文化審議会著作権分科会基本政策小委員会(第4回)

日時:令和3年1月26日(火)

13:00~15:00

場所:AP虎ノ門 D室

議事

  1. 開会
  2. 議事
    • (1)放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化に関する報告書(案)について
    • (2)著作権行政をめぐる主な動向について(報告)
    • (3)令和2年度基本政策小委員会の審議の経過等について
    • (4)その他
  3. 閉会

配布資料

資料1-1
「放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化に関する中間まとめ」に関する意見募集の結果について(758KB)
資料1-2
放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化に関する報告書(案)の概要(2.2MB)
資料1-3
放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化に関する報告書(案)(798.6KB)
資料2-1
平成30年著作権法改正による「授業目的公衆送信補償金制度」の本格実施について(728.6KB)
資料2-2
令和2年著作権法改正による「侵害コンテンツのダウンロード違法化」の施行及び普及啓発等について(1.9MB)
資料3
令和2年度基本政策小委員会の審議の経過等について(案)(291.9KB)

議事内容

【末吉主査】ただいまから,文化審議会著作権分科会基本政策小委員会,第4回を開催いたします。

本日は御多忙の中,御出席いただきまして誠にありがとうございます。

本日は,新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため,基本的に委員の皆様にはウェブ会議システムを利用して御参加いただいております。

また,議事1に関して,同時配信等ワーキングチームの委員の皆様,総務省情報流通行政局情報通信作品振興課の三島課長,放送事業者を代表して,NHK知財センター著作権契約部長の広石様,テレビ東京ホールディングス法務統括局番組契約部長の丸田様にも陪席をいただいております。

皆様におかれましては,ビデオカメラをオンにしていただくとともに,御発言をいただく際には御自分でミュートを解除して御発言をいただくか,事務局でミュートを解除いたしますので,ビデオの前で大きく手を挙げてください。

議事に入る前に,本日の会議の公開につきまして確認いたします。

予定されている議事の内容を参照しますと,特段,非公開とするには及ばないと思われますので,既に傍聴者の方々には入場していただいているところですが,特に御異議はございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【末吉主査】ありがとうございます。では,本日の議事は公開ということで,傍聴者の方々にはそのまま傍聴をいただくことといたします。

傍聴される方々におかれましては,会議の様子を録音・録画することは御遠慮くださいますようお願いいたします。

本日は,三谷文部科学大臣政務官に御出席をいただいております。三谷政務官から一言御挨拶をお願いいたします。

【三谷文部科学大臣政務官】皆さん,こんにちは。文部科学大臣政務官の三谷英弘と申します。著作権分科会基本政策小委員会,第4回の開催に当たりまして,一言御挨拶を申し上げます。

本会議には,政務官就任以来,数度にわたりまして出席をさせていただいておりますが,委員の皆様方におかれましては,これまで同時配信等の円滑化をはじめ,様々な課題につきまして,闊達かつ貴重な御意見をいただいております。誠にありがとうございます。

同時配信等の円滑化に関しましては,昨年12月に取りまとめいただきました中間まとめについてパブリックコメントを実施させていただいております。本日は,その結果を踏まえまして,最終的な取りまとめに向けた御議論をいただければと考えております。

また本日は,授業目的公衆送信補償金制度の本格実施など,著作権行政をめぐる様々な動向についても,文化庁のほうから御報告をさせていただきます。国民,事業者,クリエーターの全てにとって望ましい著作権制度政策の構築に向けまして,それぞれ御専門の立場から,引き続き貴重な御意見をいただければと存じております。何とぞよろしくお願い申し上げます。

私からは以上です。

【末吉主査】ありがとうございました。

それでは,事務局より配付資料の確認をお願いいたします。

【大野著作権課長補佐】それでは,お手元の議事次第に記載の配付資料の一覧を御覧いただきたいと思います。

まず資料1-1が,小委員会の中間まとめに関する意見募集の結果をまとめた資料でございます。

また,資料1-2が小委員会報告書案の概要,1-3が報告書の本体となっております。

また,資料2-1としまして,授業目的公衆送信補償金制度の本格実施に関する資料,資料2-2としまして,侵害コンテンツのダウンロード違法化の施行・普及啓発等に関する資料をお配りしております。最後の資料3は,本年度の本小委員会における審議の経過等についての案でございます。

不足などございましたらお伝えいただければと思います。

【末吉主査】それでは議事に入りますが,初めに,議事の進め方について確認をしておきたいと思います。

本日の議事は,1,放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化に関する報告書(案)について。2,著作権行政をめぐる主な動向について(報告)。3,令和2年度基本政策小委員会の審議の経過等について。4,その他の4点となります。

早速議事に入りたいと思います。議題1,放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化に関する報告書(案)についてです。

本件につきましては,前回の小委員会で中間まとめを取りまとめ,その後パブリックコメントを行っていただきました。その結果を踏まえ,事務局において報告書案を作成いただいておりますので,まずは事務局から,パブリックコメントの結果概要と報告書案について説明をお願いします。

【大野著作権課長補佐】ありがとうございます。それでは,まず資料1-1を御用意いただければと思います。小委員会でまとめていただいた中間まとめに関する意見募集の結果概要について御説明をいたします。

まず,1ポツにありますように,昨年の12月15日から今年の1月6日まで意見募集を実施しまして,2ポツにあるように,合計33件の御意見をいただいております。いただいた御意見を事務局で分類・整理した内容が,3ポツの部分でございます。大部になっておりますので,全体の傾向と特徴的な御意見を簡単に御紹介させていただければと思います。

まず(1)総論の1ポツ,基本方針に関する御意見でございます。主に放送事業者から,同時配信等が視聴者の利便性向上などの観点から重要な取組であり,今回の制度改正の方向性に基本的に賛成する旨の御意見を複数いただいております。また,その中では,クリエーターに対する対価還元の重要性を理解するという趣旨の内容もございます。

2ページに参りまして,真ん中より少し上の辺りから,権利者に対する適切な対価還元,適切な権利保護を求める意見を列挙しております。権利者団体を中心に,制度改正の基本的な内容には賛成しつつ,それに伴って適切にクリエーターに対価が支払われるようにしていただきたいという趣旨の御意見がございました。

次に3ページに参りまして,真ん中より少し上の辺りから,当事者間のライセンス契約等による対応を求める意見というものを記載しております。様々ありますが,制度改正を行わずともライセンス契約によって著作物利用の円滑化は進められるのではないかという御趣旨の御意見でございます。

4ページに参りまして,上の辺り,その他の意見としまして,諸外国の制度などと十分比較をした上で制度化を図るべきという御意見がございました。また,その他の意見の一番下でございますが,放送の同時配信に限らず,いわゆるウェブキャスティングの権利処理の円滑化を含めて,全体として議論する必要があるという御意見もございました。

次に2ポツ,課題の整理及び検討の進め方などについてでございます。こちらも,放送事業者を中心に賛成する御意見をいただいております。

また,5ページの1つ目の丸ですが,基本的に賛成しつつ,当事者間での協議・対応を進めるべき事項については,協議が難航する場合には文化庁・総務省などの調整を期待するという御意見もございました。

それから,真ん中辺りにありますが,権利者保護が不十分なのではないかという趣旨の御意見や,制度改正後も継続的にフォローアップをして必要に応じてさらに措置を行うことを期待する御意見などもございました。

6ページに参りまして,3ポツからが制度改正の内容に関する御意見でございます。

まず総論として,対象とするサービスの範囲についての意見を記載しております。ここでは,方向性に賛成する御意見として,中間まとめに示したように,同時配信・追っかけ配信,一定期間の見逃し配信を対象にすることを要望するという御意見がございました。

一方で,その下に記載のように,慎重な検討を求める意見として,権利者団体から,追っかけ配信・見逃し配信について,対象とすべきでないという意見や,同一には扱えないので区分して慎重に検討すべきという趣旨の御意見が一部ございました。

また,7ページの2つ目の丸に代表されますが,見逃し配信の期間を長くしたり,仮に有料サービスを実施したりという形で同時配信等での利用が高まるのであれば,それに応じた利用料の加算がされるべきという御意見もございました。

それから,各論の丸1,配信のタイミング・期間に関しましては,放送事業者から,見逃しの期間について1か月程度まで認めることを要望するという御意見があった一方で,権利者団体からは,過度な期間の拡大は避けるべきという趣旨の御意見もございました。

放送対象地域との関係につきましては,放送対象地域にかかわらず配信を可能とすることを要望するという御意見と,その点を加味しつつ使用料の検討をしないといけないという御意見がございました。

8ページに参りまして,丸3,放送で流す番組との差異に関しましては,CMの差し替えを可能とすることを要望するという御意見と,必要最小限の変更を認めるという点に関しまして,想定外の原因で蓋かぶせが避けられないことも考えられるため,放送事業者に一定の裁量を認めていただきたいという御意見もございました。

それから丸4の配信形態は,中間まとめのとおり,ストリーミング形式を支持する御意見,それから丸5の実施主体に関しましても,放送事業者が主体的に実施しているものについてはプラットフォームを問わず対象にするということを支持する御意見がございました。

それから,下の辺り,丸6の視聴者からの対価徴収に関しましては,放送事業者から,広告型無料配信・有料配信を含めて,多様かつ柔軟なサービスの可能性を担保してほしいという御意見がございました。一方で権利者団体からは,無料サービスと有料サービスでは使用料算定の根拠も大きく変わるため,有料サービスを行うなら適切な使用料が支払われるべきという趣旨の御意見がございました。

9ページに参りまして,丸7のラジオ,衛星放送・有線放送等の扱いでございます。放送事業者からは,こういったサービスも地上波テレビ放送と同様に対象とすることを求める御意見がございました。一方で権利者団体からは,これらのサービスが地上波テレビ放送とは一定の差異を有することを御指摘する意見もございました。

10ページに参りまして,各論でございます。

まず(1)現行権利制限規定の同時配信等への適用拡大については,中間まとめの方向性に賛成する意見がございました。一方で,真ん中辺りから,対象とするサービスの範囲に関する御意見として,追っかけ配信・見逃し配信については適用拡大すべきではないとの意見も一部ございました。

それから,38条3項については個別に幾つか意見をいただいていまして,放送事業者などからは,見逃し配信まで対象に含めるように検討してほしいという御意見や,11ページの1つ目の丸にありますように,追っかけ配信まで拡大しても権利者に与える不利益は大きくないのではないかという御指摘などがございました。

一方で2つ目の丸,3つ目の丸は同趣旨の意見かと思いますが,特に38条3項後段については,現行規定自体の問題があるのではないかという問題意識の下,その規定の在り方について検討の場を設けるべきという御意見がございました。

下のほうに行きまして,丸3,39条1項につきましては,基本的に中間まとめの方向性に賛成する御意見だと理解していますが,新聞の取扱いなどについての御意見がございました。

12ページに参りまして,丸5,第44条(一時的固定)に関しましては,放送事業者から有効な制度改正であるという御意見があった一方で,権利者団体からは,集中管理との関係について慎重に検討してほしいという御意見も一部ございました。

次に(2),借用素材などの著作物,映像実演に関する許諾推定規定に関する御意見でございます。

まず丸1,基本的な考え方として,方向性に賛成する御意見が放送事業者を中心に複数ございました。

一方で,13ページの真ん中より少し下の辺りから,当初の契約で処理が可能ではないかという問題意識の下,許諾推定規定の必要性を疑問視する意見や,許諾推定規定が設けられることで権利者保護がないがしろにならないよう配慮を求める意見,慎重な検討を求める意見も,権利者団体を中心に示されているところでございます。

また,15ページに参りまして,下の辺りに,その他の意見と記載しておりますが,放送番組の二次利用に関しては,許諾推定規定がない現状においても,十分な説明がないまま実演家の権利が買い取られるという事案も少なくないことから,今回の議論を契機に,そもそもの適正な権利処理の徹底を期待するという御意見もございました。

丸2の許諾推定規定の制度設計・運用等に関しましても,賛成する御意見があった一方で,権利者保護への配慮を求める意見も権利者団体から複数ございました。

16ページの2つ目の丸辺りですが,特に追っかけ配信・見逃し配信まで推定を及ぼすことについては法制的な精査を十分に行ってほしいという御意見や,次の丸にありますように,運用を明確にするためのガイドラインなどの取組が制度の運用開始前に確立されることが必要十分条件であるという御指摘がございました。

また,その下の丸の下から3行辺りですが,配信利用料をいたずらに低く想定して許諾推定が強行されることのないよう,権利者保護に十分配慮すべきという趣旨の御意見などもございました。

17ページに参りまして,下の半分辺りから,ガイドラインの策定に関する意見を列挙しております。

まず,放送事業者による安定的な運用,ローカル局の事情にも配慮したルールづくりを期待する御意見がございました。また,一番下の丸ですが,権利者自身が同時配信等の許諾権限を持っているかどうか不明な場合などを含めて,ガイドラインの中で取扱いを明確にすべきという御意見もございました。

18ページの上の辺り,その他の意見といたしまして,権利処理を放送事業者本体ではなくて番組制作会社に任せる場合には,明確かつ簡便なマニュアルを提示するなど,放送事業者本体が責任を持って対応してほしいという御意見なども一部ございました。

それから(3)レコード・レコード実演の利用円滑化についてでございます。

丸1,基本的な考え方としまして,集中管理などがされていない,いわゆる被アクセス困難者に限って措置を行うことを支持する御意見などが複数ございました。

一方で,19ページの上の辺りですが,そもそも集中管理が進んでいるため制度改正自体が必要なのか十分に検証すべきという御意見や,管理事業者に権利を委託していないことのみをもって権利制限の対象とはすべきでない,外国権利者については特に慎重であるべきという御意見もございました。

それから,下の辺りの丸2から,補償金スキームに関する意見を記載しております。これも方向性に賛成する御意見や,関係者にとって使い勝手のよい合理的な制度にしてほしいといった趣旨の御意見がございました。

20ページに参りまして,補償金スキームにつきまして,真ん中辺りから,権利者保護への配慮,慎重な検討を求める意見を記載しております。被アクセス困難者がどの程度存在するのか,また一元的な窓口を担う団体の担うべき業務の内容など,いろいろ詰めないといけない点があるため,総合的に議論を進めるべきという趣旨の指摘がありました。

21ページに参りまして,(4)リピート放送の同時配信等における映像実演の利用円滑化でございます。これも基本的な考え方として賛成する御意見と,そもそもの制度改正の必要性から慎重な検討を求める意見などもございました。裁定制度の改善により対応すべきという御意見も示されております。

22ページに参りまして,この点に関するその他の意見としまして,現状でリピート放送については報酬請求権となっているところ,一部,その通知や報酬の支払いが適切になされているか分からない状況があるということで,今回の制度的手当を契機として,現状のリピート放送の報酬請求権の扱いについても見直す場が設定されるように要望するという御意見もございました。

それから,この映像実演に関する丸2,補償金スキームに関しましても,レコードと同様,方向性に賛成しつつ,使い勝手のよい合理的な簡便な制度にしてほしいという御意見が複数示されております。

また,23ページの上から2つ目,これも先ほどレコードのところであった意見と同様かと思いますが,権利者保護が適切に図られるかどうかという観点で,運用面についてのガイドラインなどの取組について,新たな制度開始前にしっかりと整えることが必要十分条件であるという御指摘がございました。

それから真ん中辺りから,(5)裁定制度の改善についての意見でございます。

丸1の,協議不調の場合の裁定を同時配信等に拡充することについては,基本的に賛成するという御意見のみでございました。

丸2の権利者不明の場合の裁定については,基本的な方向性に賛成する御意見と,各論の意見が幾つかございました。まず24ページの上から3つ目の丸からになりますが,補償金の事前供託免除の拡大に関しましては,1つ目の丸では,財務健全性の基準は厳しい設定とせずに幅広い民放事業者が適用を受けられるようにしてほしいという御要望がありました。

一方で,その次の丸からは,民間企業と同様,民放については経営破綻・破産の危険性が存在するということを踏まえて慎重に検討すべきという趣旨の御意見などもございました。また,このページの一番下ですが,「相当な努力」の要件緩和について,中間まとめの方向性を支持する御意見もございました。

また,25ページに参りまして,申請手続の電子化,それから丸3の裁定に係る事務処理の迅速化,これらについても賛成する御意見が示されたところでございます。

最後に(6)でその他の御意見を書いておりますが,今回の議論が,裁定制度の改革など放送分野以外にも波及する非常に意義のある議論であるという御指摘や,制度改正などについての手続を可能な限り簡便にすべき,また政省令ガイドラインについて可能な限り明確かつ具体的な指標を示すことを求めるといった御意見がございました。

26ページに参りまして,1つ目の丸では,冒頭でも同様の意見がありましたが,同時配信等のような新たな利用態様が加わるのであれば,その分の許諾料が加算されるのが当然であるという御指摘や,権利処理を円滑化するためには放送事業者側の権利処理体制の拡充も必要であろうという御指摘もございました。

また下から2つ目の丸,これも先ほど同趣旨の意見がありましたが,放送番組を利用しない,いわゆるウェブキャスティングについても速やかな検討を希望するという御意見がございました。

簡単でございますが,資料1-1は以上でございます。

続いて報告書案について御説明をいたします。資料1-2が概要,1-3が本体になっておりますが,概要レベルではあまり修正点がありませんので,資料1-3に基づきまして,中間まとめから修正・追記を行った点を御紹介したいと思います。資料1-3の赤字部分が,追記・修正点でございます。

まず,冒頭の5行目辺りから,「速やかに法整備等の対応を進める」と記載していた部分に関しまして,当然ではありますが,関連条約との整合性を確保するという旨を明記しております。また,法整備等の対応を進めた上で,著作権法の規定やガイドラインなどを遵守した適切な運用がなされるよう,丁寧に周知・普及・啓発をしていくことを期待するという記載も追加しております。

また,1ポツ,基本方針に関しましては,3つ目の丸に若干の追記を行っております。

もともと,放送事業者からクリエーターに対して適切な対価が支払われることが重要である旨を記載しておりましたが,その対価の水準について,「配信サービスの実態等に応じた」という記載を追加させていただいております。

2ページに参りまして,枠囲いの(2)のところ,細かい表現ですが,もともと「借用素材を含む著作物」としておりましたが,あくまで借用素材は例示として挙げているものでございまして,中に借用素材が入り込んだ特殊な著作物の話をしているわけではありませんので,誤解のないよう「借用素材などの著作物」と表現を改めております。

それから,下から2つ目の丸のところで,当事者間での協議・対応について記載をしておりましたが,総務省・文化庁の関与を期待する御意見もありましたので,その旨を明記しております。

3ページに参りまして,一番上の米印でございます。権利者団体からのパブリックコメントの意見の中で,権利処理を円滑化するためには放送事業者側の権利処理体制を充実させるべき,また,番組制作会社に委ねる場合には明確かつ簡便なマニュアルを提示するなど責任を持った対応を行うべきという御意見もありましたので,その点にも留意が必要である旨,記載をしております。

次に3ページの一番下の部分でございます。対象とするサービスの範囲と関連しまして,権利者に支払われるべき対価について,放送事業者が実施するサービスの範囲,見逃し配信の期間等を勘案して,交渉によって決められるものという記載を追加しております。

4ページに参りまして,丸7,ラジオ,衛星放送・有線放送等の取扱いに関しまして,地上波テレビと同様に取り扱ってほしいという御意向が関係事業者からも示されておりましたので,その旨を追記しております。

また,5ページに参りまして,上から2つ目のポツにおきましては,こうしたサービスについては,音楽配信ビジネスとバッティングする部分などを除外するということを示しておりましたが,特定のサービスを対象から除外する際には,後ほどの(1)から(5)までの措置を全て一律に対象外にするのではなくて,特に権利者にとって不利益になる一部の措置に限って対象外とするといった,きめ細かな対応を行うこともあり得るかと思いますので,その旨を確認的に記載しております。

次に6ページに参りまして,上から2つ目のポツでございます。ここでは,38条3項に関しまして,権利者団体からの御指摘を受けて,今回の議論とは切り離して別途38条3項自体の在り方を検討するという記載をしておりました。検討に当たりましては,諸外国における制度等も踏まえながら丁寧な検討が必要にあると思いますので,「諸外国における制度を踏まえながら」という点を追記しております。

7ページに参りまして,(2)に関しては先ほどのとおり,「借用素材などの」というふうに表現を修正しております。

9ページに参りまして,丸2,許諾推定規定の制度設計・運用等の2つ目の丸について,若干記載を追記しております。

まずガイドラインにつきましては,権利者・放送事業者の双方が安心して契約を締結できるようにする必要があるかと思いますので,その旨を確認的に追記しております。

また,パブリックコメントでは,権利者が同時配信等の許諾権限を有しているか不明な場合などの取扱いも含めて,ガイドラインで定めるべきという御意見がありましたので,その例示を追加しております。

また,最後の4行では,権利者団体から,現状においても十分な説明がないまま権利が買い取られる事例があるという御指摘もありましたので,そういった点にも留意する必要がある旨,記載をしております。

次にページが飛びますが,12ページでございます。(4)映像実演の利用円滑化に関しまして,一番下の丸では,管理事業者による集中管理が行われておらず,かつ権利処理窓口が明らかになっていない者,すなわち主として権利者不明等の場合を対象にするということにしておりました。この点,主として権利者不明等の場合だけを対象にすることで,十分に権利処理円滑化が図れるかどうかについては,法施行後の現場の実態等を踏まえて適切に検証を行う必要があろうかと思いますので,その旨を明記しております。

また飛びまして,14ページでございます。裁定制度の改善に関しまして,丸2のローマ数字1のところで,補償金の供託免除について記載をしておりました。この点,パブコメでは,民放事業者については財務基盤の安定性が必ずしも万全でないことなどを踏まえて慎重な検討を求める意見や,民放事業者に限定して免除対象を拡大する理由の説明を求める意見もございましたので,その点にも留意する必要があるという旨を記載しております。

修正点については以上でございます。

事務局からは以上でございます。

【末吉主査】ありがとうございました。ただいま事務局から説明があった内容等につきまして,御意見あるいは御質問がございましたら,御発言をよろしくお願いいたします。いかがでしょう。

どうぞ,丸田様。

【丸田氏】テレビ東京の丸田でございます。放送事業者として意見を1つ述べさせていただきます。報告書3ページの冒頭に,放送事業者側の権利処理体制をより充実させるべきといった追記をいただいておりますが,現状,放送事業者側としては,この権利処理業務に係る実務の負担が大きく,非常に多くのコストがかかっているという問題意識を持っています。

今回の法改正は,放送と同等の権利処理を可能とすることで,権利処理の実務負荷を軽減し,権利処理を円滑化してコンテンツを広く流通させていくことが目的の1つと捉えておりますが,適正な権利処理を行うことはもちろんですが,追記いただいた内容は,法改正の趣旨とはやや異なるのではないかと感じております。

権利処理業務に今以上のコストがかかれば,当然,利益も減りますので,権利者の皆様方に分配できる原資も減ってしまうということになりかねません。報告書の基本方針に記載がありますとおり,著作物の創作・流通・利用のサイクルを維持・活性化されるように検討いただくことが重要ではないかと考えております。

以上です。

【末吉主査】ありがとうございます。ほかにいかがでございましょう。御意見,御質問はございませんか。

どうぞ,岸委員。

【岸委員】どうもありがとうございます。私は今回の報告書は,事務局の皆さんが非常に頑張って調整してくれて,非常にバランスのとれており,いい形になっていると思います。

これで当然,法律改正というのをやっていくと思うのですが,やっぱり大事なのは法律改正,法整備が終わった後の実際の運用の部分ですので,この運用部分に関しては,クリエーターへの対価還元でありますとか利益保護といった点に十分に配慮して,しっかりした運用ができるよう,体制であるとかやり方というものの検討・調整を引き続き進めてほしいと思います。

【末吉主査】ありがとうございます。ほかにいかがでございましょう。よろしいですか。

どうぞ,大渕主査代理。

【大渕主査代理】ありがとうございます。私は同時配信等ワーキングチーム委員なのですが,この報告書は,パブリックコメントの貴重な意見も赤字でさらに付加していただいて,よりよい内容になったのではないかと思います。非常に改良されたこの報告書で,よい法律ができると思いますが,図書館ワーキングチームの時にも申し上げましたように,やはり最後は,法律を十分にフルに活用して,きちんとリターンが権利者に行くという下支えを踏まえて,蓋かぶせのない,利便性の高い視聴を可能にするという結果を出すことが一番重要かと思います。この報告書を踏まえて,速やかにきちんと法制化していただくこと,また,権利者間の協議が今まであまりされていなかったということが度々指摘されておりますが,そこをきちんと協議して,この大目標を確実に達成するように御努力いただければと思っております。

以上です。

【末吉主査】ありがとうございます。ほかにいかがでしょう。

よろしいですか。それでは,本報告書につきましては修正を要する点はなさそうですので,このまま,本小委員会としての報告書として取りまとめさせていただきます。

本報告書につきましては,今後,著作権分科会において審議をいただいた上で,著作権分科会としての報告書を取りまとめていただく予定であります。

それでは,次に議題2,著作権行政をめぐる主な動向について(報告)です。

まず,来年度から本格実施されます授業目的公衆送信補償金制度について,事務局より説明をお願いします。

【日比著作物流通推進室長】それでは御説明いたします。資料2-1を御覧ください。

この授業目的公衆送信補償金制度につきましては,本小委員会の第1回におきまして,制度の概要ですとか,昨年夏時点での状況につきまして御報告申し上げました。本日は,その後の動きを中心に御紹介したいと思います。

資料の4ページ目のスライドを御覧ください。本格運用までの流れを示した資料でございます。

一番上に帯のように伸びておりますが,右側から3つ目のところです。文化庁長官による補償金額の認可とございまして,昨年の12月に,指定管理団体であるSARTRASからの補償金額の認可申請を受けまして,文化審議会の諮問答申を経て,文化庁長官による認可が行われました。また併せまして,補償金負担軽減のための国による支援というものも措置をしております。

今後,その右側ですが,分配規程を含む業務規定の指定管理団体から文化庁への届出というのが,近々に行われる予定でございます。

その上で,今年4月より,有償の補償金による本格運用が開始されるという流れを予定しております。

次の5ページ目を御覧ください。認可された補償金額でございます。

こちらの資料の真ん中ほどにありますように,①と②の2つの料金体系がございまして,学校種別の年間包括料金,この場合は公衆送信の回数は無制限となりますが,これか,あるいは,公衆送信の都度支払う場合の料金というものが設定されております。いずれにつきましても,既存の著作権等管理事業者が非営利の教育機関に適用している公衆送信に係る使用料を参考に算出されたものでございます。

一番下にありますように,今後,定期的な見直しを行うことにしておりまして,3年経過ごとに検討を加え,必要な措置を講じることとしております。

続きまして,もう1つの動きといたしまして,6ページ目でございますが,この制度の運用指針の策定ということがございました。

権利者団体と教育関係者が共同で設置した「著作物の教育利用に関する関係者フォーラム」におきまして,この制度のガイドラインとなります運用指針の令和3年度版が,昨年12月に策定され,公表されたところでございます。

こちらの内容につきましては,本体を後で御確認いただきたいと思いますが,特に著作権法第35条にある,各用語の指し示す範囲ですとか典型例といったものを挙げながら,教育現場の皆さんが,この補償金支払いにより,どのような利用が可能となるのかという点について分かるようにということで策定されたものでございます。

続きまして,資料の9ページを御覧ください。この補償金負担は,教育機関の設置者が行うことになっておりますが,負担軽減のための政府における支援の状況について御説明いたします。

上半分にありますように,昨年4月の閣議決定によりまして,この補償金負担軽減のための必要な支援について検討するとされておりました。

そこで,令和3年度予算案の編成に向けまして,一番下に,文部科学省における支援の状況とございますように,文部科学省の教育関係部局におきまして,認可された補償金額をベースとして,公立学校等については地方財政措置を講じ,また国立学校や私立学校等については運営費交付金や私学助成といった基盤的経費の来年度予算案に,必要な経費を盛り込んでいるところでございます。

この制度に関する動きについて御説明いたしました。以上でございます。

【末吉主査】ありがとうございました。ただいまの説明につきまして,御質問等がございましたらお願いいたします。いかがでしょう。

瀬尾委員,どうぞ。

【瀬尾委員】こちらの授業目的公衆送信補償金に関する制度の執行・運営にも携わっております立場から,一言付け加えさせていただきたいと思います。

進捗と内容につきましては,今,日比さんから御説明いただいたとおりなのですが,今ここで申し上げるのは,私が有識者として,この委員会の一員として,客観的にこの制度について,現状どう進んできてどんな問題があったかということについて,皆様に少しお話をしたいと思います。

公式な情報というのは表に出ていることですから,皆さん,御覧いただいて,おおむね順調と言えるかと思いますが,まず第一に,この中で非常に重要なことは,今回の制度が,これまでのような一対一のトランザクションの上に成り立っているものだけではないと。もちろん,個人の権利者に還元することは重要ですが,権利者が非常に分散して,社会の中に潜在化していると。

つまり,ここにいる皆さん方がすぐ写真を上げれば写真著作権者になりますし,ブログに書いたものについては全部権利者になります。そういう方たちが非常に多く,今回の補償金の対象に含まれていく。つまり,既存の権利者だけがこの補償金の対象ではなく,もっと言ってしまうと,より大きな社会的に潜在的な権利者に対しても還元される事業を,いかに透明かつ適正に行っていくのか。

つまり社会還元,大げさに言ってしまうと,拡大解釈すれば社会還元なのですが,そういうことが今回の制度の今後の最大の問題点になると思っています。決して,既存の権利者が余分に集めたお金をかさ増しして利得することはあってはならないと思いますし,社会的にお金がきちんと教育もしくは著作権の中に還元されていくとすれば,非常に大きな財源になっていくとも思います。

この状態というのは,教育に限らず,今後補償金がうたわれていますいろいろな分野,もしくは30条などについても,一つの壮大な実験でもあるし先駆けでもある。このため,これの結果と,よりよいブラッシュアップを御注目いただいて,今のような単純な1制度の進展ではなくて,社会的な変革の一つのトリガーになるという部分について御注目いただければと思います。非常にそれがまず1つ。

今,竹内比呂也先生も御参加いただいていますが,実際にガイドラインを,竹内先生と私で共同座長を務めさせていただいて,進めてまいりました。その中で,私が個人的な感想を申し上げますと,やはり民間で対立している2項目を話し合うということは大変しんどいことだと思います。竹内先生も,しんどいということについては御同意いただけると思うのですが,ただ,これについては今後,こういうガイドラインを設けるときは,先ほど同時送信でもございましたが,やはり初期の段階においては,官,つまり担当省庁,この場で言えば文化庁さん,または同時送信で言えば総務省さん,文化庁さん,文科省さん,そういった方々と三者一体でやらないと難しい。

もっとありていに申し上げますと,時によっては官主導でガイドラインをつくることがないと,結局,なかなかガイドラインができにくいのではないかなという,そんな感想を持っています。

これは,どうしたほうがいいとか,官が積極的に民間に介入すべきでないとか,いろいろな論があるので,賛否はもちろんあると思いますが,まとめることについては,時として,民間だけではなく官庁のきちんとした指導なりが必要になってくるということで,今回はアドバイスを多々,文化庁さんからもいただきながらフォーラムをやってきましたが,ちょっとそれについて考えています。

ガイドライン,ソフトローが非常に注目されている中,今後ガイドライン,ソフトローをつくればいいよと。関係者を集めてガイドラインをつくりましょうと,簡単にあまりお考えにならないでいただきたい。そんな簡単にできません。こんなの無理。だから,そこはいろいろな知恵を絞って,みんなでやっていきましょうと。

別に泣き言ではないです。泣き言ではないですけど,しんどいのは本当です。できれば,しんどかったことは竹内先生にもプルーフいただければと思います。

私のほうから以上でございます。

【末吉主査】ありがとうございました。

河野委員,どうぞ。

【河野委員】河野です。御報告ありがとうございました。今回の教育的な公衆送信の補償金制度が,初年度は無料で,次年度からは金額が決まって徴収されることになるということに関して,今の瀬尾先生のお話にもありましたが,そんなに簡単ではなかったんだと,産みの苦しみは大変だったんだということで,本当に関係者の皆様には感謝申し上げたいと思っております。

それで,私は一般国民でして,権利者でもございませんし,それを利用して様々な事業を行っているものではなく,最終的に,クリエーターの方が生み出したものに対して対価を享受するという立場におります。

先ほどの議題の1番にも関係しますが,やはり国民が,著作権というものに対してもう少ししっかりと理解し,著作権の意義というか,クリエーターの方の存在と,生み出すものに対する価値に対して,もう少ししっかりと認識し,敬意を払うということがとても大事だというふうに,この間ずっと感じていたところです。

今回は教育現場で,たまたま運悪くコロナ禍ではありますが,オンラインという方式が教育現場に浸透してくる際に,このような補償金制度がスタートするわけですが,私は先ほど申し上げたように,国民,特に教育課程にいる児童や生徒,それから保護者や先生方が,著作権について理解を深める機会になればいいなと思っております。

招集初年度は,様々な公官庁の方の御配慮により,補助制度がワークして,具体的にはこれまでと同様な形で進められていくとは思いますが,やはり多少なりとも自分がそこに支出する,お財布が痛む感覚というのが,国民が事実を知るということにつながるというふうに,私は感じているところです。

電気料金で言えば,毎月の電気料金の明細表に再エネ賦課金ということで,電気利用者全てが支払うことになっている金額が書かれていますが,ああいう表示があることによって,より制度とか,その制度が持つ意味とか,社会に与える影響に対して理解が深まると感じているところですので,この補償金制度は,今後に向けては,上手にクリエーターの方に還元され,さらなる再生産につながる,いい制度になってほしいと思いますし,まずは教育課程にいる関係者に,著作権に対する理解を深める一つの方法として,この支出に対して許容していただく環境を上手につくっていただければと思いました。

私自身も,こういう機会を利用して,著作権というものに対しての消費者団体の理解というものにつなげていければと思いました。

以上です。

【末吉主査】ありがとうございます。

竹内委員,どうぞ。

【竹内委員】ありがとうございます。先ほどフォーラムの瀬尾共同座長から御指名がございましたので,教育関係側の共同座長として一言申し上げます。

この制度の開始に合わせて,教育関係者側も権利者側の皆さんも困らないような環境をつくっていくということで,2年以上議論してきたところであります。

正直申し上げまして,総論は基本的に皆さん賛成になるわけですが,細かい部分に入っていくと,かなり厳しい利害の衝突というものがあったのは事実であります。

今回の新型コロナウイルス感染症の問題で,授業をオンラインでやらざるを得ない,そのためには,この制度については緊急的にでも先に進めざるを得ないという非常に大きな力によって,この運用指針がまとめられたというのは事実であって,それがなければ,私はもっと時間がかかっただろうと考えております。

そのようなことを考えていくと,やはり先ほどの瀬尾共同座長からの御発言にもありましたが,全てのことを当事者間でやればいいというのは,やはり極めて時間のかかる難しいことであって,法的な枠組みというのをきっちりとつくっていただいた上で,この部分は法律できちんとつくってあるから,それ以外のここの部分は当事者間でやるほうがよりよいものができる,というような発想で,法の整備をしていただくことが極めて重要なのではないかと思います。

ややもすると,これは関係者で話せばいいんだよねという,やや安易な考えで,丸投げにされて,受け取ったほうはあたふたするという状況が今回の議論の中でもなかったわけではないと,私は思っておりますので,今後の法改正の際にはその辺りの配慮をぜひよろしくお願いしたいと思います。

【末吉主査】ありがとうございました。ほかにいかがでございましょう。

菅委員,どうぞ。

【菅委員】ありがとうございます。私は新参者でございますので,ちょっと的外れな意見かもしれませんが,私は小説家として小説を発表し,また大学で教える立場であります。

今回の政策の細かいものを見させていただいて,少しもイメージが湧きませんでした。瀬尾先生が今おっしゃったとおり,大変煩雑な手続だと思っております。

例えば授業で,私の場合はアニメーションとか,いろいろサブカルチャーを教えているのですが,このアニメとこのアニメとこのアニメを使ったけれども,じゃあ,その使った部分を,その3者に行くのか,そのアニメーションを統括する協会に行くのか。また,どこで読んだのかちょっと記憶にないのですが,サンプルを抽出して,みたいなことが書いてあった記憶が少しございまして,例えばサンプルというふうに言われると,では,大きな作品を作ったところには還元されるけれども,末端の小さな作品,ほとんど使われていないけれども少し使ったところがある作品についてはこぼしてしまうのかとか,いろいろ疑問がたくさんあります。

それは今,一々御報告は申し上げませんが,まだ全体像が見えない中で,どのように改善されていくのかなと。すごくたくさんの授業がある中で,それをどうピックアップして,どのように権利者までつなげていくのかなというのが,ちょっと今は分かっていない。

この,分かっていないという状況が多くの人の立場かと思いますので,分かっていない者がたくさんいるということを御報告させていただきます。ありがとうございました。

【末吉主査】ありがとうございました。ほかにいかがでございましょう。

福井様,どうぞ。

【福井委員】両座長のコメントをはじめ,ありがとうございました。現場の御苦労は折に触れて伺っておりまして,まさにこの産みの努力と立派な成果,大変に御苦労様でした。まずはそれを申し上げたいと思います。

その上で,瀬尾さんもおっしゃいましたが,これは社会的な変革への大きなトリガーになる,全くそのとおりだと思います。あるいは,トリガーにしていかなければいけないのだと思います。

その意味で,例えば資料の8ページに,共通目的事業,あるいは権利者が最終的に不明な場合の補償金の使途についての記載があります。これは教育用途での充実ももちろんのことですが,記載にもあるとおり,例えば権利情報を集約するなど,権利者不明という事態そのものを減らしていくための用途。あるいは,そうした権利の公正な管理と,権利処理マーケット的な処理と配分のシステムづくりとか,こういうことにお使いいただくこともぜひ検討いただければと思います。それがひいては,権利者に対する最大の還元,教育現場に対する最大の貢献になるのではないかと考えた次第です。

以上です。

【末吉主査】ありがとうございます。ほかにいかがでしょう。井上委員どうぞ。

【井上委員】井上でございます。福井委員からもご発言ございましたが,集めた補償金をどのような目的で使うのか,そしてどのように分配していくのかということは非常に重要です。

プロセスの透明性を高めることが,払う側の納得感を高めることにもつながり,ひいては,社会の信頼をこの制度が勝ち得て,制度が社会の中に定着していくことになると思います。補償金の使途,分配の方法についての透明性を確保する仕組みにしていただきたい。SARTRASにはその点をお願いしたいと考えております。

先ほど瀬尾委員,竹内委員から,ガイドラインの策定は「しんどい」というお話がございました。私もその一部に関わっておりますので,しんどいということを実感しているところでございます。

しかし,権利者側と利用者側が,最初は全く相入れないような,カルチャーも違うしというところから始まって,お互いに何とか合意を形成するために話し合う過程で両ステークホルダーの間の相互理解の醸成というものができつつある。共同座長のお二人からすると,そんな甘いものじゃないというふうなところはあるかもしれませんが,相互理解が多少なりとも進みつつあるという実感を持っております。

官ももう少し関与したらいいのではないかとか,いろいろ御意見はございましたが,ステークホルダーが主体的に話し合っていくというプロセス自体は間違っていないと思いますので,今後も共同座長には大変な御苦労をおかけいたしますが,ぜひよろしくお願いいたします。

以上です。

【末吉主査】ありがとうございます。ほかにいかがでしょう。

瀬尾委員,どうぞ。

【瀬尾委員】すみません,いろいろ出て,今,確かに私が社会的な還元,潜在的な権利者に対する分配が重要だということを申し上げました。また福井委員からも,それに対して,非常に大きなトリガーにしていく,していかなければいけないのではないかという御提案も,全く私は同感でございます。

ただ,それと,先ほど菅委員がおっしゃられたように,誰にどうやって分配されるのかというお話があります。今回,ある程度組織化されている先生方には分配ができるんです,名前が出てくれば。ただ,それも,全部である契約者の中から,1,000ぐらいを一応サンプル抽出して調査をする以外に方法がないだろうと。ということは,やはり漏れる人は出てくると思うんです。

とすると,これはもう仕方がないと言ったら言い訳になっちゃいますが,精度を上げていく努力をしていくしかないということなので,努力をしていきたいと思いますが,ただ,問題になるのは,それで分からなかったらどうなるのか,何に使うのかということだと思います。それを社会が見たときに,こういう使い方をしてくれればいいんだよね,これはいいよねと。

先ほど福井委員のおっしゃったような,そもそも権利者不明を少なくするような事業,極めて重要です。ただ,それと,もともとICT教育を進めるとかそういう事業も重要ですし,例えば分野ごとにその分野を振興させるような事業まで,私は含めるべきだと思っています。

ただ,誰もが社会的に見たときに,我々のつくったお金は,分配し切れなかった分がこうやって社会に還元されていって,社会の改善に役立っているんだということを,我々は説明したり,それをプルーフする義務があると思っておりますので,そこのところは今後の,今,制度ができて4月から徴収する中で,分配できなかったものをどう事業化するかについては,今,文化庁さんと非常に細かな部分が出ていますが,具体的にこんな事業をやったり,こんな事業をやったり,こんなことに使っていくんだというのを,一般の方々に分かりやすく説明できるように,これは使命だと思っていますので,まさに御指摘のところについては,今後お答えしていくように頑張りたいと思います。

これは大変とか何とかではなく,これがまさにやるべきことと考えていますので,また新たな目標に向かって進んでいきたいと思いますので,少々お時間をいただければと思います。

以上です。

【末吉主査】ありがとうございます。

田村委員,どうぞ。

【田村委員】どうも,田村です。今,お二人の座長の御意見を伺っていて,少し思うところがございました。

井上先生からは,やはりステークホルダーの相互理解が大事だという御意見がありました。もちろん,まさにそのとおりであるとは思います。でも他方で,この35条の目標としているもの,様々な条件について話し合わなければいけないわけですが,例えば最も大事な対価については,規定ぶりが,例えば36条の試験のときのように通常の使用料となっておらず,「相当な額」となっております。これはやはり教育に公益目的があることを鑑みて,通常の相場よりは低廉なものにしようという目標を持っております。

そうなりますと,ウィン・ウィンの関係にはなりませんので,ステークホルダーの話合いでまとまるものではないものを法が目指しているというところに,大変なジレンマがあるように思います。

その意味で今回,いろいろと御苦労を伺いまして,また官の主導が必要だという御意見もかなりごもっともなように思いました。ですから場面によって,ソフトローの使い方,あるいはステークホルダーに完全に委ねてよい場面と,そうじゃない場面があると思います。その1つの例として,目標としている対価がどのようなものであるのかという点があり,市場価格に近づけようとしているのか,そうでないのかというところで,手続の在り方が変わるべきではないかと思います。

以上です。

【末吉主査】ありがとうございます。

大渕主査代理,どうぞ。

【大渕主査代理】著作権法全体で,図書館も先ほどの放送も,補償金を我が国でもうまく使いこなし始めて,なかなか進まなかったものがようやく前進してきていていますが,35条関係は少し先行しております。35条については,我々も学生さんも著作権法改正の利益をウェブ授業などで身をもって体験しておりますが,やはりきちんと補償金でもってリターンがクリエーターに行くという,この下支えがあって利便性の向上が初めて成り立つというのは全く先ほどと同じであります。共同座長も御苦労されて大変なことだと思いますが,きちんと話合いを遂げて,うまく制度を組んで,先ほどと同じように,最終的には末端にいる個々のクリエーターにお題目だけではなく現実にきちんとリターンが行くというところを実現しない限り,この制度も円滑に進みません。そこのところは国民の期待がかかっておりますので,引き続き御努力いただいて,かつ,民間だけではどうにもならないのであれば,適宜,官のほうにも入っていただきアドバイス等をいただくというのも非常に重要なことかと思っております。民だけで話が進めば,別に官が入る必要はないのですが,お聞きしていると,なかなかそれだけでは進み難いところがあるようですので,うまい形で文化庁にも入っていただいて,確実に成果を出していただければと思っております。

以上です。

【末吉主査】ありがとうございます。時間の関係もありますので,ここら辺で切らせていただきたいと思います。皆様,ありがとうございました。

それでは次に,侵害コンテンツのダウンロード違法化の施行と普及啓発等につきまして,事務局より説明をお願いいたします。

【大野著作権課長補佐】それでは,資料2-2をお手元に御用意いただければと思います。侵害コンテンツのダウンロード違法化に関して,簡単に御報告を申し上げたいと思います。

まず1ポツの経緯は御承知のとおりかと思いますが,令和2年の通常国会において,著作権法改正が成立しております。様々な改正事項が含まれておりますが,侵害コンテンツのダウンロード違法化については,今年の1月1日から施行されています。

また,この件に関しては,改正法の附則の中で,国・地方公共団体が学校等における教育の充実等を図らないといけないという規定も置かれておりまして,国・自治体が一体となって対応を進めていく必要がございます。

そうした観点で,昨年12月25日には,文化庁・文部科学省の教育部局連名で,各都道府県教育委員会等に対して普及啓発・教育の充実等を依頼する通知を発出したところでありまして,これから学校現場等での周知をしっかり進めていく必要があるという状況でございます。

2ポツの改正の趣旨・概要は御承知のとおりかと思いますので省略いたしまして,3ポツを御覧いただければと思います。文化庁で実施をしている普及啓発・教育の主な取組でございます。

こちらに記載のとおり,法改正のポイントを分かりやすく解説したリーフレット,解説記事,詳細なQ&A,それから著作権広報大使に任命したハローキティを活用した動画,ユーチューブ広告などを作成・周知しております。また,漫画家・有識者に御出演いただいた普及啓発動画,政府広報を活用した新聞広告,バナー広告などなど,様々な取組を昨年末から重ねてきているところでございます。

一方で,まだ今後やらないといけないこともたくさんあると思っておりまして,それが4ポツでございます。一番大きな課題としては,学校現場への周知徹底をいかに図っていくかということでございまして,文部科学省で配信している教育関係者向けのメールマガジン,それから各種会議,講習会など,様々な機会を捉えて周知徹底を図っていく必要があろうかと思います。

また,ハローキティを活用した教材・グッズなども作成しようと思っておりますし,総務省が実施しているe-ネットキャラバンという学校現場向けの出前講座などもありますので,そういったところとも連携をしながら,しっかり周知を進めていきたいと思っております。

また,政府で取組をするだけではなくて,関係団体・事業者とも連携をさせていただきまして,例えば漫画雑誌への掲載,テレビCMなど,若者に訴求しやすい形での周知も進めていく必要があるものと思っております。

この侵害コンテンツのダウンロード違法化は,海賊版対策の実効性を確保することと,国民が無用な萎縮を招かないようにすること,という両方の意味で,正しい内容をよく理解していただく必要があろうかと思います。丁寧に,引き続き周知をしていきたいと思います。

また,先ほどの議論の中でも言及がありましたが,そもそもの著作権の仕組み,クリエーターの生み出す価値についての国民・学校現場の理解を更に高めるべきという御指摘もございます。今回は,ダウンロード違法化と授業目的公衆送信補償金制度の本格実施という教育現場に関わる改正がちょうど重なるいいタイミングかと思いますので,これを機に,この制度自体に限らず,著作権全体の普及啓発・教育について,より一層充実を図っていきたいと考えております。引き続き御指導いただければと思います。

事務局からは以上です。

【末吉主査】ありがとうございました。ただいまの説明につきまして,御質問等がございましたらお願いいたします。いかがでしょう。

福井委員,どうぞ。

【福井委員】福井でございます。御紹介どうもありがとうございました。普及啓発については,もう特に付け加えることもありませんので,海賊版対策の,やや現場レポート的に,現在の状況をシェアさせていただければと思います。

既に一部報道等もされているところですが,現在,漫画などのオンラインの海賊版は,再び史上最悪の状況を迎えています。

昨年に入ってから,アクセス数の伸びがどうしても止まらなくなり,直近の数字ですと,日本からのアクセス数の上位15サイトの合計セッション数は,月間でついに2億を超えました。PVではなくてセッション数(訪問数)ですので,PVであればこれより大きいことになります。

これは,昨年1年間で200%以上に伸びたことを意味します。世界的には,海賊版へのアクセスはどうにか水平線,現状維持を保っているともされる中で,日本コンテンツへのアクセス増が止まらない状況です。

2年前の状況と何が違うかというと,この間,IT業界・通信業界など民間との協力体制は飛躍的に進んでおり,さらに最近では,政府の協力も全面的にいただいている状況です。

こうした中で,例えば広告出稿の抑制とか,検索結果の上位に海賊版が出てこない,あるいは大量の削除要請といった従来からある対策はもとより,国内での仮処分,海外でのサピーナと言われるような法手続,外国政府への直接の働きかけ――というのは,拠点は海外の幾つかの国に偏在しているからですが,外国政府への対応要請。さらには,バックエンドサービスを提供する事業者,中継サーバーはもとより,海賊版サイトに様々なサービスを提供する事業者への働きかけなど,対策は進化しており,国内では力が結集されていると言っていい状況だと思います。その状況でありながら,この数字です。

幸い,ではないのですが,昨年はコロナの巣ごもり需要で,電子書籍の売上げ全体は伸びています。にもかかわらず,その数字すら秋以降には頭打ち,悪化しているという情報もあり,現状は極めて危機的と言えようかと思います。

こちらの審議会でも,役割は決して立法論議だけにとどまるものではないと思いますので,エンフォース,そうした側面にも,ぜひ次年度以降も注視をし,また必要な援助を民間に与えていく,これが大事ではないかなと考えます。

長くなりましたが以上です。

【末吉主査】ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。

よろしいですか。ありがとうございます。それでは次に,私的録音録画補償金制度の対象機器追加に係る検討状況について,事務局より説明をお願いします。

【日比著作物流通推進室長】御説明いたします。恐縮ですが,資料を御用意しておりませんので,口頭で御説明いたします。

この私的録音録画補償金制度につきましては,デジタル方式の私的録音録画について,録音録画を行う者が,政令で指定された機器や記録媒体の購入時に一括して補償金を支払うという制度でございますが,昨年8月の本小委員会で御説明をしたとおり,関係者間の意見の隔たりが大きく,現在利用されている機器が指定されておらず,長年にわたって今後の方向性が見いだせていないという状況でございます。

知的財産推進計画2020におきましては,この補償金制度については,新たな対価還元策が実現されるまでの過渡的な措置として,私的録音録画の実態等に応じた具体的な対象機器等の特定について,関係府省の合意を前提に,文部科学省を中心に検討を進め,必要な措置を講ずるとされていたところでございます。

この方針に従いまして,現在,内閣府知的財産戦略推進事務局,文化庁,経済産業省,総務書の4府省庁におきまして,現行制度に基づく対象機器の特定について結論を得るために,実態調査も踏まえつつ,機器の候補について鋭意検討,調整を進めているところでございます。

残念ながら,いまだ結論の御報告をできる段階にはございませんが,関係者の合意と議論の整理ができましたら,改めて本小委員会に御説明をさせていただきたいと思います。

御説明は以上でございます。

【末吉主査】ありがとうございます。それでは,次に議題3に入りたいと思います。令和2年度基本政策小委員会の審議の経過等についてです。

事務局において審議経過報告案を作成いただいていますので,まず事務局から御説明をお願いします。

【大野著作権課長補佐】それでは,資料3を御覧いただければと思います。今年度の本小委員会における審議経過等の案を簡潔にまとめておりますので,御説明をいたします。

まず1ポツ,「はじめに」におきましては,今期の本小委員会におきましては,様々な政府方針を踏まえながら,主に放送番組の同時配信等について検討を行うとともに,その他の動向の報告を受けて意見交換等を行ってきた旨,記載しております。また,今年度,結論が得られていない課題については,来年度以降も引き続き検討を行うとしております。

2ポツが各課題の審議状況でございます。まず(1)の同時配信等に関しましては,先ほど報告書を取りまとめていただいたとおりでございますが,ここでは,放送番組の同時配信等が視聴者の利便性向上などの観点から非常に重要な取組であり,規制改革実施計画に基づいて検討を進めてきた旨を記載しております。ワーキングチームで集中的に議論し,小委員会での中間まとめ,パブコメを経て,最終的に小委員会としての報告書をまとめた旨,記載をさせていただいております。

次に(2)が,私的録音録画補償金制度の見直しでございます。先ほど事務局から御報告しましたとおり,知財計画2020におきましては,2020年内に結論を得て,2020年度内の可能な限り早期に必要な措置を講ずるとされていたところでございます。

この点,2ページに記載のとおり,先ほど申し上げたように,昨年度から関係府省庁で検討が行われておりますが,まだ結論が出た段階ではありませんので,報告を受けて意見交換を行ったこと,引き続き,必要に応じて,来年度以降,改めて議論を行うこととさせていただいております。

次に(3)が,デジタル時代に対応した著作権施策の在り方についてでございます。こちらも知的財産推進計画2020の中で位置づけがされておりまして,スケジュールとしては,当初は2020年内に知的財産戦略本部の下の検討体で具体的な課題と方向性を整理するとされていたところでございます。

これを受けて,本小委員会では,第1回目でこれまでの著作権法改正の経緯や今後のスケジュールの見込みなどについて御説明し,自由に御意見をいただいたところでございます。その後,知的財産戦略本部で昨年8月に検討タスクフォースが設置されまして,関係者からのヒアリングを行いながら,具体的な課題ニーズの抽出や検討の方向性を整理すべく議論がされております。我々の把握している限り,現時点ではまだ整理には至っていない状況にございますので,引き続きその議論の状況を注視しながら,一定の整理がなされましたら,来年度以降,小委員会で本格的に議論を深めていただきたいと考えております。

(4)はその他でございまして,本日も御報告をしましたが,授業目的公衆送信補償金制度に関しまして,令和2年度の早期施行,それから令和3年度以降の本格実施,それぞれについて報告を受け,意見交換を行ったとしております。

また,令和2年著作権法改正につきましても,リーチサイト対策,ダウンロード違法化,それぞれの施行のタイミングで報告をさ受け,意見交換を行ったとしております。また,その際には,著作権教育・普及啓発全体の状況につきましても報告の上,意見交換を行った旨,記載をしております。

本文は以上でございまして,3ページでは小委員会の4回の開催状況,4ページでは委員の名簿をつけさせていただいております。

簡単ですが,事務局からは以上です。

【末吉主査】ありがとうございました。それでは,説明いただいた審議経過報告案につきまして,御意見,御質問がございましたら御発言をお願いいたします。いかがでしょう。

中村委員,どうぞ。

【中村委員】案については異議ございません。このところの著作権行政の進展は目覚ましいものがあると私は評価をしておりまして,全体についてコメントしたいと思います。

今の(1)の放送番組ネット配信については,先ほど議論のとおりで,長年の宿題を一気に解決するもので,事務局には法制化に向けてさらなる調整をお願いしつつ,その後の運用が,これも先ほど議論がありましたとおり,大事だと考えます。

それから(4)の授業目的の補償金制度や海賊版対策の制度も,これも制度改正・立法だけではなくて,行政としてのアクションが大事になってきている。だけどそれは難しいんだという先ほどの議論のとおりでございますが,著作権に係る行政プログラムについて,より注視して,評価・検証することが大事だと感じています。

(3)の知財保護のタスクフォースについて軽く報告をしておきますと,議論が大詰めでありまして,整理がなされたら,この小委員会にも持ちかけることになると思いますが,その中でも同様に既にガイドラインの拡充ですとか,ステークホルダーの調整スキーム,あるいは権利のデータベース整備といった法制度以外のソフトロー,あるいは行政のアクションの拡充が審議されておりまして,今日の議論と共通するところが多うございます。この方向性も,この小委での今後の議論に影響を与えるのではないかと感じているところです。

以上です。

【末吉主査】ありがとうございます。ほかにいかがでございましょう。

【井上委員】井上でございます,よろしいでしょうか。

【末吉主査】どうぞ。

【井上委員】審議経過2ページの(3),デジタル時代における著作権制度の管理政策の在り方に関しまして,国が権利を有するデータ・著作物を,著作権法上の取扱いについて見直す必要がないかという観点から,一言申し上げます。

審議経過のまとめの2ページ目では,知財本部におけるタスクフォースでの議論の経緯を受けて,来年度以降,本小委員会において本格的に議論を深めるとまとめられております。

このこと自体にはもちろん異論はございません。現在,精力的に続けられているタスクフォースの整理を待ちたいと思っておりますが,このタスクフォースというのは,民間の様々なコンテンツの利活用,流通,活用を促進することを目的としていると理解しております。

このタスクフォースの位置づけを見ますと,知財戦略本部の構想委員会の下に設けられており,構想委員会では「データガバナンスに係るルール整備」も論点とされており,データ利活用を促進していくためのガバナンスを検討するものとなっております。

構想委員会では,より広い射程でデータガバナンスを捉えているので,国の保有するデータ・情報の著作権法上の課題についても議論できるように見受けられるのですが,公表された議事録を見る限り,国の保有する著作物についての著作権法上の扱いといったような論点は議論されていないようです。

著作権法では,13条により国の作成する著作物の一部は権利の目的とならないとされているものの,13条の要件を満たさない行政内部で作成される公文書国が権利を有するというようなしくみになっています。

このような制度を前提として,国のオープンデータ戦略が走り出した段階で,国の保有する情報に係る著作権がデータ利活用の阻害要因にならないかが問題となりました。

純粋にデータで著作物性がないものもありますがそればかりではないわけですし,著作物性があるものとないものの区別も容易でないことから,問題となったわけです。

紆余曲折ございましたが,現在は政府標準ライセンス2.0にクリエイティブ・コモンズ・ライセンス4.0と互換性がある旨の明記がされており,一応,利活用の大きな障害とならないよう手当がなされています。

この問題について比較法的にみると,日本のようにライセンスで対応する欧州その他の諸国もあり,ライセンスによる対応でこと足りると考えることもできますが,アメリカでは連邦政府の著作物には権利は与えられておりません。また韓国でも,2013年の著作権法改正で,国で作成する著作物についてパブリックドメイン・バイ・デフォルトとする改正が行われているところです。

公文書管理法1条では,公文書について,「健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源として,主権者である国民が主体的に利用し得るもの」と規定しています。国民に対する説明責任という文脈はもちろんのこと,データ駆動型社会の下では,官民協働による価値創造というような観点も重要になっているわけで,国の作成した著作物についてパブリックドメイン・バイ・デフォルトに著作権法の立てつけを変えていくこともありうるのではないかと考えています。

先ほど申しましたように,知財本部の構想委員会では議論されていないようですが,この機会に,理念的な面,それから実務的な面も含めて検討してみる意味があると思います。

以上です。

【末吉主査】ありがとうございます。データ駆動型社会に著作権がどういう影響を与えるのかという,非常に貴重な,重要な御指摘をいただいたように思います。ありがとうございました。

ほかにいかがでございましょうか。よろしいですか。

ありがとうございました。お示ししたような審議経過報告として,著作権分科会に報告をさせていただきたいと思います。修正は特段なかったと理解をしております。ありがとうございました。

そのほか,全体を通して何かございますでしょうか。よろしいですか。

ありがとうございます。それでは,本日は今期最後の基本政策小委員会ということでございますので,出倉文化庁審議官から一言御挨拶をいただければと思います。よろしくお願いします。

【出倉文化庁審議官】それでは,今期の本小委員会を終えるに当たりまして,一言御礼を申し上げます。

今期の本小委員会におきましては,主として放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化について,制度改正に向けた検討を行っていただくとともに,授業目的公衆送信補償金制度の見直しなど,著作権行政をめぐる諸動向につきまして御報告の上,御意見をいただきました。

特に,放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化につきましては,関係者の利害が複雑に絡み合う大変難しい問題でございましたが,幅広い関係者の意見を踏まえて,集中的かつ丁寧に議論を進めていただいた結果,バランスの取れた,きめ細かな制度改正の方向性,これを示す報告書を取りまとめることができました。これに基づきまして対応を進めることで,視聴者,放送事業者,クリエーターの全てにとって利益となる措置につながるものと考えております。

今後,著作権分科会での審議を経まして,分科会としての最終的な報告書が取りまとまりましたら,今通常国会への法案提出を目指して,さらに検討を進めていきたいと考えてございます。

また,そのほかの課題につきましても,それぞれの御専門の立場から,今後さらに議論を進めていく上で非常に重要な御示唆を多々いただいたものと受け止めております。

委員の皆様方におかれましては,今期の本小委員会の充実した審議のために多大な御尽力を賜りましたこと,改めて感謝を申し上げ,挨拶とさせていただきます。本当にありがとうございました。

【末吉主査】ありがとうございました。それでは,以上をもちまして,文化審議会著作権分科会基本政策小委員会第4回を終了させていただきます。本日はどうもありがとうございました。

──了──

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