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AI時代における自動運転車の社会的ルールの在り方検討サブワーキンググループ(第2回)

概要

  • 日時:2024年1月30日(火)10時00分から12時00分まで
  • 場所:オンライン
  • 議事次第:
    1. 開会
    2. 内容
      1. 事務局説明(第1回 AI時代における自動運転車の社会的ルールの在り方検討サブワー キンググループにおける主なご意見およびご意見を踏まえた想定論点について)
      2. 自動運転の安全性に関するアーキテクチャ検討状況について
      3. 原因究明と再発防止のための事故調査及び情報共有について
      4. データ連携とその在り方について
    3. 意見交換
    4. 閉会

資料

議事録

児玉参事官: はじめに事務連絡です。本日の会議は、完全オンラインでの開催となります。構成員の皆様は、会議中はカメラオンで、発言時にはマイクのミュートを解除いただきご発言をお願いします。なお、他の方が発言されている際は、ミュートにしていただければと思います。また、傍聴者の方は、カメラ、マイクをオフにしていただきますようお願いします。

次に、資料を確認します。事前にお送りしました議事次第に記載のとおりとなりますが、資料といたしましては、議事次第、構成員名簿、事務局説明資料、独立行政法人情報処理推進機構デジタルアーキテクチャ・デザインセンター大内様説明資料、須田構成員説明資料、西成構成員説明資料、構成員提出資料、出席者一覧となります。お手元にない等の状況がございましたら、Teamsのチャット機能、もしくは事務局までメールにてお問い合わせいただければと思います。本日の出席者については、時間の制約もありますので、失礼ながらお手元の出席者一覧の配布をもちましてご紹介に代えさせていただきます。なお、原田構成員が途中で退出される予定と伺っています。本会議の資料及び議事録は後日公開となりますこと、ご承知おきください。

それでは、ここからの進行は小塚主査にお願いしたいと思います。小塚主査、お願いします。

小塚主査: ありがとうございます。小塚です。それでは、本日の議事次第に従いまして議事を進めます。議事次第のとおり、事務局説明を含めて4件のご説明をいただきまして、その後、まとめて皆様に意見交換を実施いただきたいと思います。

はじめに、議事2-(1)の事務局説明です。第1回サブワーキンググループにおける主なご意見、及びご意見を踏まえた想定論点につきまして説明していただきます。事務局の須賀参事官、よろしくお願いします。

須賀参事官:
(以下「資料3:第2回事務局説明資料」に基づきご説明)
資料3:第2回事務局説明資料に基づき、第1回SWGにおける主なご意見、第1回SWGにおけるご意見を踏まえた想定論点等についてご説明

小塚主査: ありがとうございました。それでは、議事2-(2)に移ります。自動運転の安全性に関するアーキテクチャ検討状況について、本日はIPAのデジタルアーキテクチャ・デザインセンターから、大内様にお越しいただいています。それでは、15分ほどでお願いします。

大内氏:
(以下「資料3:自動運転の安全性に関するアーキテクチャ検討状況について」に基づきご説明)
独立行政法人情報処理推進機構のデジタルアーキテクチャ・デザインセンターの大内です。本日はよろしくお願いします。自動運転の安全性に関するアーキテクチャ検討状況に関してご報告します。次のページお願いします。

まず、本日の前提になりますが、自動運転車の事故・ヒヤリハット時のデータを必要な範囲で収集・共有することにより、自動運転車の安全性向上を目的としており、事故時・ヒヤリハット時のデータをどのように取り扱うのか、全件取り扱うのかを含めて、今後の議論の対象としています。また、データの利用用途として、原因究明と再発防止・事故の未然防止に限定しています。収集したデータに関しては、法的責任の追及の目的には利用しないといった前提でデータの利用用途を定め、検討を進めています。データの収集や共有を、誰が、どういう形で実施するのか等に関しては、今後議論の必要があります。また、本日の参考情報として、海外の事例についてもご紹介できればと思います。次のページお願いします。

こちらではデジタルライフライン全国総合整備計画の検討方針をお示ししています。DADCでは、人流クライシス、物流クライシス、災害激甚化等に対応するためのアーキテクチャの検討を進めています。アーキテクチャの中には、ハードやソフト、ルール等も含まれており、事業者の方にDADCへ集まっていただき、アーキテクチャの検討を進めています。2024年度から実装に向けた自動運転車用レーンを駿河湾沼津、浜松等に設定していることが既に公表されていますが、そのようなところでの実装を踏まえて、アーキテクチャのブラッシュアップを進めていきながら、中長期的な社会実装に向け、DADCでは10年間かけてアーキテクチャの整備を進めていくための検討を進めています。次のページお願いします。

デジタル田園都市国家構想実現会議や、デジタル社会推進会議の下位に位置付けられるデジタルライフライン全国総合整備計画会議の事務局を、経産省・デジタル庁と連携してDADCが務めています。この全国総合整備実現会議の下位に位置付けられる形で、アーリーハーベストプロジェクト関連の自動運転支援道ワーキングとドローン航路ワーキング、インフラ管理DXワーキングの3つと、アーキテクチャワーキングとスタートアップワーキングの、合わせて5つのワーキンググループが構成されており、本日のご紹介の対象としては、自動運転支援道ワーキンググループが相当するかと思います。次のページお願いします。

デジタルライフラインの第2回自動運転支援道ワーキンググループの資料のうち、自動運転の安全にかかわる部分について抜粋しています。第2回サブワーキングでは、所在・対処不明なリスクに対応するために、各社のシステムや、目的に応じて整備されたプラットフォーム同士を接続することでデータ収集を可能にし、収集したデータを基に仮想空間上でシミュレーションを行い、事故の未然防止を実現するということを示しています。なお、事故の原因特定や、責任追及については本資料では範囲外としています。資料右側で示しているとおり、アーリーハーベストプロジェクトで、新東名の駿河湾沼津サービスエリアから浜松サービスエリアの第2交通帯を自動運転優先レーンにすることで、自動運転車に対するリスク軽減を実現するという部分につきましても、第2回サブワーキンググループでお示ししています。次のページお願いします。

事故の未然防止の考え方について、現状の課題として、各社ごとに走行時に発生したヒヤリハット情報を基にリスクシナリオを測定するため、膨大なテスト走行を重ねる必要があり、安全性の確保及び検証に時間がかかるという指摘を事業者の方から頂いています。また、事故が発生した場合、様々なシステムが連携しているため、原因が特定されるまで全サービスを停止しなければならない可能性があり、情報不足により原因の特定に時間を要することや、原因が断定できないことも考えられるのではという課題が挙がっています。DADCの解決策案として、事故発生時の情報やヒヤリハット情報の収集、及び環境モデルの生成・共有を行うことで、仮想空間上での事故・ヒヤリハットの再現を可能にし、市場投入済みの車両を含めた開発車両に対して仮想空間上で検証をし、必要に応じてソフトウェアの更新をすることで事故の未然防止につなげてはどうかということを示しています。次のページお願いします。

こちらでは、先ほどの部分を具体化したものを示しています。資料左側のヒヤリハットの検出の部分では、検出時に一定時間分のデータを送信してはどうかということを示しています。ヒヤリハット検出時は予定外の行動や機器の故障、ある値を超える加速度の検出等、確定的ではないですが、それらのトリガーをもとに、自動運転車の運行者や運行者以外から、事故やヒヤリハットを再現する環境モデルの生成に必要なデータを情報収集組織に送ります。そのデータをシミュレーションベンダ側へ送付して、シミュレーションベンダが事故やヒヤリハットを再現可能な環境モデルを生成し、それを用いて自動運転の開発者や保険会社、研究機関等へ環境モデルを提供し、仮想空間上で事故を再現できるようにすることを考えています。さらには、将来的には行政機関や事故調査機関等に活用いただけるとなおよいと考えています。次のページをお願いします。

事故やヒヤリハットを再現する環境モデルの生成イメージを示しています。環境モデルとはどういうものかを、左側の下の写真で示していますが、このようなものを仮想空間上で作るためにはどのようなデータが必要かを現在検討中です。例えばドライブレコーダーの映像やセンサー情報、車両速度や加速度等が考えられますが、具体的にはどのようなデータをどのような手段で集めるかに関して、2024年度から開始するアーリーハーベストプロジェクト等で今後明確にしていくこととしています。右側の参考事例では、上側半分は自動運転の運行者が提供を求められている情報として、ドイツの道路交通法や中国のガイドラインで挙げられているものを記載しています。また、下側半分には、中国で自動運転の運行者以外が提供することを求められる情報をまとめています。これらの情報を踏まえつつ、事故・ヒヤリハットを再現する環境モデル生成のために何が必要かを検討していきます。DADCからは以上となります。

小塚主査: ありがとうございます。続きまして、原因究明と再発防止のための事故調査及び情報共有について、須田先生よりご説明いただきます。よろしくお願いします。

須田構成員:
(以下「資料4:原因究明と再発防止のための事故調査及び情報共有について」に基づきご説明)
東大の須田です。本日は資料を用意してまいりましたので、簡単にご説明したいと思います。よろしくお願いします。次のスライドお願いします。

私自身はエンジニアで、自動運転以外も含めた様々なモビリティの研究開発をしてきました。次のページお願いします。

今回、事故調査についてお話しますが、その前に、私がどのようなことに関わってきたのかを簡単にご紹介します。前回もお話ししましたが、2000年に起きた日比谷線の脱線事故の調査検討会に加わって以来、様々な事故調査を担当しています。直近ですと、一昨年の宇都宮のライトレールが試運転中に脱線したという案件があり、それの原因究明と対策を検討させていただいています。また、航空鉄道事故調査委員会が発足し、さらにそれが運輸安全委員会になりましたが、その専門委員として、上越新幹線、東北新幹線、九州新幹線の脱線事故、及び福知山線の脱線事故調査にも参加していました。そのようなことがあり、先ごろ発足した自動運転事故調査委員会の委員長に任命され、パラリンピック選手村内の中型バスの接触事故の調査をし、昨年の夏に報告書を出しました。次のページお願いします。

以上の活動のほか、安全という領域で様々取り組んでいます。日本学術会議では、総合工学委員会の安全・安心リスク検討分科会で活動していますし、物流・自動車局整備課の仕事として、OBD車検というものが動き出そうとしていますが、それについても検討委員会に参加しています。このOBDも一つの活用方法かと思いますが、本日は説明を省略します。それ以外の話として、自動車製造物責任相談センターというものがあり、その審査も担当し、様々な不具合情報について、被害者と製造者との間で、裁判をしないADRという方法で解決するというものにも参加しています。鉄道に関しては、まさに事故情報を共有することが重要であるということもあり、20年ほどの歴史がある、鉄道技術総合研究所の中の鉄道技術推進センターというところで安全データベースを作ろうという話になりまして、データ収集の方法から実際の公開方法まで様々検討したという経験もあります。次のページお願いします。

先ほどの自動運転車事故調査委員会ですが、簡単に概略をご紹介すると、警察庁、国土交通省の物流・自動車局と道路局の三局から委託を受け、交通事故分析センター、通称ITARDAが受託をするという仕組みで動いています。原則としてレベル3以上の自動運転車の事故を対象としていますが、2021年8月26日に発生した中型バス接触事故については正式な調査案件となり、昨年の9月2日に公表しています。次のページお願いします。

その報告書を出したメンバーを示しています。私が委員長を務めましたが、それ以外に、自動車、法律、行政の専門家が参加しています。資料に四角で囲っていますが、この事故調査については責任追及の場ではなく、原因究明と再発防止に寄与することを目的に行ったものだということを但し書きがあります。次のページお願いします。

次に、簡単に報告の中身についてもご紹介します。事故の要因は一つではなく、複数の要因が重なって起きたということが原因でした。要因として、運転者の問題、交通誘導員の問題、関係者による安全対策の認識の問題等、幅広い観点からの要因が事故に結びついたという結論を出しました。ですので、車両のデータだけではなく、様々な体制やインフラ等、幅広い情報が調査のためには必要でありました。次のページお願いします。

それに対し、再発防止をするための提言も併せて行っています。詳細は省略しますが、車両に関するもの、サービスに関するもの等、いろいろな提言をしています。このうち、最後に記録保持の重要性と書いてありますが、これは、自動運転のデータが消えていたということが起きていたことから、非常に重要であるとして提言に入れ込んでいます。次のページお願いします。

その際に課題となった点をご紹介します。この資料は事故調査報告書から取ってきたものです。調査の対象として、車両、被害者等関係者に調査をいたしましたが、米印で書いてあるように、被害者及び当該誘導員からの意見聴取は同意が得られませんでした。当調査委員会では同意の上で調査をすることになっていますので、調査の権限がなく、肝心の詳細な情報が得られなかったため、ある程度推測の域を出ないという残念な実情があります。次のページお願いします。

私自身は運輸安全委員会の専門委員としていくつかの事故調査を担当しましたので、そちらのお話を紹介します。まず、航空事故調査委員会という、国際的な協定の下にあるものですが、鉄道事故、海難審判所の一部が融合して、現在、運輸安全委員会となっています。私は鉄道の事故調査に関わってきましたが、鉄道についてはもともとそのような組織はありませんでした。しかし、信楽高原鉄道の事故を発端に、公的な自立機関による調査の必要性が認識され、鉄道事故調査検討会が発足して、日比谷線で調査をしました。その成果をもとに、現在のような形になっていると認識しています。運輸安全委員会設置法という法律に基づいて組織されていますので、委員あるいは調査については官庁とは独立しており、独立した調査が保証されています。また、調査についての権限として、いろいろな関係者にヒアリングができます。さらに、どのような事故の案件を対象とするかについても規則があり、そのルールに則して調査案件が選定されることとなっています。そのため、非常に公正かつ中立な仕組みとなっています。今回の経験を通じ、運輸安全委員会のような仕組みを作っていくことが非常に重要と思っています。次のページお願いします。

今後求められる活動について提言します。事故調査といっても、責任追及の場ではなく、原因の究明、再発防止策のための調査であること、さらに、完全に防止することはできなくとも、被害を軽減する、ということについての提言をすることが非常に重要です。また、当然この調査の報告書は公開して共有することで、再発防止に役立てていかなければなりません。しかし、その際に考慮しなければならないのは、先ほどからお話ししているとおり、調査・関係者からの情報収集の在り方のルール化や、被害者や遺族の方々への配慮です。私は福知山線事故調査にも関わっており、非常に痛感しています。もう一つ大きな観点は、事故情報・インシデント情報の共有です。調査案件にならなかったような件についても、いろいろなデータを共有していくことが重要です。一言に事故状況調査という観点から言っても、個別の重大事故の調査案件と、事故・インシデントの情報を幅広く共有するという統計的な話とは、区別して考えていく必要があるだろうと思います。案件ごとにクリティカルな情報は異なってきますが、基本的には車両の挙動等のデータが非常に重要になってきます。その意味で、車両だけで記録されているデータだけではなく、ドライブレコーダーや監視カメラ等、様々な事実の情報を総合的に収集することが重要になります。しかし、事実を事実として認識するにあたり、これらの情報の時刻が合っていないと混乱してしまいます。そのため、時刻合わせが非常に重要だと痛感しています。また、個別の調査案件以外の案件については、先ほど紹介したとおり、鉄道安全データベースのように、幅広くインシデント・事故を集める仕組みを作っていくことが重要と思っています。現在、ITARDAが請負で行っていますが、このような機関と連携していくこと、あるいは、一般社団法人モビリティ・イノベーション・アライアンスという、SIPの第1期・第2期で自動運転について省庁横断で取り組んだ成果を引き続き継続するために設立された一般社団法人ですが、このような法人を活用して、事故情報、インシデント情報、あるいは安全情報を広く共有して情報を公開していくという仕組みが考えられると思っています。私からは以上です。

小塚主査: ありがとうございました。実際に関わられたご経験を踏まえて非常に説得力のあるお話を頂きました。もう一つご説明をいただいてから意見交換に進みたいと思います。議事のデータ連携の在り方についてということで、西成先生にお願いしています。それでは先生、お願いします。

西成構成員:
(以下「資料5:データ連携とその在り方について」に基づきご説明)
よろしくお願いします。西成です。私は車だけではなく、物流や人流、また、最近では空飛ぶ車の安全性の研究もやっています。本日は時間もないので言いたいことを1ページ目にまとめてきました。まずどの業界でも同じですが、メーカーや関係機関が独自に安全性に係わるデータを保持していまして、共有されていません。そのため、個人情報を上手く抜いて、研究者、あるいは専門機関で共有すべきです。安全性の情報は競争領域ではなく協調領域であると思っていますが、その線引きがうまくいっていないと思います。保持すべきデータの問題として実際にあった事例ですが、調べようと思うと不足していたり、標準仕様ができていないため肝心なデータが無かったり、揃わなかったり、クオリティーが低かったりという問題がありまして、それらを揃えておくべきだと思います。また、プラットフォームが無いとやりとりに時間がかかってしまいます。そのため、安全性の高いセキュアな仕組みのプラットフォームを作る必要があると思います。これについては、物流のSIPの方で関わりましたので、後ほどこの話をします。加えて、ヒヤリハット事例についても情報共有が必要であると思います。また、少し違った話になりますが、社会的受容性の話も興味がありまして、自動運転車両は手段であり目的ではないです。何のためなのかということが共有されていないと、人々の共感を得られません。アポロ計画がなぜ死者を出しても続けられたかということは以前お話ししましたが、ミッションエコノミーという書籍に書いてあるように、夢が共有されているから前に進めたということがありました。次のページお願いします。

先ほどDADC様からもお話がありましたが、どういうデータを揃えておけばよいかというのはこれからの議論が必要だと思っていますが、仮に私が分析するとしたら何が必要かを考え、資料に落としたのが2ページ目です。個人情報を抜いたという前提で、必要なのは位置・速度・加速度、それから、ジャークという加速度の変化も自動車では重要であります。加えて、車の状態や通信状況や外部条件等も必要です。先ほど中国の例が挙がっていましたが、この研究は1週間で相当な論文が出ているほど日進月歩の領域です。先週論文を読んで、この資料に付け加えるのが間に合わなかったのが、悪意を持った邪魔です。誰かが悪意を持って行動をし、それによって事故が起こると、先ほど申し上げた情報では足りないと言われています。先週出た論文には、道路標識にレーザービームを一瞬当てると、車が認識を誤り、例えば停止線を越えて停止するという状況を作ることができます。そのような、車だけの問題でなく、悪意を持った第三者がいる時にどうするのか、ドライブレコーダーで一部は捕えられるかもしれないですが、そのような点も考えなければ事故は無くならないと思います。後ほど紹介しますが、ドイツの規程でも定められていないのが、他の車がどう振る舞ったかというデータです。誰かが割り込んできた等の場合、データが無ければ分析ができません。そのため、自分の車の情報だけでなく、他の車がどう動いたか、あるいは人がどう動いたのかというデータがあると、私としては分析しやすいです。さらに、人がどう動いたかという部分についても、毎週のように論文が出ていますが、TrajectoryPredictionという技術がありまして、周囲の車や人の動きを予測します。周囲の人や車が5秒後にどこにいるのかということを短時間で予測して車両が動くのですが、自動運転車両のアルゴリズムが研究者によって異なっています。その違いを比較した論文も出ていますが、例えば、A社の人と車の動きの予測がB社のそれと異なる等、動きを予測する技術が異なります。これは競争領域の話ではありますが、この情報を共有することでお互い切磋琢磨できて良いものができるのではと思います。もう一つは、空飛ぶ車でも議論がされていますが、どのように衝突回避をすれば安全なのかという話があり、これに関しては、RSSという有名な基準があります。これだけ車間距離を取っているのだから相手が悪く、自分の責任ではない、という基準が数式で証明されています。この数式は皆さん慎重に使っておられますが、研究的に言うと、この基準を用いると車間距離の開け過ぎとなってしまい、交通容量が落ちてしまいます。安全性を優先すると効率が落ちるというトレードオフがありまして、RSSを守って走るのはなかなか難しいと思っています。次のページお願いします。

先ほども申し上げましたが、SIPで2年間物流プラットフォームをやっておりましたが、ポイントとなったのは非改ざん性です。誰かがデータを変える可能性があるため、データの非改ざん性をどのように担保するのか、あるいはアクセス権限のコントロールの問題等があります。また、各社でデータのフォーマットが異なっていまして、データを集めると一言でいっても集まらないです。それを変換して、抽出してまとめるためにはかなりの実務の技術が必要です。また、閉じたプラットフォームではなく、天気等様々なものと合わせるために、他のプラットフォームとの連携が必要です。あとはデータの標準化ですが、これらのことを、物流領域で2年間取り組みました。次のページお願いします。

ヒヤリハットは、一つの事故に対して背景に膨大なインシデントが存在するという、ハインリッヒの法則というものがあります。私は航空宇宙工学科に所属していますが、航空機の業界ではVOICEという制度があり、良い制度だと思っています。先ほど須田先生のお話もありましたが、第三者機関が請け負い、個人や会社名等を特定されないようにしており、行政処分も行われないため、ヒヤリハットの情報が出しやすくなっています。私が調べた限りでは、年間60~100件挙がってきています。先日羽田で事故が発生しましたが、あのような滑走路での誤侵入は少なくなく、報告書を見ると滑走路侵入の話は多く見られます。VOICEには、誰の責任なのか等が特定できないような形で情報が集まってきています。次のページお願いします。

データに関しては、先ほど少しドイツの例に触れましたが、1g規程というものがありまして、この後参考資料で記載していますが、かなり詳細に書いてあります。ドイツは、データの収集や開示等、使用目的をこのように道交法に規定しています。普通だと、メーカーが独自に取扱説明書等に書いておくのですが、それをすると民事訴訟が起きやすいという指摘がありました。ドイツの道交法1gは特徴的で、最新のものだと特に、資料一番下に記載のとおり、事故被害者もデータ開示請求ができます。先ほどの須田先生のお話でもありましたが、いろいろな配慮が必要ですので、そのようなことも含めて、今後日本ではどうするのかという議論になるかと思います。

以降、参考資料として見ていただければと思いますが、6ページ目に赤字で、ドイツで収集しなければならない情報が書いてあります。7ページ目では、誰がどのような状況で使えるかということで、大学や研究機関は使ってよいということが書いてあります。8ページ目の(7)は新しく付け加えられたものですが、第三者が請求できる権利が書かれています。9ページ目には中国の事例が書いてあります。先ほどDADC様からもありましたが、提供データとして、環境及び対応状況等が求められている点が興味深く、こういったことが現在議論されているというところであります。以上です。

小塚主査: ありがとうございました。データ共有の仕方について具体的に説明していただき、考えるところがありました。それではここから意見交換に進みたいと思います。前回は第1回ということもあり、全員の方に1回ずつご発言していただきましたが、今回は特にそのようなアレンジはしておりませんので、どなたからでもご発言を頂けたらと思います。Teams上で挙手ボタンを押していただくか、あるいはチャット機能でご発言の希望をお知らせいただければと思います。それでは最初に自工会の波多野様、よろしくお願いします。

波多野構成員: 指名ありがとうございます。はじめに、本日ご説明いただいた皆様、ありがとうございました。また、第2回の開催にあたり、事務局の皆様におかれては、非常に丁寧な意見交換等を準備していただき、感謝します。自工会からは、本日の論点に限った話で意見をお伝えします。各論点に対して3点、そして全体に対して1点あります。

まず、事故調査の仕組みに関してコメントします。事故解析と再発防止に向けた事故調査の体制や事故時のデータの取り扱いの仕組みを検討する事自体には、自工会としても賛同します。自動運転をはじめ、品質を向上させるという観点からも重要な取組と感じています。しかしながら、ものづくり側の自工会としては以下の点に配慮し、議論を整理したいです。まず一つ目は、事故時のデータの取り扱い、そして再発防止に向けた事故以外のデータという風にあえて言葉を変えて伝えますが、いわゆるヒヤリハットのデータに関しては、各データの利用目的と取得すべきデータの範囲、そしてその仕様、それから共有・保存のための技術的な手段を、誰のデータを誰が取得し、そして誰と共有するのかという点を含めた議論をし、あらかじめ明確にしたうえで取り組んでいただきたいと考えます。データの細かい話は後ほど話しますが、この点に是非配慮していただきたいです。続きまして、技術的に見通しが無い過度な情報取得を要件化することや、データオーナーの権利保護を超えた開示要請とならないルールの徹底が必要だと考えます。羽田空港の件で話題になっていますが、日本の現在の法律から考えますと、捜査機関への情報提供というのが直接的に証拠として採用され、訴追に繋がるような場合、必ずしも権利保護とはならず、事故分析は再発防止の観点からしても阻害要因となりえます。これは須田先生も言及されたこととつながります。製造側が無限のデータ収集と制限の無いデータの開示を求められますと、必要以上のコスト増加や許容困難なリスクが増えることで、普及拡大の制約となり得ます。このような点についても、是非慎重に取り扱っていただきたいです。

続いて、データの連携に関してですが、自動運転に関わるデータは、先ほど西成先生の仰ったとおり、様々な形態があります。単に利用・共有するということだけを論じていても、実際には社会実装に近づかないと考えます。自動運転に関して言うと、認知・判断・行動それぞれのステップにおいて、原因解析に必要なデータの種類や仕様は同じではありません。これについては、設計や製造側との継続的な協議の上で明確にしていくことが必須と考えます。例えばですが、認知の確からしさを考えますと、基準となるもの、もしくは比較対象となるデータと合わせた形での取得が必須です。単一のデータだけでは正誤が確かめられませんので、冗長性を担保した仕組みが必要になります。判断の確からしさになりますと、単純にセンサーといった外界の認知情報だけでなく、内部の演算データ、いわゆるどのようにプログラムが動いているかというところの記録も必要になり、場合によっては競争の源泉である機密情報の開示ということにもなりえますので、慎重な議論が必要だと考えます。また、車両挙動の中には、衝突波形のような非常に精密なデータがある一方で、データ全てが必ずしも事故調査に必要なわけではありませんので、記録範囲の明確化、そしてデータの寿命、いつこれを廃棄するかといったような議論も含めて明確にしていくことが必要と考えます。

3点目ですが、大内様ご紹介のデジタル全総や自動運転支援道等の取組に限らず、モビリティワーキンググループでも検討している各種施策と今回の論点との関係で申し上げますと、自工会としては一貫して、自動運転として、人・車・交通環境の三位一体の安全体制が必要だと考えます。しかしながら、それぞれが担う機能とそれに伴う責任分界を明確にしたうえで、手段の選択を含めそれらの基準を共有しなければ、なかなか公共的な活動には結びつかないだろうと想定します。達成手段はITSありきではなく、例えば交差点に右折信号を設置したり、歩車分離のタイミングを変えたりする等のアナログな対応でも、自動運転の安全性はかなりのレベルで向上することが分かっていますので、そういったことも視野に入れていただきたいです。そうなりますと、デジタルライフラインの全体像の中では、交通環境が担う責任と機能を明確にし、それに合致したデータの定義を議論したいと考えております。

最後に全体像の意見となりますが、本サブワーキングの進め方として、事務局をはじめ非常にご尽力いただいています。冒頭、須賀参事官からも言及がありましたが、非常に多くの論点と、非常に多くの有識者様からの意見があると理解しています。そのため、それぞれの論点に対し、各一回のサブワーキングで結論付けることは非常に困難と考えます。各論点を並行して議論して、十分な時間をかけた検討ができないかということを、自工会からご提案します。民事・刑事・行政、そして事故調査という四つの大きな論点があり、一方で、僭越ながら産業界からモノ作り側としてコメントできるのが私しかいないため、なるべく多くの議論をさせていただくためにも、議論の進め方を一考していただきたいです。自工会からは以上です。

小塚主査: ありがとうございました。今の発言、それから須田先生の説明にもありましたが、やはり情報収集といってもおそらく二つの局面があります。重大インシデントが起こってしまった場合の情報の集め方というミクロの視点と、ヒヤリハットも含めたマクロの視点で見た情報の収集・評価があるかと思います。そのようなことも踏まえて、皆様から意見を頂きたいと思います。こちらから見た順番で言いますと、次は損保協会の横田様かと思います。横田様、よろしくお願いします。

横田構成員: 保険会社は、実際に自動車保険あるいは自賠責保険の保険金の支払い実務を行っています。そのような中で事故の原因を把握していくことは非常に重要な要素です。レベル4の自動運転車による事故が発生した時の事故原因究明の仕組み、そのために必要な車両の走行データ、及びその周りの環境に関するデータを収集して見ていくことは日本損害保険協会としても関心の高いトピックスと考えています。

まず、運転者による手動運転の場合どのような形で損害調査を実施しているのかというと、事故現場の確認として車両の損害を見ています。それ以外にも運転者からのヒアリングが非常に重要で、それを踏まえて事故対応を実施しています。具体的には、例えば運転者がどのような運転をしていたのかということや、自動車がどのような動きをしていたのか、相手とどのようにぶつかったのか等を運転者にヒアリングし、保険の補償対象となるかどうかを判断しています。また、車対車の事故の場合は相手との過失割合を、車両単独の事故の場合は運転者の操作ミスなのかそれとも車に原因があるのかということを調査して、実際の保険金支払いの実務を行っています。ここまでが現行の普通の手動運転による実務ですが、今後システムが運行の主体となることによってどのようなことが起こるのか考えると、一つは、仮に運転者がいた場合においても、事故が起きた時、周辺状況を把握することにあまり意識が向いていないという可能性が考えられます。あるいは、無人で運転している場合において、今まで運転者にヒアリングをして事故調査していたところが難しくなってくるため、いろいろなデータの活用を通じて事故原因を究明したうえで、しかるべき対応を取っていくことが必要と考えています。もちろん、データを取得するにあたっては、データの利用目的やどのような範囲のデータが必要なのかということを今後決めていく必要があると考えています。最初は事故の件数が少なくても、自動運転社会になると件数が増加することが考えられるため、データのオープン化やデータの規格の標準化による事故原因調査のスピードアップも必要となってくると考えています。今後どのようにデータを扱っていけば良いのかということを皆様と議論したいと考えています。

小塚主査: 損保業界としてももちろん個別の事故に対する保険金支払いという場面もあれば、事故の抑止という形でマクロに見て保険を通じた安全な自動運転の世界を担保するという場面もあると考えています。そのようなことを踏まえての発言と理解しています。それでは次の方、お願いします。

髙橋構成員: 私は弁護士ですが、元々理系の大学の出身でして、どちらかというと理系の発想が強い人間です。そういった経験を多く持っており、医療過誤事件や、あるいは交通事故でもほとんど工学鑑定を必要とするような事件を中心に扱っています。そのような観点からすると、たしかに科学技術の発展は必要なことでありまして、それを阻害させることは国民にとって不利益になるという基本的なスタンスを持っています。そのような観点で見た時、西成先生の資料の2ページ目の自動運転車の重要データ例は非常に参考になりました。特に車や人がどのように動いたか、その5秒後にどう予測するかということは非常に重要なことと考えています。その理由は、人間が運転する時にどのように物事を判断するかというと、まず外界の情報を認識し、その情報を既に記憶されている過去の情報と照らし合わせて、それが何であるかを認知、判断して、次にその判断に基づいてどのように動いたら良いのかということを予測しています。そのような予測計算は基本的に人の場合、小脳が司っています。これと同じことが、自動運転でも必要になってきます。私の経験上交通事故が一番多いのは、一本道で交通整理の行われていない横断歩道上の事故、交通整理が行われている交差点の右左折時の横断歩道上の事故、交通整理の行われていない見通しの悪い交差点での事故などです。自動運転車が道路交通法を100%守ったら事故は起きません。そのくらい道路交通法は非常に精密にできています。ところが、現状自動運転が無い時にどうして事故が起きるのかというと、道路交通法を違反しているからです。一番の大きな事故原因は二つあり、一つ目はスピードの出しすぎです。二つ目は、前方左右注視義務違反ですが、それがどのようなところで起きるかというと、横断歩道と交差点です。横断歩道の手前で徐行したり、一時停止する車両は残念ながら欧州に比べると我が国では圧倒的に少ないです。一本道で横断歩道が手前にあり、そこに信号機が無い場合は、停止線の手前で止まれるような速度で動かないといけないのです。その理由としては、横断しようとする歩行者が物陰から急に横断を始めたとしても、その横断歩道の直前で急ブレーキをかけることなく、ごく自然に停止することによって、歩行者の保護の徹底を図るためです。つまり、横断歩道を横断する歩行者は、あくまでも車が急ブレーキをかけなくても止まれるような速度で近づいてくるであろうと信頼して良いという前提で道交法は作られています。そのため、自動運転車の場合も、横断歩道に人がいないことが明らかでない限り、停止線の手前で止まるような速度で走行する必要があります。ところで、人がいないことが明らかであるという判断は、自動運転の場合、もう少し技術を発展させないとその達成は無理だと考えています。前回も示したように、横断歩道の左側の歩道上に生垣が1mあると、80cmの小学生はそこに隠れてしまって見えないです。これを発見しようと思ったら、GPSを使って三次元で判断しなければなりません。最近でも生垣に子供が隠れてしまい、青信号を車が右折したところ、交差点の出口に設けられている横断歩道上で子供がはねられてしまったという事例がありました。このような事例は少なくありません。現時点で、自動運転車の技術がそこまで考慮されているのかというと、それは甚だ疑問と考えています。西成先生の言うとおり、安全性を重視すると効率が低下します。その典型例として、もし道路交通法を完全に守ったら、首都高速は大渋滞を起こします。首都高速は時速60kmが制限速度です。さらに、普通の高速道路も同様です。雨になったら制限速度は50kmになります。50kmになると小仏トンネルは100kmほど渋滞すると考えます。このように今の道路交通法を完全に守らせると、効率が低下しかねません。この問題も解決しなければなりません。一方、道路交通法を完全に遵守するという自動運転の仕組みにしないと、法律違反をする車両が大手を振って世の中を走行することについて国家がお墨付きを与えてしまうことになってしまいます。そうして事故が起きた時に、果たして刑事免責をして国民が納得するかというと、到底納得できないと考えています。これがまず第1点であります。

次に、須田先生の資料について指摘しておきたいのですが、記録の保持の重要性ですが、実は今のドライブレコーダーは非常に不完全です。今までに3件あったのですが、衝突時の映像だけが消えておりました。一番大事な衝突時の映像だけが前後数分にわたって消えてしまいます。運転者が故意に消したわけではなく、実際に警察官が直ちに押収していますが、このような不完全なことがなぜ起きるのかというのが技術的に解明されておりません。このままで自動運転化してしまうと、事故原因の究明は困難になります。

もう一つは、須田先生の海難審判所の件について、一部統合があり、ある程度運輸安全委員会で独立した委員会が設けられたことは非常に良いことと考えていますが、権限があまりにも弱すぎます。数年前に学生が13人死亡した軽井沢スキーバス転落事故がありましたが、被害者側の弁護団を私はやっており、刑事裁判にも被害者側で参加しています。つい最近、運行管理者と会社の社長に実刑判決が出ました。この時、同様に公益社団法人交通事故総合分析センターの事業用自動車事故調査委員会と長野県警の双方が調査を行いました。申し訳ないですが、この時の事業用自動車事故調査委員会の調査が不十分でした。これに対して警察は徹底しており、実際に現場で交通を止めて実証実験しています。その実験で事故原因が何であったのか解明されました。フィンガーコントロールトランスミッションの不慣れでありました。例えば私たちは5速から4速に、4速から3速にすぐ入れますが、このフィンガーコントロールトランスミッションというのは、5速から4速に入れた時に1秒か2秒待ってから3速に入れないと、物理的にはレバーは3速に入っているにもかかわらず、実際のギアはニュートラルになってしまうのです。これに運転者が不慣れだったのです。事業用自動車事故調査委員会では、基本的には当事者からヒアリングに基づいて調査をすることが多いようですが、事業用自動車事故調査委員会にも警察と同じ程度の強制的な調査権限を与えない限り、本当の事故原因は見出せないと思います。権限の強化を是非やってほしいと考えています。

もう一つは、波多野先生のおっしゃった、各論点を並行で議論して、十分な時間をかけた検討が必要という見解については、大賛成です。ここにはいろいろな問題があり、次回議論するかもしれませんが、刑事免責に関する被害者の保護という観点で議論する必要があります。さらに、データオーナーの権利保護ということも当然考えなければならないですが、同時に犯罪被害者の権利保護も考えないといけません。その調和をどのようにするのかということも考えなければならず、一方だけに偏ることはできません。しっかりと十分に時間をかけて議論する必要があると思っており、この6回の議論で結論を出すことを私はやめてほしいと思っています。

小塚主査: 髙橋先生のお話の中で、須田先生の資料について指摘がありましたが、須田先生は何かご意見はありますか。

須田構成員: 軽井沢の事故は運輸安全委員会ではなく、事業用自動車事故調査委員会という別の組織の案件であるため、そこは誤解されていたのかと思います。

髙橋構成員: そうでした。失礼いたしました。そこは訂正します。

須田構成員: 運輸安全委員会は鉄道と航空、及び船舶が対象ということで、自動車について事業用自動車事故調査報告委員会は別の仕組みで動いていると思います。

髙橋構成員: 別の組織ということですね。理解しました。

小塚主査: 今手を挙げられている中原先生、落合先生、及び本日欠席の稲谷先生から意見書や資料が出ていますので、事務局から案内してもらいたいと思います。この順序でお願いします。それでは、次の方、お願いします。

中原構成員: 3名の構成員に非常にわかりやすいプレゼンテーションをしていただき、誠にありがとうございました。情報共有といっても様々な目的があることと、情報自体が保持されていないということになると、事故原因の調査にも非常に支障が生じるということがよく分かりました。3名にそれぞれ質問したいと思いますが、元より私が民法の専門であり全くの門外漢であるため、認識等に誤りがあれば指摘していただきたいと思います。西成先生のドイツの法制度の条文を見たところ、情報共有することが複数の目的に繋がっているように思います。(4)から(7)の条文について、一つ目が行政機関による運転監視や義務の遵守の確認、二つ目が研究機関による安全研究、三つ目が(7)にある被害者による法的責任の追及です。そこで引用されている第七条第一項は保有者に対する民事責任の追及に関する条文と思いますが、被害者による法的責任追及のための情報取得ということで、これら全てに資するということを狙った制度であるというように理解しました。DADCの大内様のプレゼンテーションと比較すると、この制度は他の自動運転車メーカーによる事故防止のための開発にどのように役立つのか、あるいは全く別立て仕組みによって実現されるのかということについて伺いたいです。

DADCの大内様のプレゼンテーションに関して、収集したデータは法的責任追及の目的には利用しないことや、あるいは事故原因の特定は範囲外であるという話があり、事故原因を特定するのではなく、むしろその事故の未然防止を様々なデータを集めて実現するというイメージかと思います。その時に非常に多くの種類のデータを集めなければならなくなり、スライドの2ページに書かれていたように情報収集の対応やデータ提供を義務化するか、自発的に提供するということが非常に重要になってくると思います。どのようにして情報を収集することを戦略的に考えているのか詳しく伺いたいです。また、7ページにて行政機関や事故調査機関等に将来的に活用してもらいたいと記載がありますが、今考えている仕組みより目的が広がる気もしますが、具体的にどのようなことを考えているのか伺いたいです。

須田先生のプレゼンテーションに関しては、事故調査が法的責任の追及を目的とするものではないことを強調していらっしゃいましたが、今回は誘導員から同意が得られなかったことから思うことは、事故調査の報告書が公表されるということになれば、責任の問題もおのずと出てきてしまうと思いまして、事故調査と責任追及の調和について須田先生はどのような考えであるのか伺いたいです。

小塚主査: 発表いただいた一人一人に質問があったので、西成先生、大内様、須田先生の順序で答えていただけますでしょうか。

西成構成員: 質問ありがとうございます。ドイツの法律に関する質問と思いますが、ご理解のとおりと思います。私は法律の専門家ではないので、これを読むのに非常に苦労したのですが、(5)について見ると、どのような仕組みで共有するのか規定は無いのですが、事故防止や科学的研究のために、大学や研究機関、あるいは自治体等で、研究目的や公益目的としてデータを共有できると記載されており、私も非常に大きく踏み込んだ内容だと思っています。仕組み等は私も聞いておらず、これができたのが去年や一昨年といった新しい話のため、これから議論していくと思います。

大内氏: 1点目のどのように収集するのかということに関して、開発段階における現状の初期段階においては、自発的に収集していくものと考えています。航空機のように、事故の大きさによって提出を義務化するか、自発的な提出にするのかということを分けていくと考えています。

2点目の事故調査機関に目的が広がるということに関して、具体的にはこれから検討する部分ではありますが、運転者がいなくなり、証言する人がいない場合に対する一案として、環境モデル等、仮想空間上で事故を再現できるようなものをデータから作り上げて、共有していくことも考えられます。

須田構成員: 責任追及の場でないと言いながら、責任追及に使われてしまうという懸念があるということはおっしゃるとおりです。前回も言いましたが、長期的な視点でなんらかの免責のような制度があると良いと思っています。

小塚主査: ありがとうございました。それでは、落合先生、よろしくお願いします。

落合構成員: それぞれの先生から発表していただき、自動走行における調査や制度、運用も含めて大変参考になりました。1点目に、自工会から発表していただいた中で感じたことですが、例えば西成先生の発言において、協調領域として単純に一社だけでなく、複数社で安全対策を継続的に行えるようにすることについて、基本的な方向では良いと思いました。一方で発表の中で重要と思いましたのは、データガバナンスと呼ばれる、データの利用範囲や、取得、生成、利用の全てにおいて適切に設計した形で整備されていることが必要になると思われる点です。一定程度事前に合意した範囲を明確にしておくことが重要と思いました。DADCの発表にもありましたが、取得段階は任意にしつつ、徐々に提出を仰いでいくということでは、協力が難しいと思いました。そのような観点では、西成先生が説明されたドイツと同じにするか否かはさておき、最初の段階から何らかの形でデータを収集し、安全性向上のために業界の各社の中で利用できるようにしていくという設計を取っていくことが重要と思いました。データ共有の意義がどこになるのか少し考えたのですが、もちろん最終的な個別の事案の原因究明自体は図られなければ事案の解決にならないのですが、そこで収集される情報は捜査機関や運輸安全委員会に留まってしまうことが多いため、必ずしも業界内で情報連携されるということに繋がらない可能性があります。また、事故と直接関係ない範囲での情報連携のためでは、そのような強い権限が一般的に発動できないと思いますので、個別事案解明のための事故調査の限界を超えて、様々な情報から原因究明を図るためのデータ収集の2つの制度が必要と思いました。

続いて2点目に、髙橋先生や須田先生が議論されておりました個別の事故調査に関して、自動走行という技術も発展しており、西成先生のご発言のとおり毎週発表内容が変わりうる世界であるため、そのような観点で一定程度能力のある専門的な機関や専門家が、可能な限り関与した形が良いと思います。一方で、事故調査の権限については、データ共有と個別の事故調査の話は別でありますが、業界内でのデータ共有のためというのはあくまで任意かつ決まった範囲でなければならないと思います。任意というのは例えば法律で書かれている場合にはその範囲でということになるのですが、個別の事故調査の場合には特に制限が無く、基本的には捜査機関が収集できるというのが原則でして、強い権限を有します。このようなことを分けて議論していくことが必要と感じています。例えば、私も過去に別の業界で関わったものとして、電気通信事業法の事故検証会議では前者のような情報共有の性質がありますが、須田先生が運用についてお話されたようなものは個別の事案の解決や、場合によっては中間的なものもあったように思いますが、それぞれの性質を持つ委員会が既に他の制度も含めて併用されていると思うので、分けて議論していくのが適切と思いました。

3点目としては、波多野先生からお話のあった前提の状況をどのように考えるのかということについては、全くそのとおりと思います。実際にどこまでが責任分界点なのかを考えなければ、いろいろな物事の整理はできないと第一回の時から前提に置いておりました。例えば、デジタル全総等で道路に関する前提が議論されていますが、東名高速の一部区画等は立ち入り禁止にしてしまっても社会的に許容されると思いますし、その場合の自動車の責任はそのレーンから出ない限りは路面電車が軌道上を走っていると同じような考えになるか思います。そのような何らかの制限を付けた方が、今の時点では自動走行の安全性確保や社会的な予見可能性の向上に繋がる可能性があると思いました。更に深く理解したいところとして、須田先生や西成先生にお伺いしたいこととしては、一般的な自動車事故と自動走行の交通事故の違いが本質的にどこにあるのかです。また事故調査が科学的な見地で原因究明されていくこともあるかと思いますが、自動車だけではなく航空をはじめ、より高度な制度が整備されている場面と比較した際、自動走行はどのように位置づけられるのかという部分についてお伺いしたいです。

小塚主査: 大きな質問ですので他の意見も聞いたうえで両先生には回答していただきたいと思います。先にご欠席の稲谷先生からメモが入っており、事務局から紹介します。

事務局: 本日欠席の稲谷先生の意見書を代読します。2点意見を頂いています。1点目はデータ連携等についてです。安全性に関するデータについて、国が標準仕様を定め、ヒヤリハット情報を含めて関係者間で共有できる仕組みを技術的に整備することが重要であるという意見を頂いています。前回問題提起のあった安全性を確率的なものとして理解するのか、それとも人と同様の挙動をするものとして理解するのかという論点が制度設計の方向性やインセンティブ設計の在り方とも関連するため重要であるというご指摘を頂いています。

続いて、二つ目に調査に関するインセンティブ設計について意見を頂いています。先端科学技術のリスクに社会システム全体で対応していくためには、事故から学ぶための調査制度の整備が不可欠であります。事故に関連した企業が調査に関連するためのインセンティブ設計が不十分であると調査機関の制度的能力や人的・物的資本の限界の問題から、社会システム全体として自動運転車の安全性を向上させるために必要な情報を得ることができない可能性が生じうると指摘しています。したがって現行法によって十分なインセンティブを与えることができるのかについては、海外企業も事故調査の対象となりうることも念頭に置いて、十分な検討を行うべきであるという意見を頂いています。

小塚主査: これも非常に重要な指摘ですので、これも踏まえて議論したいと思います。髙橋先生、佐藤先生、後藤先生の順で発言をお願いできますでしょうか。それでは、次の方、よろしくお願いします。

髙橋構成員: 稲谷先生の意見書に対して意見を言います。データを隠蔽することなく真摯に提供するためのインセンティブ設計については、そのとおりと思います。ただ、人を動かすというか、本当のことを話してもらうためには、飴と鞭の両方が必要と思います。飴も当然必要です。ただ、インセンティブだけでは足りないと思います。鞭も必要です。そういった時にどのようなことを考えたら良いのかというと、一つの案として司法取引を活用することも選択肢の一つとは思います。ただ、あとで述べますように、被害感情を考えると慎重に検討する必要があります。実際に事故が起きた時になんらかの欠陥があった場合、技術の開発担当者に何か落ち度があった場合が多いと思います。そのような場合、技術の開発担当者に対しては司法取引で起訴猶予とする代わりに、技術開発担当者に支配的な権限を有している上司がいれば、その上司と組織の双方に刑罰を課するということも理論的にはありうることです。ただし、現状の日本の組織罰は非常に甘く、罰金も百万円や二百万円程度であります。そうではなく、諸外国のように売上や利益の何%という莫大な罰金を科す制裁をすることで、データを提供させることが可能になるのではないでしょうか。

2点目に、稲谷先生の意見書に記載の事故から学ぶための調査制度という表現がありますが、実際の事故から学ぶのは当然ですが、事故が起きないようにするにはどうすれば良いのかということを考えた時に、先程も言ったとおり道交法を100%守らせることになります。しかし、道交法は抽象的にしか書かれておらず、過去の刑事の裁判例が基準となることが多いです。見通しの悪い交差点で、交通整理が行われていない時には、一方の道路が他方の交差道路に対して優先道路か否かの判断基準は、他方の交差道路に対して1.5倍以下であれば優先道路に当たらず、2倍以上であれば優先道路に当たるという裁判例になっております。ところが、1.5倍から2倍の間では裁判例が非常に分かれてしまっています。このような刑事の裁判例について、AI等を使って集積しないと、適法な走行は実現できません。交通事故の被害者からすると、たしかに刑罰は科してほしいが、一番知りたいのはなぜ事故が起きたのかという事故原因です。ただ、だからと言って、事故原因の解明と引き換えに刑事免責を認めて良いとまで考えているわけではないので、その点はご留意いただきたいと思います。また、莫大な金額の組織罰とデータの収集も必要なことです。

小塚主査: どちらも非常に貴重な指摘と思います。それでは、次の方、お願いします。

佐藤構成員: データをどの範囲で収集するのかということは様々な議論がありうるのですが、幅広いデータを集めることが原因究明に資する面もあると思います。他方で、自工会の意見でもあったように、あまりにも過度な情報を収集するとなると、産業への負担になるという面もあります。ご紹介いただいた中国の事例の中では、例えば事故の90秒前のデータを保存しておく必要があると示されていましたが、果たして本当にそこまで必要なのか、過剰なデータの収集を求めていないかといった観点も、データの範囲の検討に当たっては必要だと思います。同様に、協調領域ではなく、各メーカーのノウハウ等が詰まったデータについても、その保存を義務付け、開示させていくというのはなかなか難しいのと感じました。現状国際的な議論を踏まえて、DSSADという自動運転に関するデータの記録装置の基準ができていますが、そこを超えて日本だけより詳細なデータの取得を求めていくということになると過剰な規制となり、ひいては非関税障壁となりうるという議論もあると思います。さらに、自動運転のレベルが上がっていくことに伴って、今のDSSADよりも更に詳細なデータを取るという議論が国連においてもしあるのであれば、それと歩調を合わせていく必要もあると思います。他方で、インシデント等の情報は協調領域の情報として収集を求めていくこと自体は可能でしょうし、それがひいては安全の向上等にも繋がりますので、積極的に求めていくことがよいのではないかと思います。以上のようなバランスに配慮した上で、データ収集の範囲は決定されていくべきと考えます。事故調査の観点では、皆様の発言のとおり運輸安全委員会のような十分な権限のある組織による調査で、その結果を公表することによって、更なる安全に役立てるという観点が非常に重要です。他方で、今の運輸安全委員会の立て付けとして、法律上証言等が強制され、それによって報告書ができ、それが公表され、その報告書自体が裁判等で用いられるという立て付けとなっていますが、それを自動運転に当てはめることが妥当であるのか、刑事免責の議論等もある中で、更に議論していく必要があると思います。

小塚主査: ありがとうございました。それでは、次の方、お願いします。

後藤構成員: 須田先生から指摘のあった事故調査に関する権限ということで、法律に基づく運輸安全委員会と異なり、自動運転の事故調査委員会や、先程の軽井沢の話もありましたが、今の事業用自動車の事故調査委員会というのは、ITARDAに委託するという形で、法令に基づくものとしては存在しておらず、何が調査できるのかということの根拠もはっきりしていないと聞いております。調査で得られた情報を刑事責任の追及に使って良いかというのは、もっと大きな問題だとは思いますが、権限を強化する必要があるという点については異論が無かったと今日の話を伺っていて感じています。

これをどういう立て付けにするのか、運輸安全委員会に組み込むのかという問題もあるかもしれませんが、それほど大きな制約は無いように思います。国土交通省において、もし何か難しい問題があるのであれば伺いたいと思います。例えば、運輸安全委員会の事故調査対象事項は列挙されていますが、交通事故全部がそれに入ってしまうとさすがに広すぎるということもあるかもしれません。やはり鉄道事故、航空事故、船舶事故に比べると件数が非常に多くなるかもしれませんので、調査対象の切り方については今後詰めていく話になると思います。

具体個別の事故の調査ということを超えて、より広くデータを収集して、それを役立てるというドイツの話は非常に興味深く聞いていたのですが、自工会からの指摘のとおり範囲が広すぎることや、刑事責任の追及にどのように繋がっていくのか分からないということになると、やはり事業者としてはなかなか慎重にならざるをえないという指摘ももっともと思いました。ドイツにてこういう立法が行われたということであれば、結論として出てきたドイツ道交法の1gがあるのは良いのですが、その過程でどのような議論がされ、ドイツの自動車メーカーはどういう観点から同意してこの法律ができあがったのか、という部分はしっかりと詰めて調査する必要があると感じました。

また、ドイツのメーカーがドイツではこれで良いとなったとして、日本にも将来ドイツで造られた自動車が入ってくるかもしれませんし、アメリカや中国からも入ってくるかもしれません。こういう外国メーカーが将来的には入ってくるということを考えた場合の調査の仕組みやデータの標準化という指摘が西成先生からもありました。とりあえず現状日本の中でやっていくということはそれで良いかもしれませんが、国際的に調和が取れなければ最終的にはどうしようもないような気もしています。そのため何もしないわけにはいかないと思いますが、どのように動いていくべきか、おそらく自動運転に関しては国連でも議論がされていると認識していますが、そのあたりがどのようになっているのかということを、本日でなくても構いませんので、情報提供してもらいたいと思いました。

最後に、自工会の総論として指摘していただいた今後の進め方について、私も今後数か月でどのように結論が出るのかということを心許なく思っております。事務局から方向性の案が出てきて、それを叩く形で検討することを避けているのは、今の段階から方向性を定めないためには非常に結構なことと思います。他方で、あと5か月で本当に結論が出るのかというと分からない気がしています。直前に次はこれをやりますというテーマを提示してもらっていますが、今後どのように議論していく予定なのかというロードマップのようなものを示してもらえると、直前の数日間で考えるよりはもう少し深い議論ができるという気もしていますので、非常にご尽力して頂いているとは思いますが、その点も検討してもらいたいです。

小塚主査: 組織の権限という話について、現行法でいえば運輸安全委員会に自動運転車に関する調査の権限が無いということについて答えにくい部分もあると思いますが、事務局として意見はありますか。

事務局: 運輸安全委員会は法律に基づき航空、鉄道、船に関して発生した事故調査の法的権限を持っている組織です。また、事業用自動車事故調査委員会、そして自動運転事故調査委員会というものが別途ITARDAに設置されています。経緯としては、運輸安全委員会は航空や鉄道等に関して発生した事故調査の対応をしていますが、自動車事故に関する専門家がいない一方、ITARDAにはそういった知見や経験もあったため、お願いしてきたと承知しています。運輸安全委員会が行うのが良いのかどうかについては、この場で答えられないのですが、事故調査委員会の権限が現状の形で必要十分なのかどうかという議論をしていただいていると承知しています。その上で、法的バックグラウンドが存在する自動運転車の事故調査にならないと良くないという議論があった時には、その法的権限を誰に持たせるかという議論になると承知しています。今まで議論していただいた運輸安全委員会や、他の機関であるかもしれませんが、そのような順序で議論していただけると大変ありがたいと思っています。

小塚主査: 非常にクリアな回答と思います。進め方についても何人かから意見があったのですが、当然いろいろな利害関係者と丁寧に対話していく必要があるということと、このサブワーキンググループ自体は非常に限られた回数かつ毎回事務局が苦労して準備しており、この先どうしていったら良いかということについて、事務局から意見や提案はありますか。

事務局: なぜ日本では無人の自動運転の車に乗れないのかという要請を頂いており、早くその実装の世界に行けという期待と、それには必要ないくつかの環境整備があるという中で、可能な限り丁寧な議論を心がけてきました。今後の進め方としては、データを使ってどのようにマクロやミクロでフィードバックのループを回していくのかということについて議論していただきますが、この後、月一回のペースで開催し、刑事、民事、行政という論点にて一通り深ぼりの議論をしたいと思います。その間も中間取り纏めになるかもしれませんが、別途専門家に集まっていただく等のやりとりを行い、事務的に詰めていく作業を並行して進めたいと考えています。自工会や髙橋先生等もっと丁寧に議論を深ぼりしたいという意見もありましたので、並行して進めながら、最終的には事務局から今までの議論を踏まえてこういった形でどうかというような提案を出し、最後に議論していただきたいと考えています。毎回日程調整も含めて、大変急な中お付き合いしていただきありがたいと思っていますが、ますますしっかりと丁寧にやっていきたいと思いますので、ご協力をお願いします。それでは、落合先生からお手が挙がっているので、よろしくお願いします。

落合構成員: 稲谷先生のペーパーを踏まえて、海外の事業者との関係では制度化をされておらず、任意の要請をするとなかなか応じてもらえないという場合もありうると思います。特にIT企業も部分的には情報を持っている主体に入りうるところですし、海外のIT企業等も含めて仮に情報を取っていく可能性があるとすれば一定の範囲で制度等に定めておくということ自体も考えないと、むしろ日本企業だけ出していて海外企業は出さないという状態となってしまい、不均衡となる懸念が生じると思いました。ただし、どのような形であれば実効性が確保できるのかということを考えていくのは非常に重要であると思っています。日本企業だけ従っているというのは健全な形ではないと思います。

また、もう1点として、事故調査のインセンティブの話ですが、髙橋先生のご意見は実は稲谷先生のご意見と近い部分もあると思いました。例えば事故調査やそのようなものに関連してどのような形で協力していくのかということを将来的には定めていく可能性もありますし、制裁金の話もありましたが、法人制裁の論点もあったと思いますので、そのような制裁制度と適切に協力した場合の一定の減免や髙橋先生の言う司法取引と稲谷先生のDPAのご意見は広い意味では近いと思って聞いておりました。

小塚主査: ありがとうございました。髙橋先生からお手が挙がったので、よろしくお願いします。

髙橋構成員: 先程議論の出たところで、航空事故や海難事故を主とする運輸安全委員会や、あとは軽井沢スキーバスの場合には別の委員会でしたが、やはり自動運転に関する事故調査委員会を別途設けることが重要であると思います。実際かなりの科学的、技術的な知識が必要だからです。警察庁に対して何か言うつもりはないですが、果たして警察や法機関にそれを実施するだけの能力があるのかと思っています。かなり専門的な知識が必要なため、自動運転に関する事故調査委員会を科学技術者あるいは警察庁、法務省、犯罪被害者もメンバーに入れて、新たに作る必要があると思います。実際に、医療事故に関してはそのような方向で進んでいます。医療過誤訴訟がこの二十年間で随分発展してきておりまして、最高裁での判例も多く出たこともあり、病院のなかで危機感を感じています。大体の大きな病院の中では調査委員会が作られています。その結果がやはりある程度民事や刑事の責任でも使われています。事故調査委員会のデータをどこまで刑事事件あるいは民事事件で使うかという議論があるかもしれませんが、全く使わないという方向性は無く、ある程度使う必要があると思っています。

次に、先程のインセンティブと組織罰の話についてですが、科学技術の発展を考えれば一つの方法だと考えています。組織罰に関しても百万円や二百万円ではなく、アメリカのように何百億円や何千億円と出せば、かなり良い制裁になって、データを提供しようというきっかけになると思います。他方、日本の場合は民事における制裁的な賠償金というのは裁判例で認められておりません。実際に原告が制裁的な違約金で賠償請求してもことごとく却下されています。そのため、少なくとも民事では、法整備しない限りは制裁的な違約金は無理だと思っています。一方、刑事の組織罰で何千億円を科せばそれで被害者が納得するかというと、これも非常に難しいです。技術の開発担当者に重過失、あるいは故意があった場合にまで刑事免責するというのは被害感情として困難です。これは、反対に言えば、通常の過失があったときは刑事免責を認めるということになりますが、これも、被害感情を考えるとやはり難しいのではないでしょうか。そのあたりの折り合いを調整していかなければならないと思っています。

小塚主査: ありがとうございます。本日いろいろな意見を頂きましたが、全体として、安全性に関するデータを社会全体で共有して事故を無くしていくという方向性自体については、競争領域ではなく協調領域であるという話もあり、異論は無かったと聞いておりました。ただし、そこをどのように実装していくのかという大問題があります。一方には技術的な問題があり、どのような情報をどのような形で、どのようにフォーマット化し、どのようなプラットフォームに載せていくのかというようなプレゼンを本日は頂きました。先生方の話はまさにそこに関わることで、途中で事務局も触れましたが、関係者との間で丁寧に対話し、詰められるところは詰めていくという作業が必要と感じました。他方で組織の権限の問題や、罰も含めたインセンティブについて、当事者の行動をどのようにコントロールしているのかということは、自動運転だけに特化して動かせるのかという問題もあります。髙橋先生の二度目の発言について、裁判例の共有というのは民事の判決はオープン化して共有していこうという議論がなされており、これは実現すると思うのですが、刑事の裁判例は更にその先という別の大きな議論になり、これについてはこのサブワーキングではできるとしても問題提起になると思いますが、そのような大きな問題を通じてより安全な自動運転の世界を作ることも重要ですので、できる問題提起はしていく必要があると感じています。事務局においても、いろいろな論点や意見を取り纏めていただきたく思います。

最後に何人かの先生方の発言にもありましたが、日本国内に閉じた、あるいは日本メーカーだけの問題にはならないと思っています。日本メーカーも海外に出ていきますし、日本国内にも海外のメーカーの自動運転車は入ってくると思いますので、そのような視点も忘れず持っていたいと感じた次第です。そろそろ時間ですので、最後にデジタル庁の蓮井審議官から本日の総括をお願いしたいと思います。蓮井審議官、お願いできますでしょうか。

蓮井審議官: ありがとうございます。本当に本日もお忙しいところお集まりいただき、会議についても直前案内したうえ、いろいろな資料も頂き、ありがとうございます。まさに今日、事故調査、情報共有、データ連携に関する現行制度の課題や方向性について、先生方のプレゼンをはじめ、様々な意見を頂きました。事故調査に関して、須田先生をはじめ皆様方からも迅速かつ実効性のある原因究明のため、法的調査権限を有する中立な組織が必要というような指摘を頂いたという認識です。やはり権限を強化すべきであると髙橋先生からもありましたとおり、自動運転のための調査機関を作るべきであるといった非常に重要な指摘を頂きました。このような指摘を踏まえ、先程事務局からお話ししたとおり、関係省庁と今後連携し、更に一層検討を深ぼりたいと思います。併せて、軽微な事故やヒヤリハットを含めたマクロのインシデントの検証を強化するためのデータ連携に関しても、DADCの大内様や西成先生をはじめとする皆様からの様々な意見を頂きました。情報やデータの利用目的に応じて必要な情報、データの項目をどう特定し、それを必要な人にどのように共有するかといったことが重要という指摘かと思います。これを踏まえた報告、共有の在り方を検討していきたいと思いますし、さらに、海外の目線として、特にデータが国境を超えるというのはまさに常識化、常態化しているため、このような点を踏まえ、会議の進め方も重要と考えています。先程事務局からもあったとおり、丁寧に深ぼった議論を、関係者の皆様や先生、関係省庁のみならず、引き続きご支援を頂きながら重ねたいと思っています。今回議論いただいた点を含めたテーマにつきまして、先生方の意見を踏まえ6月に取り纏めていきたいと思いますので、引き続き先生方には様々な知見を頂くべく、お力添えいただきたいと思います。本日はありがとうございました。

小塚主査: ありがとうございました。それではこちらで閉会したいと思います。以降、追加のご意見等ございましたら、今週末までに事務局に頂ければと思います。また、本日の会議資料は後日デジタル庁のホームページにて公表いたします。議事録については、前回と同様に構成員の先生方に内容を確認していただいた後、同じくデジタル庁のホームページで公表したいと思いますので、ご協力をお願いいたします。次回のサブワーキンググループは2月27日を予定しております。議題については現在検討中でございまして、先生方にはまたご負担をかけるかもしれませんが、よろしくお願いいたします。それでは、第2回AI時代における自動運転車の社会的ルールの在り方検討サブワーキンググループをこれにて閉会とします。お忙しい中、ご参加いただきありがとうございました。