日本版リーガルオペレーションズ研究会 INTERVIEW
3.双日マシナリー株式会社様の場合
2022年8月30日公開
会社概要
双日マシナリー株式会社は双日株式会社100%出資の機械専門商社。売上1310億円、従業員399名。東京はじめ国内8か所に拠点を持つほか、海外に子会社・拠点などが6つある。
[法務部門の概要]
法務・リスク管理部は部長1名、リスク管理課9名、品質・物流プロジェクト管理課10名、法務課6名の合計26名からなる。部員のうち、親会社からの出向者は部長の1名のみ。法務課は法務・リスク管理部の一組織として、安全保障貿易管理、腐敗行為防止その他のコンプライアンス活動、個別案件におけるスキームの提案、契約書の作成・審査、紛争対応等を担当。部の中でのローテーションは今まではなく、原則として法務課内でのローテーション。平上氏はリスク管理課からローテーションされた初めての部員で、若手は課を超えたローテーションをしていく方向。法務課の業務内容は、契約法務6~7割、残りはコンプライアンス・輸出管理等となっている。
▶インタビューご協力:
双日マシナリー株式会社 法務・リスク管理部 法務課 西尾 宏樹さん
法務・リスク管理部 法務課 平上奈緒子さん
CORE8総論
ナレッジマネジメント(以下、ナレマネ)について元々から問題意識があったことが、CORE8に関心を持ったきっかけ。2020年9月にAMTの門永弁護士がナレマネについて著書を出し、これを基に10月から翌年3月にかけて社内でナレマネについて議論した。2021年4月、NBLにリーガルオペレーションズ(LO)の記事が掲載された際、これがナレマネと関係あるのではないかという気付きがあった。ビジネス法務には2020年に企画法務の特集で丸紅・LINEのLOの紹介がされており、これが使えるのではないかと2021年4月より課内で設置したナレマネチームで議論をした。そのほか、経営法友会の会報誌でACC Maturity Modelの日本語訳が発表され、関連記事も勉強していた。
その流れの中、2021年12月に日本版リーガルオペレーションズ研究会によるCORE8のイベントがあると聞いて西尾氏が参加。情報はナレマネチームだけでなく課員全員で共有した。イベント動画配信やモデル案も課員で共有した。そのうえで課内の意見を纏め事務局あてに提出した。
2022年からはLOの概念は有用、使わない手はないという共通意識が課内で生まれた。今年度は、その切り口で何をするかが課題。元々はナレマネからスタートだがそれ以外もやっていきたいと思っている。
CORE8各論
1.戦略
戦略の必要性、とりわけ企業理念に相当する部門の理念・ミッションは作る必要があるというのが課のコンセンサス。ただ、その策定には時間を要するので今年度実施予定。
2.予算
課の規模、子会社としての会社予算の立て方(管理部門一般に予算策定がラフ)といった組織のありようを踏まえて、メンバー間で意見の相違が一番大きいアイテム。
組織である以上、予算について考えるべきというCORE8の記載は理解できる。ただし、目指すところには各社で差があると考える。
課の予算アイテムには人員は入っておらず、研修・課で使う弁護士費用・テック等。弁護士費用のうち、プロジェクト関連で使うものはプロジェクト側の予算となっているが、弁護士起用が稟議事項となっており、法務が審議のフローに入っている。
3.マネジメント
CORE8に書いてあることは分かるが、(100%子会社でそれほど大規模ではない法務部門を持つ)自社には合わないというのが検討メンバーの意見。子会社を多数持つ親会社や大企業向けのアイテムと感じた。また、レベル1の「役割定義」は戦略ではないかというメンバーもいた。
4.人材
概ね異論なし。ただし、レベル1は入社時の人事対応の話で、法務部門というよりも会社自体の成熟度の問題ではないかという意見があった。
レベル3は人事部と法務部門の連携が必須となり、達成は難しいと感じた。
5.業務フロー
概ね異論なし。ただ、契約サンプルのあることがレベル1としながら、レベル2でも契約モデルの話があるのはなぜか(インタビュアーを務めた川口から、「なにか」契約サンプルがあるのがレベル1、「自社のフローに即した」契約サンプルがあるのがレベル2と整理している旨説明。)。CORE8を作ったときの議論の経緯や研究会の思いがわかるような記載があるといい。
6.ナレッジマネジメント
自社にとっては最も優先順位が高い。記載内容が集積から始まる三段階になっていることにも納得感がある。もっと他社事例や説明(具体的にどうやっているか)があれば参考になる。例えばclause libraryを具体的にどう作って活用しているか。CLMシステムで何をどこまでやっているか。CLMのベンダーの説明を聞いてはいるが、できるのは相談受付から締結までと言われることが多い。しかし、自社のニーズでは、締結のあとの債権回収・管理などに紐づけないと、CLMの有効性は分からないと感じている。そのようなシステムがあるのか、導入しているところがあるのか、できない理由は何かなどを理解したい。
7.外部リソース
枠組みは異論なし。ただし、マネジメントと同じく自社の起用状況からすると本アイテムをどう使うかは検討の必要あり。自社やその法務部門が10~20年後どうあるべきかから考えて、検討しないといけないと思っている。
8.テクノロジー
記載は異論なし。ただ、レベル1からやってみようと情報収集してみた結果、ベンダー数が多く変化も大きいので、負担が大きい。課題洗い出しをレベル1に入れるといいのではないかと感じた。
全体を通じての自社の課題感
自社の部門規模等を考えると全体としてCORE8のレベル2が当面の目指す姿。それを「いつまでに」達成するか。自社中計は来年度終了なのでそこまでにできれば成功と思っているが、こうした時間軸を考えるのが今年度の課題。CORE8の活用自体はできると考えている。
他方で、CORE8のレベル2が達成できただけでは足りないところがあるかもしれないと感じている。例えば法務部門外の社員に対する情報発信をし、営業パーソンの契約理解度を上げることに課題感を持っているが、こうした活動はCORE8フレームワークにはないものの重要と感じている。CORE8のどこかに情報発信を入れ込むことが必要かもしれない。
今後の期待
他社の事例(ナレマネ、戦略)。例えばサントリーについては本研究会メンバーでもある明司氏の講演を通じて勉強した。それ以外の会社の戦略なども学びたい(川口から、経営法友会の法務部門実態調査に、そうした定性情報の掲載を充実してもらうことなども一つのアプローチかもしれないとコメント)。
以上
(この記事は2022年6月に実施されたインタビューをもとに2022年8月に作成されました。)