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製造物責任法の概要Q&A

以下のQ&Aは、法律の概要を御理解いただくためのものです。更に詳しい内容を知りたい場合には、製造物責任(PL)法の逐条解説を御覧ください(なお、個別具体的な事案についてこの法律を解釈し適用することは、最終的には、裁判所の判断に委ねられています。)。

質問

総論

製造物とは

欠陥とは

製造物責任を負う対象となる者とは

損害賠償を請求できる場合とは

免責事由

消滅時効

その他

回答

Q1 製造物責任(PL)法とは、どのような法律ですか。
A

この法律は、製造物の欠陥が原因で生命、身体又は財産に損害を被った場合に、被害者が製造業者等に対して損害賠償を求めることができることを規定した法律です。この法律は、不法行為責任(民法第709条)の特則であり、不法行為責任に基づく損害賠償請求の場合には、加害者の過失を立証しなければならないところ、製造物責任については、製造物の欠陥を立証することが求められます。

Q2 この法律には、届出の制度やガイドラインはありますか。
A

この法律には、届出の制度やガイドラインはありません。Q1にあるように、この法律は、製造物の欠陥が原因で損害が生じた場合の損害賠償について定めた法律であり、事業者の事業活動に対する届出等の規制を定めたものではありません。

Q3 この法律の対象となる製造物とはどのようなものですか。
A

この法律では、製造物を「製造又は加工された動産」と定義しています(本法第2条第1項)。人為的な操作や処理が加えられ、引き渡された動産を対象としており、このため、不動産、電気、ソフトウェア、未加工農林畜水産物などは、この法律の対象にはなりません。

Q4 「製造又は加工」とは、どのような行為をいいますか。
A

この法律には、「製造」及び「加工」を定義する規定はありません。
なお、一般に「製造」とは、製品の設計、加工、検査、表示を含む一連の行為として位置付けられ、「原材料に手を加えて新たな物品を作り出すこと」と解されています。また、一般に「加工」とは、「動産を材料としてこれに工作を加え、その本質は保持させつつ新しい属性を付加し、価値を加えること」と解されています。

Q5 ソフトウェアはこの法律の対象となりますか。
A

ソフトウェア自体は無体物であり、この法律の対象とはなりません。ただし、ソフトウェアを組み込んだ製造物についてはこの法律の対象と解される場合があります。ソフトウェアの不具合が原因で、ソフトウェアを組み込んだ製造物による事故が発生した場合、ソフトウェアの不具合がその製造物自体の欠陥と解されることがあり、この場合、その欠陥と損害との間に因果関係が認められるときには、その製造物の製造業者等にこの法律による損害賠償責任が生じます。

Q6 中古品もこの法律の対象となりますか。
A

中古品も「製造又は加工された動産」に該当する以上は「製造物」であり、この法律の対象となります。したがって、中古品であっても、製造業者等がその製造物を引き渡した時に存在した欠陥と相当因果関係のある損害については、製造業者等に賠償責任が発生することとなります。
ただし、中古品として売買されたものについては、【1】以前の使用者の使用状況や改造、修理の状況が確認しにくいこと、【2】中古品販売業者による点検、修理や整備などが介在することも多く、製造業者等の責任については、このような事情も踏まえて判断されるものと考えられます。

Q7 この法律でいう「欠陥」とは、どのようなものですか。製品の調子や性能が悪いといった品質上の不具合も、この法律でいう「欠陥」に当たりますか。
A

この法律でいう「欠陥」とは、製造物に関する様々な事情を総合的に考慮して、「製造物が通常有すべき安全性を欠いていること」をいいます(本法第2条第2項)。このため、安全性に関わらないような単なる品質上の不具合は、この法律の損害賠償責任の根拠とされる「欠陥」には当たりません。

Q8 訴訟になった場合、欠陥とは、どのように判断されるのですか。
A

欠陥の判断において検討される、製造物の「通常有すべき安全性」の内容や程度は、個々の製造物や事案によって異なるものであり、製造物に係る諸事情を総合的に考慮して判断されます。
この法律では、欠陥の判断に当たり、考慮事情として、「製造物の特性」、「通常予見される使用形態」及び「製造業者等が当該製造物を引き渡した時期」の3つを例示しています。

Q9 具体的にはどのようなものが欠陥に当たりますか。
A

一般に、欠陥は次の3つに分類することができます。
【1】製造物の製造過程で粗悪な材料が混入したり、製造物の組立てに誤りがあったりしたなどの原因により、製造物が設計・仕様どおりに作られず安全性を欠く場合、いわゆる製造上の欠陥
【2】製造物の設計段階で十分に安全性に配慮しなかったために、製造物が安全性に欠ける結果となった場合、いわゆる設計上の欠陥
【3】有用性ないし効用との関係で除去し得ない危険性が存在する製造物について、その危険性の発現による事故を消費者側で防止・回避するに適切な情報を製造者が与えなかった場合、いわゆる指示・警告上の欠陥

Q10 この法律には、製造物についての注意表示を義務付ける規定はありますか。
A

この法律には、製造物等について何らかの表示を義務付ける規定はありません。注意表示に関する規定もありませんが、注意表示の欠如が欠陥に当たると判断される場合もあります(Q9【3】参照)。
なお、一般論として、安全性の確保のため、安全に製品を使用できるような注意表示をすることにより、製品販売後の被害の発生・拡大の防止に努めるようお願いします。

Q11 製造物への注意表示はどのようにすればよいですか。
A

この法律には、製造物等への注意表示に関する規定はありません。ただし、製造物の特性や想定される誤使用なども考慮して、使用者が安全に製品を使用できるように、明確かつ平易な注意表示をするようお願いします。

Q12 製造物責任を負う対象となる者はどのように定められていますか。
A

この法律では、製造物責任を負う対象となる者を、製造物を業として製造、加工又は輸入した者としています(本法第2条第3項第1号)。さらに、自ら製造業者として製造物にその氏名等の表示をした者又は製造物にその製造業者と誤認させるような表示をした者(本法第2条第3項第2号)や、その実質的な製造業者と認めることができる表示をした者(本法第2条第3項第3号)も対象としています。

Q13 販売業者は製造物責任を負う対象となっていますか。
A

販売業者は、基本的にはこの法律の対象とされていません、ただし、販売業者であっても、輸入業者や、本法第2条第3項第2号又は第3号に該当する者(以下「いわゆる表示製造業者」といいます。Q12参照。)に当たる場合は、その観点から製造物責任を負う対象となります。

Q14 「設置」や「修理」を行った者は、製造物責任を負う対象となっていますか。
A

製品の設置・修理に関する製品の不適切な取扱いによって欠陥が生じた場合については、製品を流通させた後の問題であることから、設置・修理業者は、基本的には、製造物責任を負う対象にならないと考えられます。

Q15 無償で試供品を提供する場合など営利目的でない場合は、製造物責任を負う対象となりませんか。
A

この法律では、製造物責任を負う対象を、製造、加工又は輸入を「業として」行う者に限っています。「業として」とは、同種の行為を反復継続して行うことと解されています。同種の行為が反復継続して行われていれば、営利を目的として行われることは必要ではなく、当初から無償で配布することを予定している製造物であっても、無償であることのみを理由にこの法律の対象から除外されるとは解されません。また、公益を目的とした行為であっても、同種の行為が反復継続して行われていれば、「業として」に当たるものと解されます。

Q16 他の製造業者に生産を委託したプライベートブランド商品を販売し た場合、販売業者は製造物責任を負う対象となりますか。
A

販売業者等が製造業者と誤認させるような表示をした場合は、いわゆる表示製造業者に該当し、製造物責任を負う対象となります。
また、販売業者等の経営の多角化の実態、製造物の設計、構造、デザイン等に係る当該販売業者の関与の状況からみて、当該販売業者がその製品の製造に実質的に関与しているとみられる場合は、いわゆる表示製造業者に該当し、製造物責任を負う対象となります。

Q17 OEMで自社のブランドを付して製造させた場合、製造物責任を負う対象となりますか。(OEMとは、相手先商標製品の供給のことであり、自社で生産した製品に相手先企業の商標をつけて供給する生産形態をいいます。)
A

一般に、ブランドを付すことにより、製造業者としての表示をしたとみなされる場合や、当該製造物の実質的な製造業者とみなされる場合には、いわゆる表示製造業者に該当し、製造物責任を負う対象となります。

Q18 完成品として引渡しを受けた製造物の部品に欠陥があって損害が生じた場合、この法律に基づく損害賠償請求は、部品の製造業者に対して行うのですか。
A

製造業者については、当該製造物を業として製造した場合に製造物責任を負うこととされていますので、部品の製造業者だけでなく、完成品の製造業者に対しても、この法律により損害賠償を請求することができます。

Q19 この法律により損害賠償を請求することができるのはどのような場合ですか。
A

この法律により損害賠償を請求することができるのは、製造物の欠陥によって、人の生命、身体に被害をもたらした場合や、欠陥のある製造物以外の財産に損害が発生したとき(拡大損害が生じたとき)です。このため、欠陥による被害が、その製造物自体の損害にとどまった場合(例えば、走行中の自動二輪車から煙が上がり走行不能となったが、当該自動二輪車以外には人的又は物的被害が生じなかった場合)は、この法律の対象になりません。このような損害については、民法に基づく不法行為責任、契約不適合責任、債務不履行責任等の要件を満たす場合には、被害者はそれぞれの責任を追及することができます。

Q20 この法律は免責についての規定はありますか。
A

本法第4条は、本法第3条により製造業者等が製造物責任を負う場合に、当該製造業者等が一定の事項を立証することによって、賠償責任が免責されることを規定しています。
具体的な免責事由として、次の2つを規定しています。
【1】製造物を引き渡した時点における科学・技術知識の水準によっては、欠陥があることを認識することが不可能であったこと(本法第4条第1号、開発危険の抗弁)
【2】部品・原材料の欠陥が、専ら当該部品・原材料を組み込んだ他の製造物の製造業者が行った設計に関する指示のみに起因し、欠陥の発生について過失がなかったこと(本法第4条第2号、部品・原材料製造業者の抗弁)

Q21 この法律により損害賠償請求をすることができる期間について規定はありますか。
A

この法律による損害賠償請求権は、原則として、損害及び賠償義務者を知った時から3年間行使しないとき、又は、製造業者等が当該製造物を引き渡した時から10年を経過したときは、時効によって消滅します(本法第5条第1項)。なお、人の生命又は身体を侵害した場合(本法第5条第2項)や製造物の使用開始後一定の期間の経過後に損害を生じる場合(本法第5条第3項)については、特則があります。

Q22 この法律の長期の消滅時効は、製造物を引き渡してから10年とされていますが、それは消費者の手に渡ってから10年ということですか。
A

この法律では、長期の消滅時効の起算点を、消費者の手に渡った時ではなく、製造業者等が製造物を引き渡した時、すなわち、製造物を流通させた時から10年としています。

Q23 部品の保存期間についてこの法律で何か規定はありますか。
A

この法律は、Q1にあるように、製造物の欠陥が原因で損害が生じた場合の損害賠償について定めた法律であり、事業者に対する規制を定めたものではありません。部品の保存期間についてもこの法律に規定はありません。

Q24 A社の部品を使ってB社が完成品を製造しているが、AB間の契約に「その完成品による被害が発生した場合はB社が責任を持って対応する」という特約があればB社のみが製造物責任を負うことになりますか。
A

この法律に特段の定めがない事項については、民法の規定が適用されます(本法第6条)。上記のように、自己の製造物責任につき免責特約を付したとしても、その効力は自己の直接の取引の相手方に及ぶだけであり、製造物が引き渡された全ての者に及ぶわけではありません。このような場合においては、被害者との関係では免責特約にかかわらずこの法律に基づいて責任関係が判断され、免責特約の効力については、民法の不法行為の原則によることとなります。

Q25 製造業者の製品保証について教えてください。
A

製造業者による製品保証は、製造業者が自主的に行っているものであり、保証の有無・期間について、この法律において規定されているものではありません。また、製造業者による製品保証と製造物責任は別のものですので、製品保証の有無にかかわらず、製造物責任の要件を満たす場合には、この法律により損害賠償を請求することは可能です。

Q26 PL保険への加入はこの法律で義務付けられていますか。
A

この法律では、PL保険への加入を義務付ける規定はありません。PL保険は各保険会社・事業者団体等による保険商品又は共助制度の一つです。詳しい保険の対象や適用範囲等については、各事業者にお問い合わせください。

Q27 個別の事例について相談したいのですが。
A

消費生活についての御相談は、消費者ホットライン188又はお近くの消費生活センターにお電話してください。また、事業者の方は、弁護士等の法律の専門家にお問い合わせください。

担当:消費者安全課