当たっての著作権上の課題とその解決のために考えられる方策につきましては、資料の2ページ目、3ページ目、あと4ページの一番上に書いてございますけれども、少しまとめたものを作りました。附属資料3、8ページ目を御覧いただきながらお話を聞いていただければと思います。

まず、海外展開の戦略を立てる際の留意点といたしまして、国際小委員会の場で御発表いただいた皆様方は、基本的に他の方々に先駆けて海外展開を達成しておられる皆様ということですので、こういった方々がどういった点に留意して海外展開してこられたかという部分をまとめてございます。

キーワードとして出てまいりましたのが、グローバル、そしてデジタル、さらには、専門性を有する人たちがチームとなってビジネスを展開していくことの重要性について御発言がありました。

また、いかに作品を一般消費者であるファンに届けるかという観点が絶対必要ということがありまして、単に1つのコンテンツを提供するだけではなくて、そこから例えばゲームであったりグッズであったり様々派生していく、そういった流れについても意識しながら、多様な形で作品の魅力を訴求していくことが必要ではないか、そういった話もございました。

一方で、やはりこの時期の海外展開ということになりますと、非常に大きなプラットフォーマーとの連携・関係が非常に必要になってまいります。その際に、例えば取引条件の公平感であったり、権利者が自らの権利を主張できるような関係性をいかに確保していくか、そういったことに留意が必要というお話もございました。

また、先ほど前半の議論にもありましたけれども、個人クリエイターの方々の存在感は日々増してございます。そういったこともしっかり視野にとらまえていくことが必要であるという御意見がございました。

また、海賊版対策については、今回議論いたしました正規版の海外展開、こちらと車の両輪として進めていくべきではないかというお話も頂いています。

また、音楽分野を例にとってということになりますけれども、既存の国際的な著作権の管理の仕組みを正確に把握することで、円滑な海外展開につながっていくんじゃないかという御示唆もございました。

そういった留意点を踏まえまして、さらに著作権上の課題と考えること、そしてそれに対応した方策についてまとめてございます。文章だと少し分かりづらくなってございますので、こちらで適宜5つの見出しを立てまして、おのおの課題と方策を対応する形にまとめています。

まず、総論的なお話といたしまして、やはり著作権の知識、それから著作権を取り扱った経験が不可欠だろうというお話がありました。また、海外展開を目指すのであれば、それに先立って、国内の段階でしっかり権利処理をしておくべきであるというお話。

また、海外展開するのであれば、現地の文化であったり、それぞれの時代であったり、そういったものに応じたローカライズが必要ではないかという課題感が示されています。

これに関しましては、例えばプロジェクトの初期段階から、法的な人材、法務人材が関与できるような仕組みが必要ではないか、また、海外進出についてもサポートできるような窓口が必要ではないか、そういった御議論がありました。

一方、法務人材という点に関しましては、プレゼンテーションの中で多くの方がおっしゃっておられたのが、圧倒的な量の不足でございます。例えば現地の事業関係者と交渉できる人、エンターテインメントの分野に明るい人、そういった方々の層がまだまだ薄いのではないかというお話がありました。

今後、こういった分野に専門性を発揮できる方々を発掘・育成すること、さらには、情報を一元化してネットワーク化すること、また、専門人材となってまだ日が浅い方、経験が浅い方に対する実務的なトレーニングの機会なんかもあっていいんじゃないかというお話を頂きました。

専門人材という点でいきますと、マーケティングについても同様なことが言えます。現地のマーケティングが不可欠。そのためには、現地でのネットワークが不可欠というお話がございまして、例えばどんな人材が現地において有益か、どんな取引先企業、どんなローファームと組めていればより優位に展開ができるのか、そういったものの情報あるいはそういった方々とのマッチングの仕組みがあってもいいんじゃないかということが課題感として示されています。

これに対しましては、例えばJETROの機能を中小のコンテンツ事業者に使っていただくことが必要という話もありましたし、冒頭の戦略のところとも少し関わるんですけれども、コンテンツを売って終わりという考え方をやめて、やはりマーケティングの流れを理解して、どのような形で展開していくのがその国における当該コンテンツの展開に最も有益であるか、そういったことをしっかり考えて進めていくべきではないか、そういったことのサポートができるような人材も必要ではないか、そういったことが述べられてございます。

4番目のまとまりとして、UGCと掲げさせていただきました。特に個人で活動しておられる方々につきましては、海外展開に当たって、著作権に関する知識が不足しているがために、例えば適正な使用料を取れていない、あるいはコンテンツの侵害に対して対処できていない、そういった例もあるんだということが課題感として示されています。

これにつきましては、例えば著作権の在り方あるいは海賊版対策の状況、こうしたものに対する的確な情報発信が必要ではないかというお話もありましたし、まず海外展開をするという点では、集中管理という仕組みをしっかり使っていくこと、そこに対する正しい理解を促すための普及啓発も必要ではないかというお話もございました。

最後に少し毛色の違う話で、翻訳の話も出てきています。どうしても我が国のコンテンツを世界に持っていくに当たって壁になるのは、言葉、日本語というところがございます。そこにつきまして、専門文書、これはコンテンツの中身もそうですし、契約周りの文書もそうだと思うのですけれども、そういったところに対する支援があればというお話を頂いています。

様々、課題とその方策について示されましたので、これにつきましては、次年度以降の著作権課あるいは文化庁内各課の事業、場合によっては令和5年度の概算要求も視野に入れながら、様々な形でつくっていきたいと思っています。

また、国際小委員会におきましては、先ほど主査からもありましたように、年明け以降、今度は海賊版に関する議論を行うことになっています。そこで出てきた御意見、そこで出てきた課題感、そこで出てきた方策などもうまくこの辺りに絡めながら、著作権課に限らず、庁内様々な資源も活用しながら、これらの提言あるいは課題に対する方策、実現できるように進めてまいりたいと思ってございます。

資料の説明は以上でございます。よろしくお願いします。

【茶園分科会長】どうもありがとうございました。

それでは、ただいまの報告につきまして、御意見等がございましたらお願いいたします。

井村委員、お願いいたします。

【井村委員】書籍協会の井村です。今御説明いただきました最後のところで、翻訳等について触れていただきましてありがとうございます。ただ、出版物のグローバル展開というと、どうしても漫画や日本で売れた一部の文芸作品とか、そういったものに目が向けられがちですが、日本には若手の優秀な学術系の研究者といった方々がたくさんいらっしゃいます。そういう方々の優れたコンテンツが海外に出ていくということは、日本の世界におけるプレゼンスをあげる意味でも、重要なことだと思います。

学術書はビジネスとして成り立たないと言われればそのとおりかもしれませんが、そういう分野にもできるだけ多くの資金を投入していただけないかなと考えております。

以上です。

【茶園分科会長】ありがとうございました。

ほかにございますでしょうか。

仁平委員、お願いいたします。

【仁平委員】日本ネットクリエイター協会、仁平です。当該会議、私も出させていただいたんですけれども、ひとつ、今回もお話しいただきましたが、日本と海外との音楽著作権、特に音楽の問題でお話しさせていただいたんですが、音楽著作権の区分が、日本の場合、御存じの方もいらっしゃるとおり、現行、11の支分権に分けられていて、さらに4月からはそれがまた増えるという形になります。ところが、海外の場合はそこまで細かく分けられている国はありませんで、おおむねいわゆる演奏系に当たるものと録音系に当たるもの、この2つが大部分だと思います。

そうなってきたときに、日本の、特にUGC楽曲の場合は、各支分権ごとに、この部分はJASRACに、この部分はネクストーンさんにというような、預け方をかなり変えていらっしゃったりする場合が多くて、じゃあ、そういう預け方をした場合、海外で使われたときに、本当にそれは著作権印税を取れるのかなというところがかなりコンフューズしてしまうんですね。

特にネットの中で言っても、ダウンロード販売とストリーミング販売とでは、海外では著作権の考え方が違っていたりするものもあるので、こうしたければこうしたほうがいいよみたいな分かりやすいガイドラインの設定をつくっていただいた上で、それをUGCの人たちに的確に分からせるような仕組みが、ひとつ、まず重要なのかなと思いました。

それと、実はUGC楽曲、海外で結構転載されていたりします。主に中国なんかでは転載されているんですが、御存じのとおりといいますか、中国の漢字と日本の漢字はちょっと違ったりするので、有名なボカロ楽曲が中国語になったときにどういう表記になるのかというのは結構……、調べることはできるんです、我々なんかは慣れているんで分かるんですけれども、なかなか分からなかったりすると、プロのそういう権利管理者が見たときに、これはこの楽曲なんだってはっきり分からなかったりする。

なので、国別に、この楽曲はこういうふうに登録、言われているんだよみたいな、そういう明確な指標も必要かなと思いますし、もしくは、クリエイターの立場からすると、僕の楽曲はこういうふうに英語表記してくれというものをきちんと明確に自分で意見が出せるような、前の議題のデータベースにも関係してくるんですけれども、自分で宣言するときに、そういったものまで含めて宣言できるような場があればいいかなというのが2つ目。

最後、重要なのは、やはり違法に使われている場合、とても多いです。UGCの場合、基本的に泣き寝入りになってしまう場合が結構多かったり、もしくは、例えば著作権が全部JASRACさんに信託されていればJASRACさん経由で云々ということもできるんですけれども、例えばネクストーンさんに著作権が預けられている場合、これは信託ではなくて管理なので、しかもネクストーンさん、海外の部分は管理をされないというのが大前提ですので、どうしていいか分からないというところがあります。

その辺りも、国を挙げて、海外で違法に日本の楽曲が使われたときに、我々のような弱い立場のクリエイターが、ここに問い合わせすれば何とかしてくれるんだよみたいな、そういった指標もあるとうれしいかなと思います。

以上、3点です。ありがとうございました。

【茶園分科会長】どうもありがとうございました。

ほかにございますでしょうか。

河野委員、お願いいたします。

【河野委員】ありがとうございます。御報告ありがとうございました。今後に向けて詳細な御検討をされているということがよく分かりました。

本日午前中のニュースで、海賊版サイトに広告を行うのは著作権侵害幇助であるとして、代理店2社に賠償命令が出されたという報道を目にしました。こういった不正なことを行う者に対する財源を断つという方向が明確に司法で示されたというのは、とても朗報だと思って聞いておりました。

デジタル技術を駆使した各種コンテンツの海賊版やファスト映画など、著作物の不正利用の根絶については、国が先頭に立った法的対策、それから権利者団体の皆様の活動に加えて、今回のような民事での裁定など、社会にこういったことが周知・広報されることも非常に大きな効果を生むと思っておりますので、ぜひ次年度からの対策も、実を結ぶように期待したいと思っております。

それから、文化審議会に新たに文化経済部会が設置されて、我が国の文化と経済の好循環に資する事項について調査・検討すると伺っております。我が国文化芸術のグローバル展開について、グローバル展開ワーキンググループなども設置されるということですので、今後の海外展開の戦略については、他省庁等も含めて、本当に多方面の連携・協働によって、よりよい方向を示していただければと考えております。

以上です。

【茶園分科会長】ありがとうございました。

ほかに御意見等ございますでしょうか。よろしいでしょうか。

では、どうもありがとうございました。いろいろ貴重な御意見を頂きましてありがとうございます。

それでは、本日頂きました御意見を踏まえまして、場合によっては修正をしたほうがよろしいということになるのかもしれませんし、その場合には必要となる修正を行った上で、本分科会における「中間まとめ」として確定したいと考えております。

もし修正をする場合に、その修正につきましては、分科会長である私に御一任いただきたいと思いますけれども、それでよろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【茶園分科会長】どうもありがとうございます。

それでは、必要に応じて修正をさせていただきまして、本分科会の「中間まとめ」として取りまとめさせていただきます。事務局におかれましては、速やかに公表いただくようお願いいたします。

それでは続きまして、議事(3)の「その他」について入りたいと思います。

まず、民事訴訟法等の改正に伴う裁判手続のオンライン化に対応した著作権制度の検討についてでございます。本件につきましては、12月8日の法制度小委員会におきまして御審議いただき、現在、パブリックコメントを実施しているところでございます。

それでは、本件に関する検討状況等につきまして、資料3に基づいて、事務局から説明をお願いいたします。

【小倉著作権課長補佐】資料3をお開きください。資料3の1ページ目に入る前に、まず4ページ目をお開きいただけますでしょうか。4ページ目は「民事裁判手続のIT化」といった資料で、右肩に入っておりますように、法制度小委員会で使われた法務省提出資料になります。

こちらの左上にありますように、現在、法務省の法制審議会で議論が行われておりますのが、民事訴訟法に関する民事裁判手続のIT化です。この資料の右側にございますように、訴えの提起から判決までを全面的にIT化するということで、訴状等のオンライン提出、ITを活用した口頭弁論期日、訴訟記録の電子化、こういったようなものが検討されております。左下にスケジュールがございますが、法務省におかれては、2022年の通常国会への法案提出を目指して作業中ということです。

その下半分の訴訟記録の閲覧等の概要について御覧ください。まず、資料の提出・記録化でございます。現行法では、左側にありますように、当事者は、主張書面や証拠の写しを紙媒体で裁判所に提出する。原則として、相手側に送付する。今回の検討中のIT化に関しましては、右側にありますように、当事者は、裁判所のオンラインシステムにより資料の電子データを提出することが可能になる。また、裁判所は、電子データで保管するといったこととなっております。

また、訴訟記録の閲覧等につきましては、右下を御覧いただきたいのですが、当事者及び利害関係を疎明した第三者は、オンラインシステム上で閲覧(謄写)する。利害関係のない第三者は、裁判所に出向いて、事件を特定した上で、裁判所内の設置端末で閲覧する。謄写は不可。このような改正の動きがあるということです。

それでは、資料3の1ページ目にお戻りください。ただいまの民事訴訟法の改正に伴う著作権制度に関する論点を整理したものでございます。

「1.現状と課題」の「(1)裁判手続における権利制限規定の概要」を御覧ください。著作権法第42条第1項は、裁判手続のために必要と認められる場合には、その必要と認められる限度において、著作権者の許諾なく著作物を複製することを認めております。これは、公正な裁判の実現という観点から、裁判手続に必要な著作物を収集し、そのコピーを作成することができるようにしておく必要があるからであると解されております。

これにつきまして、資料中ほどの「(2)課題」を御覧ください。今御説明しましたように、著作権法第42条第1項は、著作物の複製についての権利制限規定でございます。今般の民事訴訟法の改正により、民事裁判手続の記録が原則として紙媒体から電子媒体とされ、手続がオンライン化されるため、複製以外の利用行為については、著作権者等の許諾を得る必要が生じるところ、裁判手続に支障を来し、憲法第32条が定める裁判を受ける権利が十分に保障できなくなるおそれがあるという課題がございます。

「2.著作権制度における対応の要否及び方向性」を御覧ください。これにつきまして、先ほど分科会長からお話がありましたように、法制度小委員会で議論を行いまして、著作権法第42条について、今般の民事裁判手続のオンライン化に対応するため、公衆送信等についても権利制限の対象とすることが必要であるといったまとめとしております。この公衆送信等の「等」につきましては、例えば公の伝達などを想定しております。

この改正の必要性に関しましては、法制度小委員会では次のような意見がございました。次のページになります。1つ目が、民事裁判自体が電子化・オンライン化されるのであれば、適正な裁判、裁判を受ける権利の観点から、あらゆる裁判手続における公衆送信や公の伝達に係る措置が必要ではないか。

著作権が原因で裁判手続に支障が生じることは望ましくない。

3つ目、市場的に価値のある著作物が問題になるケースはボリューム的に多くないため、権利者に与える影響は小さいと考えられる。こちらにつきましては、詳細な説明は省きますが、お配りしている資料の5ページ以降の最高裁判所より御提供いただきましたサンプル調査の結果、こちらも適宜御参照ください。多くの事件で、第三者の著作物が証拠書類等に使われた場合なんですが、漫画や法律関係文献の書籍とかの抜粋が多いようでして、多くは10ページ以下となっている。また、第三者による謄写請求等は、なかなか件数も多くない。こういったことを踏まえて、権利者に与える影響は小さいと考えられるといった御意見もありました。

資料の2ページ目に戻りますが、2ページ目の上から4つ目の黒丸、少なくとも現行法上も、「ただし、…著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない」といった安全弁があることからも、改正の必要性はおおむねあるのではないかといった御意見でございました。

「また」のパラグラフになりますが、現行の紙媒体での運用から電子化・オンライン化への運用となること等を踏まえ、対応の方向性に関し、次のような意見がございました。訴訟記録の閲覧等の手続のオンライン化により生じる著作物の利用行為に関しては、現行規定の「裁判手続のために」という要件に当たらない可能性もあるため、明確に可能としていくべき。

2点目、訴訟手続におけるプレゼンテーションのための上映や翻案といった、裁判手続において必要と考えられる利用行為についても権利制限の対象とするよう、将来的には検討すべきではないか。

3点目、裁判所内での厳格な運用が想定されていることからすれば、著作権法第42条第1項に規定されているただし書などの要件以上に何らかの安全弁は不要ではないか。

このような御意見がございました。

以上でございます。

【茶園分科会長】どうもありがとうございました。

それでは、ただいまの報告につきまして、御意見等がございましたらお願いいたします。

御意見等ございますでしょうか。よろしいでしょうか。

それでは、本件につきましては、パブリックコメントも踏まえまして、次回の法制度小委員会に報告の上、本分科会の皆様にも報告させていただく予定です。ありがとうございました。

その他、全体を通して何かございますでしょうか。よろしいでしょうか。

では、特段ございませんようでしたら、時間はちょっと早いですが、本日はこれぐらいにしたいと思います。

最後に、事務局から連絡事項等がございましたらお願いいたします。

【小倉著作権課長補佐】事務局でございます。次回の著作権分科会につきましては、各小委員会における検討状況等を踏まえつつ、改めて日程の調整をさせていただきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

【茶園分科会長】それでは、以上をもちまして、文化審議会著作権分科会(第62回)を終了とさせていただきます。本日は様々な御議論を頂きまして、どうもありがとうございました。

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